「は、海外に出張!?」
「そうみたいだね〜」
俺が帰ってくると、オペレーターの一人、国近さんが辞令の紙を渡してくる。俺が隊長を務めている部隊『アサシン』は端的に言うと独立部隊である。上が暴走した場合、ストップをかけるために存在している。そのため、この部隊にいる人間は俺がスカウトした人しかいない。
上からの命令はあまり来ないのだが、たまにくる命令はうちの部隊とは別の精鋭部隊『シャドウ』では対処できない場合のみくる。
「で、どこの国?」
「フランス〜」
のんびりとした口調で話す国近さん。彼女はこう見えて俺より年上だ。仕事もできるが、かなりのゲーム狂で、たまにゲームのやりすぎで業務中寝ていることがある。
「それで、いつから?」
「ん〜来た飛行機のチケットはこれ〜」
「ほう、ん?あと一時間しかねぇじゃん。やべっ、国近さん、今出てるやつには言っといて。後、俺がいない間は明日奈さんに指揮権譲渡しといて!それじゃ!」
うちの部隊にいる俺以外のマスクドライダーシステム保持者の一人である結城明日奈さんに指揮権を譲る旨を伝え、家に急いで走る。
「ただいま」
「ふっ、帰ってきたか」
「あー、総兄、すぐにでるから」
「また、仕事か」
「まあね」
俺はトランクに服を詰め、机の引き出しからパスポートを引っ張りだし家からでる。この間、約10分。ドーラおばさん、40秒は無理っす。
はあ〜遅刻、遅刻♪飛行機に遅れちゃう♪
「あら、神司じゃない」
「あ、シノノンか」
「あんたがそのあだ名で呼ばないで。寒気がする」
「おい」
家から出た俺に話しかけたのは俺の部隊の明日奈以外のライダーである朝田詩乃。俺とは同い年だ、めずらしく。
「で、なんで急いでるのよ?」
「そうだった、海外出張で空港まで行かないと!じゃ、指揮とかは明日奈さんに任せたから、頑張って!」
時計をみれば飛行機の時間を見るとバイクを走らせてギリギリといったところだろう。俺は詩乃と喋りながらバイクのエンジンをつける。
「あ、うん。って、海外出張なら早めに言いなさいよ」
「同、感」
バイクを走らせ空港を目指す。
この飛行機逃したら自腹なのだろうか。それはいやだ。
そんなくだらないことを考えながら空港に向かった。
◇◇◇
「海外出張ですって!?」
神司が受けた辞令の紙を見て明日奈は叫ぶ。彼女は明日から有休を使う予定だったが、神司がいないとなると出勤すべきだろう。明日の予定を更地にしなくてはならない。
(はぁ、パンケーキ食べいこうと思ったのになぁ)
「で、国近さん。他には何かない?」
「うーん、特にないけどマスクドライダー1号のカブトが現れたぐらいかな」
「結構なことじゃない!?で、カブトゼクター所持者はゼクトに?」
「入ってないみたいだよ〜」
「はあ」
ため息も吐きたくなる。ゼクトはゼクトに所属していないライダーを許さない。その捜索にシャドウが駆り出されて、その時にうちと会って口喧嘩が始まると思うと、今のうちから疲れがくる。アサシンとシャドウは仲が悪い。パーフェクトハーモニーを信条としているシャドウと自由気ままを体現しているアサシンは犬猿の仲だ。
◇◇◇
「フランスについた」
棒立ちになりながら神司は呟く。急いで用意したせいでフランスの地図はない。さらに言えば、今は深夜だ。
「泊まる場所ねぇじゃん」
ゼクトからきた辞令はフランスにでたワームを片付けてこい、だ。日本以外でワーム以外がでることは珍しい。まあ、気づけてない可能性もあるけど。イギリスではなんかサソリのライダーがワーム相手に無双してるらしい。何それ、こわい。
「さてと、何をするかな、あ!?」
伸びをしてるとビュンッと風の音がなる。その数秒後、ガキンガキンと金属同士が当たる音が鳴り響く。
「まさか、ね」
音の鳴っている方向へ足を進めていくと一つの廃工場へとたどり着いた。
「ウェッ、なんかでそうだし、やだなぁ」
いやいやながら、廃工場の中に入っていくと、
『RIDER BEAT』
「はあああ!」
俺がそこで見たのは成虫型ワームに拳を叩きつけているライダー。確か、コーカサスだっけ。ディエンドのコンプリートフォームにいたはず。
コーカサスの必殺のパンチが決まり、成虫型ワームが爆散する。コーカサスが変身を解除すると中から現れたのは金髪の少女。
「はあ」
見てしまったものは仕方ない。てか、あの成虫ワーム、俺が始末せんといかんかったやつかもしれん。
「よお」
「!」
話しかけると金髪少女の肩がビクッとなる。それとちゃんとフランス語で話してるからな。
「誰?」
「俺の名前は天道神司。俺は天の道を往き神を司る男らしい」
「何それ」
「話聞きたいんだけど、いい?」
「これでいいと言うと思うの?」
「じゃ、じゃんけんで勝てたら俺に話と寝床を提供してくれ」
「なんか増えてるけど、いいよ。それで」
「「じゃんけん、ぽい」」
俺はグー、相手はチョキ。
「俺の勝ち。なんで負けたか明日まで考えといてください。ほな、また明日」
「はい?」
「13年後くらいに日本で流行る言葉、気にしなくていいよ。てことで寝床、プリーズ。後、君の名前は?」
「シャルロット・アンリ。お兄さんは日本人?」
「そうだよ」
「なら日本語でいいよ。話せるし」
「お、そうか。フランス語より日本語のほうが楽だしな」
母国語はまじで使いやすい。ペラペラと話せる。当たり前か。
「で、寝床は?」
「ついてきて」
俺がシャルロットの後ろをついていくと町外れに出て行く。そして、そこにあった赤い扉が特徴的な落ち着いた雰囲気な家の前で立ち止まる。
「ここ、僕の家」
シャルロットちゃんは僕っ子ですってよ、皆さん。
「おう。それで」
「?」
「?」
「まさかとは思うが」
「お兄さんの寝る場所もここだよ」
「ダメです」
「うーん、でも今からホテルは取れないと思うけどなぁ」
「大体、親御さんが許してくれないでしょ」
「…親はいないよ」
「っ!すまない」
「別にいいよ。気にしてないし」
ん?てことはこの家に今住んでるのってこの子だけ?てことは尚更泊まったら駄目じゃん。
「早く入りなよ」
「いや、なんでそう簡単に誘えるかなぁ」
「お兄さん、そんな度胸なさそうだし」
何の話かわからない。
「だから大丈夫だよ。入りなよ」
「大丈夫もクソもないんだが」
「いや、そこらへんで寝とくから」
俺が指さしたのは地面。俺はどんな場所でも寝れる。
「いや、地面に人を寝せる趣味ないしさ。入ってよ、寝る部屋、別なんだから」
それならいいのか?
「わかった。入る。だからその拳を下ろせ」
こうして俺はシャルロットの家に泊まることになった。