シャングリラ・フロンティア ~Side:Alinoiyu~ 作:ゆくゆく
◆ ある
これは私のお仕えする方の想いではなく、私個人のどうしようもない感傷で、されど、無視することは出来ない心の叫び。ですから多少の不義理を働いたとしても私はここにいるのです。愛おしきあの方のお心をお守りすべく・・・
◆
というわけで私、有野由衣は絶賛学校ズル休み中でーす・・・・・・
「はぁ・・・」
自分の何もかもが嫌になる。好意で言ってくれたザーイド君の感謝も跳ね除け、お母さんにまた心配をかける。先生だって心配しているだろう。そうやって周りのことを何も考えないで自分の心のままに動く。過去から何も学んでいない、何も変わらない自分が嫌になる。
昨日、シャンフロをログアウトした私はそのままベッドに頭をうずめ、自己嫌悪をはじめとしたドロドロとした感情を抑えられないでいた。優しい言葉をかけてくれた、けれども私の心を傷つけた彼に対する憤怒。彼は私のことなどどうでもいいのだという諦観。その他もろもろの感情が絡まり合い、醜いツタとなって私の心を縛る。
気づくと朝になっていた。ほとんど寝た気がしない。学校に行く気力もない。今日は休んじゃおう・・・
そして今である。
「はぁ・・・・・・」
やっぱりシャンフロはダメだ。的確に私の心を抉ってくる。もうシャンフロ辞めようかな・・・
ピンポーン
軽快なインターホンの音が響く。誰だろう。今日は家に誰もいないから私が出なきゃ行けないんだけど・・・居留守を使おう。
ピンポーン ピンポーン
誰もいませんよー、帰ってくださーい。そう心の中で言う。
ピンポーン ピンポー ピンポ ピン ピピピピピピピ
うるさいな!?誰だよー、行きたくないよー、ってか怖いよー・・・
だるい体を引きずりながら玄関に向かう。
「えーっと・・・ってあれ、執事さんだよね・・・」
覗き孔から見えた姿は今世界で2番目くらいに会いたくない人の顔だった。何で我が家を知っているのか、なぜここに来たのか。様々な疑問が頭の中で渦をまく。
「有野さん、いらっしゃいますよね?早急にドアを開けてください。」
バレてる。怖ぁ・・・
ちょーっとだけ、ちょーっとだけドアを開けて話しかける。
「・・・あのー、なにか御用ですか?というかなんでうちを・・・」
「お話があるのですがまず上げてくれませんか?玄関先でと言うのもなんですし。」
ええ・・・(困惑)さすがにそこまでリアルで親交のない人を家にあげるのはないよねぇ・・・
「えっと、そのお話っていうのはここで出来ませんか?」
「できないことは無いですが、長くなりますよ?」
「いえ、大丈夫です。ここでお願いします。」
・・・嫌になったらドア閉めよう。
「・・・では。まずひとつ言っておきたいのはここに来たのはお坊ちゃまの命令ではございません。私個人の意思で来ました。」
えっ、初っ端からおどろいた。てっきり昨日のことでの
「私はお坊ちゃまが10歳の頃より旦那様に仕えておりました。そして今に至るまでの5年間、片時もお坊ちゃまのそばを離れたことはありませんでした。」
なんか語り出した。これ長くなるのかなぁ・・・
「そんな顔をしなくてもそう長くはなりませんよ。」
「ですが、その5年間でお坊ちゃまはどんなに豪華な食事を食べても、どんな遊びをしても心からの笑顔を見せることはありませんでした。」
見透かされてるっ・・・!にしてもザーイド君が心から笑ったことがない?かなり表情豊かに笑ってたと思うんだけど・・・
「そんなこともあり、私はとても驚きました。日本に来て、有野様と出会ったお坊ちゃまは私が今まで見た事もないような笑顔を浮かべていたのですから。」
え・・・?
「有野様の過去に何があったか、詮索する気はございません。ですが、一つだけお願いを。あの日以来今に至るまで、お坊ちゃまが終ぞ浮かべることのなかった心からの笑顔。どうかそれが損なわれないようにして欲しいのです。」
そう言って、執事さんは深いお辞儀をしたあと帰っていった。でも、私に何が出来るのだろうか。人を傷つけることしか出来ない私に・・・
その後私はどこにもない答えを、行き場の無い感情のぶつけ場所を探すべく、電子の海をさまよっていた。どこそこのアイドルが結婚した。芸能人が問題発言して炎上している。北欧で見つかった超巨大ナマコによって飢饉の村が救われた。そんな当たり障りのないニュースが並んでいる。
現実逃避をするのはもうやめようか。そう考え、ネットを落とそうとした時一つの動画が目に入る。
『冥響のオルケストラ攻略!?ツチノコプレイヤーサンラク』
きっとどこかの誰かが上げたのであろうその動画に自然と私の意識は吸い寄せられていった。これを見れば答えが見つかるかもしれない。そんなどこか漠然とした思いがあったのだろうか・・・私は自然とその動画を再生していた。