サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪   作:ゼノアplus+

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世界なんてどうでもいい

4話

 

 

意外と対応してくるじゃん……レイはこの半年間、創作物から見聞きしたものを己の技として昇華させたガン=カタで戦っているにも関わらずデクーOZにうまく受け流されている事実に内心驚いていた。

 

 

「射撃型のデクーに格闘戦をさせるのは面白いが……君のデクーはそこが限界だろう!!」

 

「デクーについて無駄に口が回るようだねぇ?アッハハ、ボクの方が熟知してるとも。開発者だからね!!」

 

 

体術を織り交ぜ距離を離された瞬間銃撃、そうでなくとも隙があればすかさず攻めに転じているフライトデクーだがその成果は著しくない。

 

エネルギー弾を片手剣で無理矢理弾き飛ばしながら距離を詰めてくるその姿に戦慄しているレイだが、そのワケには単にデクーOZの運動性能がフライトデクーを上回っていてスペックで負けているからだと気づいている。

 

 

「いい、いいぞ!!もっと俺の経験値になれ!!」

 

「むむっ……(ありゃ、こりゃ勝てはしなさそう。せめてイプシロンかサイコスキャニングが使えればねぇ……)」

 

 

今のフライトデクーにできる最大限を発揮しているがデクーOZには遠く及ばない。むしろフライトユニットはこの戦いにおいて邪魔でしかなかったため無くてよかったとまで考えている。

 

加えて、レイが自ら仕上げた機体であるためサイコスキャニングモードが搭載されていないので性能を引き出すことができないのだ。無論、レイ自身に負荷がかかるためできるだけ使用したくないのが本音だが、そうは言っていられない状況になったので真面目にサイコスキャニングモードを解析し他のLBXに搭載できるように研究することを心に決めた。

 

 

「今、よそ見したな?」

 

『ATTACK FUNCTION X BLADE』

 

「あっ、やっば」

 

 

マイナス思考に陥っていたレイは思わずキリトに必殺ファンクションを使わせる隙を作らせてしまい、フライトデクーの着地硬直に技を合わせられてしまった。

 

デクーOZが完全にフライトデクーの間合いに入り、フライトデクーは着地による機体の硬直で咄嗟に動けない。フライト機として開発されたが故にイプシロンの時のような機体性能のゴリ押しができないという弱点をこんなに早く実感することになるとはレイ自身思っていなかっただろう。

 

デクーOZの切先がイプシロンの喉元に触れかけ負けた、とレイが思った瞬間、第三者が現れた。

 

 

「レイ、無事か!?」

 

「……ちっ」

 

「拓也さん、コブラさん」

 

 

必殺ファンクションがフライトデクーを切り裂くその寸前、バンとヒロの元に向かっていた大人2人と鉢合わせた。

 

 

「キミの勝ちでいいよ。今のは避けきれなかったし……次は本気の全力で叩き潰すから」

 

「……まあいいさ。中々な経験値も獲得したからね。山野バンにもよろしく伝えておいてくれ」

 

 

キリトはそう言うとLBXを回収し別の通路へと姿を消した。レイは少し悔しそうな表情でフライトデクーを回収した。

 

 

「ごめんね……昔のボクなら、勝てた……のにさ」

 

 

コブラ達との自己紹介の時にブランクがあると告げたが、これは間違いではない。そもそも格闘戦の得意なレイがガトリング系の武器をメインウェポンにしていた事自体、実力不足を誤魔化すという理由があったのだ。ガン=カタも付け焼き刃というには勿体無いほどの仕上がりだが、本来そんなことをしなくても近接武器を持てばいいだけのこと。ガチなバトルをしなくなった分、趣味に走る時間が増えているのもまた事実だ。

 

 

「レイ、今の男は?」

 

「さぁ?ー急にバトルをふっかけられてね。でもまぁ……ディテクターは関係なさそう」

 

「なんでそう言い切れるんだ?」

 

「デクーをあそこまでカスタマイズできる人に悪い人はいないさ」

 

「なんの理由にもなってなくね?」

 

 

コブラから鋭いツッコミが入るがレイは無視。とりあえずバンとヒロの救援に向かうことにした。

 

 

(プレイヤーとして負けて、本業のメカニックとしても完膚なきまでに負けた…………自信無くすなぁ)

 

 

この瞬間、おそらく初めてだろう……レイは挫折を味わった。

 

 

 

 

 

 

レイ達が旧シーカー本部にたどり着いた時には、既に司令コンピューターは止まっていた。爆発痕があるので必殺ファンクションなどで無理やり破壊したのだろう。現にヒロはやり遂げた清々しい表情でペルセウスを眺めている。バンは怪訝な顔をしながら倒したGレックスを眺めていた。

 

 

「お疲れ2人とも。ってこれGレックスじゃん。よく再現したねー」

 

「レックス程じゃないけど、強かったよ」

 

「……無人機があの人に勝てるわけないよ」

 

「……ああ」

 

 

どうやら故人のLBXを勝手に再現する不遜な輩がいるらしい、しかもそれは世界を壊すテロリストときた。バンは師匠として、レイは恩人として思うところがあったのか檜山のことを思い出し静かに黙祷をした。

 

 

「よし、シーカーを復活させるぞ」

 

「シーカーを!?」

 

「タイニーオービットにある方じゃいけないのかい?」

 

「……色々あってな」

 

「ふぅん」

 

 

拓也の宣言にバンは驚き、レイは興味深そうに質問したがはぐらかされた。自分が聞いていい事ではなかったのかもしれないと解釈したレイはそれ以上聞くことはなかったが少し気になっている。

 

そうして、一通りの作業を終えた一行は地上のコブラが乗ってきた車へと帰還した。

 

 

「あっ、そうだ。先に言っておくんだけど、ボクはキミたちに協力する気ないから」

 

「「「え???」」」

 

 

バン、ヒロ、コブラが一斉にレイを見た。これから世界を救おうと意気込んでいたところに空気を読まないレイの発言があったからだ。

 

 

「どうしてだよレイ!!アミとカズを助けなきゃ!!」

 

「そうですよレイさん。僕達は選ばれた戦士、世界のために今こそ立ち上がる時です!!」

 

「……」

 

「アッハハ、ごめんねぇ。ボク、喫茶店経営しててさ〜。妹を養っていかないといけないんだ」

 

 

正論である。言い方は悪いが、バンとヒロは所詮中学生である。親の保護があるからこそこうして躊躇いもなく判断できるがレイは違う。戸籍上の親である八神英二は居るもののレイの生活に口を出したことはなくその自由は保証されている。そしてレイは喫茶店のマスターでありアングラビシダス会場の管理者。個人の判断で好き勝手できる立場ではないのだ。

 

 

「それにね、バン君。これでもボクは何よりもキミを信用しているんだ」

 

「俺を?」

 

「キミならやれる。まだボクはキミに1勝1分なんだ。キミより強いと噂のボクが信用してるんだから自信を持ってくれよ」

 

「レイ……うん、分かったよ!!」

 

(計画通り……バン君はまっ直ぐだけど変に賢いからねぇ。情に訴えれば行けると思ったよ。ジン君だったら正論パンチで強制参加させられてたかも)

 

 

内心ですこぶる笑っているレイはにやけそうになる頬を必死にせき止めながら言葉をつづけた。

 

 

「まあその代わり、遠距離からはしっかりサポートするからさ。これでもこの一年でハッキング技術を上達したからね」

 

「頼もしいけど……それは素直にほめていいのかな」

 

「アッハハ!!今更さ!!」

 

 

なんとか上手く丸めこむことに成功したレイは後処理を任せて自宅へ帰ろうとする。しかし、バンとヒロが話し込んでいるのを見た拓也がレイに呼びかけた。

 

 

「レイ、あれは建前だろう?本音を教えてくれないか」

 

「ありゃ、拓也さんにはやっぱりわかっちゃう?」

 

「お前がプラスの事ばかり言う時は大抵碌でもないことを考えていると八神が言っていた」

 

「ひっど!?」

 

 

養父ならではの視点と言えようか、それを拓也に話す八神も八神だがかなり核心をついているのでレイには反論もできない。

 

 

「うぅ……身から出た錆とは言えなかなか厳しいねぇ。まあ、端的に言うとボクは世界なんてどうでもいいのさ」

 

「なに?」

 

「どのみちボクの方が先に死ぬからね。大人組はボクの寿命は知ってるだろうしさ」

 

「……」

 

「その顔だよ。皆ボクに会うたびちょっとだけ気の毒そうな顔するんだ。別に良いけどさ、こっちまで気が滅入るじゃあないか。そういうことだからボクには『今』しかないんだからこの先のことなんて考えてる暇はないんだ」

 

「……分かった」

 

「ありがとう拓也さん」

 

 

話を終えたレイは今度こそバン達に別れを告げ、自宅へと帰るのだった。

 

 

 

 

 

 

「おおお、お姉ちゃん!!無事!?無事だった!?」

 

「アッハハ、心配させたよねヒカリ。うん、大丈夫だよ。バン君達が上手くやってくれたからね」

 

 

家に帰ったレイは、テレビの中継で状況を把握していたヒカリの慌てっぷりに苦笑しながらも優しく抱き止めて頭を撫でた。レイがヒカリによくする落ち着かせ方だ。

 

 

「今日は私が全部やるから!!お姉ちゃんはゆっくりしてて!!」

 

「う、うん。分かったよ」

 

 

やけに押しが強いなぁ、と思いつつここまでやる気を出してくれているのならとレイは承諾し自室へと戻る。

 

 

「そういえば師匠からの映像見なきゃ」

 

 

カバンから取り出したUSBメモリの挿入口を探すこと数分、やっと見つけることが出来たので早速中身を見ることにした。

 

 

『やあレイ君、久しぶりだね。USBメモリなんてものを使ってすまない。今回の件は出来るだけ他人に知られるわけにはいかなかったのだ』

 

「ビデオメッセージか。こんな時代遅れな形式を取ったのはそういうことなんだね。一体どれだけ重要なことが……タイミング的にディテクター関連だろうけど」

 

 

考察をしながら山野博士の前置きを聞くレイ。彼がここまで厳重に警戒をしなくてはいけないということに少し危機感を覚えたようだ。

 

 

『恐らく君は結果から伝える方が好きだろうと考えているから単刀直入に伝えよう』

 

「さっすが師匠、弟子のことよく分かってるね」

 

 

ウンウンと頷くレイだが、その次の言葉で思考を停止することになる。

 

 

『私がディテクターだ』

 

 

 

 

「………………へっ?」

無印編終了後W編までの1年間を書き綴る予定ですが、原作通りW編を優先するか時系列順に書くかどうしましょうか。

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