サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪   作:ゼノアplus+

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人、その在り方

23話

 

 

「うん、やっぱり美味しい」

 

「そう言ってもらえて、何よりだ」

 

 

TO社元社長、宇崎悠介が命を落としてから6日が経った。ミソラタウンの喫茶店ブルーキャッツにてコーヒーを楽しんでいるレイと、カウンター越しにコップを拭いているのはこの店のマスターである檜山蓮、通称レックス。

 

シーカーに帰還していた檜山とレイが偶々鉢合わせ、レイがコーヒーが飲みたいと言ったため2人は店へと来ていたのだ。

 

 

「一つ、聞いても良いかい?」

 

「なんだ?」

 

「アルテミスの時、ジン君相手に手を抜いたでしょ。明らかに挙動がおかしかったよ」

 

「何のことか、分からないな」

 

「……そう」

 

 

コップに口をつけて間を開けるレイ。誤魔化しているのがレイは理解したが深くは聞かない様だ。

 

 

「檜山さん、ボクは貴方が何をしてるのか知らないし興味もない。勝手にやっていれば良いさ。でも、ボクの邪魔だけはしないでおくれよ?」

 

「……何が目的だ?」

 

「加納って知ってるかい?」

 

「白の部隊のリーダーだったな。お前や灰原ユウヤを弄くり回してたはずだが」

 

「流石だね」

 

 

さらにコーヒーを飲んだ。

 

 

「復讐するつもりか?」

 

「悪いことかな」

 

「……さぁな。俺にも分からん」

 

「檜山さんだって、そんな顔してるよ?」

 

「ッ……」

 

 

図星だったのか、手を止めてレイを見る檜山。レイは相変わらずコーヒーを口にしている。

 

 

「皆、何かしら抱えて生きるものなんじゃない?ボクだって、檜山さんだって、多分だけど今回の一件で宇崎さんも」

 

「そうだろうな」

 

 

少し俯きながら言うレイに檜山も同意し再び手を動かし始めた。

 

 

「LBXバトル、しない?」

 

「ほう?」

 

「檜山さん、これから何かするんでしょ。最後くらい、楽しいバトルをしよう」

 

「…………分かった」

 

「ご馳走様でした。本当に美味しかった」

 

 

飲み終えたレイはコップを置き立ち上がった。

 

2人は地下にあるアングラビシダス会場へと行き、ステージ中央の城砦ステージに向かい合った。

 

 

「行くよ、セイリュウッ!!」

 

「Gレックス」

 

 

2体の龍を冠するLBXがステージへと降り立った。

 

 

「行くよ!!」

 

「ああ」

 

 

片手剣『四聖獣セイリュウ』を構えてGレックスへと突撃するセイリュウは、目の前まで行くと小手調べと言わんばかりに上段から剣を振り下ろした。

 

Gレックスは左腕の『バーンナックル』で受け止め長い尾をしならせ反撃に出た。

 

 

「流石のパワー、アルテミスで見た時からバトルしたかったんだ」

 

「お前の機体も、なかなかのスピードとパワーだな」

 

「神谷はLBXのセンスは良いみたいだからね」

 

「ふっ……なるほどな」

 

 

Gレックスとセイリュウが打ち合うたび衝撃波が走っている。少しずつ削れていく城の壁は泣いていいだろう。

 

 

「ほう……そう来るか」

 

「そこッ!!……これを躱すの!?」

 

 

2人のCCM操作スピードが上がっていく。それに呼応する様にGレックスとセイリュウの動きもより軽やかなものに。

 

Gレックスが尾で薙げば、セイリュウはジャンプして尾を踏みつける。固定されてしまったGレックスに向かって袈裟斬りを仕掛ければ、Gレックスはアッパーで攻撃し互いにダメージを与え合う。

 

 

「すごい……これが伝説のLBXプレイヤーの実力。ボクがこんなに被弾するなんて!!」

 

「光栄だな。レイ、使()()()()()()?」

 

「ッ!!使って良いの?」

 

「ああ、全力で来い」

 

「アッハハ!!壊しちゃったらごめんね。サイコスキャニングモードッ!!」

 

 

『サイコスキャニングモード』

 

 

檜山の言葉に嬉しそうな声音で確認したレイは、CCMを端末からグローブに変えサイコスキャニングモードを使った。セイリュウから迸るライトグリーンのオーラがその発動を示している。

 

 

「檜山さん、楽しいねぇ!!」

 

「ッ、あぁ。最後にこういうのも、悪くないな……!!」

 

 

いつのまにか檜山の口元も笑っている。この瞬間、2人は心の底からバトルを楽しんでいるのだ。

 

さらに加速する攻防。撃ち合いが3分ほど続いた後、最後の一撃が放たれようとしていた。

 

 

「これで決めるッ!!必殺ファンクションッ!!」

 

「叩き潰せGレックス、必殺ファンクション!!」

 

 

 

『アタックファンクション ディメンション0』

 

『アタックファンクションメテオストライク』

 

 

 

光がステージを包み込み、爆ぜた。

 

 

 

 

「いやぁー楽しかったぁ!!ありがとうね檜山さん。こんなに楽しかったの初めてだよ!!」

 

「楽しめたなら何よりだ。……もう夕方か、シーカー本部に戻るぞ」

 

「はーい」

 

 

バトルを終えた2人は、帰りの支度をしていた。

 

 

「そういえばレイ、この戦いが終わった後はどうするんだ?」

 

「ん?……あー、考えて無かった。でもまあエクリプスで適当に過ごすんじゃない?」

 

「無理だろうな。良くも悪くも、エクリプスはステルス機能のある飛行機だ。恐らく政府が管理することになるだろう」

 

「え!?……もしかしてボク、ホームレスってやつ?アッハハ……わ、笑えないんだけど……」

 

 

苦笑いで檜山を見るレイだが、檜山は視線を無視している。

 

 

「これをやろう」

 

「おわっ……鍵?」

 

「この店の鍵だ、ここに住むと良い。どうせ俺は戻らんからな」

 

 

檜山はレイに鍵を投げると、レイは慌ててそれをキャッチ。訝しげに鍵を眺めている。

 

 

「戻らないって……まさか死ぬ気?」

 

「いいや、死ぬつもりは毛頭ない。ただ俺の計画が完了すれば、俺は晴れて世紀の大犯罪者として祭り上げられるだろうからな。気軽にここには戻って来れん。それに、これからの未来を作るのは俺みたいなおっさんではなく、お前の様な子供達だからな」

 

「……そっか。うん、じゃあ貰っておくよ。いつのまにかボクが『2代目レックス』とか呼ばれ始めても文句言わないでおくれよ?」

 

「ふっ、それはそれで面白そうだ」

 

 

店から出て、レイが鍵をかけた。

 

 

「この戦いが終わったら、かぁ……」

 

「どうした?」

 

「いやさ、こう……想像できなくてね。今を何とか生きてきたボクが、これからのことを考えるなんて想像できなくて」

 

「人は未来を見据えて生きる事ができる生き物だ」

 

「……どういう事?」

 

 

立ち止まった檜山は、空を見上げながら語り始めた。

 

 

「人は獣にあらず、人は神にあらず」

 

「ッ……」

 

 

檜山の雰囲気が変わる。

 

 

「人が人であるためにはどうすればいいか、レイは何が正解だと思う?」

 

「…………」

 

「難しいか?」

 

 

黙りこくって考えるレイ。目を瞑り、相当集中している様だ。何分たっただろうか、いや本当は数十秒しか経っていない。

 

そしてレイは目を開けて檜山を見て言った。

 

 

「全部ひっくるめて、人って言えるんじゃない?」

 

「ッ!!」

 

 

レイの回答に檜山は目を見開いた。

 

 

「どこまでも好戦的でガツガツ攻めるけど、人情深く友を大切にする人は獣?」

 

「……違う」

 

「どこまでも理性的に戦況を見つめて動く事ができるけど、敢えて人を見下す様な態度を取る人は神?」

 

「違うな」

 

「一つの事にどこまでも夢中……いや、それしか無くそのためならなんだってする、人殺しだって厭わないし、その事をする他の存在は全て格下だと思っている様な人は獣、神……いや、人かな?」

 

「人だ」

 

「そう、人だと思う。結局の所……どんな人でも、人なんだ。考え方も行動も、全部人が考えてするから人なんだ。それに、人が人であるために、って言う考え方……神様みたいな事言ってる。檜山さんだって人じゃないか」

 

「ッ!?それは……」

 

 

狼狽えて、少し下がる檜山にレイは続ける。

 

 

「さっきのボク達は獣でもあったし、神様みたいでもあったじゃん?戦いを楽しむ本能の様なもの、LBXという玩具を上から操って戦わせる神の様なもの。獣みたいな自分、神みたいな自分、それらをうまくコントロールしている人こそ、自信を持って人って言えるんじゃないかな」

 

 

黙ってレイの話を聞く檜山、その瞳は揺れている。

 

 

「でも、そんな事をいつも人が考えているわけじゃない……そう考えれる檜山さんは凄い人だね。なるなら檜山さんみたいな大人になりたい」

 

「……こんなおっさんになりたいのか?変な奴だ」

 

「あいたっ!?……アッハハ!!ダンディ?でかっこいいと思うよ」

 

 

檜山は茶化す様なレイの言葉に少し微笑みながらレイの額を小突き、TO社へと再び歩き始めた。

 

 

「あ、着いた。檜山さん今日はありがとう、楽しかったよ」

 

「俺も年甲斐も無くはしゃいだな……次会う時、敵同士じゃなければいいな」

 

「アッハハ!!勘弁して欲しいけど、そうなったらまたバトルしようか」

 

「ああ、じゃあな。頑張れよ」

 

 

すっかり暗くなった頃、TO社へと到着した軽く2人は挨拶を交わし、別れた。

 

 

(獣と神を併せ持つことも人の形、か……俺は……)




〜シーカー本部〜


レイが本部へのエレベーターに乗った後ドアを開けて中に入ると、正座させられているアミ、カズ、郷田、仙道の姿と、隣で立っているバンとジンの姿があった。


「あれ、何してんのキミ達?面白いから写真撮っていい?」

「ああ!?やめてくれレイ……」

「なっ、お前は!!おい、もう一度おれとたたk「「仙道」」……チッ」


仙道がレイの事を見て突っかかろうとするが、八神と拓也がそれを止めた。


「やあバン君、調子が戻ったみたいで何よりだよ」

「レイ……レイがまたLBXを使って悪いことをするなら、俺が止めるから!!」

「へぇ、良い覚悟じゃん。うん、分かった」


そしてレイは大人達からカズ達が何をしていたのか話を聞き、あきれ返った。子供だけで神谷重工本社工場へと乗り込み返り討ちにされたらしい。それをバンとジンに助けられたそうだ。


「……バカの極みだね。拓也さん、ちゃんと手綱握ってないとダメだよ?」

「うっ……すまない」

「はい、じゃあ説教終わり!!よし皆、CCM出して」

「なんでだ?」


レイは言う事を言い終わると、ニコニコしながら手を出した。


「ルシファーの映像見せて♪」

「「「「「「お前もLBXバカじゃねえか(じゃないの)!?」」」」」」
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