冒険者は笑う   作:海亀

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 はたから見ても分かりやす過ぎるほど動揺した神様(馬鹿)がバイトの打ち上げ(ほんとうにあるのだろうか?)に向かってから少しするとクラネルから声をかけてきた。

 

 「そのですね、ご飯食べに行きませんか?テッド」

 

 「どうしたんだ急に?外で食うとなれば必然的に高くつくだろうし、まだまだ駆け出しの俺達からすると、そういう少しずつの出費をおさえたほうがよくないか?」

 

 「実は、朝にシルさんという人に魔石を拾ってもらいまして、そのお礼もかねて行きたいなぁって思ってたんですよ。

 どうですかね、神様も羽を伸ばしてくればいいって言ってくれましたし、行きませんか?」

 

 異世界の知識について信仰と呼べる程に盲信しているテッドがその理由を忘れているはずがない。

 しかし、態々理由を確認したのは少しでも節約すべきだ、ということも本心はであったからだ。

 

 「そう言う事ならそうするか。」

 

 だが、節約ばかりしていては気が滅入る、とも認識していたのでそんなに強くは反対しなかったのであるが。

 

 そうして店についたはいいが、着いて直ぐにアイズ・ヴァレンシュタインに見ほれ、横から見ていても気持ち悪い程動揺しているクラネル(童貞野郎)の姿といえば、ベル・クラネルを愉悦の対象にしているテッドでさえ少し引くほどである。

 テッドとしてはそんなクラネル相手にさしたる変化も見せずに接客している店員に対して少しだけだが感心していた。

 

 そうして皆がいい感じに酒がまわり始め、気分も高揚しだしていた時、ロキ・ファミリアのメンバーの一人であるベート・ローガが大声で今日あった出来事を話していた。

 

 「アイズ、お前が5階層で始末しただろうミノタウロス。そんで、ほれあん時いたトマト野郎あいつ最っ高に笑えたな!」

 

 ソレを聞いて、偶然その店にいたクラネルは身を震わせた。彼が言っているガキとは恐らく自分の事だろうと思っていたのだ。

 

 「兎みたいな白い髪でよぉ、壁際に追い込まれて震えてる姿だけでも笑えたのに、アイズがミノタウロスを倒した時にその返り血を浴びて! 叫びながらどっか行っちまって…うちのお姫様助けた相手に逃げられてやんのおっ!」

 

 そう言い、ローガは腹を抱えて大爆笑した。

 

 クラネルは彼の姿を見て怒りと屈辱、そして情けなさを感じていた。

 

 見ると他のロキ・ファミリアのメンバーは一様に大爆笑していた。

 

 笑っていなかったのは彼の想い人であるアイズ・ヴァレンシュタインと、オラリオ最強の魔法使いであるリヴェリア・リヨス・アールヴだけであった。

 

 「ベート、いい加減にしろ。 そもそもあのミノタウロスは我々が仕留め損ねた残党…彼に謝罪することはあれ酒の肴にする権利など無い。」

 

 そんなローガを見かね、アールヴは彼を止めようと話しかける。

 しかし、ローガは彼女の言葉を完全に無視し、さらにヴァレンシュタインに詰め寄っていく。

 

 「じゃあ聞くけどよアイズ…お前はアイツと俺、相手にするならどっちがいいんだよ?」

 

 「…少なくとも、そんなことをいうベートさんは嫌」

 

 「はんっ、嘘言うんじゃネェよ。 自分よりも弱い奴を求める女が何処にいるかよ。 アイズにあんな雑魚は相応しくねぇんだ!」

 

 頭の片隅が削られていく音がする。遂にクラネルは我慢できなくなってしまった。

 目から涙を流し、我も忘れて店を飛び出して行った。

 

 そんな光景を見ていたテッドとしては笑いを堪えきれないでいた。

 

 「ハッハッハ――いやぁ、もう、やめっ―――ハーハッハッハ!」

 

 「なんなんやわれぇ、さっきのお前の仲間や無かったんかい。」

 

 ロキとしても気味が悪かった。仲間のはずの少年が笑われているにもかかわらず素知らぬ顔で笑っている少年が。

  

 「いやっっンなこと言われてもッ――クッククク、ハーハー。でなんでかって言われても、あんだけ笑える話聞かされて普通にしてろって言うほうが無理ってもんですよ。」

 

 「笑える話と言っても仲間の話だろう、君はなんとも思わないのか」

 

 見かねたアールヴが注意したとしてもテッドの態度は何も変わらなかった。

 

 「いや、その俺の仲間でいの一番に笑っていたのはあんたらでしょう。それに、それだけじゃない。こんな大勢の前で告白して振られた最強(笑)の戦士様までいるんだ。最っ高の酒の肴だろう!」

 

 「どうだ、うちのトマトとそこの噛ませ犬の二つで朝まで飲み明かさないか?今なら俺の秘蔵の知識、そうだなぁケルト神話のアイルランドの伝説であるフィオナ騎士団についてでもおしえてやろうか?俺の創作じゃあ無い本当の神話だ!」

 

 その瞬間、無言でローガが殴り掛かってきたが、それを上回る速さで団長であるフィンがローガを押さえ付けた。

 

 「なにすんだ!団長!」

 

 「よすんだベート、元々はこちらが彼の仲間を侮辱したんだ、非はこちらにある。

 それよりも興味深い話をしていたね。是非とも教えてくれないかい?」

 

 知識をよりどころに己が上位存在であると確信しているテッドが、その貴重な知識を態々教えたのはこのためだ。

 いくらlevel5が騒いだところで6には逆らえない、それを利用するためである。

 

 「いや~、すいません。殴られかかって頭が冷えたんですけども~仲間がおそらくダンジョンに向かったと思うので助けに行かないといけないんですよ。すいません、今回はこれで帰らせていただきますね。」

 

 「待ってくれ、ダンジョンには団員を向か…」

 

 そう言うとテッドはフィンの言葉の途中であったが代金(クラネルとの二人分)だけを置いて一目散に走りだした。

 勿論ダンジョンには向かはない。ロキ・ファミリアの団員に見つかるからである。

 そもそもテッドはそう易々と知識をわたすつもりはないのだから当然である。テッドはそうして悠々と別の酒場で一夜を過ごしたのであった。

 

 因みに、と言うより蛇足だが、ベル・クラネルは3階層でテッドを探していたロキ・ファミリアの団員(男・モブ)に見つかりホームに送り届けられ、フィンは作り話にしては、実に具体的な地名などを語っていたテッドに悶々としつつ一夜を過ごすことになった。

 

 




 フィンとしても本当かどうか分からない話(殆どの団員の認識としては作り話)を語る男を探すことはしませんでした。
 ロキに聞いたとしても嘘は言ってなかったような気がするレベルです。そこまで意識して聞いていなかったので。
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