サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪ 作:ゼノアplus+
5話
『私がディテクターだ』
「………………へっ?」
山野博士から告げられた事実に、レイは少しの間脳が理解することを拒否していた。そんなレイのことなど露知らず、映像はさらに進んでいく。
『何を言っているかわからないと思うが…………こういう事だ』
山野博士は画面に映ってない足元を何やら弄ると、ディテクターの格好の仮面とローブを取り出した。
『つまり全てが私の自作自演なのだが、それでもこれは世界のためにひt』
「待って!!まって………まってよ…………ちょっと、情報量が多すぎ」
映像を一時停止したレイは髪を掻き上げて額を押さえた。
「まずい……これ以上聞いたら間違いなくボクも
考えれば考えるほどに山野博士の行動原理が分かっていく。なぜならば、自分が同じ立場だったら間違いなく同じことをするからだ。
「じゃあなんで執拗に催眠ガス撃ってきたのかな?ワンチャンあるとでも思われたのか、もしくは普通に嫌がらせか」
ここから先を再生するということはもう後戻りは出来ないということ。それを理解しているからこそ、レイは動画をストップさせたのだ。
「…………見るしかない、よね」
『もちろん、協力というのであればそのリスクやレイ君の心理的負担を考慮してブルーキャッツに気持ちばかりの金銭的援助をすることを約束しよう』
「よっしゃぁ何でも来なよ師匠!!この命にかけても成功させて見せようじゃないか!!」
齢15歳、金に釣られて怪しい仕事の共犯者となることが決定した瞬間だった。
寝るまでの時間ずっと目がドルマークだったレイに怯えてヒカリがあまり近づかなかったらしいのは誰も知る由がない。
◆
翌日改めてビデオの内容を吟味したレイは、自分の想像以上に事態が切迫していたことを思い知らされていた。
「セト50……サターンの爆弾搭載フェアリーの比じゃない規模の爆弾が大量生産か。これは確かにイノベーターなんて比べるまでもない規模の敵だよ。それに軍事衛星パラダイスねぇ、これタイミングの問題で実際はもう詰んでるじゃないか」
山野博士からもたらされた情報によると、現状の課題はオメガダインによるセト50爆弾をパラダイスに運び込まれる前に両方を止めるということだ。これに関してレイはどうも引っかかる点があった。
「この爆弾、パラダイスに運び込まれた後に対処する方が地上に対する被害が少なくなるよね。どうしてわざわざ……ああ、それこそタイミングか。その気になればいつでもオーストラリアが焦土になるしパラダイスのレーザー攻撃でどこでも破壊可能。タイムリミットがわからない以上その気にならないうちに全部防ぐ、か。
そのためのディテクター、世界各地で騒ぎを起こすことで本来の計画に支障をきたしタイムリミットを先延ばしにしつつバン君達に解決させることで少しずつ真の敵の存在に気づかせ対処を任せると。すごいな、長期計画なのに時間制限がキツすぎる上に頼りになるのがLBXとバトルが強い子供達。実質テロに未成年の洗脳、しかもそれらがマッチポンプだった挙句もっと世界侵略とか考えてる真の敵がLBX管理機構とA国副大統領?
アッハハ!!……この世界詰んでる!!!!」
知りたくもなかった真実を一つずつ咀嚼していくと明らかになる現状は、レイの脳がパンクするほど重いもので現実逃避を始めていた。
「頭おかしいだろどいつもこいつも!?オメガダインに比べたらイノベーターなんてゴミ以下じゃん!!こういうのって基本的に兵器が完成して起動も出来てる時点で詰みなんだよぉ!!!!サターンが例外中の例外だっただけ!!しかも宇宙とかさぁ!?」
厄介なパラダイスはすでに宇宙、セト50は量産中、公表しようとしても権力で押し潰される未来が確定している。無理難題にレイは大声をあげて暴れ始めた。ちなみに防音室なので声は漏れないが揺れに関してはヒカリにバレているかもしれない。内容が内容で昨晩はほとんど寝られなかったレイは寝不足のイラつきも含めてストレス発散をし始めた。尚LBXの収納は完璧なため被害はない。その理性は残っている。
「…………まっ、いいや。本当に何かあれば速攻切って日常に戻ろ」
ひとしきり暴れた後、すんっと真顔になったレイは即座に裏切り方を思案し始める。イノベーター時代でさえ思いつかなかったその考えは、守るべきものの大きさなのだろう。
「そうと決まれば早速お仕事かな。ボクの役目は軌道修正と第三勢力の排除、もしくはマッチポンプにマッチポンプを重ねることで……って、それは後が怖いなぁ」
レイはもう一度思考を開始し、紙にひたすら書き始めた。一通り書き連ねたプランを見返し破り捨てる。もう一度書き、確認してくしゃくしゃに丸め投げる。古典的だが、現代的なセキュリティを考えると最も強固な手段で構想を練り始めた。
しかし、
Prrrrrrrr
「お電話ありがとうございます。ブルーキャッツマスター、八神レイです」
『私だ』
「うーわ……師匠……流石ですねぇ」
電話をかけてきたのは山野淳一郎博士。諸悪の根源であり、この完璧なタイミングで電話をかけてきたのも何かしら見えていたものがあるではないかと疑ってしまったのは仕方ないだろう。
「忙しくてバン君にすら連絡出来ないんじゃなかったでしたっけ?」
『志を同じくする者と今後の計画を話すのは、仕事の項目だよレイ君』
「……そうですか。そういうスタンスを取るんですね。いやまあいいんですけど」
『そういった反応をされるのは予想通りだが、手厳しいな』
「内容が内容なので」
初対面の時はあれほど尊敬しています、という感情で接してきたというのに今はこの態度。双方思うところはあるので仕方はないだろう。
『ふむ、それについては申し訳ないと思っている。しかし世界の危機なのでしっかりと協力を頼みたい』
「それについては了承しましたし出来る限りは、協力させてもらいます。喫茶店の店主程度に何を期待しているのかは知りませんが」
『君は少し自らを過小評価し過ぎているようだね……いや、それもまた成長か。では早速協力を要請させてもらう。内容は、バン達を襲ってもらう』
「ライオンの子をなんとかってあるけど、最初っからスパルタですねぇ師匠!!とってもボク好み♪」
内心、もうどうにでもなれ、とヤケクソになったレイはイノベーター時代のようなテンションで答えたのだった。その後、詳しい内容を聞いたレイはため息をつきながらも了承し、通話を終了した。
「お駄賃がお駄賃だからね〜。アキレスディードを使わせてくれるなんて、師匠太っ腹〜♪アッハハ!!」
時間が経ち、レイの手元にはアキレスディード、ハンター牙、鬼クノイチの3機がやってきた。ディテクターの正体を知らないバン達からすれば、かつての愛機達をモチーフにしているこの3機と戦うのは皮肉以外の何者でもないだろう。しかしこれらを送り出したのは他ならぬ山野博士、なんと人が悪いことだろうか。
山野博士からのオーダーは2つ。
一つ目は山野バン、大空ヒロ、そして新たな戦力となるもう1人のLBXプレイヤーに対ディテクター用LBXでの戦闘の慣熟訓練をさせること。
数刻後、レイは合手持ちのLBX5機をブレインジャックし山野博士から託された3機と共に武道大会会場へと送り出したのだった。
無印編終了後W編までの1年間を書き綴る予定ですが、原作通りW編を優先するか時系列順に書くかどうしましょうか。
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1年間を先に読みたい
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W編を先に読みたい