サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪ 作:ゼノアplus+
ついにW編、デクー無双時代の到来ですね^^
飛翔
1話
「ヒカリー、行ってきます」
「いってらっしゃいお姉ちゃん!!」
イノベーター事件から1年が経った。今のレイにはかけがえのない家族がいて、帰る場所があり、頼れる保護者ができた。
「結城さんってば。かんっぜんに喧嘩売ってきてるよねぇ……!!」
自宅兼職場であるブルーキャッツを出たレイは駅の改札を通ってトキオシアデパートへ向かっている。今日はタイニーオービット社の新作発表会が行われる日であり開発主任である結城とはメカニックとして意見交換をするような仲である。それ以前にレイはLBX世界大会アルテミスファイナリストであるため正式な招待状が社長である宇崎拓也から届いているのだが。
レイが少し声を荒げている理由は、大凡半年ほど前に結城と会話していた時に遡る。
『結城さん、少し相談があってさ。デクーカスタム砲戦型みたいに空中でも動ける機体の開発をしてみたいんだ』
『いいところに目をつけたねレイちゃん。これ、極秘で進めてるプロジェクトなんだけどウチで今空中起動を主軸にしたLBXの開発を進めてるんだ』
『え!?それ言っていいやつなの!?』
「拓也さんからレイちゃんにだけは言ってもいいって許可はとってあるとも。そこで話なんだけど……君もこの話に噛んでみない?』
『詳しく』
このようなノリでレイは今日発表されるLBXの開発に関わりがあった。報酬は航空力学関連の技術を丸々見て盗んでいいというもの。レイにとっては破格すぎる条件なので即決し今日を迎えている。
「セレモニーが終わった後でボクも新型を自慢してやろっと」
レイのファッションの好みは半年前に比べて少し変わってきた。昔は白無地のパーカーに短パンというシンプルな服装だったが、今はファー付きの丈が長めのコートにチノパンというカジュアルでオシャレに気を使った服装になっている。純粋に人間力が向上した結果だろう。
そんな彼女の鞄の中には一体のハンドメイドLBXが収められている。タイニーオービット社から学んだ技術を活かした新型である。バン、カズ、アミとも合流予定のためその時にLBXバトルに誘われてもいいように携帯しているのだ。
「やぁレイちゃん、おでかけかい?これ、持ってお行き」
「ありがとうおばちゃん。今度また寄らせてもらうね」
「よう嬢ちゃん!!今度また寄らせてもらうぜぃ!!」
「あ、カツさん。毎度どうも!!ボクのオリジナルブレンドを開発中だからできたら真っ先にお願い〜」
ミソラタウンでレイの知名度は一定以上であるため電車に乗っていても知り合いと会うことはある。今回はミソラ商店街の顔馴染み達が多かったらしく次々と声を掛けられては返事をしていた。
(仲良くなれて本当に良かった。いざという時は皆にヒカリを守ってもらわなくちゃね)
二十歳まで生きられないと医者に余命を告げられているレイは残りの人生全てを、自分のせいで人体実験の被害者となってしまった妹のヒカリに捧げている。ブルーキャッツでマスターをしながら稼ぎを得ているのも、人間関係の構築に勤しんでいるのも全ては自分のいない未来でヒカリの助けとなるため。だからこそレイは愚直なまでに頑張れてこられた。
時間が経ちトキオシアデパートに到着した。施設の中に入れば多くの人で賑わっておりエスカレーターのあるメインホールには一階から上層階まで満員以上に人が詰めかけている。日本におけるLBX開発企業ではトップシェアであるタイニーオービット社の新作発表会とはそれほどまでの影響力を持つのだ。
受付で招待状を見せ中に案内されたレイを見た周囲の人々から驚きの声が上がった。
「前回アルテミスのファイナリスト『白銀の戦姫』だ!!やはり招待されていたか」
「『超新星』山野バンとそのチームメイトも招待されているとか……」
「なんだって!?我が社の商品を売り込むチャンスじゃないか」
(い、居心地悪くないかなぁ!?)
自分を見てザワザワし始めたホールに内心恐々としながら、レイは歩いている。CCMでバン達と連絡を取りながら進んでいるのでもうすぐ会えるはずだ。
「あっ、レイー!!」
「よっ、時間通りだな」
「やあアミちゃん、カズヤ君……あれ、バン君は?」
「なんかLBX初心者に操作を教えてるんだって」
集合場所に着くとアミ、カズヤの姿はあったが肝心のバンの姿が見えない。二人に話を聞けばどうやら寄り道をしているらしい。
「アッハハ!!相変わらず人が良いね世界チャンピオン様は」
「そういうお前だって、今じゃ商店街のアイドルじゃねえか」
「ヒカリのことだよそれは。ボクはキリッとかっこいいマスター!!でやってるんだから」
「よく言うぜ……どうせ二代目レックスとの二面性を楽しんでるだけだろ」
「君にしては察しがいいじゃないか」
「図星か!!」
「ふふっ、まあ気長に待ちましょ」
カズヤとレイのコントのようなやり取りにアミが笑いその場を纏める。一年前、敵として戦ったとは思えないような仲の良さだ。
「そういえばレイ、ヒカリちゃん元気してる?ちゃんとご飯食べてる?」
「もうすっかりたくましくなったよ。多分ボクより家事出来る…うぅ、姉としてのプライドはぼろぼろにされてるよ」
「嬉しさのほうが勝ってるだろ」
「カズヤ君よくわかってるね。妹の成長がお姉ちゃん一番の楽しみです」
「「丸くなりすぎ」」
二人は初めて出会ったときのレイと今のレイを比較しながらしみじみつぶやいた。LBX廃人だったレイがただのシスコンになったとは当時全く信じていなかったのだ。
「アッハハ!!そうだ、今日はこの半年間の集大成を作ってきたんだ。これが終わったらバトルしないかい?」
「えっ、レイLBX作ったの?今見せなさいよ」
「レイが作ったんなら……やっぱデクーか」
「もっちろん。完全新作、新しいデクーのお披露目してあげる。これの後でね」
「みんな、遅れてごめん!!」
三人が会話に夢中になっていると、若干精悍な顔つきになったバンが遅れて到着した。
「遅いぞーバン」
「人助けもいいけどちゃんと約束も守ってよね。間に合ったからいいけど」
「まぁまぁアミちゃん。そこがバン君のいいところじゃないか。久しぶりー」
「レイ久しぶり!!二人とも元気してた?」
「おかげさまでね。三人ともたまにはウチの売り上げに貢献しにきなよ」
レイがこの三人と顔をそろえて会うのは久々のことだ。三人は普段中学校に通っているし、レイは喫茶店のマスターにアングラビシダスの管理など予定が合わない日のほうが多いため仕方がない。
四人がそろったため場所を移動し発表が行われるメインホールの中央にやってきた。
『本日はお集まりいただき誠にありがとうございます』
「始まったわね」
「拓也さん、全然教えてくれなかったよな」
「ボクはコンセプトだけ知ってるよ?」
「え、どうして?」
「アッハハ!!秘密!!」
そもそも航空力学を学んだ時点でどんなLBXを作り上げるのかは想像がついていた。ノウハウ自体、レイはオーディーンのメンテナンスをしたことがあるため概要は知っている。ゆえにハンドメイドのLBXを半年という短い期間で仕上げることができたのだ。
ホログラムで拓也の姿が映し出され余興ともいえる話が始まる。そんな話に毛頭興味を持っていないレイは軽く聞き流しながら新型の登場を今か今かと待っている。
そしてステージ中央に布のかぶせられた箱が運ばれてきた。
『これが我が社の新製品、【アキレス・ディード】です!!」
「「「「「「おお!!!!!」」」」」」
合図で布がはぎ取られエレベーター式でLBXが地下空間より上がってきた。
「アキレス!?」
「アッハハ!!思い切ったねぇタイニーオービット!!いい、すごくいい!!」
拓也は手元のCCMを操作するとアキレスディードを動かす。少しひざを曲げ、飛翔した。
「アキレスが空を飛んでいるわ!?」
「すっげぇ……」
「アキレスがみんなの下に……」
「うっそでしょ……あのサイズの背部オプションでなんて美しい飛行を可能にさせたんだ……」
レイの心の中ではアキレスディードに対して二つの評価が生まれていた。一つは純粋にLBXへの評価、もう一つは企業としての評価だ。
(ナイトフレームの完成形の一つであるアキレスの形状を維持したままあんなユニットをつけるなんて。しかもッシールドの形状を見る限りブースターとしての役割もある。メインウェポンは量産型としては使いやすい片手銃、機体の改造は難しいけれど装備させる武器は夢が広がるなぁ!!)
(でも……拓也さん、バン君に許可取ってないんだろうなぁ。いくらアキレスがタイニーオービット社製だとしてもワンオフ機、しかもアルテミス優勝者のLBXをもろパクって量産型にするとか、バン君のスポンサーはウチですって宣言してるみたいだ。もしかしたら拓也さんはそう思ってないかもしれないけど、会社の一部の人はそれ狙いで提案したでしょこれ)
世の中を知りすぎているレイは手放しに誉めることができない。経営者の端くれとしてそういった一面をついつい考えてしまう癖ができてしまった。
そしてアキレスディードの遊覧飛行はつつがなく終了した。ホールを一周し拓也は頭上に戻ってきたアキレスディードを着陸させようとしてCCMを操作し、できなかった。
ピシュンッ
「……え?」
刹那アキレスディードのカメラアイが妖しく光り無差別に銃撃を始めた。不運にも最初の一発はバンの頬をかすめ地面に着弾したのだった。
「ッ!!みんな伏せて!!」
レイはとっさの判断で三人に注意を促し警戒を始めた。
「「「「「キャァアアア!?!?!?!?」」」」」」
それを皮切りにホールにいた人々が一斉に叫び始めた。
「今度は何!?」
「レイ、あれ!!」
「なっ!!」
アミが指さした方向を見たレイが絶句した。無数のLBX達がいたるところから現れデパート内部を攻撃し始めたのだ。
会場はパニックとなり人々が一目散に逃げ始めた。
「まさか、またイノベーターじゃないのかよ!!」
「あり得ない!!イノベーターは海道義光のカリスマがあって成り立ってたんだ。残党がいまさらテロなんてやる気はないはずだよ」
「とりあえず逃げましょう!!」
「いや、一体でも多くのLBXを止めるんだ!!オーディーン!!」
バンが目の前の光景に耐えられなかったのかLBXを出撃させて暴走している機体を殲滅し始めた。
「バカか君は!!変な使命感で死ぬ気かい!?」
「LBXはホビーなんだ!!父さんが作ったLBXが人を傷つけちゃダメなんだよ!!」
「ちょ、バン君!!」
「ああもう仕方ねぇな。フェンリル!!」
「私たちもやるわよ、パンドラ!!」
バンに続いてアミとカズヤまでもが戦いに行ってしまった。
「レイ、無事か!!」
「拓也さん?これなに!!」
「わからない、アキレスディードも急に操作が効かなくなってしまった」
一人残されたレイの下に血相を変えた拓也がやってきた。
「レイ一人か?」
「バン君たち、暴走LBXを止めるって行っちゃったよ。拓也さん、ボクが護衛するから逃げて」
「できるわけないだろう。俺が指揮を執る、できるだけ被害を最小限に抑えるんだ!!」
「はぁ……キミもか」
拓也の言葉にレイの声音が下がってきた。
「「こんなことでお披露目したくなかったんだけどなぁ……ボクがやる。初陣だよ【フライト・デクー】、テイクオフ!!」
レイがCCMを取り出し持ってきた新型のデクー、フライトデクーを出撃させた。
フライトデクー
オーディーン、アキレスディードに関わる飛行技術を学んだレイがオペレーションデイブレイクで使用したフライトパックを元にデクーのオプションユニットとしてフライトユニットを搭載した新型LBX。空中戦を想定しているためデクーのフレームにも手が加えられている。
「それがレイの新型か!!」
「フライトデクー、滞空には向いてないけど加速力、旋回能力に優れたボクだけのデクーさ」
レイはフライトデクーを操作しバン達がまだ到着していないだろう上層階に飛行させた。武器はトロイのガトリングを参考にしてハンドメイドした「ガトリングショット」という両手銃であり今回のような殲滅戦にはおあつらえ向きである。
「ん……?敵の動きがおかしいかもしれない」
「なに?どういうことだ」
空中から一方的に射撃をし暴走LBXを破壊しているがどの機体も妙に統率が取れている。さらに一体一体の動きがイノベーターの無人機よりもはるかに洗練されている。そこにレイは引っ掛かりを覚えたのだ。
「この大量のLBX、デパートのホビーショップの機体が勝手に動き出してるの?」
「ああ、それに加え今日LBXを持ってきている一般のプレイヤーの機体も暴走を始めたとさっき報告があった」
拓也が耳元のインカムを触りながらレイに伝えた。どうやら状況はリアルタイムで情報を更新できるらしい。
「てことはボクたちの機体も暴走してないとおかしい。暴走LBXは全部一つのブレインに操作されているとみて間違いないよ。少なくともプレイヤーじゃない。経験談だけど無人機をボクに接続するとわずかにボクの癖も反映されるんだ。このLBX達はみんな癖が同じなんだ」
「そういうことか。違うプレイヤー達が操作していれば違う癖が出る、だからこいつらは無人機ということだな。これだけのLBXを一斉に暴走させているブレイン……いったい何が」
「とりあえず拓也さんは下がって。LBXが使えるボク達で何とかしてみるさ!!」
「わかった、頼んだぞ!!」
そういって拓也はスタッフ達と下がった。レイはそれを見届けるとフライトデクーがいる上層階に足を進めた。
「うげ、エスカレーター止まってるじゃん……」
数分後、肩で息をしながらレイは止まったエスカレーターを登りきった。
無印編終了後W編までの1年間を書き綴る予定ですが、原作通りW編を優先するか時系列順に書くかどうしましょうか。
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1年間を先に読みたい
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W編を先に読みたい