サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪ 作:ゼノアplus+
19話
「…………ひまぁ」
2日後、レイはエクリプス自室の机の上でとろけていた。流石のレイも2日あればLBX達の調整も終わってしまい、する事が無いのだ。あの日の頭痛はすでに収まり何事もなかったかのようにレイ自身には何の影響も及ぼしていない。それどころか、勝手に人の脳内にアクセスされたことに憤慨したレイは怒りのままにLBXを改造しまくっていた。
「全く……乙女の頭の中にズケズケと……失礼するね!!……そういやここ、アキハバラって言ったっけ?ええと……検索検索……へぇ。LBX界隈でも賑わってるんだ」
ふと、先日の矢壁の発言を思い出したレイは、CCMをエクリプスに接続しネットを使ってアキハバラについて調べていた。
「……インフィニティネット。なるほど、メタナスGXのデータがこの中に……ゴッドゲート?たいそうな名前がついてるけど……ッ!!これか、てことは……これを通してボクの中に入ってきた奴が……」
レイはグローブを装着し、自身のメディカルチェックの内容をディスプレイに表示。メタナスGXのデータを最大で表示しなにがあったのかチェックした。
「あれ、解読コードが消えてる?ヴァーチャルLBXハーデス……侵入者は……あ、ハンターって確か……カズヤ君のLBXだったね。てことはバン君達か。これは一つ文句言ってやらないとねぇ……でもゴッドゲートのセキュリティを見るに突破できるようなハッカーなんて……うん?」
レイは真実に気づきながら調べ続け、CCMに表示していたアキハバラのサイトに目が入った。
「伝説のハッカー……オタクロス?ほぉ……へぇ……なるほどねぇ……」
レイは口の形が三日月になったかのようにニヤける。
「じゃあバン君達はアキハバラに居るんだ……さてさて、この戦争関連で次に関係しそうなのが……アキハバラキングダム。ビンゴッ!!優勝してキングに勝てばアキハバラの支配者になれる。そして町中のハッカーを集めればインフィニティネット中に散らばった解読コードを取り戻すのも容易……アッハハ!!
善は急げ、ってね♪」
レイは楽しそうに笑いながら、LBXを収納している棚からトロイとデクーを取り出すと、ケースに収めた。
「服……服……え、なんか服が増えてる。姐さんかな?」
クローゼットを開けると、1着しか持っていなかった服と同じ物がいつのまにか3セットほどあった。おそらく真野が買ってきたのだろうと思いながら、以前真野に貰った白いパーカーに着替えて腰にLBXの入ったケース2個を腰に下げた。
「あ、メガネケースも持っていかなくちゃ……お金……真崎さんがくれた奴があったっけ。うーん……荷物が多い……入れる物……入れる物……これかな?」
ゴソゴソとクローゼットを漁っていると、水色のウエストポーチがあった。本来は腰に留める物だが、現在は肩からかけるの主流となっているそれを、レイは知るはずがない。しかし試行錯誤の末肩からかけることに成功し中にCCMと工具一式をコンパクトに収めた。
「レイ君、少しいいか?」
「あ、八神さん。どうぞー」
「失礼する……出かける気だったのか?」
扉越しに聞こえてきた声に返事をし、中に入れる。入ってきたのは真野達や真崎を指揮する八神だ。彼はレイの格好を不審な目で見ている。
「うん。アキハバラって所に行きたくてさ。姐さん達の誰かについてきてもらおうと思ってたんだけど……もしかして忙しい?」
「ああ、ちょうど任務を与えた所だ。すまない……」
「いやいや、別に良いよ。ボクは養ってもらってる身だし。うーん……どうしようかな」
「……少し待ってくれ。心当たりがある」
「子供の引率に心当たり……?」
真崎がいないのでついてきてくれる人がいないレイ。流石の彼女も一人で街に出ようとは思っていなかったようだ。八神がCCMを取り出して部屋を出て数分すると戻ってきた。
「石森里奈のことはわかるか?」
「うん。この前ちょっとお話ししたよ」
「彼女についてもらう事にした。関わらせる気はなかったが、彼女に話をしたら是非、とな」
「それは嬉しい話だね」
「……本当は君を外に出すべきではない。イノベーターの刺客がどこにいるか分からないからだ……イノベーターの件で、私は君に何もできなかった。しかし君には自由になってほしい」
「だからエンジェルスターの時も言ったけど、気にしてないよ。八神さん、気負いすぎても任務に支障が出るだけさ。眉間にシワが寄っているよ?」
「ッ!!……ふっ、忠告感謝する」
『おとうさん、むずかしいことかんがえてる。おでこしわくちゃだよー?』
八神の発言にレイは困ったような顔をしながら八神の額に人差し指をあて笑う。八神はレイのその行為に何かを思い出したのか目を見開き……うっすら笑みを浮かべると、部屋を去った。
「?……変な人だねぇ」
◆
「はぁ!!参加受付終了してる!?嘘でしょ!!」
「い、いえ……先ほど2チーム同時に登録されて終了しまして……申し訳ありません。来年度お待ちしています」
「うぅ……仕方ないか……」
「諦めるしかないわね」
アキハバラに到着したレイと里奈は早速と言わんばかりにアキハバラキングダムへの出場登録をしに受付へ。しかしどうやらすでに参加受付は終了していたようで……
「うーん……仕方ないけど観戦だけにしよう」
「でもまだ時間があるわね。どこか行きたいところはあるかしら?」
「LBXショップ……は特に面白そうなものもないし……って、ねえ里奈さん、あの子……」
「あら……?」
悩んでいるレイは近くに何かないかと店を探す。その途中、一人の少女を見つけた。レイよりも幼く、小学生に見えるその紫髪の少女は困った顔でキョロキョロしていた。
「ちょっと行ってくる」
「あっ、レイちゃん……ふふ、仕方ないわね」
里奈は、入院している妹が完治して自由に歩き回れるようになった時の事を想像し、レイを妹に重ねた。
「ねぇ、キミ……迷子?」
「ッ……あっ、お姉さん……アルテミスに出てた人」
少女はレイを見て思い出した。一瞬ビクッと後ろに下がった少女だが、誰か分かると興味深そうにレイを見た。
「よく覚えてるね。もしかして見てたの?」
「うん。お姉さんの銀髪、綺麗。それにお兄ちゃんが出てたから」
「ありがと……キミのお兄さん強いんだねぇ」
「……お姉さんが倒したけどね」
「へ?…………あっ!!」
少女の物言いに、レイはアルテミスで戦った相手を思い出し『お兄ちゃん』というワード、そして少女の特長的な紫色の髪からある人物をピックアップした。
「もしかして、仙道君の……」
「そう、仙道キヨカ。その節はお兄ちゃんがお世話になりました」
「あはは……こ、こちらこそ?」
ぺこりと頭を下げる少女……キヨカに、レイは気まずくなり動揺しながらも答える。
「あ、そういえば」
「どうしたの?」
「私、迷子」
「あらら……」
頭を上げたキヨカは思い出したかのように自分が迷子だとレイに告げた。
「お兄ちゃんがアキハバラキングダムに出るから応援に来たんだけど内緒で来たからお兄ちゃんに言えないし……人が多いし……道は分からなくなるし……」
「親御さんはどうしたのかしら?」
後ろから追いついてきた里奈がキヨカの身長に合わせてしゃがみ、怖がらせないよう笑顔で聞いた。
「お買い物してくるって。会場にいるって伝えたけど、会場の場所もわからない」
「おぉ……八方塞がりじゃん。えっと、ネットによると会場はそこの道路が開いて出てくるらしい……?ごめん、よく分からないや」
「……お姉さん。LBXバトル強いよね?」
「え、ああうん。結構強い方だと思ってるけど……」
「メカニックとしては……?」
「あー……そっちがメインかな。元々開発とかの方が得意だし」
「教えて!!」
レイの言葉を聞いたキヨカが突然レイに詰め寄り、目を輝かせて頼んだ。流石のレイも突然のテンションの上がり方に戸惑っているのか少し引いている。
「い、いいけど……もしかして仙道く……お兄さんのため?」
「うん。いつか、お兄ちゃんのジョーカーを私が直したいから」
「……アッハハ!!お兄さん思いの良い子だね。里奈さん、いーい?」
「ええ、アキハバラの施設ならきっと充実しているわ。親御さんにちゃんと場所を伝えたら、行きましょうか」
「うん!!」
キヨカは純粋な笑みでうなずくとCCMを取り出して通話。レイと里奈は終わるのを待ってからLBXショップへと移動した。道中……
「およ?」
「〜♪」
「……ふふっ」
自然とキヨカはレイの手を取って歩き出した。レイは心なしか嬉しそうだ。
ショップに着いたレイ、里奈、キヨカの3人は、早速制作スペースに向かった。
「キヨカちゃんのLBXは?」
「ジョーカー、兄さんと同じ」
「見ても良いかい?」
「お願いします」
レイはキヨカから市販品と同じカラーのジョーカーを受け取ると、ウエストポーチから工具を取り出して機体を観察し始めた。
「…………バトルはほとんどしてないね。関節の摩耗も少ないしアーマーフレームの損傷も少ない。ただ少し凹みがあるのは……操作中にぶつけたのかな。えっと、腕の補強具合が大体同じ…ってことはナックル系か二刀流、もしくは二丁拳銃のスタイルだね」
「ッ!!なんで分かるの?」
「ま、経験かな。バトルは出来る?」
「……あんまり得意じゃないけど、少しなら出来る」
「そっか。じゃあこれで少し動かしてみよう」
「……絶対勝てない」
「だいじょーぶ。お姉さんを信じて」
レイは備え付けのDキューブに立つと、腰のケースからデクーを取り出した。
「デクー、よろしくね」
「……ジョーカー」
デクーはヒートブレイズを装備し、キヨカのジョーカーはバーンナックルを装備している。レイは矢壁からもらったCCMを使っている。流石にグローブは使わないようだ。
「そんなに緊張しなくても大丈夫。もちろん本気ではやらないし、今回はジョーカーのメンテナンスのために少しバトルするだけだから」
「うん」
「それじゃあ、どこからでもかかっておいで」
「……行きます!!」
キヨカがジョーカーを操作してデクーに向かって突撃。右の大振りでデクーに攻撃した。
「おっとと、良い攻撃じゃん。これはどう?」
「うぅ……」
デクーは体を逸らせて回避すると、ヒートブレイズをジョーカーの腹に当てた。ジョーカーは後ろに飛ぶと態勢を立て直し再度突撃してきた。しかし今度は直前でジャンプしデクーの背後を取った。
「今度こそ!!」
『アタックファンクション 旋風』
「操作もうまいし、ファンクションのタイミングも良いね」
ジョーカーは両手に風を纏わせるとデクーに殴りかかる。デクーは迫ってくる拳をギリギリで回避するが、『旋風』は連続攻撃の技。素早い連打がデクーを襲う。
「アッハハ!!全然上手じゃん!!でも……ボクじゃなかったら最初の一撃からコンボが続いてたかな」
デクーは右足で地面を蹴って跳躍、ファンクションが終わり硬直があるジョーカーの背後から首筋にヒートブレイズを当てた。
「チェックメイト」
「つ、強い……流石ファイナルステージ出場者……」
「そこまで!!二人とも、良いバトルだったわ」
里奈が審判として試合終了を宣言、拍手をしながら2人を褒めた。
「お姉さん……強すぎる……重そうなLBXなのに攻撃が全く当たらなかった」
「えっとね。見ての通りブロウラーフレームなんだけど、ボクは避けれる攻撃は全部避けるから駆動部の強化を重点的にしてるんだ。結構激しく動くから疲労も早いし、メンテナンスも結構な頻度でする……あー、分かる?」
「うん、すっごくわかりやすい」
「そっかそっか。じゃあデクーとジョーカーのメンテナンス、一緒にやろうよ。工具も貸してあげるし、分からないことはなんでも聞いて」
レイはニコニコしながらキヨカを席に誘導、ジョーカーとデクーのアーマーフレームを外しながらレクチャーを始めた。
里奈はそんな2人を見つめながら、物思いにふける。
「……(八神さん、レイちゃんは貴方が心配してるほどひ弱な子でもないわよ)」
楽しそうにLBXを扱う2人を見て、里奈も自然と笑みを浮かべるのだった。