サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪ 作:ゼノアplus+
29話
カシュー……と機械音がなり、レイのコントロールポッドが開く。レイが当たりを見渡せば、他のポッドは一つも空いておらず皆がバン達の戦いを見守っているらしい。
「レイ、大丈夫か!!」
「うん、全くもー。良いところで邪魔してくれちゃってさー」
「そんなこと言っている場合ではないだろう。何かプログラムをされてないかお前のポッドを検査する……どこに行く気だ?」
駆け寄ってきた八神に軽口を返しながら、扉に向かって歩くレイ。その顔は先ほどと違っていつになく真剣だ。
「四聖獣とイプシロンの調整」
「ッ……どうやって真崎のところまで行く」
「さぁね。でも、真崎さんは『また後で』って言ったんだ。どうにかするんでしょ」
「ブラフかもしれんが……こういう場でふざけるような男ではないな。分かった、こちらも準備を整えておくとしよう」
八神の言葉を聞き終わると、レイは司令室から出て行った。
◆
20分ほどが過ぎ、自室でLBXの調整を終えたレイはコーヒーを飲んでモニターを眺めていた。
「神谷コウスケ……趣味合うかも」
オーディーンとゼノンの視界が映っているモニター、八神に頼んで部屋に映像を回してもらっている。視界の先には、半壊したルシファーの姿があった。
「あの謎ウイングパーツと角で堕天使っぽさ出てるし見た目だけじゃない性能にプレイヤーの腕もなかなか。しかも器用に半分だけ壊れて天使と悪魔の両方を兼ね備えた見た目になったのがまた良いアクセント……非対称のデザインもアリだね」
独り言だが早口でルシファーの評価をしているレイはとても笑顔で、目が輝いている。
「でもまぁ……特殊モードを発動した2人には……あ、まあそうなるよね」
バンとジンのコンビネーションは神谷コウスケを圧倒。いくら恐ろしい姿になったとはいえ、コアスケルトンが剥き出しになったルシファーの防御力は皆無に近い。それほど時間もかかることなく、ルシファーは爆発四散した。
そしてオーディーンとゼノンがサターンの防衛システムにプログラムの注入を行った。しかし、
「んん?……アッハハ!!僕の出番、来ちゃった♪」
程なくサターンの攻撃も収まり第二次降下が始まると思いきや、急に映像が途切れた。コントロールポッドを使ったLBX操作の要であるスパークブロード通信を遮断されたのだ。
「なるほどなるほど。こうやって会わせるんだ真崎さん。発想力、それを可能にする技術力……すごいね真崎さん。なんで隠してたのさ……だったら防衛用のトロイだってもう少し強く出来ただろうに、なんで突破されちゃうかな」
そう、トロイでの戦闘中に郷田から言われたが、サターンの内部では量産型トロイが防衛に当てられていた。レイの助言と各々の観察でトロイを突破した全員であったが、真崎ならばと思うレイであった。
『レイ、状況は見ていたな?ブリーフィングを行う。司令室に来てくれ』
「了解」
調整したイプシロンを腰のポーチに収めたレイは施錠の後、浮き足立ちながらも司令室へ向かった。
「これより、サターンに直接乗り込んで艦内を制圧する。イノベーター達も激しく抵抗してくるだろう。よって、バン達はこの場で待機」
「「「「「「ッ!?」」」」」」
「待ってください。世界の危機なんです!!このまま黙って見ているわけにはいきません!!俺もいきます!!」
バンの言葉にジン達も同意した。しかし……
「もちろんボクも参加するよ八神さん。こうする以外選択肢がなかったって事は……そう言う事だよね?」
「……真崎の掌の上で踊らされていると言うことか」
トロイを取り返しにこいと言った真崎。先程まではどうやって?と考えていた八神だが、こうなると真意を理解したらしい。『乗り込む』という選択肢を取ったのは八神でも拓也でもエクリプス職員でもなく、敵である真崎なのだ。
「……わかった」
少し悩んで八神は子供達の意見を認めた。程なくしてエクリプスからサターンへ『ハープーン』という補助連絡通路が射出され、サターンへの通路が開けた。
「八神さん、師匠、これ渡しておくね」
「アタッシュケース?」
「これは?」
サターンへの突入前にレイは八神と山野博士へ少し大きめのアタッシュケースを手渡した。
「八神さんのはマスターコマンドとセイリュウ、スザク、師匠のは同じくマスターコマンドとビャッコ、ゲンブ。マスターコマンドは両方ともボクと繋いであるから、道すがら何かあった時の戦闘管制は任せて」
「ありがたい。すまないなレイ」
「ありがとうレイ君。使わせてもらうよ」
「ボクにはイプシロンがあるからね」
キュッ、とCCMグローブを締め直しウインクしながら答えたレイは一転して真面目な表情に戻るとバン達に続いてハープーンへと足を踏み入れた。
◆
「必殺ファンクション!!」
『アタックファンクション ディメンション0』
『アタックファンクション メガ電磁砲』
『アタックファンクション 崩天撃』
『アタックファンクション アクエリアスレーザー』
レイが見る画面の向こうで起こる爆発。バン達がレイの声に一瞬振り向くがすぐに前を向いて走り続けた。
(思ってたより数が多い!!真崎さんに会う前にボクが力尽きるかも?……マスターコマンドに完全に制御を任せた方が良さそうだね)
「もしもし八神さん、師匠!!悪いけどマスターコマンドに全部任せるよ!!ボクが先に潰れそう……」
『了解した。あとは任せてくれ』
『レイ君、私のCCMにマスターコマンドの制御コードを送ってくれ!!こちらでなんとかする!!ジ・エンプレス……出撃』
「え、ちょっと師匠何そのLBX……ってああ!?くぅ……!!後で絶対解析してやる!!」
「お前もっと緊張感持てよ!?」
思わず郷田がレイに突っ込むがレイは山野博士が起動したLBXを見ることが叶わず悔しがるばかりだ。
「カズ、私達はこっちよ!!」
「俺達はこっちだ!!お前ら、やられんじゃねえぞ!!」
アミ、カズヤ、郷田、仙道が自分のLBXを回収しに別の道へ向かった。
「バン君、レイ君、先を急ごう」
「ああ!!」
「ジ・エンプレスって何さぁぁぁぁ!!」
『アタックファンクション クリムゾンスラッシュ』
レイは叫びながら、ロックがかけられているであろう通路の扉を必殺ファンクションの炎で切り裂いた。
オーディーンとゼノンが停止してあるところにたどり着いた3人、バン、ジンはLBXの回収に向かいレイは気絶している神谷コウスケの容体を確かめている。
「………息はあるし大丈夫でしょ」
そう言った知識は微塵もないレイは生きていることだけ確認すると2人の元へ戻った。
「回収出来たみたいだね。それじゃあ先に進もう」
「ああ」
「神谷コウスケはどうするんだ?」
「帰りに連れて帰ったら良いよ、どうせLBXもないから抵抗できないしさ。てか全部終わった後だしそもそも海道義光が死んでんだから使命も何もないし抵抗しないでしょ」
無慈悲である。バンは少し罪悪感を感じながらも状況が状況なので仕方ないとレイに同調した。
「ていうかさ、ここの奴ら銃持ってるくせにLBX使うのなんでなんだろうね?」
「僕達に抵抗できない様にしてから制圧するつもりなのだろう……あるいは……」
「意図的にLBXを使わせてる、か……」
「どういうことだよ2人とも」
レイとジンが意見を交わし合っているところに、よく分かっていないバンが口を挟んだ。
「檜山さんと真崎さんが敢えてイノベーターにLBXを使わせてる可能性がある、って事だよ。全く……これじゃ本気で計画を遂行する気があるのか分か
らないね。いや、ボクらからしたら都合がいいんだけどさ」
「レックスが……」
「……」
ジンが何やら無言で考えているのを横目に見ながらもレイはバンに解説を続けている。
(あるいは、ボク達に計画を失敗させて欲しい……分かるよジン君。あり得ないことを可能性の一つに数えるのは勇気が要るよねぇ……)
「まあ何はともあれ、そういったことは直接聞けばいいんだよ。アッハハ!!2人とも悩みすぎさ」
気を遣ったレイの明るい声音に思考を中断した2人。レイの気遣いが伝わったのか2人とも苦笑しながら先へと進んでいった。
そしてスパークブロード通信を妨害している装置の元へたどり着いた3人。ジンはすぐに解除を試みる。
「レイ君。君も手伝ってくれ」
「え、嫌だけど」
「何でだよレイ!!」
「ボクはあくまでトロイを返してもらうために真崎さんに会いに来ただけ。檜山さんの邪魔をしないっていう約束だからね。……まあもう半分くらい破ってるけど」
仕方ないと言わんばかりに作業の手をすすめるジンだが、すぐに解除は完了した。そして、Dキューブが投げ込まれた。
「ん?」
「ジン……」
奥から現れたのは海堂義光……ではなく、その形をしたアンドロイドだ。ジンの表情が重いものへと変わり、低い声音でバンとレイに告げる。
「君達は先に行け。コイツは僕が倒す」
「…………うん、行こっかバン君」
「え、でも!!」
「君が檜山さんを、ボクが真崎さんに用事があるように……ジン君にもアレに用があるということさ。ほら、間に合わなくなっても知らないよ?」
「…‥わかった!!負けるなよジン」
「ああ」
バンはそう言い残すとコックピットへと走った。
「ちょ、速いって!!ボク運動出来ないんだから!!」
「そうだろうと思って俺から来てやったよ」
「ッ!?…………真崎さん」
文句を垂れつつ走るレイだが、バンには追いつけない。息も絶え絶えというところで、物陰から真崎が出てきた。
「お疲れさん。ほらよ、まあ落ち着いて飲み物でも飲もうや」
「ああ、ありがとう……って、何か仕込んで……るわけないか。だったら加納の時にもうしてるもんね」
「まあな。後これ、落とし物だ」
そう言って真崎はトロイをレイに返した。素直に返してくれることにレイは驚きながらも受け取り様子を見た。
「トロイ……お帰り」
「ほら、用事済んだろ。飲み終わったらすぐ帰れよ」
「…………なんで」
「なんでって、そりゃここ爆発するしよ。下手しなくても死ぬぞ」
「違う。なんでそんなに優しくしてくれるの?」
「あぁ……?」
訝しげな視線を送るレイに気まずそうに目を逸らした真崎は、はぁ、っとため息をつくと仕方ないと話し始める。
「お前との日々は割と楽しかった。それだけじゃ不満か?」
「不満だね。第一、真崎さんの復讐は終わったじゃないか。どうしてそこまでして檜山さんを手伝うのさ」
「おおっと、痛い所をついてくるじゃねえか」
「こんなときにふざけないでよ」
「いっつもふざけるのはお前だったくせに……まあいいか。まあ、あれだ。蓮とは腐れ縁だからな。アイツを理解できるのは俺だけだし、俺を理解できるのもまたアイツだけ。それぞれ海道への想いを秘めて再会したあの瞬間から、運命は決まっていたのかもな」
真崎は語りながら虚空を見つめる。昔の事を思い出しているらしい。
「俺にはもう何も残ってないからな。だったら俺はせめて、蓮の理解者で在ろうと決めた。ただそれだけの事だ」
「…………分からない」
「理解されようとしてないからな。これ以上の問答は無駄だろう」
真崎は話を区切ると、2人の間にDキューブを投げた。ステージは闘技場だ。
「ステージがあって、お互いに相棒がいて、することは一つだろう?さあレイ、最初で最後のLBXバトル……始めようか。イフリートッ!!」
闘技場に降り立った漆黒のLBX、イフリート。怪物のようなヘッドパーツには不釣り合いなほど大きい胴体や四肢は太く、それだけで力強さ、禍々しさが伺える。途中で曲がった二本のツノに、イフリートの身長よりも大きいであろうテイルパーツは機械と思えないほどしなやかに稼働している。
「イフ……リート……真崎さんが作ったの?」
「ああ、俺の人生で最高の機体だ」
「なんでそっち系が分からないなんて嘘ついたの」
「一瞬でもそんな事言ったら何時間でも喋り出すだろお前」
「そんな理由!?」
「そんな理由で悪いかよ。生憎、八神さんにも脳筋で通してるんでな」
「…………はぁぁぁぁ!?!?人がどれだけ心配で来たか知らないで……!!ああもう、ぶっ壊しても知らないからね!!」
「はっ、『鬼神』の実力……思い知らせてやるよ」
「行くよイプシロン……お灸を据えてやろう。それで八神さんの前で土下座させてやる!!」
「サイコスキャニングモード!!!!
※『イフリート改』ではなく『イフリート』なのは仕様です。
ガンダムのイフリート改がスマホのロック画面な作者です。死ぬほどどうでもいいです