サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪ 作:ゼノアplus+
35話、もしくは2話
「やぁ、今日は集まってくれてありがとう。皆ご存知の通り、ブルーキャッツの新しいマスターの八神レイさ。よろしく」
ブルーキャッツの地下に広がる空間の中心、唯一の照明がレイを照らしている。今日のレイはいつもの白パーカーでも喫茶店の制服でもない。黒を基調とした服に赤いズボン、レイの身長では明らかに丈が長すぎるファー付きのコート。
そう、檜山蓮のような格好だ。
「まず初めに言っておくよ。伝説のLBXプレイヤーは文字通り
大きなブーイングが会場を埋め尽くす。暗くて見えにくいが、柵を挟んだ360度荒くれ者のLBXプレイヤー達がひしめき、2階も同じような状況だ。
「ボクは彼からこの店の鍵を託された。それがどう言う意味か……分かるね?」
刹那、会場全体を埋め尽くすような覇気により場が静まり返った。15のガキがオレ達に偉そうにご高説垂れている、そう思っていた大多数の人間が彼女の言葉を真剣に聞き始めていた。
「まあそうは言ってもボクはキミ達からすれば粋がってるただのクソガキ。気に入らない人が多いでしょ。ボクの戦歴を知らない人間はいないと言う過程で話を進めるよ」
LBX世界大会アルテミスファイナリスト、そして事実上の3位。トロイによるガトリングの乱射、圧倒的な強度の砲身での殴打、見ていた者全てを魅了した光輝く必殺ファンクション。
『期待の超新星』山野バン、『秒殺の皇帝』海道ジン、『白銀の戦姫』八神レイ。
第3回アルテミスに現れた三巨頭を知らない者はいない。
「お遊戯みたいな大会で結果を残してここで威張られてもねぇ……って思ってるね」
何人かの方が跳ねた。ここでのバトルにルールはない。それこそがアングラビシダスのルールである。ゼネラルレギュレーションなどと言う大会用のルールに縛られたバトルに飽きた人間達の集まりなのだから仕方がない。
「いいよ……かかってこい。その代わり一切の容赦はしない。ぶっ壊して、ぶっ壊して……それでもまだ向かってくるなら……ぶっ壊すまでさ」
ニヤリと意味深な笑顔を浮かべるレイ。その表情を見た一部の者はとてつもない違和感に襲われてしまった。普段マスターとして見せるあの笑顔はなんだったのか、と……
「そうして積み重ねた残骸の山で天高くファイティングポーズを見せてやる」
既にこの場の支配者はレイである。誰もがその威圧感に反抗しようという気概すら起きない。一種のカリスマだ。
「ボクが2代目だッ!!」
レイがそう宣言し指を鳴らすと、特別大きなDキューブが現れ展開される。
「「「「「「おおぉ…………」」」」」」ザワザワ
アルテミス決勝戦で使われた広いフィールドの2倍はあるであろう広大なフィールドとなった。
「アッハハ!!」
レイが勢いよくLBXをフィールドに投げた。
「イプシロン
「俺だァ!!」
都市迷彩が施されたイプシロンはどちらかと言えばレイのイメージカラーである白、もしくは銀を基調とした色で塗装され無骨ながらも凛々しい立ち姿を一瞥しその姿に畏怖を覚えたプレイヤー達は誰も手を上げない。そんな時1人の男が前に出てきた。
首狩りガトー、かつてアングラビシダス一回戦にて山野バンに敗北した男である。
ある意味、空気の読めない男としてこれから名を馳せるだろう。この場の支配者はどうあがいても彼女だったのだから。
「さっきから聞いてりゃオレ様を差し置いてここのトップ名乗るとは良い度胸じゃねぇか!!」
「キミは……ああ、バン君に負けた人」
「なんて覚え方してやがる!?」
「まあ誰でも良いさ。早くLBXを出しなよ」
「こんのアマッ!!ブルド改ッ!!」
『いけーガトーやっちまえ!!』
ガトーを応援する声が少数あり、一言の声援すらないレイは圧倒的にアウェー。しかし、幾人かは結果が見えているのかただバトルを見るのに集中している。
結果から言えば、ガトーは惨敗した。爆薬付きのアックス、スタングレネード、アタックリキッドZ、違法改造レベルのマガジン数のランチャー、なんでもして良いと言われればとりあえず思いつくような違反行為は悉く潰され最後には自らのパフォーマンスである首を刈られて大破した。
「次はだぁれ?」
沈黙。ここでは実力が上位であるガトーが無惨にやられたにも関わらず、興味を失ったかのように次の相手を求めるレイに狂気を感じたのだ。
「アッハハ!!びびらせすぎちゃったかな?うん、今日はお開きにしよう。次回は……1週間後。それまでは喫茶店に力を入れるからいつでもお越しくださいませ」
雑な言葉遣いからマスターとしての礼儀正しい言葉遣いに変わったレイは、会場を閉めた。
◆
「やりすぎだ」
「ええー!!アレくらい序の口じゃない!?」
「どこがだ……!!俺の出る幕がなかっただろうが!?」
「そ、そんなに楽しみしてたの……?それはそれでなんかゴメン」
反省会とは名ばかりの説教会、額に青筋を浮かべているダイキと彼に詰められているレイの姿があった。ダイキは序盤ライトアップやフィールドの準備など、裏方の作業をしており最終的にプレイヤー達の先導者となってボコボコに負ける予定だった。もちろん本人はプライドゆえに全力で立ち向かうはずだったのだが……ガトーが名乗りをあげたおかげでタイミングを逃したのだ。
詰まるところ本気のレイと戦うために一枚噛んでいたのだが、それが出来なくなりタダ働きしただけになってしまった。
「それで、1人しか相手にしないとかどういうつもりだ?」
「うーん?ああ、これさ」
「ッ……ブルド……なのか?」
「そう、アルティメットブルド。ブルドファンの、ブルドファンによる、ブルドファンのためのブルド!!」
「黙れ、うるさい」
レイがガトーのために用意したLBXアルティメットブルドは、自身のパフォーマンスの一つとしてプロメテウス社の社長の息子である郷田ハンゾウのコネを使い一機だけ入手していた。それをガトーが好みそうなカスタマイズを施し来週に備えている。
「飴と鞭……バカしか通用しないと思っていたが、『戦車の正位置』征服、野望の成就……既に約束されていると言ったところか。アイツらチョロすぎるだろう」
「アッハハ!!力こそが全て、1番分かりやすくて良いよねあの場所は」
「……そうだな」
ダイキはレイがイノベーターにいた頃の癖が抜けきっていないのだと考えそれ以上の追求はしなかった。
「話を戻そうか。まあなんか?思ってたより?うまくいきすぎちゃったし?」
「いちいち疑問形にするな」
「つれないねぇ、まあアングラは大丈夫そうだよ。残りの奴らは適当に叩き潰すさ。アングラに2代目レックスあり、頼んだよ」
「……チッ、分かった」
名の知れているダイキが2代目レックスの存在を仄めかす事で、少なくともミソラタウンにはレイの名が轟くだろう。どの道後で郷田にも頼むつもりなレイに抜け目などない。
「ボクに付き従う報酬は来年度アングラビシダスの出場権利。優勝、準優勝の報酬は……『前大会ファイナリスト八神レイのチームメンバーとなる権利』」
「ッ!!」
アルテミスファイナリストには次回アルテミスのシード枠が与えられる。それはつまり無条件に出場が確定されていてチームメンバーは3人までとなる。ソロで十分なレイには必要のないものであるが、その権利の有効な使い道がこれだ。
「まあそんなにときめかないと思うよ?アルテミスって所詮ルールに則ったお遊びだし。あの程度の練度なら世界中にたぁくさんいるさ。アッハハ!!そのうちアングラの連中を世界レベルまで鍛え上げるのも面白そうだね。ボクが過労死する可能性を排除すれば」
「普段ここに来てる奴らは別にどっちでもいいだろうな。だがそんなものを商品にすればカタギまで来るだろう?」
「なーんにも知らないLBXプレイヤーがウチの連中にボコボコにされてるのを見るのもなかなか悪くないよ」
「……お前、ストレス溜まってるだろ」
「さてね〜」
図星である。割と楽しんでいるからストレスほどではないが疲労は少しずつ蓄積されているのだ。LBXに使う時間が取れないなら仕事の中でそれを見つけるしかない。
「組み立ててこそのLBX。バトルしてこそのLBX。カスタマイズしてこそのLBX。そして…ぶっ壊してこそのLBX。今まで以上に、これから楽しくなると思わないかい?」
無印編終了後W編までの1年間を書き綴る予定ですが、原作通りW編を優先するか時系列順に書くかどうしましょうか。
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1年間を先に読みたい
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W編を先に読みたい