冒険者は笑う   作:海亀

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 さて、もうすぐ祭りが始まるということはクラネル(童貞野郎)のチート武器獲得イベントが始まるわけだが俺はそれに関与するつもりは無い。

 何故かと言うと、まぁ旨味も面白味もないからだ。

 

 考えてもみてほしい、仮にナイフを盗ったところでよく分からんが、神が何かをする必要が有るから使えないうえに、見学するにしても駆け出し冒険者でも殺せるゴリラVS主人公様(チート野郎)の死闘(笑)っていう結果の分かり切ったショーがあるだけだ。

 モチベーション上げてけって言うほうが無理があるってもんだ。

 

 

 

 

 「よう、テッド。なんだぁその貧弱な武器は?中層に連れて行ってくれって言ったのはてめぇだろうが。」

 

 そうつぶやいたのは鉄製のメイスを持った薄汚い大男だった。

 そこかしろで暴言が飛び交うような、けれど決して場末とはいいがたいところにある酒場。

 ほんの僅かとはいえ朝早くから酒を飲みつつ、大男は目の前の優男の姿を見て語りかけた。

 

 「金がねぇのか?仕方ねぇなぁ、祭り期間中の特別サービスだ。昔俺が使ってたメイスをやるよ。お前も確か棍棒使ってるって、この前言ってただろ、テッド。」

 

 するとテッドは大男の隣の席で朝飯を食らいつつ、普段の内心からは想像もつかないような明るい声で答える。

 

 「いやぁ、助かるよクラウス。只得さえ駆け出しだっていうのに、祭りのせいで大体の物が割高になってるんできついんだよねぇ」

 

 現状を嘆くような言葉を口にしていると、テッドの友人である大男は酒を飲み干し、あきれたような目つきで口を開く。

 

 「そんな事分かり切ったことだろうが。仮にも中層に行くってんだからそれくらい注意しとけよ。」

 

 「あはは…そうするよ…」

 

 ばつが悪そうに目を逸らす友人に対し、大男は呆れたように頭を振りつつ、ため息を吐き出した。

  

 

 テッドとクラウスは、テッドがベート・ローガを馬鹿にした後、逃走先の酒場で出会ってからの友人であった。

 勿論、両者の価値観は違うので、クラウスは外面だけはいいテッドの事を世間一般的な意味で言う友人だと思っているのに対して、テッドからしてみれば友人(便利な労働力)でしかなかったが。

 

 どの様な経緯で中層に向かうことになったのかと言えば、呆れるように簡単だ。

 テッドとクラウスは祭りの空気に馴染めず騒ぐ気にもなれなかったが、普段と一緒というのは些か味気ない。

 そういうことで、1人は普段はしない様な冒険を、もう1人は珍しく先輩風を吹かしたいという両者の考えが一致した結果である。

 

 

 中層攻略において結論からいえば、その姿は異質そのものだった。

 

 今回の中層攻略において一番倒されているミノタウロス。

 

 その姿は、まさにlevel1の冒険者にとってその姿を見るだけで絶望するといった噂が偽りであり、「怪物」などという言葉からはもっとも遠き存在であり、只の獲物に過ぎないということを証明していると言ってもいいだろう。

 

 ではlevel2の冒険者からすれば全くの脅威ではないのか?と問われれば、それも素直に肯定することはできない。

 

 神話においてもミノタウロスとは、英雄が倒す必要が有ったほどの怪物である。

 

 それが全くの脅威では無いなどということは有るはずが無い。

 

 しかし所詮は中層の浅瀬に現れるモンスターである。適切な攻略方法など、とうの昔に考え付かれていた。

 

 

 ダンジョンが現れて数百年、その間にたかが中層ごときのモンスター1つの攻略方法が思いつかないなどと言うのは、余りにも馬鹿げたことだろう。

 

 実際にはどのような方法なのかというと簡単だが、方法を語る前にこの世界におけるミノタウロスについて語っておこう。

 

 有名なのは何と言ってもlevel3の冒険者であったとしても直撃すれば大きなダメージを負うであろうその馬鹿力であり、その力を十全に引き出す武器を扱うほどの手先の器用さである。

 

 そう聞いてみれば、如何にも恐ろしく強い怪物に聞こえるだろう。

 

 だが、そこに少し補足を加えてみよう。例えば速さについてだ。

 

 その俊敏性としては、チートスキルが発現する前の冒険者になって数日しかたっていない、特別今まで走る練習をした事が無い様なlevel1の冒険者が行き止まりに到達するまでは追いつくことすらできないほどであり。

 体のバランスとしても強大な力を出す大きな上半身に比べて、不自然な程に小さい下半身と蹄という歪な姿である。

 

 さて、ではミノタウロスについて語ったところで攻略方法について話していこう。

  

 長々と前置きをしたが簡単である、逃げながらボーラと言われる複数のロープの先端に球状の重りをつけた投擲武器を投げて転ばし、転がっているところを後ろから攻撃する、それだけである。

 

 テッドとしても、クラウスから初めて聞いたときは余りの簡単さに本当かどうか疑ったほどである。

 

 そしてテッドはミノタウロス狩り専門とし、それ以外はすべてクラウスに任していた。

 何体かには見つかるのではないか?と思うかもしれない、しかしテッドのスキル【盲信道化(フェデーレ・ジュッラーレ)】による存在感の増減が想像以上に効果が発揮した。

 

 「おい、テッド。お前なんか変なスキルとか使って無いだろうな。さっきからミノタウロスだけの時は異様にお前に引きついていくのに、他のも混じってたら全然そっちに行かねぇじゃなーか!」

 

 「さぁ?今日は赤い模様の服でも着てるからじゃない?」

 

 テッドはたかが友人(労働力)に自らの手の内を晒すつもりは一切無いので、全く悪びれることもなくとぼけていたが。

 

 結果、ベル・クラネルがチート武器を手に入れた日、テッドはミノタウロス7体討伐というlevel1にしては快挙を成し遂げたのであった(レベルアップはしていない)。

 

 

 

 




 テッドは余り早々にレベルアップさせるつもりは無いので最低でもbigゴライアスをベル君が倒すあたりまではレベルアップはしないと思います。まぁ仮にそこらでレベルアップしたとしても滅茶苦茶早いですが。
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