シャングリラ・フロンティア ~Side:Alinoiyu~ 作:ゆくゆく
「はぁ…」
(シャングリラ・フロンティア。まさかまたやることになるなんて…)
彼と別れ、家に帰ってきた私はしまいこんでいたヘッドギアを前に何回目かも分からないため息をつく。
(でもいつまでもうじうじしてらんないよね、あの時結局謝れなかったサンラクさんに謝るチャンスなんだから…それにザーイド君にも激励してもらったし…)
「…よしっ、やろう!」
私を激励してくれた優しい彼の顔と言葉を思い出しながら頬を軽く叩いて気合いを入れ、何回も繰り返してきたゲーム開始時のルーティーンをとる。そうして、私は三度目となるシャンフロの世界へと足を踏み入れるのだった。
◆
消えていた肉体感覚が戻ってくるのをきっかけに目を開く。
「あー、そういえばあのレイドモンスターに殺されたあとログインしてないんだっけ…」
あのレイドモンスター、『彷徨う大疫青』。私がシャンフロをやめた原因のひとつ。うう、思い返すだけで気持ち悪くなってきた。ゲームの中とはいえあんな死に方を何度もしたくないからってやめたんだっけ…
(はぁ、もうやめたくなってきたなぁ…)
そのまましばらくその場で唸っていたが、ふと、あることに気づく。
(ひょっとして意外と注目されてない?っていうか忘れられてる?)
ゲームを始める前はプレイヤーネームでばれて変な人に絡まれる心配とかもしてたんだけど…流石にもう数ヵ月も前のことだし皆忘れてるのかな。
そう考えると沈んでいた気持ちが少しラクになった。まぁ、細かいことを気にしないようにしたとも言えるけど。
(っていうかザーイド君との待ち合わせ場所はファステイアだから早くいかないと!)
ここ、サードレマからファステイアまではセカンディルと言う町をはさんでそれなりの距離がある。もう長いことシャンフロをやっていないことを考えると戦闘の腕も衰えてるだろうし、急ぐに越したことはない。
(確かサードレマからセカンディルへのエリアのボスは
結局、何を忘れてるかは思い出せずそのままセカンディルに向かうことにした。あとから考えると、バカだなって思う。たぶん久しぶりに降り立ったシャンフロの世界でちょっと気が動転していたんだろうけど、少しでも下調べをしておけばよかった…
◆
「あんのクソ土竜、ぶっ殺す!!」
途中までは順調だった。所詮二つ目の町のエリアボス、一時期はシクセンベルトを活動拠点にしていた私にとってはたいした敵ではなかった。そう、途中までは…
(あぁぁぁあ、もう最悪だよ!あんなんソロで避けようがないじゃん!)
(はぁ、約束の時間に間に合うかなぁ…)
ザーイド君との待ち合わせにはまだ時間があるとはいえ、あまり遅れたくはない。
(うう、デスペナもあるしちょっと厳しいかも…)
ただ策がないわけではなかった。泥掘りはあの打ち上げ攻撃がなかったらそんなたいした敵ではなく、その打ち上げ攻撃もフォローしてくれるパーティーメンバーがいれば簡単に対策ができる。つまり、臨時パーティーでいいからメンバーを募集すればいいだけの話だった。問題は過去に問題を起こした私なんかをパーティーに入れてくれる人がいるのかって話だけど。
(でも約束だし…とりあえずパーティー募集掲示板を見に行こう。)
◆
(ほとんど利用したことなかったけど、意外と募集が多いんだね。)
サードレマの冒険者ギルドに入った私はそんな感想を抱きながら、募集を探す。
(盗賊募集、魔法使い募集、ピエロ募集…うーん、なかなか魔法戦士募集ってないのかなぁ…)
というかピエロの募集があって魔法戦士の募集がないってどう言うことよ…
(あっ、これなんかいいかも。)
『
シャトルランというのは知らないが、初心者OKと言う点がありがたい。別に初心者じゃないけど、ブランクがあるから。早速申し込もうと、申し込む…?
(これどうするんだろう。)
まさかこんなところでぼっちプレイの障害が出るとは…恐るべしシャンフロ。まぁ、ギルドの人に聞けばいいか。
「あのーすいません。パーティー募集に参加したいんですけど…」
そう声をかけたとき、横から声がかけられる。
「オイオイオイ!晒し屋のアリノイユさんじゃねーの!!」
それが原因でシャンフロを一度引退した呼び方で、
何よりもそう言われることを恐れていた呼び方だった。