お姉さんと妹ちゃん   作:Tico Ruzel

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L211基地で第三部隊のリーダーを任されているG36c。
しかし、彼女の部隊は不本意な二つ名で呼ばれていた。
ひそかに悩みながらも、相談相手にと思っていた
姉のG36はなにやら様子がおかしくて……
困った乙女が愚痴をこぼした人物は、よりにもよって――

〔お姉さんと妹ちゃん〕
第3話「天使に願うプレイヤ」、開幕第1節です!

【作者より】
「スオミさんはお困りです」シリーズのL211基地が舞台となります。
スポットの当たる姉妹キャラはG36とG36cとなりますが、
「お困りです」の違う後日談を別のキャラを主役で書いた感じでしょうか。
もちろん、このお話だけでもお楽しみいただけますよ!



ep.3 天使の叶えるプレイヤ Ch.1

 素晴らしい仲間がいて、尊敬できる指揮官がいて。

 そしてなにより誇れる姉がいるなんて――

 グリフィンの戦術人形としては、わたしは随分恵まれている方でしょう。

 

 実のところ、L211基地はかなり環境がよいと聞いています。

 設備の質もそうですけれど、変わっているのは指揮官の方針です。

 

 わたしたちは、そもそも〔戦術人形(T-DOLL)〕。

 

 IOP社製の民生用ガイノイドを軍事転用させた、間に合わせの兵隊です。それがまともに戦えるのは、銃火器とリンケージすることにより、その銃を扱うのにふさわしい形にメンタルモデルを変容させることで、考え方も戦い方も兵士のそれに変えるからです。

 そして、人形である以上、大きな負傷をしても修理で済みます。たとえ修復不能なレベルで躯体が損なわれても、しかるべきバックアップから予備の躯体を起動させれば、たちどころに復活さえできます。死してなお蘇り、果てない戦いに駆り出される、終末の世のエインヘリャル。

 それが――戦術人形というものです。

 

 でも、L211基地の指揮官、ロゼ・ローズは、真っ先にそれを否定します。

「生き残る前提で戦いなさい。死が前提の作戦なぞ、コイン一枚の価値もない」

 “カサンドラ”の悪名で知られる彼女――ロロの絶対のドクトリン。

 

 グリフィンの戦術教範とは、まったく相反する考え。

 ですが、それは人形の扱いに決して甘いというわけではないのです。

 

 彼女――ロロは、ただ銃を撃つだけの人形であることを許してくれません。

 射撃訓練と同じぐらいの時間、戦術のノウハウを叩き込まれます。

 といっても、講義室に集めて仲良くお勉強というわけではありません。

 

 大量の作戦報告書と共に、たまに紛れ込む課題。「戦術クイズだ!」とポップなロゴで表題の書かれたドキュメントには、一見無茶にしか思えないシチュエーションが記されています。これに期限内に回答を送るのが、勉強の内容なのです。基地に来た当初の人形にはグリフィンの教範が刷り込まれていますから、大概は“間違い”を答えます。

 

 指揮官が尋常でないところは、それぞれの回答に対して、丁寧に添削をしてアドバイスを添えているところです。そして、求めているレベルをクリアしたと判定された人形が次の課程に進むことが許されます。

 

 

 つまり――L211基地に常設されている作戦部隊は、いずれも個人戦闘の技量は元より、頭の中に一見“非常識”な戦術理論を徹底して叩き込まれた人形なのです。

 

 〔指輪の乙女〕――“リングス”と呼ばれる第一部隊。

 〔厄介の妖精〕――“グレムリン”と名高い第二部隊。

 

 いずれも性格の異なる彼女達。けれども、戦場に赴けば必ず勝利を持ち帰り、そしてなにより全員が生還して帰ってくることから――基地ではもちろん、同じグリフィン内部でも「アレはとんでもない」と噂が立つほどです。

 

 まあ、「とんでもない」と呼ばれるあたり、悪名まじりなのですけれど。

 

 

 わたしの誇れる姉――G36は、第一部隊のメンバーです。

 〔指輪の乙女(リングス)〕の一員。

 部隊全員が、指揮官と誓約を交わした特別な人形。

 

 メイド服に身を包み、フリルをあしらったヘッドドレスで髪を飾る。

 それが、彼女の戦装束です。

 

 少々視覚素子が不調なので、目つきこそ険しく見えますけれども――

 あくまでも振る舞いは穏やかで、言動は慎ましく。

 そして、戦闘においてはゆるぎない勁さを見せる人。

 

 正直……わたしには、姉が隊長ではないのが不思議でなりません。

 そのことを疑問に出すと、彼女は決まって微笑んでみせるのです。

 

「指揮官の下で隊長と認められるには、“よくできました”じゃダメなの」

 そして、かならずこう続けるのです。

「だから、G36c――あなたが、第三部隊の隊長なのを誇らしく思うわ」

 

 ええ……たしかに、わたしは第三部隊のリーダーを任されています。

 

 でも、この部隊は常設されている作戦グループではありません。

 先の二つでは手に余ると判断された際、まず編成される予備部隊。

 でも、そのメンバーは必ずしも決まっているわけではありません。

 その時々に応じて、指揮官が最適とされる構成で組まれます。

 

 ただ、どんな編成でも、必ずわたしが隊長だと定められているだけです。

 そんな第三部隊のあだ名は、“パッチワーク”――〔継ぎはぎ組〕。

 指揮官の命名ではありませんが、非公式に広まってしまいました。

 

 もちろん、そんなことでひがんだりはしません。

 戦えば、常設の部隊にだって負けない自信はあります。

 

 でも、基地に戻って、組んでいたメンバーとささやかな打ち上げをして。

 それから、「また機会があれば」とそれぞれに散っていくたびに――

 物足りなく、そして物寂しい何かを感じるのも確かです。

 

 自分が決して間に合わせの存在だと思いたくはありません。

 でも、時々、疑問には思ってしまいます。

 

 わたしは、本当に隊長にふさわしい人形なのか――と。

 


 

 律動的な足音をさせながら、赤いベレー帽の乙女が歩いている。

 黒のジャケットを主体に、黒のブーツを履いた姿はいかにも兵士然としている。それでいて、ミニスカートから覗く白いふとももが目にまぶしく、少し開いた襟元から蠱惑的な胸元が見えていた。

 

 グリフィンの基地を視察に来た正規軍の人間が「ガールスカウトが戦争をやるのか」と憮然としたゆえんである。

 だが、当の彼女たちは意に介さない。

 自分たちの真価と能力は、なによりも指揮官が分かっていれば充分なのだ。

 

 赤ベレーの彼女とすれちがった、別の人形たちが挨拶してくる。

 前を行く人形が軽く手を振ってみせ、後ろの人形が慌てて敬礼する。

 それを見て取って、赤ベレーの乙女――G36cは軽く敬礼で返してみせた。

 

 すれちがってから、ふっと笑みがこぼれてしまう。後ろの子は新入りだった。まっさらなまま、頭にメーカーお墨付きのパーソナリティと、グリフィンの戦術教範を刷り込まれた新人さん。彼女がこの基地に馴染むまでどれぐらいかかるだろうか。

 

「そのためにも、快適な宿舎を用意してあげないと、ですね……」

 G36cは、そうひとりごちた。本来なら副官を務める人形の役目だが、その彼女は本日非番になっていた。指揮官から回ってきた「やっておいてくれると嬉しいな」リスト――別に片づける義務はないのだが、こうした細々した雑務をこなすのはひそかな楽しみになっていた。

 

 こなした後に、指揮官から貰えるささやかなメッセージ。

 決して紋切りでなく、逐一考えているだろう言葉を目にするたびに、感情パラメータがポジティブに弾んで、なにか胸の奥が暖かな感じがするのだ。

 

 さて――開けるべき予備宿舎なら見当はついている。

 正確には、見当がすぐにつく者を知っているべきというべきか。

 G36cが探しているのは、彼女の姉――G36だった。

 

 正確にはG36も非番のはずなのだが、宿舎区画にいるということはいつも通りモップを手にして掃除にいそしんでいるのだろう。予備宿舎が小ぎれいに保たれているのは彼女の趣味によるところが多いのだ。曰く、「掃除はメイドの基本なのだから」と。

 ただ――位置シグナルが、予備宿舎のひとつに留まったまま、うごいていないのが気になるところではある。異状を示すアラートは出ていないのだが。

 

 そうこうしているうちにくだんの宿舎まで来た。

 扉は開いている。その横の壁を軽くノックして、G36cは声をかけた。

「お姉さん、いらっしゃいますか?」

 ひょいと中を覗いたG36cは――姉の様子にぎょっとした。

 

 中はきちんと整えられている。パステルな色合いでまとめられた、ややコケティッシュな内装だ。家具はシンプルながら温かみのあるデザインで統一されており、訓練で疲れた人形がなごむにはなかなか良いだろう。

 そんな中、木製を模したチェアに、G36は腰かけていた。頭のヘッドドレスをはじめとして、白と黒でまとめられたフレンチメイドスタイルの服。冴え冴えしたブロンドの髪が部屋の明かりに照らされて艶やかに光っている。

 

 そして――普段は険のある目つきは、なぜか今は大きく見開いていた。椅子に背を預けて、どこかぽおっとした眼差しで宙を見つめている。そして、モップをまるですがりつくように抱きしめていた。胸の谷間に、太ももの隙間に、挟み込むようにきゅっと抱え込んでいる――ときおり、切なそうなため息をついては、なにかをこらえるようにモップを体に押し当てているようにも見えるのは、いったいどうしたことか。

 

「あの――お姉さん? どこか、具合でもわるくていらっしゃるのですか?」

 妹がそっと声をかけると、ややあって、ぼんやりした声で返事があった。

「……ああ、うん……へいき……ちょっと、デフラグしているだけ……」

 どこか、曖昧な、ぼんやりとした声。

 その声音は――ほのかに色香が漂い、恍惚の色がにじんでいた。

 

「あの、お姉さん? デフラグなら宿舎で横になったほうがよろしいのでは」

 G36cが戸惑い気味に言う。

 戦術人形にとってメモリのデフラグは睡眠に相当する。安全な場所でリラックスできる姿勢で、躯体をサスペンドモードにして行うのが普通だ。具体的には基地の宿舎のベッドに横たわって、文字通り“眠る”などである。

 

 だが、G36は青い瞳をうっとりと潤ませながら、小さくかぶりを振った。

「ダメよ……いま宿舎はFALが使っているから。あの子、わたし以上にまいっていたから、いまごろベッドで悶えているはずよ――あんな調子なのがそばにいたら、さすがにわたしも感情パラメータが不安定になってしまうわ――それに……」

 

 姉は、とろんとした目つきで、妹を見つめた。

「……迂闊にサスペンドモードにしたら、わたしもデフラグ中にどんなみっともない姿を見せてしまうか分からないもの。だからこうして……思考パルスは保ったまま、ちょっとずつデフラグしているの――んくッ……」

 

 話しながら、G36が不意に目をつむった。

 どこか苦しそうな、そして切なそうな声をあげると、モップを抱きしめる。

 合成樹脂の柄が、太ももを割って股に食い込みそうなほどに。

 

「……ああ、どうして? わたしはあれだけ頑張ったのに、声を聞くだけでどんどん昂ってしまって、頭の中がチカチカ光って……ほんのすこしさわられただけで、積み上げた石が他愛なく崩されるみたいに――あの人ときたら……いったい、どんな魔法を使ったというの……?」

 

 うわごとのような声は、熱っぽく、どこか湿り気を帯びている。

 

 ただならぬ様子に、G36cは慌てて第一部隊のログを基地内ネットから呼び出した。

 一昨日まで戦闘任務に出張っていて、帰ってきたばかりだ。

 修復と調整を終えて、昨夜からようやく休暇となっている。

 

 まさか――と、G36cの予測演算が不吉な結果をたたき出す。〔鉄血〕が用いる“傘”ウィルス。グリフィンの戦術人形を汚染する電子攻撃を受けたのではないか。あるいは、別の何か特殊な攻撃を受けたのかもしれない。第一部隊がほんの数か月前に、独断で出動して〔鉄血〕以外の敵と交戦したらしいというのは、基地内ではひそかに噂されているところだ。

 

「あ、あの……調子が悪いなら、なおのことメンテナンス室へ――」

 G36cがおろおろしながら、姉の手に触れようとした時。

 

 不意に、誰かが彼女の肩にぽんと手を置いた。

 振り返ると――そこに立っていたのは赤銅色の髪の淑女だった。

 戦列歩兵を模した衣装。肩に提げた年代物のライフル。

 表情は凪のように静かで、韜晦めいた霧がかかっているようにも見えた。

 その名前を、この基地で知らぬ者はいない。

 

「エンフィールドさん……帰っていらしたんですか」

 名前を呼ばれた淑女は、こくりとうなずいた。

「ええ。長い出張から。G36なら心配いりませんよ。軽く見て回ったのですが、いま第一部隊の方々は、皆こんな感じです。まあ、一日放っておけば、回復しますよ」

 

「……なにか、ご存じでいらっしゃるのですか?」

 G36cが心配そうに瞳を揺らしてみせると、エンフィールドは肩をすくめた。

 

「当事者を前に話すのは気が引けますね。いかがです? 食堂でお茶でも」

 


 

 エンフィールドの前には、ティーカップに入った琥珀色の紅茶。

 G36cの前には、マグカップに入った香り立つ闇夜色のコーヒー。

 

 そして向かい合う二人の中間には、スターゲイジパイが鎮座していた。

 飴色に焼けたパイ生地から、ニシンのたぐいらしい魚が虚ろに宙を見上げている。その数、五尾。匂いこそ香ばしいが、突き出た小魚の頭がどこか恨めしげに見える。

 

「やあ、ちょうど焼きあがる頃合いだったのです――さあ、召し上がれ。ホワイトソースをベースに、塩コショウをたっぷり利かせて、メイプルシロップをアクセントに。他にもいろいろと隠し味を――いや、我ながら、なかなか会心の出来です」

 

 目を細めながら勧めてくるエンフィールドに、

「はあ……そ、それじゃあ少しだけ……」

 戸惑いがちにG36cが答えると、淑女が不満げに息をついた。

「フムン。なぜか皆、わたしの料理は敬遠するのですよね」

 

 そう言って、パイにナイフを鮮やかに入れていった。手早く取り分けると、リクエストとは異なり、かなりたっぷりと切り取られたパイが小皿に載せられた。

 そのまま、G36cの目の前にずいと差し出される。

「ご遠慮は無用ですよ」

 エンフィールドの声はどこまで穏やかだが――有無を言わせぬ圧があった。

 

 G36cは、ためらいがちにフォークでパイを切ると、意を決して口の中に放り込んだ。最初こそふわりと小麦のよい香りがただよったが、噛むと、なんとも言い難い風味が口いっぱいに広がる。単なるマズいとか失敗作とかでは収まらない。三段ぐらい斜め上の味覚としか言いようがない代物――G36cはあわてて飲み込むと、たまらずカップに口をつけた。ただのブラックコーヒーが妙に甘く感じるのはどうしたことか。

 

 エンフィールドの料理は、端的に言えばマズい。

 L211基地では常識というよりも、もはやサバイバルスキルの一つであった。

 

 ちなみに調理した本人は、上機嫌でパイに舌鼓を打っている。

 G36cは淑女に気づかれないように、そっと自分のパイの皿を横に追いやった。

 

「――さてと。あなたがG36を探していたのは、どうしてですか?」

 ぺろりとパイを平らげたエンフィールドが訊ねてきたのに、

「あ……いえ、新人の子が来るので、すぐ使える空き宿舎をお姉さんに訊ねようと思っていたのです。指揮官からのリクエストタスクにあったもので、副官が動けないなら代わりにと思って――」

 そこまで言って、G36cはふいと顔をうつむけた。

「――あと、お姉さんが忙しくなければ、ちょっと相談したいことがありましたから……」

 

「なるほど、ご相談ですか」

「はい。あの……それよりも」

 G36cは顔をあげて、目の前の淑女に訊ねた。

「エンフィールドさんはどうしてあの場にいらしたのですか?」

 

 赤ベレーの乙女に問われて、淑女は「フムン」と声をあげると、

「ひとつ確認ですが――貴女は基地内フォーラムのブックメーカー枠はまったく見ていないのではありませんか?」

「はい……あの、あまり賭け事はちょっと好まないので」

 

「なるほど。でしたら、G36の様子を見て戸惑っていたのもうなずけます」

 エンフィールドはそう言うと、携帯端末を机の上に置いてみせた。

 表示された賭けのフォーラムには“第一部隊と指揮官の熱帯密林の夜!”とカラフルなロゴが表示されている。メインのオッズは「あの子たちは指揮官とヤったかどうか」だが、圧倒的に「ヤった」に票が集まっている。オッズの妙味はむしろ“睦みごと”の内容がどうだったかの個別の賭けに移っていた。

 

 そして、なにより。隠し撮りとおぼしき動画が繰り返し流されていた。

 日時は昨夜のスタンプがついている。指揮官の私室に第一部隊の乙女たちがぞろぞろとやってきて、扉をノックして――出迎えたローズ指揮官はバスローブ姿で、やってきた彼女たちを一人ずつハグしてキスを交わしては、次々と部屋へ迎え入れている。〔指輪の乙女(リングス)〕のメンバーはそれぞれにめかしこんでいた。うっすら窺える表情からは、誰もが期待に待ちきれない、という様子だった。

 これで“何もなかった”と考えるのはどだい無理というものだろう。

 

「な、ななな……なんですの、これは!?」

 G36cが目を白黒させるのを前にして、淑女は紅茶をすすってから答えた。

「なんでもなにも。わかっているのはこの動画と、あとは今日の第一部隊の様子ですよ。G36だけではありません。ほとんどのメンバーが概ねあの調子。ぽわぽわした感じでメモリのデフラグに追われています。よほど昨夜に“濃厚な体験”があったと見えます」

 

「の、濃厚な体験って何ですか!?」

 身を乗り出さんばかりに訊ねてくるG36cに、淑女はやれやれと首を振った。

「それが分からないのです。聞き出そうにも彼女達はご覧の通り――いやまあ。約一名、元気一杯にレクリエーションルームでヘヴィメタルを歌っている子がいましたがね。詳しく聞こうとすると、実に朗らかに『内緒です!』と言われまして」

 そこまで言って、エンフィールドは肩をすくめてみせた。

 

「困ったことに、わたしは今回のオッズでは、まったく美味しいところに噛めなくて――しかも面倒なことに〔見届け人(ウォッチャー)〕に指名されたのです。実際は何があったのか――というより“どんなナニが繰り広げられたのか”を調べる役回りになったのですよ。まあ、あらかたつかめてきた感じですが、これは本丸の指揮官に問いたださないとダメなようです」

 淑女は軽くため息をつくと、カップから紅茶を一口飲んだ。

 

 G36cは顔を赤くしていたが――ややあって、顔をうつむけた。

「お姉さんが……ちょっと羨ましいです」

 

「……おや、オンナ六人で入り乱れてのアツアツにご興味がおありで?」

「ち、ちがいます! そうではなくて――」

 赤ベレーの乙女は、そっと口元に手をやった。

 

 自分の人差し指をそっと自らの唇につけると、切なそうに言葉を漏らした。

「どんな体験であれ、仲間と一緒に味わうことができて――そ、それに指揮官からこんな招待をされるのは、それだけ大切にされている証拠ですもの……」

 

 単なる情動でも、色っぽい話に当てられたわけでもない。

 G36cの声は、それと片付けるには、あまりに寂しそうな声だった。

 

「……わたしは、本当に指揮官に信頼されているのでしょうか……」

 

 その言葉に、エンフィールドは答えない。

 ただ、すっと目を細めて――乙女の頬を優しく撫でた。

 




次回第2節は明日20:00に更新予定です!

指揮官室を訪れるリー・エンフィールド。

指揮官であるロロはちょっと様子がおかしいようだが……

曲者淑女と変態才媛は悩める乙女について相談するが、はたして?

どうぞお楽しみに!
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