ボーイズバンド『chat noir』ーー彼らはガールズバンドが世の中に浸透するなかで颯爽と現れた。多くの青少年や女性から数多くの人気を得、その人気はボーイズバンドにおいて一位二位に入る程の超人気バンド。
彼等の特徴は何と言ってもバンドメンバー全員が
そんな彼等五人は『Circle』の下にあるカフェで練習終わりの会議をしていた。
メンバーを紹介しよう!
まず、ホワイトボードを片手に真ん中に座っているのはボーカルの
彼はメンバーの中心的な存在で、歌の上手さはトップレベル!彼の歌は人を何処か引き付ける魅力があると言われる。そして他のバンドと違うところは彼の歌声のバリエーションの多さだろう。爽やかなイケメン声に明るい地声、荒々しい歪んだ声の三つを出すことができ、歌う曲のカテゴリーを広げている張本人である!
つづいてリーダーの左右にいるのはベースの
小栗のベースギターの腕前は才能を感じられ、プロにも負けないレベルだと話題になっているくらいだ。だが、彼の最大の魅力は彼が所々に出す笑顔であろう。彼の笑顔は爽やかイケメンがするような優しい笑みで、その表情に女性達は虜になってしまう人が多数いるといい、密かにファンクラブが出来るほどはあるという!
一方の海月はギターの使い慣れさ、明石と二人で歌ったりとメンバーの中でも特殊な位置にある。彼の演奏はアクションがかなり激しく、かっこいい。そのため彼の演奏はボーイズバンドのギターリストの鏡とまで呼ばれている。
そんな三人に対するは
そんな彼等は今、ここで重要な事を話そうとしてー
「明日、皆で打ち上げをしようと思うんだけど!」
「「「「異議なし!」」」」
いなかった。
…
「いや〜、昨日は本当にお疲れ様だよ〜」
明石は喜色を浮かべて言う。だが、言葉とは裏腹に本人には疲れの色は一切見受けられない。
「全くだな。はぁ……あの日は本当は家でゴロゴロダラダラしていたかった日なのに」
「兄さん、休日はいつもそれでしょ」
溜息をついて愚痴を漏らす家守に対し、朧は慣れた様子でツッコミを入れる。実際、朧の言うことは正しく家守は何もなければ一日中外にも出ず引きこもってゲームをしたり、ベッドでゴロゴロしている。そのため彼は唸るだけでなにも言えない。
「まぁ、今月は初旬にかなり入っていたからね。ここらで休息を入れるのも良いかもね」
「そうだな。いい加減休まないと、流石に死んでしまう」
海月は自分用に買った十五枚入りクッキーを食べる。過度の甘いもの好きの彼は、どんどん食べていき、あっという間に残り二枚までなっている。
「それにしてもこのクッキーおいしいな。紅茶とよく合う」
「あ、俺もクッキー食べたい!」
明石は身を乗り出してクッキーを何か期待した目で見る。彼の特徴的な犬の耳のようなアホ毛もぴょこぴょこ振っている。
そんな明石の様子に気づいたのだろう。クッキーへと延ばす手をぴたりと止める。
彼は少し考えると、残りのクッキーを明石にそっと差し出す。
「いいの?」
海月はこくりと頷く。
「わぁ〜!ありがとう海月!」
明石は嬉しそうに残りのクッキー二枚をあっという間に食べた。
「じゃあ、そろそろ本題に移るよ!皆分かっていると思うけど、今日の会議はこれだ!」
明石は胸ぐらいの大きさの真っ白なボードにマジックを使って書いていく。
ホワイトボードにはこう書かれている。
『chat noirライブ打ち上げ会☆何をしようか会議!』
皆さん、思った事だろう。なんだこの会議は?と。
分かる。ナレーターもそう思っている。
しかし、お願いだから理解して欲しい!彼等はこの月に入ってから平日休日問わず昨日あった大きなライブの為に徹底的に練習に時間を費やしたのだ。そのため、メンバーとしても何かやって自分達の頑張りに報いるものがないとどこか報われない気持ちになるのだ。この会議はそのためのものなのだ。
「とは言え、何をしようか?」
「やっぱし、そりゃあ家でゴロゴロと『兄さん?』はい、すみません」
「じゃあさ!」
明石は嬉々としてホワイトボードに書く。
「遊園地行こうよ!楽しいよ!」
「「却下」」
海月と家守は明石の言葉が終わってすぐに反対する。明石は幼い子のような不服の声をあげる。
「どうしてさ二人とも!」
家守は、遊園地に立って並ぶのはごめんだ、と思いながら、
「遊園地なんて休日がえぐいことになるぞ。やめておけ」
海月に関しては、本人自身がそもそもジェットコースターが苦手で、一回友人と共に行った遊園地ではジェットコースターが乗るのが怖くて、何回もトイレを言い訳にして乗らないほとだ。ついでにこのことはメンバーには秘密にしている。
そんな彼も家守に同調し、
「その通りだ!明石休日の遊園地は混んで大変なんだぞ!」
割と必死で喋った。
結局、二人の猛反対から遊園地に行く案はなくなった。
「じゃあ、これで出揃ったかな」
明石はペンを置き、内容を見る。
ボードには映画館に家で一緒にゲーム、そして先程廃案となった遊園地が書かれている。
どうやら、あのあと映画館かゲームの二つが出たらしく、あとはそれを決めるだけのようだ。
明石はドラマに出てくるような社長のようにボードをバンと叩き、一同を見る。
「じゃあ、この二択以外はないね?」
明石の言葉に皆は首を縦に振る。
いや今別に叩く必要なかっただろ、そんな思いを抱きながら。
「じゃあ、何で決めようか?」
「そうだね……じゃあ」
小栗が言葉を切りだそうとしたその時。
誰かの携帯電話が鳴る。
音源はどうやら海月の携帯からだった。
「悪い、電話だ」
海月が席を外す、と同時に誰かが明石達の席に向かって来る。
長い黒髪にスーツを着こなす女性。歳は彼等と比べると明らかに年上なのは目に見えて分かる。
「邪魔するよ〜」
「あ、まりなさん。どうしました?」
小栗にまりなさんと言われた女性は『あはは、実はね』と、右手に持っているポスターを皆に見せる。四人はそれぞれが顔を近づけてそれを見る。どうやらcircle内でバンドのライブがあるというお知らせらしく詳しく詳細が書かれていた。参加する組は八組。ポスターの下の方に参加するバンドの名前が書かれており、いずれも四人が知っている名前ばかりだった。
彼女は言う。
「実はね、このライブの関係者がうちでライブするバンドに興味を持っていてね。そこで、いくつかのグループを誘ったのだけど……」
この時、リーダー以外は察した。彼女がこの後、何を言うのかを。
そして……自分達のこの会議が全くの無駄に終わることを。
「出るはずの一組が急遽出られなくなっちゃったんだよね。だから、お願い!その子達の代わりに出場してくれない?」
「分かりました〜!」
リーダーはさっきまでの会議の事は何処へやら。彼は了解の返事を容易く出してしまった。
実は明石という男、頼まれたら二つ返事でオッケーを出してしまう奴なのだ。そして、それを知っている彼女は困ったら明石の元へとお願いする。つまり分かっていてやっているのだ!これが世に言う確信犯というものか。
「それじゃあ、頼んだわよ!じゃ!」
彼女は他のメンバーから反論される前にさっさと行ってしまった。
明石と事を知らない海月以外の三人はこれでまた休みが潰されることを知り、遠い目をする事しかできなかった。
ついでにこの後、電話から戻ってきた海月はライブの件を聞いて、ただ一言
「oh……」
とだけ言った。