サイコをスキャニングされちゃう被験者です♪ 作:ゼノアplus+
8話
(……こ……こは?)
意識が浮上したレイは、ゆっくりと目を開けて周りを見渡す。
「いつもの……部屋?」
「よう、眠り姫。ご機嫌はいかが?」
「最悪だよ……乙女を溺れさせるとかあのカス野郎……いつかケツに『ジョーカーズソウル』ぶち込んでやる」
「切れ痔待ったなしだな……恐ろしすぎるから13歳らしい復讐方法にして?」
声をかけてきたのはいつも通り真崎だ。患者服のレイは手で目を擦りながら恐ろしいことを呟いている。ちなみに『ジョーカーズソウル』とは切れ味抜群のハンマー系武器だ。見た目は死神の鎌である。
「……で、今日も実験?」
「いや、今日の実験はなしだ」
「また外出?流石に怠いんだけど」
「今日がアルテミスだぞ」
「ふぅん……今日がアルテミス…………今日がアルテミス!?」
真崎の何気ない一言で急にレイの意識が覚醒する。当たり前だろう、レイが実験で覚れて意識を失った時からまだ1ヶ月は猶予があったはずだからだ。つまり1ヶ月眠り続けていたと言うことになる。
「ちょっと、今何時!!早く会場に行かないと……」
「落ち着けアホ。今日っつってもまだ朝の4時過ぎ……移動時間を考えてもまだ余裕はある」
「…………なるほど」
扉に張り付くように慌てるレイに対して、冷めた様子で返す真崎。どうやらレイも一旦落ち着いたらしい。
「なんでボクは1ヶ月も寝てたのさ……」
「データ採取らしい。なんでも、急に溺れさせられたことによる素の感情での行動。そしてその動きを命令した脳からの電気信号をデータとして採取したんだとよ。災難だったな」
加納が騙したことも一応まともな理由があったらしい。
「それは分かった。でもそれって最初だけでしょ?」
「ああ、それ以降の期間はお前専用の『トロイ』にするために眠っている間の脳波のデータを取り続けてサイコスキャニングモード使用時の負荷の軽減を試していたらしい。起きてる時にやってると良くて発狂だとさ。良かったな」
「……納得できないけど納得するしかないんだね。ボク専用のLBXって言われたら引き下がるしかないし」
「そういうこった」
レイは苦虫を噛み締めたような表情をしている。理解しているが感情が否定しているのだろう。
「はぁ……ユウヤ君は?」
「アイツは薬品投与で痛みもないから問題ないさ。サイコスキャニングモードの負荷にさえ耐えれるレベルの投与らしいからな」
「あっそ。ボクにも薬品が効けばなぁ……」
「感情を壊したいならオススメだけどな」
ユウヤは過剰な量の薬品投与で廃人一歩手前のような状態だ。昔はレイにも薬品が投与されていたのだが、何故かその全ての効果が出なかったため現在は薬品なし……負荷の全てを一身に受けながらの実験生活をしているのだ。
「ボクのCCMスーツはどうなったの?」
「見た目だけなら劇的な変化だぞ?体を覆うのは両手と頭だけ。その二つは赤と青の2本のケーブルで連動していて頭にはヘルメットを装着だ。良かったな、いつもの服装も許可されているぞ」
「……ジーンズのショートパンツに白いパーカーを着て、ケーブルが繋がったグローブをつけてヘルメットをかぶった銀髪でスタイルの良い13歳の少女って構図。どう思う?」
嘲笑うような声で、今日の自分の格好を思い浮かべながら真崎に尋ねる。真崎は少し目を逸らしながら遠慮がちに答えた。
「一部の界隈で人気が出そうだな。あ、この前のデブは衆道に強制入信されたから問題ないぞ」
「そうだよねぇ……いやさ、ボクが表舞台に立つのそこしかないから良いんだけど。……衆道ってなに?」
「気にすんな」
レイはなんのことか分かっていないが、どうやらイノベーターにも混沌を極めた人間がいたらしい。
「バン君達は?まさか、山野博士を救出されたわけじゃないんでしょ?」
「ああ……そのことなんだが……両方に逃げられた」
「……は?なにがあったの?」
「最初は……侵入者達を捕らえたんだが、山野博士の策略によりシーカー達は脱出。山野博士自身も行方をくらませたそうだ、別々にな」
「それってシーカーの奴らにウチのボスが明確にバレただけじゃなくてプラチナカプセルを盗めなかったどころか山野博士まで居なくなったの?ウチの絶対有利条件が2つも消えた……大分終わってんね」
「俺もそう思う。だが、収穫もあった」
「収穫?」
イノベーター側の大量の失敗に呆れているレイ。しかし、どこか得意そうな真崎は勿体ぶりながら言った。
「今度のアルテミスはただ、サイコスキャニングモードの実験をするだけに収まらなくなったぞ」
「へぇ……どういうこと?」
「今年のアルテミスの優勝賞品である『メタナスGX』という超高性能CPUの中に、プラチナカプセルの解読コードが入っているらしい。つまり金庫は山野バンが、鍵はアルテミス側が保有しているというわけだ」
「ほほぅ……つまりアルテミスでバン君のアキレスを破壊して優勝すればプラチナカプセルとメタナスGXが同時に手に入って一石二鳥。しかもあちらの戦力も削げる。完璧じゃないか」
「ああ、しかもお前は以前山野バンチームに対して借り物のLBXで瞬殺……イノベーターの勝利は確実だ」
「アッハハ!!勝ちが決まったゲームは面白くないねぇ……しかも掛かっているのは世界の命運。パーフェクトだよ。ボクとトロイの初陣に素晴らしい舞台だ」
さらにいえば、決勝戦は5個に分かれた各ブロックの優勝者によるバトルロイヤルだ。海道ジン、灰原ユウヤ、レイの3人が別々のブロックで出場しそれぞれのブロック代表になった場合、イノベーター側が決勝戦の半分以上を占める数的有利を取ることができる。そうなった場合の山野バンの敗北は確実だろう。
「今のうちにスケジュールを説明しておこう」
真崎はそう言ってCCMを見せてくる。
「箇条書きだから見やすいはずだ。
・出場登録はこちらでしておくので問題はない。
・チームには『アヌビス』を使用する研究者2人がつく。
・トロイのデータ採取を優先。
・サイコスキャニングモード発動は決勝戦で行う。
・CCMスーツも決勝戦でのみ使用する。
・ブロック戦4試合は全て自由に動いてよし
・僚機はデータ採取メインのため戦闘行動を行わない。
・予備のトロイは無し(ダメージを負うな)
・バトル中は常にバイタルチェッカーを装備。
・同じブロック内に灰原ユウヤがいた場合はそちらを優先すること
……こんなもんか。結構楽だな」
「だね。決勝戦以外は自由にしてて良いとか破格じゃん。今までの実験はどうした?って感じだよ」
10個の項目を確認しそこまで苦な内容ではないことを確認した2人は案外余裕そうな感想だ。
「ほっとんど関係ないからなこの実験内容。7年間の努力が決勝戦だけとかお前報われねえな」
「アッハハ!!別にいいさ、トロイと一緒に遊べるんだからね。ていうかさ、そのトロイはどこにあるの?流石に一回も触らずにアルテミス出場とかは遠慮願いたいんだけど……」
「そう言うだろうと思ってな。ほらよ」
真崎が床に置いていたアタッシュケースを壁についている物のやり取りをする場所からレイに渡した。
レイは受け取ったアタッシュケースのロックを解きその中身を開けた。
「この子が……ボクの……ボクだけのLBX……トロイ」
中には、デクーベースのヘッド、ボディ、レッグだがヘッドパーツがボディパーツより大きい……いや、ボディが異常に小さいというアンバランスな上半身、デクーの腰を流用し前方からの攻撃を確実に駆動部にヒットさせない作りの大きなアーマーフレーム持つ下半身、両腕は肘から先がガトリングの武器腕になっている、黄色ベースのLBX『トロイ』が収納されていた。隣には上にスライドすることで操作が可能になるタイプのCCMもある。トロイと同じ黄色だ。
「これって、ボクの設計通り武器腕の『デスバレル』で殴っても大丈夫なの?」
「LBXを殴っても壊れない耐久力を維持しながらガトリング発射による融解も防ぐ。地獄の開発だったらしいぞ」
「できるんだ!!さっすが神谷重工、金属の加工はお手の物だね!!デスバレルは厳密にはアーマーフレームじゃないから金属の使用が可能。しかもボクが頼んだ金属ならLBXへの殴打にも対応できる……アッハハ!!早く動かしたいな〜」
初めての専用LBXにテンションが上がっているレイは、トロイの特徴についてひたすら語っている。
「これが量産されたら多分無人機になるね。硬い装甲からガトリングを斉射するだけの面白みのない無人機。でもそんなことはボクが操作する限りありえないのさ!!ガトリングの腕で突然近寄って殴る。誰にも予想できるわけがない……衝撃に弱いのと火と雷に弱いのがネックだけど躱せばいい。ボクの操作テクニックなら余裕だからね」
「………」
どうやら真崎は相槌を打つことさえ面倒になったようで黙って話を聞いている。聞いているだけマシだ。
「なんといってもやっぱりこのデスバレルの装填数!!両肩の後ろに弾薬庫を設けることで一度に打てる弾数は驚異の片腕60発。しかも、ガトリングだから銃身を回すことによって威力も爆上がり。それでさ真崎さん、この弾薬庫入るのって何マガジン分?」
「えーと……たくっ、こっち渡したほうが早いな。CCMを起動しろ……よし、今詳細データを送った」
「あざ〜す」
真崎は自分のCCMからレイのCCMへデータが転送した。自分の口で説明するにはデータが多すぎるからだ。
「なるほど、60発が片方に15マガジンか……えーと……合計で……1800発!?……口に出すと恐ろしい数だね」
「そんなに入るのか……インビットの装甲を一発で打ち抜く威力だったはずだぞ……それが1800発?神谷重工マジで恐ろしいわ……」
反応をやめていた真崎も流石に驚いているようだ。
「動かしてもいい?」
「ああ、弾は入ってないから撃つことは出来ないがな。その代わり発射時の動画とそれに伴う分散率、威力の距離減衰など色々なデータもあるからまた送っとくよ」
「了解〜、修正はバトル中にってことだね」
そう言ってレイはCCMを操作し始めた。それに続くようにトロイが起き上がり設置されている机の上を歩き始める。
「姿勢制御バランサー問題無し。試しに本気で……」
レイが呟きながらCCMの操作速度を急激に上げた。その速度はアングラビシダスの時のジンと同等、もしくはそれ以上だ。
命令を受けたトロイはキレのある動きでひたすら走る、跳ぶ、腕を振り上げるなどの動作を繰り返す。その動きは舞にも見える。
「うん、いい反応だ……欲を言えば、普通に走るんじゃなくて、脚部にタイヤをつけて滑るように移動できたら良かったかも。走りながらのデスバレルによる射撃は反動による不安定なロックオンっていう欠点が目立つね。まあそこはPSでなんとかするしかないけど……量産型無人機としてはダメだな。アルテミスに後に再設計しないと」
レイはトロイの良い点と欠点をバラバラに絞り出していく。CCMは携帯電話としての機能もあるのでメモに色々書き込んでいるようだ。
「これ、もしかしてエンジェルスターマックスのデータを流用したりした?明らかに性能が重機寄りなんだけど」
「よく分かったな。この間のエンジェルスターでの山野バン達との戦闘データから、重機の腕の稼働を流用しているらしい。デスバレルはそのガトリング版ってところだ」
「やっぱりか。明らかにLBXの火力を超えてるからおかしいなと思ったよ。バトル用には少しリミッターをかけようかな。流石に強化ダンボールは貫けないけど、ジオラマ外にでた弾が観客に当たって人が死にましたとか洒落にならないからね」
「そこらへんの判断もお前に一任されている。トロイの性能実験ができればいいらしい」
「…………よし出来た」
チェックと調整、それに伴うメモが終わったらしい。CCMに打ち込むのを止めると、真崎にそのデータを送った。
「これを技術班と研究所に提出しといて。どうせアルテミスでまた改善点がバカスカ出てくるからね。後でまた新しいバージョンを用意するさ」
「はいよ。……何書いてあるか分かんねえな」
「まあね〜、あ!!もう一つ書き忘れてた」
「……なんだ?」
ハッとしたように大声をあげるレイに真崎は問う。どうせロクなことじゃないだろうと思いながら。
「多分トロイって普通の人じゃまともに扱えないから、一般隊員に支給するのはやめておいたほうがいいってこと。運用するならインビットを配置してるところ以上の重要拠点に固定砲台として置いておく方がいいってね」
「了解。メモに加えておこう」
「あぁ……楽しみだな〜、早く時が経てばいいのに。目に浮かぶようだよ……多勢の観客の前でボクのトロイが他の全てのLBXだった鉄屑の上に立っている姿が……アッハハ!!」
無邪気に笑うレイの顔は、無邪気さの奥に熱を孕んでいた。
一回の戦闘シーンは長い?
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長い
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短い
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ちょうど良い
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もっと細かく描写して欲しい
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トロイ弱体はよ