サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪   作:ゼノアplus+

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逆に短め


エクリプスの一幕……二幕……そして

21話

 

 

 

「…………」

 

 

エクリプスの一室、レイの自室としてあてがわれた部屋で向かい合う男女。レイと八神だ。

 

 

「事情は聞いている。良くやってくれた」

 

「……うん、まあ役目は果たしたね」

 

「ああ、君が来てから戦局が大きく傾いた。宇崎悠介社長に関しては、残念だった……」

 

 

先日の一件、タイニーオービット社襲撃事件でレイは奮闘した。数々のLBXを操り25000機のLBXを倒したのだ。これによりタイニーオービット社は守られた。大きな傷痕を残して。

 

 

「誤算だったんだ。あそこに青の部隊がいるなんて……後3秒、後3秒有ればエターナルサイクラーは……」

 

「……アサシンは私が預かっている」

 

「ッ!!……まあ仕方ないか。殺人未遂だもんねぇ」

 

 

力なく笑うレイ。いつもの覇気はなく、サイコスキャニングモードでの全力戦闘の疲労がまだ残っているようだ。

 

 

「で、どうするの?警察に突き出す?」

 

「馬鹿な事を言うな。今の警察は海道の手中だ。それに……戸籍があるかも怪しい君を放り出すわけにはいかない」

 

「……あっそ」

 

「あれだけの軍勢を差し向けられて、犠牲者が1人で済んだのはまだマシだったかもしれない」

 

「……そうだねぇ。長い目で見れば、だけど」

 

「ああ、だが肝心のエターナルサイクラーはイノベーターに奪われてしまった」

 

「社長さんを轢いてどっかに行ったトラック、無人だった」

 

「……だろうな。わざわざ手がかりを残すほど奴らは甘くない」

 

 

自らの右手を見つめながらレイは呟く。八神も同意するように返事をし、ため息をついている。

 

 

「この際、殺人未遂の事は何も聞かない。財前総理の件に何も出来なかった事を棚に上げて言う事はできない」

 

「……そぅ」

 

 

放っておくと消えてしまいそうな声だ。

 

 

「別にボクはさ、人が死んだことはあんまり気にしてないんだ。ああいや、良いって言うわけじゃないよ」

 

「…………」

 

「やっぱさ、ボクの一瞬の気の迷いで対局があっちに傾いたって言うのがねぇ……あの時バン君を振り切って自分でアサシンを操作していれば、マスターコマンドを経由せず左手でCCMを取り出していれば、エターナルサイクラーだけは死守できた」

 

「…………」

 

「結局ボクは根っこからイノベーターなんだろうね。幼いころから少しずつ意識へ刷り込みがされてたって言えばそれまでだし自覚はあるけど、気づいたら損得を優先して……ねぇ八神さん。ボク間違ってる?」

 

「ああ」

 

「……即答、か」

 

 

今まで黙ってレイの話を聞いていた八神は、レイの問いかけにすぐ返事を返した。

 

 

「君はまだ子供だ。そう言う汚い事は私達大人に任せて……と言っても、納得は出来ないだろう。だが、賢い君なら理解はできるはずだ」

 

「まあ、ねぇ……」

 

「人殺しはいけない。たったこれだけの簡単な事だが、君の事を過大評価していたのかもしれないな私は。あの環境で育ってきて知るはずがなかったのに……誰よりも強く、山野バン達よりも大人びている君を私達と同列に見ていた。だからあえて強く言わせてもらう。君はまだ子供だ、人に頼る事を覚えろ!!」

 

 

それだけ言うと、八神は部屋を出て行った。レイは緊張が解けたのかベッドに寝転ぶ。

 

 

「……頼ってた人が急に居なくなって、その果てがあの実験生活だったじゃないか。ボクが自分でやる方が……早いし、確実だもん」

 

 

レイはそのまま目を瞑り、意識は闇へと消えた。レイ自身は気付いていないが、閉じた彼女の瞳から一筋の涙が溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、朝食を食べるために八神の元へ向かったレイ。2人の雰囲気はあまりよろしくなく、必要最低限の会話しか行わなかった。真野達3人はそんな2人をまるで父親と反抗期の子供のようだと揶揄し八神に一喝されていた。

 

自室へ戻ったレイは、パンを口に頬張りながらCCMグローブのディスプレイを表示していた。彼女の額には熱冷ましのシートが貼ってある。薬物は全く効かないレイだが、このように直接作用するものは効果があるらしい。真野が買ってきたものを見境なく試した結果だ。

 

 

「初起動だったけど、サイコスキャニングモードがしっかり機能してくれて良かった。武器の劣化が早いのが難点だけど」

 

 

四神の状態をチェックしそう呟くレイは、メモ帳にやる事を書き込んでいく。何千という敵を倒したのだから武器の劣化は当然だろう。

 

 

「ゲンブ以外はまあ良いんだよ、エネルギーの刃と弾だし。ゲンブがなぁ……はぁ」

 

 

四聖獣シリーズの武器はゲンブ以外はエネルギーを使う物。バッテリーさえ続けば刃こぼれや弾切れを心配する事はない。だがゲンブは実弾、しかもショットガンのように弾がばらけるため出費が激しいのだ。さらに四聖獣ゲンブは公に出回っていない武器。その銃弾の規格は既製品とは一致しなかった。

 

 

「なんでマガジンも盗まなかったかなぁあの時のボク」

 

 

後悔のベクトルが明らかにおかしいがレイは至って真剣。このままではゲンブのみ違う武器を使うことになり、その重装甲高火力を生かした四聖獣ゲンブによる突貫が出来ない。瞬間最大火力だけで言えばハンマー武器を凌ぐ四聖獣ゲンブを外すのは惜しいのだ。

 

 

「ま、良いや。最悪武器の規格を変更すれば良いし」

 

 

口ではこう言っているが、なかなかに難しい作業のため時間がかかる。コーヒーを飲みながら呟くレイ。以前檜山の店、ブルーキャッツでコーヒーを飲んだ時からハマっているのだ。

 

 

コンコン

 

「嬢ちゃん、ちょっといいかい?」

 

「姐さん?どうぞ〜」

 

 

 

扉越しの真野の声が聞こえ入室を許可。入ってきた真野は、女っけがない部屋だねぇと呆れながらベッドに座った。

 

 

「今からタイニーオービット社に行くよ。準備しな」

 

「またなんかあったの?」

 

「いいや、今日から正式にシーカーに加入するからその顔合わせさ。嬢ちゃんも来るだろう?」

 

「えぇ……それ、もうボクも入る事になってんの?どこかの組織に入るのはヤなんだけど」

 

「気持ちは分からなくはないけどね……今アンタを後ろ盾がない状態にすることの方が良くないんだよ。LBXの操作技術、開発技術、頭の中のメタナスGX、イノベーターの人体実験被害者、これだけでも良く厳重に隔離されなかったというに……極め付けは」

 

「海道義光によって隠蔽されたトキオブリッジ崩壊事故の真相を知る当事者……だね」

 

 

真野の発言に被せるようにレイが言った。約10年前に起こった、海道義光が主体となって行った鉄橋の建設中の事故だ。この事故によって海道ジン、灰原ユウヤ、レイは両親を失い、八神英二に至っては妻と幼い娘を亡くしている。

 

 

「別に、こんな小娘の戯言を信じる人なんか居ないでしょ」

 

「いいやあり得るんだよ。今の総理大臣の財前宗介ならねぇ」

 

「……ああ、暗殺に失敗した人」

 

「その通り。ニュースで彼の性格を知る機会があるけど、多分アンタの病院のレントゲンを撮ったら一発さ。徹底的に調べ上げ解決を図るだろうね。良くも悪くもこの国のために必死な人だよ」

 

「へぇ……この国って恵まれてるんだね」

 

 

ケラケラ笑いながらレイは真野の話を聞いている。

 

 

「そしてそこが問題でもある。総理に告げ口なんてされてはイノベーターのボスの首が危ないからねぇ……奴らは必死こいて止めるだろうさ。だからアンタだけは守り抜かなくちゃいけないんだよ」

 

「なるほど、それじゃあしょうがないか〜。全部終わったら、アイツらがキレイさっぱり消されるのを見れるんだね♪」

 

「う、うーん?まあ、そういう事にしておこうじゃないかい。ほら、さっさと着替えた。間が良かったら回収し忘れたLBXの残骸貰えるかもしれないよ」

 

 

真野の最後の言葉でレイが急に立ち上がり、からになったコーヒーカップを机に叩きつけた。

 

 

「ッ!!!!そうだった、姐さん何ボサっとしてるの。早く行くよ!!」

 

「アンタを待ってんでしょうが!!」

 

「準備出来たッ!!」

 

「こういうときだけ行動が早いね嬢ちゃん!?生意気なガキだよ全く!!」

 

 

神速のような速さで着替えたレイはいつの間にか腰にLBX2体分のケースを下げ、ウェストポーチを肩にかけている。極め付けは何も入っていないアタッシュケースを両手に持って目を輝かせている。

 

真野も呆れながら怒鳴り、しかしどこか楽しそうに笑いながらレイの手のアタッシュケースを引ったくって歩いて行った。

 

 

「あっ、飲み終わったコップは台所に置いてから来な!!」

 

「はーい!!」

 

 

ステルス司令機エクリプスという特異な住居だが、彼女達の雰囲気は普通の家庭となんら変わっていないように見えた。

 

 

 

次回予告

 

 

 

 

「は、謀ったね姐さん!!姐さんだけは信じてたのに!!」

 

「……もう諦めな嬢ちゃん。ここでお縄につくんだよ」

 

「元テロ組織所属の癖にお縄とかどのツラ下げて言ってるんだ!!」

 

「アンタそれブーメランだからね!?……ふん。お前たち、やっておしまい!!」

 

???「「はーい♪」」

 

「ぼ、ボクにちかづくなぁぁぁぁぁ!?!?」

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