パワフルプロ野球ポケット 〜両利きのエース〜   作:人類種の天敵

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芹沢真央

一年の秋頃に出逢った少女は、自分の名前を芹沢真央と呼んだ。

 

ぼうっとしていて何を考えているかよく分からないその子とは学校から帰る時やランニング中などでよく顔を合わせる様になった。

 

ある時はスキヤキと名付けられた猫の腹を撫で回していたのを見かけた。ある時は山の中からボロボロの状態でいるのを家に連れ込んで介抱し。ある時は俺が栄作爺さんにしごかれているのを木の上から眺めていた。

 

「……ヒーローの特訓?」

 

「何でだよ。どう見ても野球の練習だろ」

 

何十本と地面に刺されたカカシの頭をバットでフルスイングする栄作爺の特訓をしつつ彼女の疑問を否定した。

 

「昨日爺に新しい投球フォームで投げて打たれて自信無くしたから今日はバッティング練習やってるんだよね」

 

カカシは大小それぞれ背が高かったり低かったり、顔の部分も大きいものや小さいものがあり、俺は目の前の太々しい面構えを施されたへのへのもへじに向けてバットを振り抜く。

 

ごおん。

 

鈍い、寺の鐘を鳴らした様な音を立ててカカシがぶらりぶらりとえび反りをする。

 

硬い棒ではなくゴム製の支柱を手に入れたソイツは何度か体を逸らすと元の背筋をピンと伸ばした姿勢に戻る。

 

「はぁ。42点」

 

今のスイングに評価点をつけよう。

 

振ったバットはカカシの顔の真芯上部を叩き、鈍い感触と共にお前の打撃はまだまだだなとその顔は俺を見つめていた。

 

これが実戦だったならゴロを引っ掛けて居るはずだ。

 

「爺曰く真芯を打ち抜けば土から棒ごと引っこ抜けるんだと。だから今回のはハズレ」

 

今のスイングを修正する様にバットを振るうと、次は別のターゲットへ向かう。

 

素振りを繰り返したために出来た2つの足跡の定位置へ、外角低め、得意なコースに設定されたソイツは、さっきのカカシと比べると既に顔の布はボロボロの土塗れ。

 

ーー今回も地面にキスさせてやるよ

 

カーン!!

 

いい音を鳴らしたカカシはズボッと引き抜けた棒と一緒に十メートルをくるくる飛んでボチャッと地面に着地した。

 

いい音と叩いた感じについ口角がにやけてしまうのを感じながらくるくるとバットの頭を回す。

 

レフト方向に流し打ちで弾き飛ばしたカカシをまた土に突き刺してグリグリと埋める。

 

これで通算20本塁打、まあ、外角低めのこのカカシだけの記録だけど。

 

「簡単に言えばコース別のバッティング練習ってヤツかな」

 

ちょうど良い高さの切り株に腰を下ろした真央ちゃんにそう言ってやると、彼女はポーカーフェイスのその顔でボソリと呟く。

 

「そう、てっきり怪人を殴り殺す特訓かと思った」

 

「いや、何でだよ。怖いわ」

 

つーか怪人ってなんだよ……と呆れる。

 

でも他所から見ればあながち間違いではないのかも知れないと気の抜けたスイングを振りながら思う。

 

ピューーー

 

「あっ」

 

「………」

 

その時丁度いいそよ風が吹いた。

 

汗ばんで暑い身体を丁度良く冷やすと共に切り株に腰掛けている彼女のスカートさえも翻したそれに感謝しつつ、さてバッティングの練習だと真央ちゃんから背を向けた俺の脳内にはあの一瞬で永久保存した彼女の下着が貼り付いていた。

 

「えっち」

 

「な、なななな何のことかな!?」

 

慌てて振り向くその先で真央ちゃんの美しい回し蹴りがホームラン叶わなかったあの内角高めのカカシを草むらの向こうへと蹴り飛ばしていた。

 

ーー場外ホームラン

 

おみごと!の掛け声もいざ知らず恐怖に本能が警鐘を鳴らして地面に飛び土下座をかます俺。

 

ーー真芯で当てても引き抜けるまではいかないあのカカシを場外へ持っていくなんて、この子本当に何者???

 

許して欲しかったら明日私についてくること。と無機質な瞳をしながら言った真央ちゃんに仰せの通りにと従いつつ、俺の頭の中は回し蹴りの際にまた見えた下着を脳裏に焼き付ける事で精一杯だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………で、なにこれ」

 

俺は今真央ちゃんとデートに行く予定だった目的地で手にバットを構え、縄に吊るされた複数の丸太に周囲を取り囲まれていた。

 

??????????

 

全く事情を把握出来ていない俺の正面で目を光らせた真央ちゃんが徐に丸太を掴み俺に向かって全力投きゅうおおおおおおあおおおおおおお!!?

 

ブォン!

 

「あぶねええええええええ!!?」

 

とっさに地面へスライディングした俺の頭の上を唸りを上げて丸太が通過した!

 

急になをする気だよこの子と真央ちゃんを見ると遠心力で加速している丸太を大したことないと受け止めた真央ちゃんが首を傾げていた。

 

「?なんで避けるの?これじゃあ訓練にならない」

 

「いや、だからなんの」

 

ブォン!

 

「話を聞けええええええええええええ」

 

横っ飛びのヘッドスライディング!心臓がバクバク言ってんだけどマジでこの何始める気だよオイ。

 

「バットで打ち返すことで強くなるって書いてた」

 

(え!?何!?漫画!?小説!?フィクションを真に受けないで!)

 

しかしいつも無表情の顔を綻ばせ目を輝かせている真央ちゃんにそんなことを言えるはずもなく、俺は足元のバットを掴むと気合の声を張り上げて丸太を睨みつける。

 

「やってる!やれば良いんだろ!」

 

「その調子」

 

「うおおおおお!!やってやぐへっ!?」

 

ちょ………待っry

 

 

 

 

ドカドカドカドカバゴベキボコバコベコゴキャ

 

 

 

真央ちゃんの特訓は熾烈を極めたものだった。

 

振り子の遠心力に加えて真央ちゃんのとんでもパワーで放たれる丸太はその迫力と恐怖を増して近づいて来る上にそれをバットで迎え撃とうとするもバットが当たった瞬間に丸太の勢いに負けてバットが手から弾かれるのだ。

 

そうなるともう俺に出来ることはブランブランと断頭台の様な丸太にぶつからないよう飛んで跳ねて避け続けるのみだ。

 

ーーいや、怖いわ!

 

「数を増やす」

 

「お願い待って!?」

 

ちくしょう!?泣いて懇願したのに本気で丸太追加しやがったよあの子!しかも2個一気にぶん投げて来た!あぁ〜死んでしまう〜〜〜!!

 

「死にたくないよおおおおおお」

 

バットを掴む。立ち上がる。向かって来る丸太に向き合う。丸太の角度から引っ張る方が良いのか流す方が良いのかを瞬時に判断する。構える。そしてバットを振る。

 

コーン

 

「ーーーーえ?」

 

「……その調子」

 

自然と身体が丸太を打ち返していた。

 

「……次」

 

横合いから向かって来る丸太の音を耳が捉えた。

 

思考するよりも早く身体が動く。

 

グルンと身体が回転すると同時に丸太の真芯に向かって既にバットが振りかぶられていた。

 

コーン

 

良い音が鳴ったと思えばぶつかる直前の丸太は遠くへ遠くへと離れていく。

 

「?」

 

不思議な感覚だ。

 

まるで、今まで何回もやって来たかのように、身体が丸太の打ち返し方を知っていた。

 

既に丸太の数は5本を超えていた。

 

決して同時に向かって来ることはないものの、何故かドリル回転していたりスライダーやフォークなど変化球のようにその軌道を変えたりと明らかにおかしい様子だったにも関わらず俺は全ての丸太を打ち返すことが出来ていた。

 

「うん。これなら怪人とも戦える」

 

「何でだよ。いや戦わないからね」

 

真面目な顔でアホなことを言ってる真央ちゃんを半目で睨む。

 

 

 

『ーーパワプロ』

 

『ーー君は……誰?』

 

 

 

視界が朧ろげに霞んだ。

 

目の前にいるはずの彼女が突然消えてしまった感覚に背筋を凍らせ、慌てて右手を突き出す。

 

「真央ちゃん!」

 

もにゅ

 

「パワプロ?」

 

怪訝そうな真央ちゃんの声が耳に入ると、霞んでいた視界が急速に色付いていく。

 

「良かった。居たんだね!」

 

「?」

 

真央ちゃんの呆れ顔、それを見るだけで何故かひどく安心してしまう。

 

「パワプロ、それより……離して」

 

「え?」

 

もにゅもにゅ

 

「こ、この感触は」

 

果たして俺は真央ちゃんを掴もうとするあまり、彼女の慎しげなお胸さんをがっしりと掴んでいた!!

 

「ま、真央ちゃん」

 

「なに」

 

「ちゃんとご飯食べてる?」

 

「……大きなお世話」

 

ゴス

 

真央ちゃんがブレたと思ったらふと視界が暗転とする。

 

最後に見たのは真央ちゃんの虫を見るような冷たい瞳とスカートから覗く白地に猫の刺繍が施されたパンティーーーー

 

「ばか」

 

 

 

 

 

 




ーー???を思い出した。
バットエンドルートNo.???を回避します。

ーーバッティングフォームを思い出した。
「神主打法」を思い出しました。

ーー流し打ちのコツLv1.2.3を思い出した。
流し打ちを思い出しました。

ーーやる気が10上がった。
調子が絶好調になりました。

体力が70減りました。

ーー芹沢真央の好感度が10上がった。
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