サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪ 作:ゼノアplus+
日常の終わり
1話
「起きろ。実験の時間だ」
男の抑揚のない声が空間の雰囲気を支配する。男の目の前には刑務所の檻のような部屋の白いベッドで横たわる少女の姿があった。
「…………あと5分」
「いや起きろって。今日も電撃の出力上がるぞ?」
「仕方ないなぁ……」
急張り詰めた空気が急に霧散した。少女の呟きに、男は疲れたような声音で軽い口調になった。少女も本当に面倒そうな表情をしながら体を起こす。
「今日のメニューは?」
「脳波コントロール速度の上昇、それを用いた操縦技術向上だ」
「いつもより少ないじゃん。やっとボクの頭を壊すの?」
「アホか……お前壊したらウチの機体開発が滞るわ。たくっ……無駄話は終わりだ。行くぞ」
「はーい。楽しみだなぁ……今日はどの子だろう」
入院患者が着るような薄緑色の服を着て、銀髪の少女はロックが解除された扉を潜る。どう見てもロクな現場ではないが、少女の口元は笑っていた。
やがてとある部屋にたどり着きそこに入ると頭にケーブルの繋がれた1人の少年が力なく座っていた。
「やっほー。今日も頑張ろうねぇユウヤ君」
「…………」
少女にユウヤと呼ばれた少年は、聞こえていないのか少女の方をまるで見ていない。それどころか死んでいるように顔色が悪く、少年の目には何も映っておらず虚空を眺めている。
「アッハハ……いつも通りだね。んじゃ、やりますか」
少女が乾いた笑い方をしながら少年の隣の席に座ると、数人の白衣の男が機材を持ってきて少女の頭に取り付け始めた。
「今日は何%から始めるの?」
「昨日の時点で43%をマークしているので、今日は35%から始めていきます」
「随分とお優しいじゃん?ボクはもう少し上からでも良いんだけど?」
「大事な被験体への過剰な負荷は認められません」
「ふぅん……その分長くなるくせに」
親しげな口調で白衣の研究員らしき眼鏡の男と話す少女の声は明るい。今にも怪しげなことをされる側としては相応しくない。
『実験を開始する』
部屋に無機質な声が響き、機械の作動音が聞こえ始めた。
バチィィィ!!
「…………」
「あぐぁぁぁあああああああ!!!!」
頭の機材から電流が迸る。余程苦しいのか、目を血走らせながら叫ぶ少女に対して、なんの反応も示さない少年。同じ実験を受けているとは思えないほど、二人には差がある。
『出力を上げろ』
「…………」
「ァァァアアァァァァァァアアアアアアア!!!!!」
迸る電流の量が増える。少女は叫びながらもガラス越しに見える中年の男に目を向ける。
(加納め……悪趣味な奴……)
歯を食いしばりながら少女は電撃に耐える。絶え間なく出力が上がっていく電流に少女の絶叫も大きさを上げていく。
『出力61%まで上昇。安定しています』
『よし、中断しろ。次だ』
電撃が収まる。
「…………」
「ハァ……ハァ……ハァ……あぅ……」
いつまでも無反応な少年に、肩で呼吸する少女。すでに少女は疲弊し、ヨダレが垂れかけている。どうやら意識も朦朧としているらしい。
『今日はナイトフレームとブロウラーフレームで行う。CCMとLBXを渡せ』
指示通りに、少年と少女に携帯型端末が手渡され、両者の間に小さなキューブが投げ込まれた。そのキューブは地面で止まると白く光り大きくなっていく。そして光が収まると、闘技場のようなジオラマが現れた。
「えぇ!!ボクがズールなの!?ちょっと、デクー使わせてよ!!」
『文句を言うな。お前はブロウラーフレームかパンツァーフレームしか使っていないだろうが。今回のメインは灰原ユウヤの実験だ。お前は黙って的になれ』
「…………ちぇ〜」
聞こえてくる男の声に少女は朦朧としていたはずの意識を無理矢理覚醒させ男に文句を言った。しかし、一蹴された少女はズールと呼ばれた青いカラーリングのロボットをカチャカチャしている。
『LBX投下』
「仕方ないなぁ……行くよズール」
「…………」
不機嫌そうな少女はジオラマの中にズールを投げ込む。対するユウヤも無言で茶色に塗装された一つ目のロボット、デクーを投げ込んだ。
ズールは右手に赤めの槍に丸い盾を、デクーは上に弾倉がついた銃と覗き穴が空いた長方形の盾を装備している。デクーに関しては腰にヘヴィソードを装備している。
『サイコスキャニングモードデータ採取を開始する。バトルを始めろ』
「はいよ。手加減はしないよユウヤ君。今日も勝たせてもらうからね!!」
「…………」
2人が同時に携帯端末……CCMを操作して機体を突撃させた。
〜〜〜〜〜〜
2046年 『強化ダンボール』の発明によって、世界の物流は革新的な進歩を遂げた。
内側からと外側からの衝撃を80%吸収する革命的な『未来の箱』が、輸送手段の常識を覆したのだ。
しかし……その箱はやがて全く別の目的で使われることになる。
ストリートで行われる少年たちの戦い。
ホビー用小型ロボット『LBX』を操る彼らの戦場は次第にダンボールの中へと移っていった。
その四角い戦場で戦う小さな戦士たち。
人は彼らを『ダンボール戦機』と呼んだ。
〜〜〜〜〜〜
「……正直、誰かが『ダンボール戦機』って呼んでるとこ見たことないんだよねぇ」
「何か言ったか?」
「いや何も」
謎の独り言を呟いて先ほどの男に心配されている少女はなんでもなさそうに返した。本日の実験も滞りなく終了し男の監視の元、少女は自室へと歩いている。
「あ、そうだった。どうやらウチで開発中のAX−00が盗まれたらしい。今黒の部隊が追っている」
「へぇ!!ここの警備を抜かれたの?なかなかやるじゃんソイツ。ボクにやらせてよ」
通路を歩きながら2人は話す。大事な物が取られたのいうのに少女は楽しそうな声音をしている。
「もういねぇよ。窃盗犯はLBXプレイヤーじゃないしな」
「え〜……つまんなーい」
「それにお前はまだ調整中だ。勝手な行動は慎めよ」
「ボク実は女の子の日で……」
「昨日もソレ聞いたわ。お前のメディカルチェックは欠かしてないから体調万全ってのも知ってるよ」
「女の子の個人情報丸裸っ!?うっわ〜へんた〜い」
「言ってろ。たくっ……他の奴ら、毎日毎日俺にこいつの監視押し付けやがって……」
ケラケラと笑いながら少女は男をからかう。男は胃を押さえながら呟いている。どうやらいつものことらしい、そしてストレスがマッハなのだろう。薄毛に気をつけられたし。
「着いたぞ……とっとと休め。後で飯を持ってくるから」
「今日のご飯は〜?」
「知るか。俺は献立係じゃねえ」
「いけずぅ〜……はぁ……よろしく」
少女は最後までケラケラとしていたが、すぐに真顔に戻り部屋に入ってベッドに腰掛けた。どうやら疲労は凄まじいらしい。そして男は扉のロックがかかったのを確認すると立ち去っていった。
「AX−00が盗まれた……ねぇ……面白くなりそう。もしかしたらボクも……なんて、無駄な希望は持っちゃダメだね。さて……少し寝ようかな。明日こそは……デクー……を……」
独り言を呟いていたがすぐに少女の寝息が聞こえてくる。どうやら眠ってしまったらしい。
一方とある町の河原では、これから起こる数々の事件の原点となる出来事が始まろうとしていた。
「見つけた。貴方が山野バン君ね」
「……え?」
運命の歯車はすでに回り始めた。残る問題は、ソレがちゃんと噛み合って回るのかどうかのみである。
一回の戦闘シーンは長い?
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長い
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短い
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ちょうど良い
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もっと細かく描写して欲しい
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トロイ弱体はよ