サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪   作:ゼノアplus+

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今回は長めです


地下での攻防。希望の少女。突きつけられる現実

20話

 

 

「お姉さん、楽しかった」

 

「うん!!ボクもすごく楽しかったよ。またお話ししようね!!」

 

「いいの?」

 

「もっちろん♪」

 

 

1時間半ほど、レイはキヨカにメカニックとしての知識を教えた。途中キヨカもわからないことが多くあったのでレイが分かりやすくまとめたデータをCCMで送信した。

 

 

「キヨカちゃんにはまだ難しいことが多いと思う。少しは分かりやすくしたつもりだけど……これから頑張ってね」

 

「はい、ありがとうございました。師匠!!」

 

「ッ!!ふふ、師匠か。うん、またね〜」

 

 

キヨカはお礼を言って、向こうで待っていた母親のもとに行った。キヨカの母親はレイと里奈を見て深く頭を下げていたが、そこまで大したことはしていないと感じているレイはあはは……と笑い手を振った。キヨカを見送った後、レイと里奈は歩き始めた。

 

 

「んん…うーん……楽しかったぁ!!誰かに教えるっていうのもなかなか良いね!!」

 

「楽しそうで何よりだわ」

 

「あ、そういえば里奈さん……暇じゃなかった?結構長い時間話し込んじゃったし」

 

「いいえ、私も楽しんだから大丈夫よ。それより、もうすぐアキハバラキングダムが開催されるけど、見ていくの?」

 

「あー……見たいけど、結構満足しちゃったんだよねー。バトルもしたし、もっと楽しい事もあったし……今日は帰るよ。長居しても八神さん達に心配かけちゃうし。本当はバン君達の活躍も見たいんだけど……どうせ今度会うしいいかな」

 

「分かったわ。エクリプスまでで良いのよね?」

 

「うん。お願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

里奈によってエクリプスに帰ってきた翌日。午前中は、八神に勧められてネットで常識関連の勉強をしていた。

 

 

「……わざわざ常識を勉強する人なんて、ボクくらいなんだろうなぁ」

 

 

幼い頃は普通に過ごしていたレイだがイノベーター研究所での実験暮らしは、昔の日常をたやすく忘れさせるほどに過酷なものだった。社会の常識など学ぶ機会もなかったレイには、こういったものも新鮮で知らないものばかり。普通ならめんどくさがりそうなものも彼女は興味津々で勉強をしていた。

 

真野が用意してくれたお昼ごはんを食べて休憩している途中、八神からCCMに電話がかかってきた。

 

 

「えっと……もしもし、であってる?」

 

『ああ、問題ない。よく勉強しているな』

 

「えへへ、それほどでも」

 

『急で済まないが本題に入る。私達は今タイニーオービット社にいる』

 

「へぇ……じゃあシーカーとの合流は出来たんだ」

 

 

八神達は、レイが観戦をやめたアキハバラキングダムで優勝したバン達をイノベーターから助け協力を仰いでいた。里奈はレイを送ってから姿を消し、音沙汰がないがタイニーオービット社にいるのだと八神から聞いた。

 

 

『出来たんだが……いまいち信用が得られなくてな』

 

「アッハハ、仕方ないよ。なんたってボク達は元イノベーターだからね。多少は仕方ないさ」

 

『……そうだな。今、エターナルサイクラーの製造をしている。しかし、問題が発生した」

 

「ほほう?」

 

『イノベーターのLBX部隊がタイニーオービット社の地下を通って襲撃を仕掛けてきている。数は25000、奴らは本気でここを潰しに来ている』

 

「25000……対策は?」

 

『現在、ハッカー軍団やオタクロス、山野バン達が防衛ラインを築いて迎え撃つ準備をしている。君も来てもらえないだろうか。君がいれば戦力図が大きく変わる……これ以上この戦争に関わって欲しくはないが、事態は一刻を争う。頼む……』

 

 

いつにも増して深刻な声音で喋る八神に、思わずレイも気が引き締まっている。

 

 

「了解。すぐ行くけど……ボク、そっちまで行けないよ?」

 

『細井を迎えに行かせた。すぐに到着するだろう』

 

「オッケー、25000か〜楽しみ!!超楽しいバトルになりそう!!」

 

『……頼んでいる身で言いにくいが、どちらも本気だ。世界の命運がかかっている』

 

 

厳かな雰囲気に似合わない発言をするレイを気まずそうに咎める八神だが、その想いが通じたのかレイはテンションを下げた。

 

「……分かってるよ八神さん。イノベーターは私が潰す。今まで散々ユウヤ君や私で遊んでくれた分はきっちり返すさ。だから待ってて。軽く蹴散らしてやる」

 

『ッ……分かった。こちらも全力で防衛ラインを維持する』

 

 

八神は、レイの雰囲気が変わったのを感じ取ったのか、一瞬言葉に詰まった後手短に要件を告げて通話を終了した。

 

 

「ふ、ふふふ……アッハハ!!初陣だよ、セイリュウ、ビャッコ、スザク、ゲンブ……LBXの起動コード入力。並列思考並びに各CPUにリンクスタート……おっと、やっぱ4体同時は負荷が大きいね」

 

 

レイは棚から四神を取り出すと、CCMグローブをはめてメタナスGXとのリンクを繋げた。高性能のLBX4体を同時接続するのはまだ子供の身であるレイには負荷が大きすぎたのか、鼻血を出してしまったらしい。部屋に置いてあるティッシュで鼻を拭うと、さらに楽しそうに笑った。

 

 

「全機接続完了……グッモーニングみんな、初めまして。早速だけど……戦争しよっか♪」

 

 

レイの声に応えるように4機のカメラアイが光った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「残り敵総数、15000!!尚も本社に向けて進行中です!!」

 

「くっ……数が多すぎる……ハッカー軍団達の被害はどうなっている!!」

 

「46%が沈黙しています。この勢いですと……」

 

 

ここはタイニーオービット社の地下1階新シーカー本部。拓也が指揮するシーカーの新たな拠点だ。

 

 

『拓也さん、ここまでくる敵の数が増えてる気がします』

 

『今はまだなんとかなる量だけど、このまま増え続けたら耐え切れないわ』

 

『こちら八神、社内に侵入するLBXが増加している』

 

「どこにも手を回す余裕がない。今は持ち堪えてくれ!!」

 

 

エターナルサイクラーを製造中のタイニーオービット社には、現在25000機のイノベーターのLBXが襲来してきていた。シーカー側は郷田ハンゾウ、ヤマネコをリーダーに置きアキハバラが誇るハッカー軍団のLBX達で迎え撃っているが、質が高くとも数の差は圧倒的。少しずつハッカー軍団の数は減少している。

 

 

『あと少しで私達からの増援が来る。彼女が来れば一気に形成は逆転する。それまで耐えてくれ!!』

 

「彼女だと……?たった1人で一体誰が……まさか!!」

 

『アイツもイノベーターを離れてたのか!!』

 

『レイが……来る』

 

 

八神の発言にレイの事を知る者達が驚き、希望を持った。皆彼女の実力を知っているからだ。

 

 

「ッ!!拓也さん、未確認のLBXがこちらへ接近中です!!」

 

「なに……どこからだ?」

 

「…………社内エントランスからのようです!!」

 

『ふっ……来てくれたか』

 

 

刹那、イノベーターの軍勢の一部から爆煙が上がった。

 

 

「「「「「「ッ!!」」」」」」

 

「アッハハ!!本当にたくさん居る。腕がなるってもんだねぇ!!」

 

『『『『『『レイ!!』』』』』』

 

 

モニターをこの方へ向ければ、ライトグリーンの光が見えて来る。カツンカツンと歩く音が聞こえ、そして彼女は現れた。

 

 

「さてと……サイコスキャニングモード……発動ッ!!」

 

 

CCMグローブから光が発せられる。それに呼応するように、戦場のど真ん中で、同じようにライトグリーンの輝きが4つ見えた。

 

 

『あれはっ!?』

 

 

爆煙が晴れると姿を表したのは中国神話における聖なる獣達、その全てがサイコスキャニングモードで強化され淡く発光している。その姿は威厳があり、神聖な何かを感じさせる。

 

 

「やっほー、遅くなってごめんねみんな。久しぶり」

 

『レイ……助けに来てくれたのか!?』

 

「あれ、バン君の声が聞こえる……どこ?」

 

 

レイは辺りを見渡すがバンの姿は何処にもない。しかし、階段付近に3機のLBXがいるのを確認するとそちらへ近寄った。

 

 

「もしかして君たち?」

 

『久しぶりねレイ』

 

「わわっ、すごいねそれ。久しぶりみんな」

 

 

興味深そうに、バン達の新型のオーディーン、パンドラ、フェンリルを眺めるレイ。どちらかといえばバン達よりもオーディーン達に目が行っている。

 

 

『あ、相変わらずね……』

 

「人間こんな短期間で変わるもんじゃないよ……あー、いやボクは変わったかな」

 

 

レイが両手を開きLBX達を操作。

セイリュウは片手剣である『四聖獣セイリュウ』で敵を切り裂き、ビャッコは鉤爪のようなナックル装備『四聖獣ビャッコ』でデクー達を貫く。スザクは両手に持ったエネルギー系サブマシンガン『四聖獣スザク』で大胆に走り回りながら敵を撃ち抜いている。スナイパーライフル系統でありながらショットガンの機能を持つ大型ライフルで敵を粉砕し、時に殴り倒しているのは『四聖獣ゲンブ』を手に持つゲンブだ。

 

 

『あれ全部……レイが操作しているのか?』

 

「うん?そうだけど」

 

『4体も同時に操作するなんて……』

 

『なんかお前、見るたびにおかしくなってるよな』

 

 

ライトグリーンの光が軍勢の中で輝くたびに爆発が起きる。

 

 

「す、すごい……敵総数9000。なんていう殲滅スピードだ……」

 

 

司令室でモニターしている1人は呟く。あの一瞬で多くの敵を倒したレイの手腕に驚いているようだ。

 

 

「あ、忘れてた。マスターコマンドの起動コードを入力、起動。おはようマスターコマンド、デクー部隊、アヌビス部隊、トロイのコントロールを任せるよ。インビット達は八神さんのところへ、その後はコントロール権を八神さんに譲渡」

 

 

レイは懐からマスターコマンドを取り出すと、ケースの中に詰められたLBX達が起動、マスターコマンドの指揮下に入った。

 

 

『それは、リニアの時の!!』

 

「うん?バン君は戦ったんだね。この子はマスターコマンド。LBXを接続すれば指揮をする司令機になるんだ。トロイのデスバレルを参考にしたガトリングガンも持たせてるから戦闘能力もピカイチ」

 

 

マスターコマンドに続くようにデクエースを小隊長においたデクー部隊、アヌビスを主軸にエジプトとアサシンを僚機にしたアヌビス部隊、単独戦力としてホワイトカラーのトロイを最後尾に着かせた。

 

 

「マスターコマンド、一機たりともここを通さないで。サーチ&デストロイで頼むよ」

 

 

レイの言葉にモノアイの発光で返事をしたマスターコマンド達はオーディーン達のいる階段に陣取った。

 

 

「キミ達も前線に出ていいよ。ここはマスターコマンド達に任せればいいし」

 

『ありがとうレイ!!行くぞ、オーディーン!!』

 

『待ってよバン……仕方ないわね。パンドラ!!』

 

『おい2人とも!?……はぁ、フェンリル!!』

 

 

オーディーン達はその性能を生かして前線へと駆け抜けていった。

 

 

「八神さん、今インビットを2機向かわせてる。急ごしらえの調節しかしてないからあんまり期待しないでね」

 

『十分だ!!お前達、絶対にここを通すな!!』

 

『『『ラジャー!!』』』

 

「行くよみんな、必殺ファンクション!!」

 

 

『アタックファンクション』

 

 

『ディメンション0』

 

『崩天撃』

 

『メガ電磁砲』

 

『アクエリアスレーザー』

 

 

 

次元を切り裂き、天を崩し、黄色や水色のエネルギーがイノベーターのLBXを打ち砕いてゆく。無双という言葉が1番似合うのは彼女の事だろう。

 

 

「負けてらんねぇぜ!!ハカイオー絶斗!!」

 

『アタックファンクション 超我王砲』

 

「やってやるぜ!!」

 

『アタックファンクション トリプルエネルギー弾』

 

『俺だって!!』

 

『アタックファンクション ライトニングランス』

 

『私も!!』

 

『アタックファンクション 蒼拳乱撃』

 

『行くぜフェンリル!!』

 

『アタックファンクション ホークアイドライブ』

 

 

レイの奮迅を見て気合を入れたバン達も続くようにファンクションを発動。目々に見えてイノベーターのLBXの数が減っていった。

 

 

「げほっ……全力戦闘は10分が限界か……」

 

 

突然レイが咳をした。服で咳を受け止めるが赤く染まっている。どうやら脳の酷使で血を吐いたらしい。

 

 

「うーん……セイリュウ達の性能が高すぎるねぇ。頭も痛いし、メタナスGXも熱を持ってきたかな?」

 

 

ディスプレイにセイリュウやマスターコマンド達のカメラ映像を映し、隣に自身のメディカルチェックも映している。情報処理能力が上がっているらしい。口元を服で拭うと、レイは操作に集中し始めた。

 

 

「(後で残骸を回収しなきゃ……25000体分のパーツをくれるなんて太っ腹♪)」

 

 

打算的な事を考えながらも一切手を緩めないレイは、出来るだけ損傷が少なくなるようにゲンブ以外では首を落とすように動いている。ゲンブの武装はショットガンなので機体を穴だらけにしてしまう。どうやら諦めたようだ。

 

そのまま戦い続ける事8分がたった。

 

 

「…………これ以上は無理だね。戻ってきて、みんな」

 

 

レイは己の限界を感じ四神を手下に呼び戻した。

 

 

「はぁ……はぁ……お疲れ様、みんな。初陣なのによく戦った。後でメンテするからね。接続解除……ふぅ」

 

 

四神をケースに収めると、まだ接続中のマスターコマンドに指示を出した。レイは疲労を表情に表しながらも次の行動に移る。

 

 

「トロイの指揮権をボクに、キミ達はまだよろしくね。トロイッ!!」

 

 

ディスプレイを表示させたままレイは右手にCCMを取り出しトロイと接続。再度起動させるともう一度戦場へと駆り出した。圧倒的威力のデスバレルは次々にLBXを穴だらけにしていく。そうしてほぼ全てのイノベーターが戦場から消えた頃……ヤツは姿を現した。

 

 

『戦車だって!?』

 

「……神谷の方か」

 

 

トンネルの奥からゆっくりと走行してくる大型の車体。各部に砲塔が積まれ臨戦態勢だということが窺えるそれはLBXとは比べ物にならないほど大きい戦車だ。

 

 

「大丈夫かレイ君?」

 

「ッ……ジン君、来てたんだ」

 

『ジン!!』

 

「ここは僕がやる」

 

 

突然現れたジンは懐からLBXを取り出した。サイバーランス社が究極のLBXとまで言うゼノンだ。

 

 

「完成したこのゼノンならいけるさ」

 

「……アッハハ!!キミだけじゃ不安だからボクもやるよジン君。キミだけにカッコつけさせはしないもんね」

 

『ジン……レイ……だったら俺も残る!!』

 

 

ゼノンとトロイの隣にオーディーンが着地した。

 

 

「アミちゃん、カズヤ君、郷田君は行ってて。階段にボクの子達が居るから気を付けてね。マスターコマンドから全機へ、そこを通る人間への攻撃を禁ずる」

 

「……分かった。しくじんじゃねえぞ!!」

 

 

郷田はそう言って、パンドラとフェンリルを掴むと社内へと走っていった。

 

 

『どうやって戦う?』

 

「動けなくさえすれば良い、レイ君。行くぞゼノン!!」

 

「……なるほどね、了解。トロイ!!」

 

『『アタックファンクション』』

 

 

ジンの意図に気付いたレイはCCMを操作してファンクションの指示を出した。ジンもそれに続く。

 

 

『ブレイクゲイザー』

 

『崩天撃』

 

 

ゼノンが手に持つハンマーのオベロンで地面を叩き割り青いエネルギーを迸らせる。レイはトロイに最初の動作を省略させ、戦車に向かって両腕を突き出す。チャージされたエネルギーが戦車へと伸びた。

 

爆煙に襲われた戦車はカメラによる認識が出来なくなりその動きを停止させた。

 

 

「今のうちだ、バン君、レイ君」

 

「うん」

 

『ああ!!』

 

 

トロイ達は停止した戦車へと飛び乗るが、視界がないのをいいことにむやみやたらにマシンガンや主砲を撃ちまくる戦車。その攻撃によってハッカー軍団のLBXが次々に撃破されていくがそんな事を気にしている余裕はない。

 

途中現れた砲台をトロイのデスバレルによる射撃で難なく突破した3機は、核があると思わしき場所に飛び移った。

 

 

「ハッキングを行う。守りを任せる」

 

「アッハハ!!手伝わなくていいのかい?」

 

「問題ない」

 

『分かった!!』

 

 

ゼノンがその場に手をついて戦車にハッキングを仕掛ける。それを見過ごすわけがないイノベーターは、アヌビスやデクー改を迎撃に回してきた。

 

 

『行くぞレイ、ジンには指一本触れさせちゃダメだ!!』

 

「誰に言ってるのかなバン君。この程度…………スクラップにしてあげるよ」

 

 

オーディーンが敵へと接近戦を仕掛け、トロイがデスバレルによる射撃で後方支援を行い連携してゼノンを守り通す。

 

 

『ッ……レイ!!』

 

「分かってるさ」

 

 

トロイの背後をとったインビットがトロイを破壊しようと武器腕を振り上げた……が、それに気付いていたレイはトロイに射撃を中止させ右足で回し蹴り。空中に吹き飛ばした後左腕での射撃で風穴を開けた。

 

 

「よそ見しちゃダメだよバン君」

 

『ッ!!』

 

 

こちらを見ていて自分への注意が散漫になっていたバン。オーディーンの背後に迫っていたデクー改は間一髪のところでトロイの射撃によって爆散した。

 

 

「やってやる!!」

 

『アタックファンクション 超プラズマバースト』

 

 

オーディーンが武器であるリタリエイターを回転させると、雷が発生し球体を精製。それに向かって武器を突き刺すと、とんでもないスピードでデクー改達へと突撃。全ての敵機を破壊した。

 

 

「ひゅ〜。やるじゃんバン君」

 

「……完了した」

 

 

ジンの一言に振り返る2人。気がつけば戦車は停止していて、これ以上動き出す様子はない。戦車の全機能は停止し、LBX達の動きも止まった。これで任務完了だ。

 

 

「戻ってきてトロイ…………お疲れ様。後でメンテするからね」

 

 

掌にトロイを着地させたレイはトロイに声を掛けると丁寧にケースの中に戻した。

 

 

「マスターコマンド、全機撤収……並びに被害を報告して」

 

 

CCMを収めた事で空いた右手も使い、両手でディスプレイを操作するレイ。少しするとマスターコマンド指揮下の全LBXの機体情報がディスプレイに表示された。

 

 

「うっわ、デクー改は大破か〜。矢壁さんのとコアフレーム取り替えたのが不味かったかも。アヌビスは全体的にダメージが募ってるね。近接仕様にして突撃させたのが原因か」

 

 

軽く被害状況をメモしていると、ジンが寄ってきた。

 

 

「あ、ジン君お疲れ様」

 

「ああ、レイ君も。これからバン君にLBXを渡しに行くけど一緒に行くかい?」

 

「あー……そうだね。そうするよ」

 

 

ジンからの提案に快く返事をしたレイは、帰ってきたマスターコマンド達をケースに戻し両手にケースを持って立ち上がった。

 

 

「ッ……」

 

「レイ君!?…………メタナスGXによる負荷か」

 

 

急にふらついて倒れかけたレイはジンによって受け止められた。どうやらジンはレイの状況を知っているらしい。

 

 

「し、ってたんだね…」

 

「研究所のログを追った。灰原ユウヤや君がやらされていた実験の内容も全て把握している」

 

「あはは……随分と危ない橋を渡ったねぇ。それで、ボクが気持ち悪い?メタナスGXを頭に埋め込まれたボクが」

 

「そんなわけないだろう。それを行ったのは白の部隊で、君はむしろ被害者だ。それにLBXの実力は君の努力の結果、何も否定することはない」

 

「……そっか。もう大丈夫ジン君。ありがと」

 

「ああ」

 

 

ジンはレイを離すと、オーディーンを持ち上げた。レイも自分の体の調子を確かめるように足を踏み締めると階段を上っていった。

 

 

 

 

 

 

「レイ、ジン!!」

 

「バン君」

 

「やっほ〜」

 

 

エントランスで合流した3人は、アルテミスの時のような敵同士の関係ではないため気楽に集まった。

 

 

「君のLBXだ」

 

「ありがとうジン」

 

「バン君、強くなったじゃん。模型店の時とは大違い、ボクもウカウカしてられないね」

 

「もうレイに負けるつもりはないよ」

 

「アッハハ!!言うじゃん、今度バトルするのを楽しみにしとくよ」

 

 

まるで元々仲が良かったかのような会話。しかし、その雰囲気を壊すように外で怒号が響く。

 

 

「待ちなさい!!」

 

「「「ん?」」」

 

 

声の主を探すと、今レイ達がいるタイニーオービット社社長の宇崎悠介が外で何かを叫んでいた。

 

 

「悠介さん……?」

 

「何かあったのか?」

 

「えぇ……行くの?」

 

 

バンとジンは気になったのかそちらへと走り出す。レイは疲労のためか乗り気ではないようだが、ついて行かないのもアレだと思い2人の後を追った。

 

 

自動ドアを抜けて階段の上から下の様子を伺う3人。しかし、そこで衝撃の瞬間を目の当たりにする。

 

 

「自分が何をしているのか分かっているのか霧島さん!!」

 

「うるさい!!お、お前のせいで……私は……!!」

 

 

レイ達が地下でイノベーターの襲撃を防いでいるうちにタイニーオービット社で開発を進めていたエターナルサイクラーの試作品が収納されたケースを持っていた人物、強化段ボールを開発した霧島が悠介に拳銃を向けたのだ。

 

 

「……アサシン、起動コード入力……接続完了」

 

「レイ、何を!?」

 

「アレだけは、イノベーターに奪わせてはいけない。例え……誰かが犠牲になっても」

 

 

アサシンを直接起動させたレイは高台へとアサシンを向かわせた。その手には、以前財前宗介総理暗殺計画に持ち込まれた狙撃銃、エグゼキューショナーが握られている。

 

 

「レイ君……その行為が何を意味するか、分かっているのか?」

 

「分かってるよ。だから、ボクがやるんじゃないか。生憎この国の法律なんて知らないしボクの置かれた環境を鑑みたら情状酌量の余地だってある。ボク1人とエターナルサイクラー、どちらがこの戦争で大事なのかジン君は分かっているはずだよ」

 

「ッ……それは、しかし!!」

 

 

いつになく冷静に、そして覚悟を決めたかのようなレイの視線を受けたジンはたじろぐ。頭では理解しているがまだ中学一年生だ、人命に関わる事を損得で決めれるほど冷酷な思考はしていない。

 

 

「ダメだレイ!!」

 

「離してくれないかいバン君。操作が出来ない」

 

「LBXを人殺しの道具になんてさせない!!例えレイが相手でも……俺は止める!!」

 

 

レイの腕を掴んで、グローブによる操作を阻害するバン。彼にも確固たる意志があるようだ。

 

 

「……はぁ、キミは頑固だね。マスターコマンド起動。アサシンを指揮下において……エターナルサイクラーを持っている男を殺せ」

 

「ッ、レイ!!」

 

 

冷めた表情でバンを見たレイは自分では操作できないと感じたのか、マスターコマンドを起動させアサシンのコントロール権を譲渡。命令を下し霧島の殺害を命じた。

 

指令を受けたマスターコマンドはモノアイを発光させアサシンに命令を送る。受け取ったアサシンは高台へと跳躍し狙撃銃を構えた。しかし……

 

 

「な、何をする!!待て!!」

 

「霧島さん!?」

 

「青の部隊ッ!!マスターコマンド、標的変更……青いスーツの男を……早く!!」

 

 

拳銃を悠介に向けながら交代していた霧島の背後から青いスーツを着た男が現れ、霧島の持っていたエターナルサイクラーのケースを奪った。男はそのまま道路へ飛び出すと横断、霧島はそれを追うように道路へ飛び出し……トラックが霧島を轢く距離まで来ていた。

 

 

「(無人のトラック……!?)くっ……社長さんが邪魔だ……!!」

 

 

マスターコマンドを通してアサシンのカメラ映像をディスプレイで見ていたレイは、奥から男、霧島、悠介の3人が一直線に並んでいるのを確認し歯噛みした。このまま撃てば悠介ごと射抜くことになるからだ。

 

 

そして、運命の瞬間はやってくる。

 

 

「霧島さん!!」

 

「あぁ!?」

 

「「「ッ!!!!」」」

 

 

霧島が轢かれると、思った3人だが間一髪のところで悠介が霧島を突き飛ばし車線上から外した。しかし……

 

 

「…………!!(また、ボクのせいでッ!!)」

 

 

霧島を突き飛ばした悠介は代わりにトラックの車線上にいて……轢かれてしまった。倒れる悠介、衝撃で吹き飛ばされるメガネ、地面に落ちレンズが割れる……しかし、壊れてしまったのはメガネだけではない。

 

 

「うぁ……ああああああああああああああ!!!!!」

 

 

人が死んだ。

 

この事実が、バンの心をへし折り粉々にしてしまった。

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