パワフルプロ野球ポケット 〜両利きのエース〜   作:人類種の天敵

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早く学園編に行きたい


花と猫とピクニックと魚

 

ズドン

 

コケコッコ〜〜〜!!

 

ズドン

 

「……うぅん。もう、朝ぁ?……ふぁ」

 

まだ日の登らない朝方。

 

パワプロことパワ村風太郎の父、パワ村降史は朝っぱらから家の庭から響く息子の壁当ての音と飼っている鶏の鳴き声に目を覚ました。

 

「……引っ越す前は寝坊が当たり前だったくせに環境が変わればこんなにも違うのか……」

 

寝起きの身体と頭でふらつく身体で外を見ればまだ肌寒い時間帯の筈が全身汗まみれでボールを投げる息子の姿がある。

 

自分で土を持ってきて整備したマウンドに立ち、山の横にはボールを沢山入れた籠が所在なさげに佇んでいる。

 

そして今、ふぅ、と息を吐いたパワプロが豪快に両手を首の後ろへ持っていくと、そこからまるでスローモーションのように腕を、足を、腰を、全身をゆっくりと動かしていく。

 

脱力した身体のはず。

 

しかし地面に対して一本だけ残された右足は爪先立ちをしているにも関わらず一切の揺らぎを見せず、通常よりも短めに刻んだ左足のステップはされど力強く大地を踏み抜き、リボルバーの撃鉄が雷管を強打するように左肘を思い切り背中へ突き出せば、限界ギリギリまで引き絞られた長くしなやかな右腕がまるで鞭のように風を斬る。

 

ズッドン!

 

「シッ!」

 

中学1年の冬の時点で既に身長180㎝に届かんとする規格外の体躯と長い手足、更に祖父の栄作によってしごかれたストレッチによって手に入れたとても柔軟な関節。

 

それらを活かして放たれるストレートは高高度から一気に壁に描かれた四隅の真ん中低めへと鋭く突き刺さる。

 

「ふぅっ、ふぅっ、ふぅーーーー」

 

ぐるんぐるんと癖のように腕を回す我が息子のピッチングを見て、降史は苦笑する。

 

(まあ田舎だしなぁ。野球しかやることないし)

 

打者のはるか頭上から振り下ろされ、足元目掛けて叩きつけられるストレートに自身の息子ながら軽い身震いを覚えつつ日課の準備を始める。

 

(あんなえげつないもの投げて耕し投法なんて名付けるもんだから笑っちゃうよな。センスがあるんだかないんだか)

 

さて、と背筋を伸ばして骨を鳴らした降史は妻を起こすと自身はサンダルを履いて家の裏手にある花壇に向かって花に水をやりつつ鼻歌を歌う。

 

「ふんふふんふふん」

 

ポケットに手を突っ込み片手間に水をやるのは花壇に咲く9本の紫色の花。

 

降史が生まれる前から咲いていたと言われるこの花達は田舎から出た時と変わらない姿で降史一家を出迎えてくれた。

 

その中で一本だけ他と比べると背丈の低い花がある。

 

この9本目の花は息子のパワプロが生まれた際に彼の掌に花の種が握られていたと病院の看護婦から伝えられていた摩訶不思議な種子で、それを受け取った栄作がパワ村家の伝承を語ると共に植えたものだ。

 

曰く、その花はある1人の男が植えたものであると。

 

 

1つは右投げを極めた男の花

1つは変幻自在の左投げ投手だった男の花

1つはパワーを追い求めた男の花

1つはどんな球でも狙い撃つ男の花

1つは猫よりも俊敏に駆け抜けた男の花

1つは観客を魅せる美技を持った男の花

1つはどの距離にも届かせる強靭な肩を持つ男の花

 

そして1つは、とにかく諦めの悪く、黒猫と野球を好いた男が咲かせた花であると。

 

 

栄作の口からその話を聞くたびに1人の男ではなく複数の男達が植えた花になるし9本目に至っては息子の花なのでは?と首を捻るが「そうであってそうではない。これらは1人の男が植え続けたものよ」と英作はいつも最後にそう締めくくるのだ。

 

 

 

「この花だけ他と違ってどんどん成長していくんだよな」

 

まだまだ背丈は低いものの、恵の水と太陽の光を燦々と浴びる紫色の花は何処までも伸びていこうとする気概を感じる。

 

「ま、こんなものか。さぁて飯、飯。……んん?」

 

区切りよく水やりを切り上げようと顔を上げるといつの間にそこに居たのか、花壇の横に1人の女の子が腰を下ろして9本の花を見つめていた。

 

「おお、芹沢ちゃんじゃないか。おはよう」

 

「……ぺこり」

 

「おおい!パワプロ!芹沢ちゃんが来てるぞ!」

 

「えー!?分かった親父!あと10球で終わる!」

 

返事代わりにボールが壁を撃つ音が聞こえた。

アレは当分終わらないヤツだろう。

 

「すまんなぁ。あいつがああなると時間がかかるぞぉ。先に朝ごはんを食べるから芹沢ちゃんも来ると良い」

 

「……ふるふる」

 

小顔を横に数度震わせまたパワプロの投球練習を眺め始める少女に息子も良い嫁さんを連れてきたものだと何故か誇らしくなってしまう。

 

(……小柄な見かけによらず芹沢ちゃんは結構食べる子だから母さんには朝ご飯を多めに作ってもらうとするか)

 

 

この後神速の箸使いでご飯を平らげ、栄作爺と一騎討ちの唐揚げ争奪戦が熾烈を極めることを降史は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

今日は真央ちゃんとピクニックだ。

前回のように山の中に連れて行かれて丸太をバットで打ち返すような予定は無い正真正銘のピクニック。

 

「ここらでご飯を食べようか」

 

「うん」

 

木々同士がちょうど良い距離を保っているのか、眩しくも暗くも無い塩梅の木漏れ日が照らす地面に2人が座れる大きさのシートを敷いてそこに座る。

 

今回ピクニックに来た山はパワフル村の昔話に登場する野球の神様のお社があるとされる山だ。

 

なんでもこの山の何処かに祠があり、そこに奉られている野球の神様に出会うことが出来れば何か一つだけ願い事を叶えてくれるのだとか。

 

しかし邪な気持ちで神様に願い事をしようとする者には神様を守る番人にボコボコにされてしまうらしい。

 

「ん〜この炊き込みご飯美味しいなぁ。噛めば噛むほど味が出るっていうか」

 

「ん、私も作るの手伝った」

 

「ほんと?美味しいよ真央ちゃん」

 

ふんす、とドヤ顔の真央ちゃん可愛いなぁと2人で昼飯を食べていると、近くの茂みからガサゴソと音がする。

 

(兎かな?)

 

この辺に熊や危険な動物が出るという話は聞かないのでご飯の匂いに釣られた小動物だろうと見当をつけて見ればそこに立っていたのは緑色の服装にオレンジ色のマフラーをつけ、何故か頭に魚の被り物を被った変人野郎だった。

 

「?????????」

 

「………」

 

「こんな所で俺様に遭遇するとは運の無い奴らだなぁ。俺様は怪人だ!」

 

「いや、なんで魚の被り物被ってんの?山の中でそのチョイスはおかしいだろ」

 

「お前の突っ込むところもおかしいけどな!な、何故こんなとこに怪人が!?って言うとこだろ!」

 

「いや怪人ってなんだよ」

 

「はっはっはっはっはっは!!!」

 

魚の被り物を被った男は高笑いをすると俺と真央ちゃんを指差し「まずリア充カップルがイチャイチャしているのを見るのは腹が立つ!ここらの水源に毒を入れてミネラルウォーターを毒水に変える前に彼氏の前で女を犯してやるわ!」と無謀にも真央ちゃんに飛びかかろうとしてきたのだが。

 

「……邪魔」

 

「ゲベーーッ!!?」

 

鋭い蹴りを顎先に蹴り込まれて魚野郎はダウン。

そのまま何処からか取り出した縄でグルグルに拘束されてしまった。

 

「ぐ、ぐぐぅ。ミネラルウォーターを毒水に変えて、ここらに噂される野球神とやらを調査にしに来たつもりがこんな根暗そうな貧乳ロリに負けるとは!」

 

「……野球神は怪人の相手はしない」

 

とあるワードが気に食わなかった真央ちゃんにその後もフルボッコにされて魚野郎は白目を向いて失神した。

 

やはり真央ちゃんは強いというかなんというか。

 

「行こ。パワプロ」

 

「え?あれ、この人置いてって良いの?」

 

「怪人だから良い」

 

「いやその理屈はおかしい。あと怪人ってこの人の中学二年生的な病気で言ってるだけだから」

 

「くす、そろそろ中学2年生になるパワプロが言うのは変」

 

「うーん。いつも思ってるけど真央ちゃんって笑う所おかしくない?」

 

くすり、と笑う真央ちゃんは珍しいぞと顔を覗き込めば真央ちゃんは「知らない」と言ってそっぽを向きながら走る。

 

(うっひょー!デートしってるぅ〜!!)

 

「お、ぉぉーぃ俺を忘れるなぁ〜〜?」

 

余談だが山頂で休憩していたらどうやって抜け出したのかまた魚野郎が出て来たのでキレた真央ちゃんに谷底から投げ飛ばされていた。

 

 

 




ーー?????が使用されました。
?????が無くなりました。

ーー耕し投法を思い出しました。
専用の右投げフォームを思い出しました。

ーー芹沢真央の好感度が5上がりました
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