サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪ 作:ゼノアplus+
5話
「起きろ……って、珍しいな。もう起きてるのか」
「うん?昨日の実験はいつもより緩くてね〜。精神同調じゃあそこまで疲労しなくなっちゃったんだよ。眠れないから暇でさ〜」
エンジェルスターに行った日からまた日にちが経っている。この日も、真崎は起こしに来たようだ。
「で、今日のメニューは?」
「今日は外に出るぞ。アングラビシダスというLBXの大会の見学だ」
「LBXの大会!?行く行く!!……って、見学ぅ?」
大会と聞いて目を輝かせるレイだが、見学という言葉を聞いてすぐにしょぼんとした。確実に物騒な会話があったが、2人にとっては日常茶飯事でしかないためスルーだ。
「えぇ……最近外出多くない?」
「俺もそう思う。だが、今回はちゃんとした任務だ。なんでお前を連れていくのかは知らないけどな。ちなみに山野バンが出場する」
「ッ!!……いいねぇ。ということはイノベーター関連だね」
「ああ……なんでも、海道ジンを送り込んだそうだ。彼に勝てば、山野博士の居場所を教えるという条件でな」
「アッハハ!!ウチのやりそうなことだねぇ……それにしても、海道ジン?」
いつものようにケラケラと笑いながら着替えるレイ。もちろん真崎は後ろを向いている。
「…………ああ、あの時の同室の子か。海道ってことは養子縁組でもしたのかな、ボク達とは違っていい御身分だね」
スン……っと空気が冷たくなる。レイや灰原ユウヤがこのような生活を送っている原因……『トキオブリッジ崩壊事故』での生存者はとある病院に搬送された。そこで同じ病室にいたのは、レイ、灰原ユウヤ、海道ジンなのだ。レイとユウヤは現在の通りこの研究所の人間に連れて行かれたが、ジンは連れて行かれなかった。それどころか、レイ達が所属しているイノベーターのトップの親類になったらしい。
「で、ソイツ強いの?」
「『秒殺の皇帝』と二つ名がつくくらいには強いらしい。使うLBXはジ・エンペラーという濃い紫をベースにした、騎士の見た目だ。武器は大型メイスの『ティターニア』。片手で振り回していることからなかなか高性能のようだな。ちなみにナイトフレームだ」
「ふ〜ん……一点物が蔓延る時代だねぇ。なんでボクはでちゃいけないのさ」
「お前達の調整は最終段階にあるらしい。今度のLBX世界大会で完成させるそうだ」
「ッ!!もしかして……ボクのLBXも……?」
世界大会と聞いて、レイは両腕を抑える。武者震いだろうか。
「ああ、灰原ユウヤが純粋なナイトフレームのLBXを使うのに対して、お前は特殊なナイトフレームの機体を製造中だ」
「おお!!つまり、ボクだけの専用機なんだね?」
「いや?量産型の試作機だ。お前の調整に合わせてLBXのテストも兼ねてるんだとよ。ちなみにお前が設計した通りデクーベースだ」
「アッハハ!!あの子だね、パーフェクトだよ!!自分で設計した子を自分でテストできる。しかも初お披露目は世界大会だって?素晴らしい……素晴らしいよ!!……開発コード……いや、あの子の名前は?」
テンションが爆上がりしたレイ。鉄格子を握りしめるほど手に力が入っている。
「かの有名なトロイア戦争を終結に持ち込んだ切り札、トロイの木馬から名前を拝借した、『トロイ』だ」
「トロイ……いいねぇ、うん、すごくいい。だったら今日も実験してよ。早く調整なんか終わらせてボクにトロイと合わせて欲しいんだけど。ボクの頭の中のチップも疼いてるってきっと」
「慌てるなアホ。今日は大会を見に行くっつったろうが。アングラビシダスの優勝者にはアルテミス出場権が与えられる。お前のアルテミス出場は確定してるんだから、ライバル様の偵察ってことだ。研究所も技術班もLBXの製造に入ってて手が空いてないらしい」
「むぅ……分かったよ。所詮ボクは籠の中の鳥だからね。自由が限られてるのも理解してるさ」
「……そうかよ、じゃあ行くぞ」
扉のロックが解除されレイが出てきた。
「あ、そういえば会場ってどこなの?」
「この前の喫茶店『ブルーキャッツ』の地下だよ」
〜ブルーキャッツ地下、アングラビシダス会場〜
「「「「「「「うおおおおお!!!!」」」」」」」
広い空間にセットされた4つのDキューブのジオラマ。それを取り囲むように数多の人間が叫んでいる。それはまるで、コロッセオで行われる決闘試合を今か今かと待っている観客のようだ。中には中学生や小学生などの子供もいる。
「うっわ……なにここ、空気わっる」
「我慢しろ。所詮は荒くれ者達が集う大会だ」
そんな中一際目立つのはレイと真崎だ。レイは13歳でありながら発育も良く、美しい銀髪が映える美少女。真崎は、190cmを超える巨体に真っ黒のスーツを来た厳つい顔の男。そのアンバランスさも相まって会場の中では一際浮いている。
「ほら、あれが海道ジンだ。一応仲間だから私怨で攻撃すんなよ?」
「へぇ……気の抜けた顔してんね。人形みたい……アッハハ!!人形はボク達の方だったね!」
「笑えねぇよその自虐ネタ……」
軽口を叩きながら二階に上がり観客席に行く。するとやはり見知った顔ぶれがいた。
「なっ……レイ……」
「あっれぇ?バン君達じゃん。アッハハ!!久しぶり〜元気してた?少しは強くなった?」
レイと真崎の目の前には、自分のLBXの調整をしていた山野バン、青島カズヤ、川村アミの姿が。隣には時代錯誤な番長の格好をしている郷田ハンゾウもいる。
「誰だコイツ……?」
「この前話したイノベーターだよ。俺達が瞬殺された……」
「イノベーター!?……まさか、テメェが刺客ってやつか!!」
郷田の問いにカズヤが答えた。郷田は声を荒げてバン達の前に立ち塞がる。
「アッハハ!!キミ良い人だね!……でも残念、今日は見学に来ただけなんだ。ボクが出ちゃうと優勝しちゃうし」
「なんだと……自尊心の塊じゃねえかコイツ……」
「でもその実力は本物よ……今のバンじゃ勝てないわ」
バン達は警戒を解かないがレイは依然リラックスした様子で話す。
「もぅ……今日はホントに見学に来ただけなんだってば〜。仲良くししようぜ少年達?」
「いや……あんまり歳変わらないでしょ……」
「敵と仲良くする義理なんかねぇ」
「えぇ!!つれないな〜……あ、キミさ、確か大会に出ないよね?」
「あぁ?……まあ、出ないが」
郷田を指差しながら言うレイに訝しげな視線を送る郷田。少し引いている。
「じゃあさ、相互監視ってことにしない?」
「相互監視ぃ……?」
「お互いがお互いを見張ってたら何もできないでしょ?どうせボクは見るだけだしさ〜。あ、捕まえようと思っても無駄だよ。この人腕っ節強いから」
「……まあいいだろう」
真崎の腕をバシバシ叩きながら笑うレイに毒気を抜かれたのか、郷田も賛成したようだ。
『一回戦を始めます。出場選手はお集まりください』
「じゃあ行ってくるよ」
「私達も」
「ああ」
バン、カズヤ、アミは出場選手なのでステージに向かった。今回はAグループのみの対戦ということもあり、カズヤとアミは応援のために近くまで行くのだろう。
「アッハハ!!バン君達のバトル、楽しみだね」
「お前はイノベーター側だろうが。刺客の奴を応援するんじゃねえのか?」
「彼なら大丈夫だよ。どうせ勝手に決勝まで行くだろうし。それよりもボクはバン君達に興味があるんだ♪あの子達の上達速度は目を見張るものがあるからね〜」
「確かに、アイツらはすぐ強くなってるが……(彼……つまり刺客は男か)」
警戒をしながらも2人は普通に話している。どう見ても敵であるとは思えない。
「なんつーか……お前変な奴だな。なんでイノベーターなんかにいるんだよ」
「それはね〜……「おい」……はいはい」
真崎が一言だけ簡潔にレイに告げた。
「う〜ん……守秘義務って奴だね。まぁ、ボクはそれくらいの存在って思ってたらいいよ」
「…………何者だよ」
あえて興味を煽るような言い方で、郷田は不信感を募らせたがレイは何事もなさそうにステージを見ている。
『バトルスタート』
MCからの唐突な開始宣言。郷田はすぐにステージに意識を戻した。
バンの相手はランチャーを装備したブルド改だ。対するアキレスは片手剣に長方形の盾を装備している。
「雑魚しかいないね。あのブルド改のカスタマイズはイカしてるけど。他の奴らはカスタマイズもプレイヤーの腕もなっちゃいない」
「お前……見ただけで相手のLBXが分かるのか?」
「うん?どんな悪路でも走行できるブルド改の車輪を活かすために力強いモーターのマスラオ50を使ってるね。プレイヤーのバトルスタイルとマッチしてるけど、あれが通用するのはルール無用のアングラビシダスだけ……まぁ、いろんな戦いを経験してるバン君なら倒せるさ」
「ほぅ…………」
レイの説明に感服する郷田。再びステージに視点を戻せば、ブルド改が武器をアックスに持ち替えている。スタングレネードで動きの止まったアキレスの腕を切り落とす作業の途中だった。
「バンッ!!」
「アッハハ!!良いパフォーマンスだね。でも……美しくない。所詮は野蛮な大会の常連か」
今まさにアキレスの腕が切り落とされた。切り落とした腕を持ち上げ、プレイヤーである首狩りガトーはアピールをし始めた。周りの観客もそれに呼応して盛り上がっている。
「……この試合、バン君の勝ちだね」
「ああ?どう見てもバンの方が不利じゃねえか。いや、バンが負けるとは思っちゃいねえけどよ……」
「見てみなよ、バン君の目を」
「目だぁ?ッ……あの目は……」
レイに促されて郷田はバンを見た。その目は、絶望的な状況でも諦めていない。依然、郷田に挑んだ時のことを思い出したのだろう。郷田も気づいたようだ。
そして……スタン効果の切れたアキレスは動き出した。
「なっ……盾をあんな風に……なるほど……」
「盾の使い方が上手くなったねバン君。もしや……ボクとのバトルから取り入れたのかな?アッハハ!!素晴らしい成長速度だ」
ランチャーの発射直前に、アキレスは左手の盾を発射口に押し付け暴発させた。爆発によって吹き飛ばされたブルド改はその体を、ジオラマの柱に強く打ち付けダメージを負った。
「決めるみたいだね」
「必殺ファンクション!!」
『アタックファンクション ソードサイクロン』
盾を捨て去り剣を拾ったアキレスはブルド改に向かって駆ける。負けじとブルド改もアックスを持ち向かっていくが……ブルド改の懐に入ったアキレスは、ソードサイクロンにより剣撃の嵐を生み出し……ブルド改を爆発四散させた。
『ブルド改ブレイクオーバー 勝者、山野バン』
「「「「「「うぉぉおおおおおお!!!!」」」」」」
まさかの大逆転劇に会場が湧く。
「よっしゃ!!ナイスだぜバン!!」
「アッハハ!!LBXバトルはこうでなくっちゃ」
続くBグループには、アミ、カズヤ、ジンがそれぞれの相手と対決し始めた。
「……お前に聞くのは癪だが、解説してくれよ」
「おっけーい。アミちゃんの相手のクノイチは、名前は省略するけど直線運動で性能を発揮するモーターを積んでるね。アミちゃんのクノイチは小回りが効くタイプ。どちらも同じクノイチだけど、同じクノイチだから違いは明確に生まれる。
ほら、アミちゃんが勝った。今回のフィールドは南極だから、一度加速し始めると相手のクノイチは止まれない。滑る床だからね。それにアミちゃんの方が純粋に練度が高い」
「…………お前ホントにすげぇな」
「まだまだだよ。ああ、カズヤ君はね……まぁ……勝てるでしょあれくらい」
「いや急に適当だなお前!?」
カズヤの講評になった瞬間根性論になったレイに、郷田はツッコミを入れた。
「いやだって……あれだよ?」
「……そうだな」
レイが半笑いで指を指した先にはふざけた態度でLBXを操作するカズヤの相手。対するカズヤもそれにイラついているのか照準が定まっていない。対戦相手が間一髪でかわしているのもあるが……
「まぁ……そのうち凡ミスで倒れる……あぁ、うん。こけたね」
「ああ、こけたな」
カズヤの対戦相手は、フィールドの石に躓いてこけ、そのままハンターによって撃ち倒された。
「「…………」」
レイも郷田もある意味で絶句である。
「ま、まぁ……一回戦突破だお前ら!!やったな!!」
「……そのポジティブさは少し尊敬するよ」
レイは呆れたような顔で、隣でガッツポーズをしている郷田を見ている。レイがチラッと横を見れば、対戦相手を瞬殺して観客席に戻ってきているジンの姿があった。
(……実力は確かみたいだね。海道ジン君)
一瞬で決着がついた海道ジンの試合を、郷田に解説しながら見ていたレイはほんの少し眉を動かしながら視線を戻ってきたバン達に戻した。
一回の戦闘シーンは長い?
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長い
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短い
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ちょうど良い
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もっと細かく描写して欲しい
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トロイ弱体はよ