無個性最強の傭兵親子   作:八代 悠斗

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不穏な研究を続けている研究所を鎮圧するために戦地へ赴いた親子。親子そろっての戦いが幕を開ける。


研究所鎮圧戦

「はぁ……。まためんどくさそうな仕事を取ってきたんだな、父さん。」

 

 

 

「そうだな。ま、かと言って無視することもできない内容だからな。」

 

 

 

「……それには同意する。」

 

 

 

今、歳の離れた2人の男がとある研究施設を近くの見晴らしのいい山から見下ろしていた。

 

1人は、オールバックに纏められた髪と、隆起した筋肉がはっきりと分かる黒いシャツと背中に背負った大剣が特徴的な渋い男。

 

もう1人は先の男とはかなり歳の離れた若い青年で髪には白いメッシュが入っており、腰には2本のハンドガン、加えて2本の刀と腰につけているものよりも大きめのハンドガンを留め具でまとめてハンドバッグのようにして左手に持っている。

 

先ほどの会話から2人は親子なのだろう。

 

 

 

「ここではどうやら人間のサイボーグ化の研究をしているらしい。そのためにあらゆるところから人を攫ってはその人たちを無理矢理サイボーグ化しているようだ。」

 

 

 

「で、その研究所の鎮圧が今回の依頼ってことか。」

 

 

 

「そういうことだ。…ったく、こういうのは警察とかヒーローに依頼して欲しいってもんだ。俺はただのしがない無個性なんちゃって傭兵だってのに…。」

 

 

 

「父さんは無個性とは思えない強さを持ってるからな。それに個性で人を差別したり見下したりしないからより信頼される。良いことだろう?」

 

 

 

「個性で差別されるのがどれだけ辛いかはよく分かっているつもりだからな…。それに、それをいうならお前だって同じだろう?無個性とは思えない強さを持ち、だからといって驕ったりしないし、周りを見下したりしない。」

 

 

 

「……そうして生きてきている人がずっと近くにいたし、その人の背中を見て育ってきたからな。」

 

 

 

「……そうか。」

 

 

 

どうやら2人は『無個性』と呼ばれる人種のようだ。

 

この世界では『個性』という特殊な能力を持っている事が当たり前の世界である。だからこそ彼らのような個性を持たない人間は下に見られがちであり、ひどい扱いを受けることもある。彼らもその被害を受けたうちの1人である。

 

だからこそ、この父親は若くから自分を磨き鍛え上げる事で個性持ちの人間に負けない程の強さを手にし、物心ついた時からそんな父を見てきた息子も父に倣うように自分を鍛え上げてきた。

 

そんな彼らは今では自身の仕事をする傍ら、知る人ぞ知る無個性最強親子として傭兵業にも似た仕事をし生活をしている。今回の仕事も懇意にしてくれているクライアントから依頼されたものである。ちなみに普段は父親は小説家、息子は学生として生活しながら小遣い稼ぎ程度ではあるがイラストレーターとして活動している。

 

 

 

「悪いな、こんな嫌な仕事に巻き込んじまって。」

 

 

 

「俺が好んでついてきてるんだ。父さんが気に病む事じゃない。むしろついてくることを許してくれている父さんには感謝しかない。そのおかげで俺は強くなれてるんだから。」

 

 

 

「そうか……。よし、じゃあ行くか、相棒。」

 

 

 

「了解。」

 

 

 

そして、2人は崖から飛び降りた。研究所で行われている非道な研究を終わらせるために。

 

 

 

 

 

 

「こちらが今回の研究で完成した被検体No.1093-CP007になります。」

 

 

 

「ほぅ、こいつがそうか。」

 

 

 

「こいつは殺人だけを目的としたかなり危険なサイボーグとなっています。なんせもとになった人間が無差別大量殺人を犯した凶悪なヴィランですから。」

 

 

 

「それでいい。対ヒーロー兵器として使うのならばそれぐらいのものでなければ意味がない。」

 

 

 

この研究所に巣食っているヴィランと研究者の会話だ。どうやらヒーローを倒すための兵器としてサイボーグを開発しているようだ。そのためにどれだけの人の命が失われたのだろうか。被検体No以上の命が失われている可能性は低くないだろう。

 

 

 

「ククク……、楽しみだなあ。不殺が信条のヒーローはこいつらが元々人間だと知れば殺すことはできない。一方的に嬲り殺せるってわけだ。ヒーローたちが絶望する顔が目に浮かぶぞ!!」

 

 

 

「残念ながらそうはいかねえなぁ。」

 

 

 

「あん?誰だ?」

 

 

 

ヴィランが目を向けた先、そこには先の父親が立っていた。

 

 

 

「誰だてめえら!!なんでここまで来れた!?警備のサイボーグがいたはずじゃ……!!」

 

 

 

「そいつらなら全員倒したぞ。」

 

 

 

そう言って父の後ろから息子が現れ、手に持っていた警備兵人型サイボーグの首をヴィランの足元に投げ捨てた。

 

 

 

「な、な……なんて奴らだ……。ヒーローは不殺が信条なんじゃないのか……?」

 

 

 

「残念ながら俺たちはヒーローじゃないんでね。別に不殺は信条じゃねえのさ。必要であれば誰であろうと斬る。そういう人間さ。」

 

 

 

「ヒーローじゃないだと……?じゃあお前らは何者だ!?」

 

 

 

「そうだな…。通りすがりのしがない傭兵さ。」

 

 

 

「ふざけやがって……!!CP007!!こいつらを始末しろ!!」

 

 

 

彼らの言葉に腹を立てたヴィランがサイボーグに指示を出す。しかし、サイボーグは動かない。

 

 

 

「おい!!なんで動かない!!完成したはずじゃねえのか!?」

 

 

 

「そんな……!ちゃんと動くはずじゃ……。」

 

 

 

なかなか動かないサイボーグを見て研究員とヴィランが焦り出す。しかし間も無くしてサイボーグの目が赤く光り出した。

 

 

 

「なんだちゃんと動くじゃねえか。驚かしやがって……グッ!?」

 

 

 

しかしサイボーグは動き出したと同時にヴィランの首を掴み安安と持ち上げた。そして、空いた手から甲高い金属音を鳴らしながらチェーンソーが現れた。

 

 

 

「おい!!待て、殺すのは俺じゃない!!やめろ!!」

 

 

 

ヴィランが必死に叫ぶ。しかし、サイボーグにその言葉は届いていないようで、チェーンソーの切っ先をヴィランに向けた。

 

 

 

「やめろ!!やめてくれ!!あ、あ……ガァァァァァァァァァァッッッ!!!」

 

 

 

サイボーグは一切の戸惑いもなくチェーンソーでヴィランの腹を貫いた。そして、流れるようにそのままチェーンソーを振り上げヴィランは真っ二つになった。

 

 

 

「ひいぃぃぃぃぃぃっっっ!!!!」

 

 

 

殺されたヴィランを見た研究員は完全に腰を抜かしていた。そして、サイボーグはそんな研究員に狙いを定め、チェーンソーを振り上げた。

 

 

 

「あ……あ……。」

 

 

 

自分はここで死ぬ。そう悟った研究員は静かに目を閉じた。しかし、いつまで経っても金属がぶつかり合う甲高い音が聞こえ続けるだけで、斬られた感触が来なかった。不思議に思っているときゅうに体に浮遊感を感じ、物凄い勢いで自分の体が移動した。

 

 

 

「お前はここにいろ。俺と父さんであいつを倒す。」

 

 

 

青年の声が聞こえ目を開ける。どうやら助けられたようだ。青年が視線を向ける先では、サイボーグのチェーンソーを大剣で弾き続ける父親の姿があった。

 

 

 

「なぜ、私を助けた……?」

 

 

 

「お前には色々と話を聞きたいからな。死なれては困る。……少し眠ってろ。」

 

 

 

その言葉とともに研究員の首に衝撃が走り、彼は意識を失った。どうやら気絶させられたようだ。

 

 

 

「父さん!!援護する!!」

 

 

 

青年はそういうと、腰につけたハンドガンを一丁抜き、走りながら連続でサイボーグに向けて発砲した。全ての銃弾がサイボーグの頭に命中しサイボーグが怯む。

 

 

 

「いい腕だ!!」

 

 

 

そう言って父親は舞を踊るように大剣でサイボーグを連続で斬り付ける。しかし、ダメージは与えているようだがまだ倒すまでには至っていないようだ。その証拠に身体から血のようにオイルを垂れ流しながらも平然とチェーンソーをこちらに向けている。

 

 

 

「中々しぶとい野郎だ。」

 

 

 

「確かに。ただ、長期戦は避けたいところだ。」

 

 

 

「そうだな。なら一気に行くぞ。ついてこれるか?」

 

 

 

「当たりまえだ。なんせあんたの息子だからな。」

 

 

 

「そうだな。それも、『自慢の』な!!」

 

 

 

一斉にサイボーグに向かって駆け出す2人。そんな2人に向かってサイボーグはチェーンソーを振り下ろすが……

 

 

 

「オラァッ!!!」

 

 

 

父親がそれを思い切り大剣で弾く。かなりの勢いでチェーンソーを弾かれたことによってサイボーグは大きく体制を崩した。

 

 

 

「『炎戒・一文字』」

 

 

 

そこに息子が炎を纏った刀で横一文字の斬撃を放つ。

 

 

 

「『ブレイド・ダンス』」

 

 

 

そして流れるように父親が剣の舞をはなつ。

 

 

 

「『炎舞・火龍の舞』」

 

 

 

そして父の斬撃の合間に息子も舞うように斬撃を加えていき、2人で舞を踊るように連続攻撃を与えていく。絶え間ない斬撃によりサイボーグは完全に身動きが取れなくなる。

 

 

 

「そろそろ仕上げといこうか!!」

 

 

 

「了解。」

 

 

 

「『グランドクロス』」

 

 

 

「『炎戒・十文字』」

 

 

 

2つの光と炎の十文字の斬撃がサイボーグを襲う。そして、サイボーグは大量のオイルを流しながらその場に前のめりに倒れ込み動かなくなった。完全に機能が停止したようだ。

 

 

 

「……ふぅ。終わったな。お疲れさん。」

 

 

 

「ああ。父さんもお疲れ。」

 

 

 

「研究員は?」

 

 

 

「あっちで眠ってる。」

 

 

 

息子が指差した先には、口を大きく開けて涎を垂らしながら眠っている研究員の姿があった。

 

 

 

「何てだらしねえ寝顔だ……。」

 

 

 

「そろそろ警察やヒーローがくる頃だ。あいつを突き出してさっさと帰ろう。」

 

 

 

「そうだな。」

 

 

 

 

 

 

研究員を担いで外に出ると、見計らっていたかのように警察とヒーローがいた。そして、そのうちの何人かがこちらに走ってきた。その中にはあの有名トップヒーロー、平和の象徴ことオールマイトもいた。

 

 

 

「君たちがここの研究所を鎮圧したのかい?」

 

 

 

「そうだが?」

 

 

 

オールマイトの問いに平然と答える父親。

 

 

 

「何もヒーローじゃない君たちがこんなことをしなくても…!!彼なんてどう見たってまだ学生じゃないか!!」

 

 

 

「問題ない。見ての通り無傷だ。」

 

 

 

息子を見て矢継ぎ早にそう述べるオールマイト。しかし、息子もそれに対して平然と言葉を返す。

 

 

 

「無傷だからいいというわけではないだろう!!」

 

 

 

「そうは言っても俺たちも頼まれた側の人間だからなぁ……。」

 

 

 

「頼まれたって……、いったい誰に?」

 

 

 

「それは私だよ。」

 

 

 

そう言って年配の男が現れた。

 

 

 

「お、よう、やまもっちゃん。頼まれた通り研究所は鎮圧したぜ。」

 

 

 

「ああ、ありがとう。助かったよ。」

 

 

 

「お久しぶりです。山本長官。」

 

 

 

「ああ、久しぶり。君もお疲れ様。」

 

 

 

「な、なんで警察庁長官のあなたがここに?」

 

 

 

「それは私が彼らにこの研究所を鎮圧するよう依頼したからだよ。オールマイト君。」

 

 

 

そう、彼は警察庁長官である山本 忠文。彼こそが今回この親子に依頼を持ちかけた張本人なのだ。

 

 

 

「彼らの実力はトップヒーロー並みだからね。それにこう言ったことに関してはヒーローである君たちより彼らの方が頼りになる。彼等には嫌な役をやらせてしまうことになってしまったがね……。」

 

 

 

「気にしなくていいさ。俺とやまもっちゃんの仲だろう?」

 

 

 

「そういうことです。山本長官はお気になさらず。」

 

 

 

「ありがとう。あとは私に任せてくれ。報酬もちゃんと払っておくよ。」

 

 

 

「おう、それじゃあな。」

 

 

 

「失礼します。」

 

 

 

そう言って親子はそこから立ち去っていく。その後ろ姿を山本長官は優しく微笑みながら見送っていた。

 

 

 

「……山本長官、彼等は一体何者なのですか?それに、サイボーグになっているとはいえ元々人だった相手を殺しているのに……。」

 

 

 

「……確かに元々人だったサイボーグを彼等は殺した……。だが、完全にサイボーグ化した相手を元の人間に戻す手立てはあるのかい?」

 

 

 

「それは……。」

 

 

 

オールマイトは何も答えられなかった。機械になってしまったものを人間に戻すなど不可能なのだから。

 

 

 

 

「今回私が真っ先に彼等を頼ったのはそれが理由だ。不殺を信条とするヒーローではサイボーグを止めるのは難しい。もちろん不殺が一番いいということは分かっている。だが、現実はそう簡単にはいかないこともある。

 

そういう意味ではこんな汚れ役を彼等に押し付けてしまっているということは本当に申し訳なく思うよ。」

 

 

 

「………………。」

 

 

 

「オールマイト、君も彼等のことは覚えておいた方がいい。ヒーローもいつかは彼等に頼ることになるかもしれない。」

 

 

 

「………………。」

 

 

 

「彼等の名前は『黒崎 宗吾』と『黒崎 凪』。無個性最強の親子さ。」

 

 

 

「無個性最強の……親子……。」

 

 

 

これはヒーローになんの興味もない無個性の親子が今のヒーロー業界に、そして、個性社会に様々な影響を与える、そんな物語である。




警察庁長官はオリジナルです。ご了承ください。
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