シャングリラ・フロンティア ~Side:Alinoiyu~   作:ゆくゆく

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ある少年の想い

 「はぁ・・・」

 

 何回目かも分からないため息をつく。

 

 「お坊ちゃま。お気持ちはわからなくもないですが、いつまでそうしてるつもりですか。辛気臭い。」

 

 確かに自分でもあまり良くはないとは思っているがいくらなんでもその言い方はないんじゃないかな。私は一応お前の主人なんだけど。

 

 それを言ってみると、「私の雇い主は旦那様ですよ」だって。全く・・・少しは悪びれろ。

 

 「はぁ・・・」

 

 自然とため息が漏れる。自分でも驚いてる。それだけあの少女・・・有野さんに入れ込んでいるということなのだろうけど。

 

 「うあー」

 

 「全く・・・お坊ちゃま?はしたないですよ。いつまで枯れ果てたセイウチみたいにベッドの上で転がってるんですか。」

 

 何だよー、枯れ果てたセイウチって・・・

 

 「・・・ねー、セバスチャン。」

 

 「何ですか?有野様に謝る言葉を考えて欲しいとかはお断りですよ?」

 

 うぐっ・・・どうやらこの執事には私の思考はお見通しらしい。

 

 「はぁ・・・」

 

 何度目かも分からないため息とともに今までのこと、そして人生で1番輝いていた今日のことを思い出す。

 

 

 

 私はアーキル・ザーイド。今でこそ父様が成功し石油王の息子なんてものになっているが、昔は貧困も貧困。その日の食事にすら困るレベルの貧困だった。その時代のことはあまり思い出したくはない。でも母様と父様、そして私の3人で頑張って暮らしていた。

 

 変化があったのは、私が10歳の時。父様が偶然未開発の油田を発見した。当然我が家は大騒ぎ。そしてしばらくが経つ頃には無事貧困を脱していた。セバスチャンが雇われたのもその頃。父様が私にはお前を守る力がないから力を持った人を雇ったって言ってた。

 

 そこから年月は流れ5年後、父様の事業は大成功。巨万の富を有していた。私は石油王の息子として恥のない振る舞いをできるようにセバスに作法を仕込まれていた。そこまでしなくてもいいとは思うけど。そして、そんな毎日の中、ある日私は全身に電流が流れたかのような衝撃を受けることになる。

 

 『有名プレイヤー、サンラクによるユニークモンスター「冥響のオルケストラ」討伐動画』。ある動画サイトに上がったその動画は瞬く間に世界中に広がった。前々からシャングリラ・フロンティアに興味はあったが、この動画を機にその気持ちは大きく高まった。日本に行ってこのゲームをしたい。普段ほとんどわがままを言わない私の滅多にないお願いを聞いて、父様も母様も喜んで認めてくれた。

 

 そうして私は日本に渡った。一時的に転入する学生として。そして、転入した学校で私は運命の人に出会うことになった。あれを一目惚れというのだろう。明るいように見えてどこか影のある、常に何かに脅えているかのような雰囲気。その保護欲をそそられる姿に私の心はいとも容易く撃ち抜かれた。

 

 運良く隣の席に座れた私は、早速彼女に話しかけようとした。でも、何を話しかけようか。私はそこでシャンフロの話を選んでしまった。話しかけた直後、ああ、これは間違いだったなと悟る。とても分かりやすく彼女・・・有野さんの雰囲気が攻撃的で拒絶的なものに変わったからだ。その後、授業が始まると話は終わらせられたが、きっとこれ以上話したくは無いのだろう。

 

 どうしても諦められなかった。有野さんとシャンフロがしたい。自分でもちょっと驚いてる。ここまで自分がムキになるなんて。放課後、有野さんに話しかける。断られるかなって思ってたんだけど、サンラクの名を出した瞬間有野さんの態度が変わった。サンラクに何かあるのだろうか。ひょっとして元彼だったり・・・?そうだとしたら、嫌だな・・・その後、有野さんにシャンフロに誘われた。まさか向こうから誘ってくれるなんて!もちろん二つ返事でOKした。今日からのシャンフロ生活が楽しみだ・・・!

 

 最悪だ。一体今日一日でどれだけ彼女の地雷を踏み抜けば気が済むのだろうか。いや、正直お礼を言っただけであそこまで過剰反応されるとは思ってなかった。よっぽど過去に辛いことがあったのだろう・・・

 

 

 

 「あー、学校行きたくない・・・」

 

 今日のことを考えると明日学校で有野さんと顔を合わせるのが気まずすぎる・・・でも謝らないとなぁ・・・

 

 「何言ってるんですか、ちゃんと学校に行くって旦那様と約束したでしょう?」

 

 分かってるけどさー。はぁ・・・学校行きたくない・・・

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