サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪ 作:ゼノアplus+
バン、ヒロ、ランは無事にA国まで辿り着いた。途中、山野博士とレイが実行したハイジャックというハプニングもあったが、レイが手を抜きマスターコマンドとインビットを全て自動操作にしていたことにより普通に撃破されてしまったのだ。
博士から多少お小言を貰ったレイだったが特に反省の色はなく、まるで思春期の学生が先生にぶっきらぼうに『分かりましたぁ』というような態度だった。
それから数日後、レイはとある人物をブルーキャッツに呼び出していた。
灰原ユウヤ
レイと同じく、トキオブリッジ崩壊事故の被害者でありイノベーターによる人体実験の被験者として育てられた。
昨年度アルテミスではファイナルまでコマを進めサイコスキャニングモードの暴走により精神崩壊を起こし、レイ、バン、ジンの協力により敗北。その後は入院生活でイノベーター事件終息後に目を覚ましたのだった。
「やぁ、いらっしゃいユウヤ君。久しぶりだね」
「うん、アヤネちゃん……じゃなかった。レイ君も元気そうで良かったよ」
そんなユウヤは今、レイに呼ばれてブルーキャッツに訪れていた。
「最近はどう?ちゃんとご飯食べてる?夜更かししてない?」
「心配しすぎだよ。ジン君の協力もあってちゃんと生活してるさ」
「それならいいけどね。まあ今日くらいはウチでご飯食べて行きなよ。ヒカリも喜ぶし」
「じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな」
意識が戻って退院してからレイとジンはユウヤのことをよく気にかけていた。特にレイは同じ施設、同じ境遇で育ってきたため家族のように接しているのだ。
気弱で泣き虫なユウヤをよく慰めていたレイは今もなお姉のように接している。
「それで今日はどうしたんだい?急に店に来てくれだなんて、レイ君らしくないよ」
「あー、その事なんだけどね。ユウヤ君、本当にバン君達と共に戦う気なの?」
発端は先日ユウヤがレイに送ったメールの内容にあった。ジンやバン、レイに救ってもらった恩を返すべくディテクターとの戦いに参戦しようと思う、というメールであり、今のレイの心情からすれば到底認めることが出来ないものだったのだ。
「もちろんだよ。みんなのおかげで僕はここにいる。その恩返しがしたいんだ」
「イノベーターよりはるかに規模の大きい敵だよ。この前だってバン君達が乗っていた飛行機が墜落させられそうになった。今度こそ死ぬかもしれない。ボクとしては絶対に許可したくない」
「分かっているつもりさ。レイ君にはヒカリちゃんがいる、だから守りたいんだよね」
「ッ……ユウヤ君もその中に含まれてるんだよ?ボクはボクの守りたいもののため
「レイ君……」
ユウヤはジンや大人達に聞いただけなので詳しくは知らないが、真崎という育ての親のような存在が亡くなった事を知っている。だからこそのヒカリだと思っていたが、まさか自分も含まれているとは思っていなかったらしい。
「命をかけた戦いなんて行かないでよ。せっかく助けてもらった命なんだ、もっと楽しく、自分のために生きようよ」
レイの言葉はユウヤだけではなく自分に向けても言ったものだ。ヒカリがもしユウヤと同じ事を言おうものなら同じ言葉で、もっと語気を強めて言っただろう。
「……出来ないよ」
「ッ、なんでさ!!」
「もし今の状況を無視してしまえば、僕は自信を持ってこの先を生きていくことなんて出来ない。もしディテクターが捕まって世界が平和になっても、僕はその戦いに参加できなかったことを必ず後悔すると思うんだ。だから行くよ。僕は皆の力になりたい」
「……あっそ、この分からず屋。じゃあもう良いよ、好きにして。でももし無事に帰って来なかったら……そうだね、ユウヤ君には何が1番効くかな?」
「それを僕に聞くのかい!?大丈夫、だってバン君達がいるからね」
ユウヤの強い意志にレイは折れたようだ。ここまで意固地なユウヤをレイは見たことがないし、自分が楽しく生きるために戦う、というのならレイにはこれ以上止める術はない。ユウヤはもう立派に1人の人間として生きていた。
「そっか、そうだよね。うん……そっかぁ。おかしいのはボクの方か。そりゃそうだ、気づかないわけだ」
「レイ君?」
そのことに気づいてしまったレイは、少し遠くを仰ぎ見てつぶやいた。ユウヤがレイに様子を尋ねると、なんでもないとユウヤを向き直した。
「決めた。ユウヤ君が無事に戻って来なかったら死んでやるから」
「はっ!?何を言ってるのレイ君!!」
「ヒカリは英二さんにお願いする。この店は……まあ、誰かが管理してくれるでしょ。そうだ、キタジマの2人に頼もっと。ヒカリと店はこれでオーケーだから……」
「死ぬなんて簡単に言わないでよ!!君が言ったんじゃないか、せっかく助けてもらった命を粗末に扱うなよ!!」
「…………アッハハ!!冗談だよ、冗談!!」
ユウヤの怒声が店内に響く。一瞬たじろいだレイだが、すぐに笑顔を作り今までの雰囲気を壊した。しかしそんな態度にも不満があるユウヤはさらに言葉を続ける。
「冗談には聞こえなかったよ。もしかして君は……「ユウヤ君」……っ」
「無事に、帰ってきてね」
「分かった、約束するよ。だからレイ君も僕が帰ってきた時、1番美味しいコーヒーを用意してくれるかい?」
「まかせてよ。伊達に1年以上マスターやってないんだから」
真面目な雰囲気から一転、お互いに怒鳴ってしまった事を謝りつつそのままいつも通りに仲良く会話を始めた。近況や最近のテレビ、そしてLBXなどの話題に変わっていく。
「へぇ、今は竜源のリュウビを使ってるんだ。随分とマイナーなLBXを選んだんだね」
「やっぱりナイトフレームが手に馴染むんだよ。それにかっこいいし」
「ジャッジ、ユウヤ君用に調整してあるけど要らなかったかなぁ」
「ッッ、ジャッジ……を?」
ユウヤが取り出してリュウビを見ながら、ボソッと呟いた。ジャッジはユウヤがイノベーター時代に使わされていた機体で、レイによって倒されたはずだったものだ。
「ユウヤ君、ジャッジに罪はないよ。イノベーターとサイコスキャニングモードが悪いんだ。ユウヤ君が手に馴染むだろうと思って、神谷重工の設計図を元に再現したんだよ。もちろん、サイコスキャニングモードは搭載してない」
「ジャッジ……確かにリュウビを買う時に、どんな機体がいいか、どんなフレームにするか、どんな武器を使うか考えてジャッジに近いものを選んだ」
レイは少し席を外すと、カウンターの裏からユウヤ用のジャッジを持ってくるとユウヤの前に差し出した。
そしてユウヤがジャッジを手に取ろうとして、レイが手元に手繰り寄せた。何故か問おうとユウヤが顔を上げると、薄ら笑いのレイが発言する。
「でもぉ?まぁ?今のユウヤ君にはリュウビがあるみたいだからこの子はボク用に調整し直して使っちゃおうかなぁ!!前々からジャッジ欲しかったんだよねぇ〜!!ウチの機材じゃ1機作るのが限界だったし〜?」
「え、ええ!?ずるいよ!!僕だってもう一度ジャッジを使いたいのに!!大体君はブロウラーフレームの方が好きだったじゃないか!!…あっ」
「アッハハ!!そうだよね、ユウヤ君にはジャッジがよく似合うよ。だからこの子はキミにあげる
。普段使いはリュウビでもいいけど、たまにはバトルしてあげてね」
ポロッとこぼした言葉にレイは笑うと、もう一度ジャッジをユウヤの元に差し出した。今度こそジャッジを手にしたユウヤは、懐かしそうにジャッジを触っている。
「ありがとうレイ君、大切にするよ。ジャッジ、また君と戦えて嬉しい」
「で、どうする?ヒカリが学校から帰ってくるまでまだ時間があるし、してく?バトル」
「こっちからお願いしたいくらいだ。負けないよ」
「アッハハ!!嬉しいなぁ、ユウヤ君とちゃんとバトルできる日が来るなんて!!」
2人は地下のアングラビシダス会場に降りると、バトルフィールドで向かい合った。
「行くよ、ジャッジ!!」
「トロイ・マークII、出撃」
トロイ・マークII
通常のトロイの武器腕を『アキレスタンクアーム』に変更しただけの機体である。山野博士から協力報酬として『アキレスタンク』の設計図とアーマーフレームを受領したことで試験的に運用している。
「マークII!?いつものデスバレルじゃない!!」
「デスバレル……いい武器だった……」
「え、壊れたのかい?」
「神谷重工クラスの設備がないと完璧に仕上がらなくてねぇ。何故か
「TO社にお願いしなかったんだ」
「いや、頼んだんだよ?でもTO社でも無理だって言われちゃって……まあ1バトルするくらいは問題ないんだけど、砲身がオーバーヒート中は殴ると変形しちゃうんだよ。満足に性能が発揮できないから観賞用としてお蔵入りさ」
確かにデスバレルは強すぎる武器ではあったが、何やら
「その武器腕も見たことがないけれど、もしかしてオリジナル?」
「いやー、まあ、うん。オリジナルといえば……オリジナルかなぁ。そんなことより、行くよユウヤ君!!」
「今日こそ僕が勝つよ!!ジャッジ!!」
結果から言うとレイが勝った。トロイVSジャッジはレイの圧勝だったが、その後機体を変えて行ったフライトデクーVSリュウビでは僅差まで持ち込まれた後レイが勝利を収めた。
ヒカリが帰ってくるまでの間、2人は戦い、直し、調整しを繰り返してLBXバトルを心の底から楽しんだのだった。
「ふぅ〜、楽しかった〜!!」
「レイ君とただ楽しいバトルをしたのは今日が初めてな気がするよ」
「そうかな?そうかもね。まあ大体ボクが勝ったけど〜」
「次は負けないさ!!それに、本気の機体を使っていないじゃないか。イプシロン、だったっけ?」
「あー……あの子はねぇ。今はちょっと、殿堂入りかなぁ」
「殿堂入り?」
レイが今回バトルで使用したのは、トロイやフライトデクー、四聖獣といったイノベーター産のLBX達であり、イプシロンは最後まで持ち出さなかった。半年ほど前まではLBX大会を荒らして回る際に遠慮なく使用していたのだが、ここ最近は全く使っていない。
「実は今、イプシロン解体してるんだよねぇ……アハハ……あっはは……はぁ」
「解体!?なんでそんな事を」
「設計図はあるんだよ?でもやっぱ
遠い目で嘆くレイに、ユウヤは呆れつつも疑いの目を向けた。
「もしかして、解体して直せなくなったんじゃ……」
「いいいいいい、いや!?まさかそんな訳ないじゃん!!このボクが、まさか!?」
とんでもなく動揺し始めたレイにユウヤがついにあり得ないものを見る目を向け始めた。流石に居心地が悪くなったのか走って自室からイプシロンを持ってきたのだった。
「ほら!!ちゃんと直ってるし、この通り!!動くし!!戦えるしぃ!?」
「本当だ……でも、何か隠しているね?」
「ギクッ……」
そう、ユウヤの言う通りレイはとある問題点を隠していた。そろそろ観念したのか、イプシロンのアーマーフレームを取り外しコアスケルトンのみの状態をユウヤに見せたのだった。
「これは……市販のコアスケルトン?」
「イプシロンの性能の秘訣は元々のコアスケルトンにあったんだよ。そりゃボクだってイプシロンのアーマーフレームだけであんなバカみたいな性能が出るとは思ってなかったんだけど……今の技術水準と比較して3年は逸脱してる技術だったんだよねぇ……」
「3年!?それ、とんでもない機密情報の塊だったんじゃないの?」
「うん。ボクが実現不可能だと思ってた開発案が、イプシロンのコアスケルトンを流用するだけで全部叶えられる夢の技術。TO社にもう5セットくらい頼もうとしたら、イプシロンのデータだけ綺麗さっぱり消去したんだって。博士直々のお願いだったらしいさ。ボクの持ってる設計図を渡そうとしたら、博士からダメだって言われてるんだって〜」
これはまだレイの知るところではないが、未来においてオーレギオンのコアスケルトンであるAX000制作のための技術不足をアキレス、オーディーン、プロトIなどに散らばせることによって高性能機を製作していた事が伺える。それを踏まえるとイプシロンは、AX000の純粋な機体性能を大幅にスケールダウンさせたシンプルな構造になっている。AX00のAIやオーディーンの変形機能など特殊な機能が存在しない代わりに純粋に能力のみを向上させた
「つまりレイ君はそのコアスケルトンからなんとかして技術を盗もうとしてるのか」
「人聞きが悪いなぁ!?でもそういうことさ。だから代わりに普通のコアスケルトンで誤魔化してるんだよ。これでも一応それなりには戦えるんだよ?まあ、その……ジャッジより少し性能が高いくらいになっちゃったけどさ」
「十分だよねそれ。レイ君は一体どこを目指してるんだ」
「んー……まだ秘密。ボクにはどうしてもボクの手で設計したいLBXがあるんだ。出来上がったら実践でお披露目するよ」
「分かった。楽しみにしておくよ」
レイは自室で制作中の新しいLBXの事を思い浮かべて、楽しそうにユウヤに言った。
そのタイミングでヒカリが帰宅し、レイは晩御飯の準備を始めた。そして元実験体の3人は仲良く夕飯を食べたのだった。
ゲーム版Wではデスバレルがチート過ぎて弱体化されました。どういう意味かわかるね?
許せぬ。
無印編終了後W編までの1年間を書き綴る予定ですが、原作通りW編を優先するか時系列順に書くかどうしましょうか。
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1年間を先に読みたい
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W編を先に読みたい