サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪ 作:ゼノアplus+
「さてさて、師匠からの情報によれば武道大会?の優勝者にミネルバが渡されるってなってるけど……選考基準雑だよねぇ。まっ、別に世界を救ってくれるなら誰でもいいし、どうしようもないヤツだったら心折っときゃいいでしょ」
山野博士から借り受けたアキレスディード達を目的地へ向かわせていたレイは、最近癖になってきた独り言での愚痴を溢しながらPCの画面を見ていた。
エルシオン、ペルセウス、ミネルバの位置情報は開発者である山野博士によって丸裸にされているのでミネルバの持ち主へは最短距離で進んでおり、一般人にも見つかっていない。
「おっ、ターゲットみっけ……ふぅん、この子が花咲ランか。今はお友達とバトル中かな?おあつらえ向きにDキューブが展開されてるし、デクー改達を先行させようか」
アキレスディードに空から偵察させた情報によれば、Dキューブの中でウォーリアーとミネルバがバトルをしていたが、攻撃あるのみ、といったバトルスタイルのミネルバの攻めに耐えきれなかったウォーリアーがブレイクオーバーになっていた。
「ちょうどいいや。ブレインジャックの電波を広範囲に発信、中心をアキレスディードにして対象をデクー改達だけにしたら……よし。これでバン君達がすぐ駆けつけてくるだろう。じゃあ早速、お手並み拝見と行こうか」
ニヤリと笑ったレイは、それはもう楽しそうにデクー改5機をDキューブ内に投下させ辻バトルを仕掛けた。
このデクー改達は元々イノベーター産の、TO社襲撃の際の撃破した機体を直したものだ。兵器用に運用されていた神谷重工お手製のLBXであり、現在一般発売されているものとはその装甲の頑丈さは折り紙つきだ。兵器運用のためブレインジャックに必要なMチップは搭載されていなかったのだが、今回のためだけにわざわざ搭載したのだ。地味な手間である。
『なんなのコイツら!?ちょっと、誰が動かしてるの!!出てきなさいよ!!』
「まっ、一般人ならその反応で当然さ。でも……これからは一般人でいられちゃ困るんだよ」
『ふーん、やってやろうじゃない。ミネルバのデビュー戦!!』
そしてデクー改5機VSミネルバの変則バトルが始まった。レイの操作ではなく、ブレインジャックによる無人操作のため勝率は悪くないはずだ。そして何より、バン達がこの場へ向かってきているのもすでに確認済みだ。小手調べには丁度いい。
「さすが武道をやってるだけあって気合は十分そうだね。これじゃデクー改もすぐ負けそうだ」
デクー改の一斉射撃を難なくかわしクロー型ナックルの『ミネルバクロー』で連撃を叩き込んでいく。機体性能によるところが大きいものの、ミネルバの強みを遺憾なく発揮しているプレイヤースキルはレイも目を見張るものがあった。
「やるねぇ!!思ってたより上手だ。なるほど、選考基準が雑だと思ってたけどミネルバのバトルスタイルと武道大会優勝者って意外と良い組み合わせかも。異常事態に、デクー改の破壊が考えつかないのはこれから成長の余地ありかな……ありゃ、全員やられちゃったか」
レイが映像を見て思考している間に決着がついたらしい。全てのデクー改がブレイクオーバーし地に伏せたのだ。
そしてレイは次の刺客を投下する。アキレスディード、ハンター牙、鬼クノイチだ。
『良い加減にしなさいよ!!もう、むかつく!!絶対に倒してやる!!』
『そうだ!!諦めちゃダメだ!!』
「あらら、思ってたより到着が早いね。まあ良いや、ミネルバの調子も良さそうだし予定より難易度を上げよう」
いざ鬼クノイチが攻撃をしようとした時、フィールド内にエルシオンとペルセウスが降り立った。レイには彼らの会話はどうでも良いので、バトルを始めるタイミングで動き始める。
「さーてと、アキレスディード。キミの力を見せておくれよ」
アキレスディードはレイの操縦、鬼クノイチとハンター牙は自動操縦だがレイの戦闘データを元にしたプログラムを組んでいるので並の無人機よりも遥かに強い仕上がりだ。
まず鬼クノイチが戦線を切り開くべく単騎で突撃をする。ストライダーフレーム特有の素早さでエルシオン達を翻弄している間に、ハンター牙が狙撃ポジションへと向かう。
レイはアキレスディードを飛行させ空中から鬼クノイチの援護射撃をし始めた。
「えぇ!?なんて使いやすさだ!!フライトデクーじゃ出来ない小回り、スラスターの燃費の良さ、エネルギー弾特有の射撃反動による姿勢制御の簡単さ、緊急時はシールドブースターを吹かせて本来は無理な挙動も楽々させられる……凄い機体だよ」
『この前よりも強い……!!俺がアキレスディードを足止めするから、2人はまず黒いクノイチを仕留めてくれ!!黒いハンターはスナイパーライフルを持っていたから狙撃には注意するんだ!!』
『分かりました!!』
『オッケー!!』
「流石バン君、適切な判断だね。さて……盤石な構えを打ち崩すには……奇襲だよね!!」
射撃武器を持っていないシーカー組に、空中を飛行し続けているアキレスディードに対抗する術はない。しかしレイもそこまでガチでやっているわけではないので、時たま地上におりエルシオンとの一騎打ちに付き合っている。しかしレイもエルシオンの防御の高さや『エルシオンハルバード』のリーチに加えバンの操作技術を打ち崩せず不毛な争いが続いている。
だが、レイの狙いはペルセウスとミネルバだ。まだ経験の浅い2人に経験させるため無慈悲に狙撃による攻撃を仕掛け用として……失敗した。
『やっぱり2人を狙ってるのか、そこだ!!』
「え……えぇ!?うそぉ……これ防がれるの?」
大きな岩を挟んで戦っていたアキレスディードとエルシオンだが、レイの視界から外れた一瞬の隙を突いてペルセウスとミネルバを狙うハンター牙の狙撃を盾で防いだのだ。
「ッ……はぁ、潮時か。やめやめ……ああもう!!風間キリトといいバン君といい、惚れ惚れするバトルセンスだよね。アキレスディード、『デモニックモード』」
『デモニックモード』
『これはッ!?』
アキレスディードに搭載された特殊モード『デモニックモード』を発動させたレイは、まだ戦っている鬼クノイチとハンター牙を無視しアキレスディードをフィールドから逃した。
「自爆モード起動、じゃあね〜。これから頑張れよ、馬車馬の如く働いてくれたまえ」
『2人とも、敵LBXから離れろ!!爆発するぞ!!』
『へっ……うわぁ!?』
『なんでなのよー!!』
新人2人の悲鳴をBGMに、レイが操るアキレスディードは悠々自適に飛行したのだった。
◆
「で、どうです師匠。ボクからすれば期待以上だったんですけど」
『ああ、良くやってくれた。次も期待しているよレイ君』
「この1年のバン君の成長は予想以上でしたね。それにペルセウス、ミネルバのプレイヤーも鬼クノイチに負けず劣らずのバトルでした」
『アキレスディードのカメラ映像はチェックさせてもらったよ。やはり、あの2人が相応しい。だがレイ君の本音を聞かせてもらいたい。今後の参考にする』
「弱すぎます。ペルセウスとミネルバをしっかり操縦できる、この点においては他のLBXプレイヤーよりもマシかもしれませんが、これはお遊びじゃない。実力も、覚悟も足りません」
『手厳しいな。イノベーターで生き抜いてきたきたレイ君だからこその意見だろう。分かった、次のミッションのデータを送っておこう』
「うげっ……まだあるんですか。まあいいですけど、もう片棒担いじゃってますし」
レイはPCにデータが送られてきた事を確認し、山野博士との通信を切断した。名残惜しいながらもアキレスディードを返却し、そのカメラ映像を博士に送信するついでの会話だった。
「次のミッションねぇ……ッ!?飛行機のハイジャックだって!!マスターコマンドとインビット3機ずつ……個々の実力、危機への対処能力、そして……命の危険の実感ねぇ……ボクの意見なんて聞かずとも対策を考えてるじゃないか」
データの内容はとんでもないものだった。
アミ、カズヤのCCM電波をわざと探知させA国にシーカー組を誘導。移動中を狙いマスターコマンドによるハッキングで航空機をジャックする事で3人に成長を促す。もし3人が脅威を排除できなければ飛行機は墜落し命を落とす危険な計画だ。さっきレイが博士に言った通り大空ヒロ、花咲ランは元々ただの一般人であるため『世界を救う』重みを知らない。故に危機感や使命感の欠如を考慮してのハイジャック計画のようだ。
「荒療治すぎるでしょ。実の子供はおろか少年少女を陥れてまでここまでする必要はあるのかなぁ……あ、そっか。
お遊びとして開発したLBXで、テロだなんて素晴らしいほどの皮肉っぷり。
師匠、いつかにボクは言いましたよね。LBXは兵器だと……貴方は否定しました。否定した貴方がなんでLBXを兵器として扱ってるんですか?バカなんですか?もっとやりようはあるでしょうに。貴方の名なら信用はともかく話を聞いてくれる組織はいくらでもあったはず。
……イカれてるよ。ガキの癖に世界を救うなんて言ってるバン君達も、1人でなんでもできると思ってる師匠も。世界征服なんか考えてるオメガダインも。
なんで、今ある平和を享受しようとしないんだ!!せめてボクにはさせてくれよ!!あと……5年しかないのに……!!」
気づけば涙が溢れていた。命の重さ、尊さ、そして儚さをレイは誰よりも分かっていた。両親が亡くなり、育ての親のような真崎も死んで、使命を果たした宇崎前社長も死んだ。そしてレイは非道な人体実験により寿命を削られ続け残りの僅かな寿命を大切に生きてきた。もう2度と大切なものを失わないために、たった1人の家族を守るために文字通り死力を尽くして頑張ってきたにも関わらず、周りがそれを許さない。
レイは限界だった。
だからこそ。
「お姉ちゃーん、ご飯出来たよー」
「ッ……うん、すぐ行くよヒカリ!!ちょっと待ってね!!」
生きる理由のためだけに、レイは
レイはもう、『LBXが大好きで妹想いな女の子』でいる事は許されないのだ。
「はぁ……バカばっかりだと思ってたけど、こんな所にもお馬鹿さんが居たとはね。全く、何考えてるんだか」
そしてレイは一つ決めた。CCMの最新の履歴に残る受信メールの送り主が馬鹿な事を考えているので絶対に引き留める事を誓った。
送り主の名は『灰原ユウヤ』
旧シーカー本部
「拓也さん、やっぱりレイにも手伝ってもらえないかな。レイがいれば百人力だしさ」
「……バン。彼女のことはそっとしておいてあげてくれ。ようやく掴んだ普通の人生なんだ。これ以上俺たちの都合に巻き込むべきじゃない」
「でも!!」
「レイの言う通りになっただろう。LBXが世界に兵器の側面を見せてしまったんだ。イノベーター事件の時のように、ひっそりと解決することはもう出来ない」
「それは……それでも、父さんの作ったLBXはホビーなんだ!!一刻も早くディテクターの計画を止めて、アミとカズを助けないといけないよ」
「分かっている。だがレイに
「拓也さん……分かった。ヒロとランとも話してくるよ」
「ああ、これから共に戦っていくんだ。仲良くしろよ」
「社長……バン君はあの事を」
「ああ、知らないだろう。知っているのは我々、八神達、財前総理とその関係者、病院関係者、山野博士とジンだけだ。バン達にあの事を伝えるのは……酷だ」
「レイちゃんはもう、人生を謳歌していいはずよ。この前、ヒカリちゃんと撮った写真を送ってきてくれたの。とってもいい笑顔だった。結城君もレイちゃんとよく話してるし知ってるわよね」
「はい、忙しそうにしてますけどLBXの事は1番楽しそうですね。彼女らしいですよ」
「ともかく、レイにはもう世界の裏側に関わらせない。本来は俺たち大人が解決していかなくてはいけなかったんだ。巻き込んだ責任くらいは、俺たちで生産するぞ」
「「はい」」
無印編終了後W編までの1年間を書き綴る予定ですが、原作通りW編を優先するか時系列順に書くかどうしましょうか。
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1年間を先に読みたい
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W編を先に読みたい