サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪ 作:ゼノアplus+
最後までガンバリマス……
22話
「…………姐さん?少しくらい、説明してくれてもいいんじゃない?」
「なんのことか分からないねぇ嬢ちゃん。あたしは物事を客観的に判断してるだけさね」
恨めしそうな視線を真野に送るレイ。理由は単純、彼女は今両腕を拘束されいるからだ。
「レイ、そろそろ諦めたら」
「……頑固」
「嫌なものは嫌だよアミちゃん、えっと……?」
「三影ミカ、よろしく」
「あ、うん。よろしくね……じゃなくて!!」
ここはタイニーオービット社地下の新シーカー本部。イノベーターの策略に巻き込まれて亡くなった宇崎悠介の後をついで社長となった宇崎拓也をはじめとした、バン以外のメンバーが揃っている。さらには八神、真野、細井、矢壁、レイもいる。
そして、今まさにレイの右腕に抱きついているのはアミ、左腕には紫に塗装されたアマゾネスを使う三影ミカがしっかりと抑えている。本部内にいる他の職員やメンバーは苦笑いでその現場を眺めており、八神に至っては片手で頭を抑えている。
「悪いけど、嬢ちゃんを頼めるかい?女としての常識って奴を叩きこんで欲しいのさ。嬢ちゃんも年の近い子の方が接しやすいだろうし」
「丁度レイに仕返ししたいと思ってたのよねー」
「……仲良くなりたい」
「ひぃ!?……なんでさ姐さん!!別に服なんて今あるやつでいいじゃん!!ボクは今すぐにでも地下のLBX達の回収に……あ、矢壁さん助けてよ。デクー改の修理してあげないよ?」
「え!?それは困るっす!!」
「籠絡されてんじゃないよ、おだまり!!ほらさっさと行った!!」
「さあレイ、諦めてトキオシアデパートに行きましょう?」
「美人だから、なんでも似合う……楽しみ♪」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!いやだぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そうして悲しくもアミとミカによってドナドナされてしまったレイ。最低限、自己紹介と挨拶だけはしてあるので子供達の出番はここまで。その場にいた郷田や三人衆、ブルド好きで周りに知られているリュウなども共に出て行っていて、この場にいるのは大人だけだ。
「一つ聞かせてもらう」
「……なんでも言ってくれ。私が知っていることなら全て話す」
白いスーツを身に纏った拓也は、鋭い目線を八神に突き付けながら喋る。八神はそんな拓也をしっかりと見据えている。
「彼女……レイはなぜイノベーターにいた?明らかに自ら望んでいた様子ではない。そしてあのLBXの操縦技術に関してもだ」
「「「「…………」」」」
拓也が言った瞬間、八神達顔が険しくなる。雰囲気は暗い。
「分かった、全て話す。だが他言無用、そして何より先に理解してもらいたいのは……レイは全ての出来事においてイノベーターの被害者であることだというのを念頭に置いてもらいたい」
「ああ」
八神達に視線が集中した。この場にいる誰もが、八神達の雰囲気や声音でただ事ではないと感じたようだ。
「10年近く前に起こったトキオブリッジ崩壊事故のことは知っているか?」
「……ああ、確か海道義光が推し進めていた計画だな。確か、途中で建物全てが崩壊すると言った事故があって計画は中止されたはずだ」
「私やレイ、アルテミスに出場していた灰原ユウヤ、海道ジンはこの事故の被害者だ」
「「「「「「ッ!?」」」」」」
本部内に衝撃が走る。どうやらそこまでは知らなかったようだ。
「私は妻と子を失い、幼かった彼等は両親を失った。入院生活をしていた3人のうちレイと灰原ユウヤは神谷重工へ、海道ジンは海道義光の養子として引き取られた」
「その差はなんだ?」
「……あの頃の海道義光は、いや海道先生は人を思いやる心を持っていた。両親を失った5歳の少年を取り囲むメディアを一喝し病院へと連れて行ったそうだ。私も、世界のためにと活動を続けたあの人に憧れを、そして救ってもらった恩を返すために働いていたのだが……何故だろうな。あの人は変わってしまった。いや、レイと灰原ユウヤを神谷に送ったという事実が有る時点で、その頃から全てが計算通りだったのかもしれない」
「八神さん……」
独白するかのように八神は寂しく笑った。質問から外れているのは八神自身承知の上だが、どうしても聞いて欲しかった。拓也達は黙って聞いている。
「……すまない、話を戻す。君達も見た通り、レイと灰原ユウヤが身につけていたCCMスーツや、彼等のLBXが発光していたのは記憶に新しいだろう。あれらは全て最強の兵士を作るという発想の元に行われた非道な人体実験によるものだ」
「「「「「ッ!?」」」」」」
「なんだとッ!?……イノベーター……!!一体どこまで!!」
「灰原ユウヤは実験の負荷に耐えるために過剰ともいえる薬剤の投与によって命令を聞く以外できない人形に成り果て、薬剤が全く効かない体質だったレイは頭の中にチップ……LBXのCPUのようなものが埋め込まれている」
衝撃的すぎる話に空気は死んでいる。誰もが悲痛の表情を浮かべ八神の話を聞いていた。
「CCMスーツとは、脳から出て身体中に命令を送る電気信号の一部を直接LBXに送り込むことで自分のイメージ通りにLBXを動かす……従来の操作によるラグが無くなりより精密な操作ができる代物らしい。今はグローブだけになっているが、彼女の頭にあるチップと連動させる事でより正確でラグが少なくなる」
「らしい?」
「研究は白の部隊が行っていたから詳しくは知らない。部下の1人がレイの監視を命じられていたので少し知っているだけだ。
そして、薬物で精神を破壊することを無理だと悟ったのだろう、奴らはレイを懐柔する方へと向かった。あの環境で唯一幼い子供が興味を持てる物、並びに今イノベーターが戦力として期待を高めていた物を与えた。その結果が、あの強さだ」
「ッ!!LBX……」
「彼女にとってLBXとは全てであり、薬物で軽減できなかった実験の苦しみを癒す唯一の物。ある意味……LBXに囚われていると言ってもいいのかもしれないな」
「だからレイをアミ達に連れて行かせたのか?」
「イノベーターさえ潰してしまえば彼女は自由だ。もうLBXに縋る必要も、痛みも何もない……ただの少女だ!!これからは、ただの一般人として生きねばならない」
八神は拓也に向けて力強く宣言した。拓也は壮絶な話に眉を潜めていたが、八神の言葉を聞いて不本意そうな顔をしながらも表情を崩した。
「まあ……会社を救ってくれた恩もある。歓迎しよう、八神英二」
「ッ……感謝する」
2人は握手を交わして、笑い合った。
◆
ところ変わってここはトキオシアデパート。全てを諦めたような目のレイに、その左右をガッチリと固めるアミとミカ、そしてそれを面白そうにみているリュウや苦笑いしている郷田と四天王3人。
「あたし達だけ紹介雑じゃない!?」
「何言ってんだリコ?」
「な、なんでもないっすリーダー」
アミとミカは間のレイを完全に無視しながらどの店を見ようか話し合っている。
「あのさ……もう来ちゃったし抵抗しないから離してくれない?注目されて嫌なんだけど」
「あら、ごめんねレイ」
「……逃げない?」
「逃げないよ」
レイの言葉で2人が手を離せば、溜息をついた。どうやら本当に嫌がっているらしい。
「で、なんでボクはこんなところに連れてこられてるのさ。本当だったら今頃ボクはLBXのパーツの物色をしてるはずなんだけど」
「真野さんにレイのコーディネートを頼むって言われたのよ。いつになく真剣な感じだったから断りづらくてね」
「お小遣いももらった」
「中学生買収してんじゃないよ姐さん……」
呆れた様な表情で呟くレイ。心なしか少し疲れている様にも見える。
「まあボクは今からキミ達に着せ替え人形にされるのは分かってるんだけど、ハンゾウくん達は何すんの?」
「あぁ?あー……そういや考えてなかったな。よしテメェら、今から自由行動だ!1時間後にここで集合でいいか?」
「私はそれでいいわよ。ね、ミカ」
「郷田さんが言うならそれでいい」
「俺、ブルド用のパーツ欲しかったんだよな!」
「俺もマッドドックの調整しねぇと……」
「おいどんは丁度無くなったお菓子を買いに行くでごわす」
「あたいは……リーダーについt「リコは当然ついて来るわよね?」……え?」
それぞれが自分の希望を言う中、リコだけはアミに腕を掴まれていた。
「女子会……やってみたかった」
「いや、あたいは」
「諦めなよ……リコちゃんだっけ?こうなったアミちゃんやミカちゃん、もうダメそう」
「……アンタも大変だね」
達観した目で虚空を眺めているレイに少し同情したらしい。
そして解散した皆は各々の目的地へと向かった。
「先に言っておくけど、スカートは絶対履かないからね。これくらいは選ばせてよ、ボクの服なんだから」
「え〜、絶対似合うのに……」
「気持ちは分かる」
不平があるらしいアミの隣でミカがレイの意見に同意している。彼女はスカートと短パンが一緒になった様な物を履いているからだ。
「リコちゃんは……それ汚れないの?」
スッとレイが視線を下げると、明らかに丈があってない服が引き摺られているのが目に入った。
「……気にしたら負けだよレイ」
(何に負けるんだろう……?)
4人はおしゃべりをしながら服屋へと向かった。
結論だけ言えばシーカー本部に戻った時、疲れ果て死んだ魚の様な目をしたレイを見た真野がやり過ぎたか、と少し反省するほどだったそうだ。
〜シーカー本部にて〜
「えっと、結城さんだっけ?少し良いかな」
「レイちゃんだね、どうかしたのかい?」
「余裕がある時で良いんだけど、作って欲しい子が居るんだ。これなんだけど……」
「どれどれ……これは!?」
「師匠……山野博士が作った子さ。この子本体はダメだけど、技術の流用は良いって」
「ぜひ……ぜひウチで作らせてくれ!!アキレスやハンター、オーディーンといい、山野博士が作るLBXは凄いなぁ!!」
「あっはは。うん、ボクもそう思う。じゃあよろしくお願いします」
「任されたよ。完璧に仕上げて見せる!!」
「ちなみにボク、デクーエースとデクー改の設計とインビットのテストプレイヤーと調整もしてたんだ。開発面で手伝える事があったら言って……いや、ごめんなさい。今日は……疲れたから……」
「ああうん……ゆっくり休んでね」
「あはは……はは……はぁ……。それじゃあ、おやすみなさい……」
(まだ18時なんだけど……)