100話分投稿記念で何か特別な話を書こうとか考えてた時期が僕にもありました。
92話です。さあ、いってみよう。
92話
俺達がアクセルに帰ってきて約一ヵ月が経った。
ヒナの誕生日パーティーの後はゆんゆんとの時間を一週間程作ったり、ダクネスがバツネスになったりと色々なことがあった。
そして、とうとうこの日が来てしまった。
『この日を楽しみにしていたアクセルの皆さん!準備はよろしいですか?今ここに、『女神エリス&女神アクア感謝祭』の開催を宣言します!』
『うおおおおおおおおおお!!』
拡声の魔道具で祭りの開催宣言が街中に響き渡った後、花火のように魔法が空へと放たれた。
今のアクセルには夏の暑さに負けないほどの熱気があった。
そう、今日は一年に一度開かれる祭りの日。
女神エリス感謝祭。
……あとついでに女神アクア感謝祭。
「ほら、ヒカル行くよ!」
「わかってるよ」
ヒナが背中を押して催促してくる。
自分が適当なことを言ってしまったが為に面倒なことを引き受けてしまった。
それを後悔しながら、祭りで賑わう街の中をヒナと歩いた。
話は数週間前に遡る。
この世界の勉強をしていたおかげで『女神エリス感謝祭』という祭りが一年に一度あるのは知っていたが、開催時期までは頭に無かった。
その祭りが開催まであと一ヵ月を過ぎてることを知り、ヒナやクリス、教会の連中が集まっている教会で話していた時のこと。
「これが、祭り……?」
エリス感謝祭の日程表や祭りで行われる出し物等が書かれた紙を見て、俺は思ったことをそのまま呟いた。
隣にいたヒナは俺の呟きが聞こえて、ムッとした表情になり、口を開いた。
「あのね、ヒカル。ヒカルのいたニホンとは違うかもしれないけど、これも立派な祭りだよ。それもエリス様、神に捧げる祭りなんだ」
「それは名前でわかるけどさ」
「だから変なことは出来ないの。ヒカルは子供じゃないんだから、それぐらいわかるよね?」
今度は俺がムッとする表情になった。
このお子ちゃまが天使になって『全知』とかいう才能に目覚めて物事を知ったせいか、大人ぶるというか、姉や母みたいに接してくるようになった、ような気がする。
優しく言い聞かせてきたり、穏やかに微笑んで『しょうがないなぁ』みたいな顔をしてくるようになった。
ぶっちゃけ俺はそれが気に入らない。
子供のくせに、今まで甘えてきたくせに、とまでは言わないが、ヒナが大人ぶってくるのがどうしても苦手に感じていた。
喧嘩友達がいなくなってしまったような変な喪失感のような何か。
とにかくなんと表現していいかよくわからないが、俺が今ムカついたことだけは確かだった。
「だからってこれでいいのか?」
「はあ…」
やれやれ、とでも言うかのようにため息をつくヒナに更に言ってやろうと俺がヒナに迫った時、クリスがまあまあと言いたげな苦笑で俺とヒナの間に入り、俺を手と体で押してヒナとの距離を離してきた。
「祭りでやることは毎年恒例なんだよ。もし何かを変えるとしても結構大変かも」
「屋台やらの出し物とかはともかく、それ以外はここにいるほとんどの奴がいつもとやってる事が変わらねえじゃねえか」
「それは、そうだけど…」
クリスが少し言いづらそうだが認めた。
それもそうだろう。
先程俺が言ったように俺やクリスを除いた教会にいる連中がいつもしている事と祭りでやることが変わってないのだ。
祭りでやるのは教会で女神エリスに祈りを捧げるのはもちろん、聖歌隊やシスターが女神エリスを讃える歌を合唱したり、祭りが開催してる間も街の清掃やら屋台やら何やらのボランティア作業をするのだ。
ほら、だいたい変わってない。
というか祭りなのに地味な気がしてならないし、一年に一度の祭りとは何だったのか、と思ってしまう。
思ってしまった以上こうして口に出してしまったわけだ。
「じゃあヒカルはどうしたいの?」
ヒナが聞いてくるが、正直言ってしまうと具体的にどうしたいとかは無い。
だが、思うことはある。
女神エリス感謝祭。
名前の通り女神エリスに捧げる祭りで、女神エリスの為の祭りだ。
だが、それと同時に女神エリスを讃えているエリス教徒の為の祭りだと俺は思っている。
それなのにコイツらときたらエリス様を讃えるばかりで自分達が楽しむことはあまり考えてないように見える。
コイツらは運営側だから祭りを成功させることが仕事だっていうのもわかるが、楽しむのもエリス教徒として仕事の内じゃないのか?
宗教的な考えにほぼ部外者である俺が口を出すのは控えるべきかもしれないが、俺はコイツらを身近に見てきた者の一人だ。
いつも教会で献身的に頑張っているコイツらが一番楽しむべき祭りだろう。
努力する奴が報われないというか、楽しめないのはなんとなく俺は嫌だ。
ガキみたいな考えかもしれないし、完全にこれは俺のエゴかもしれないが、それでもコイツらも楽しめるような祭りになって欲しかった。
「お前らが祭りを成功させたいのはわかるけど、仕事ばっかりじゃねえか」
祭りで出される屋台等が書かれている祭りの日程表とは別の紙に、ここにいる奴らの役割分担がされている表をヒナに見せつけるようにしてそう言った。
その表を見るに一日ごとの休憩時間は確保してあるものの祭りを楽しむには少ないように感じた。
「当然だよ。僕達がやるべき仕事だし、少しでも担当に穴を開けるとアクシズ教徒が邪魔してくるのも防げなくなっちゃうし」
………そういう問題もあるのか。
うんうん、とこの教会にいるシスターが頷いているのを見ると、相当厄介らしい。
この前アクシズ教徒がこの教会に石を投げ込んできたのを目撃したし、満更対策のし過ぎというわけでもなさそうだ。
コイツらを祭りに参加させてやりたいが、このままだと運営側をやって満足しそうだ。
どうしたものかと少し悩んでいると、クリスと目が合った。
そうだ、良いことを思いついた。
勝手に名前を使ってしまうが、悪いことに使うわけではないし、多分許してくれるだろう。
クリスは不思議そうに首を傾げていたが、この教会に集まっている全員に聞こえるように声を出した。
「エリス様がお前らに求めてるものって何だと思う?」
クリスは少し驚いた顔でこちらを見ていたが、クリス以外の全員がいきなり何を言い出すんだコイツは、みたいな顔でこちらを見てきた。
「ヒナ、何だと思う?」
「……決まってるでしょ?僕達の祈りと信仰心だよ」
百点の答えを叩き出しましたと言わんばかりのドヤ顔に俺はイラッとしながらも俺は答えを返してやった。
「はい、十点」
「じゅってん!?」
「次、アンナ。何だと思う?」
「え、えーっと、エリス教徒らしい人々の模範となる振る舞い…とか?」
「お前ができてないだろ。三点」
「さんっ!?で、出来てますー!出来てるから!」
ヒナとアンナが騒いでるが、無視して次に行くことにする。
「次、マリスは?」
「え、い、いきなり言われても…」
どうやらエリス様が求めてる……いや、今の俺が求めてる答えは誰も答えてくれないらしい。
俺が盛大にため息をつくのを見たヒナ達が睨んでくるのを感じながら、俺はまた全員に聞こえるように言った。
「女神エリスは仮の姿で地上に降臨し、人々の為にたった一人で人知れず活動している話は知ってるな?」
「当たり前でしょ。有名なおとぎ話だし、この祭りもエリス様が本来の姿で楽しめるように街のみんながエリス様の格好をするんだよ」
ヒナがわかりきったことを言うなと呆れた感じで答えてくる。
俺とヒナの言葉を聞いたクリスが照れたように頬を掻いているのが見えた。
まあ、ここにいるわけだしな。
仮の姿をしたエリス様が。
「じゃあもしエリス様がこの祭りの時に降臨したとしよう。で、エリス様は当然この教会にも来るわけだ。『私の子達は祭りを楽しんでくれているでしょうか?』と」
ヒナを含めた教会の連中が真剣に聞き始めるのを感じながら俺は続けた。
「エリス様はこの教会だけじゃなくて街を回って、お前達が仕事に明け暮れている姿を見てがっかりするわけだ。いつも頑張っている子達は祭りを楽しんでいないのですね、と」
クリス以外が衝撃を受けた顔になる。
クリスは勝手に名前を使われて不機嫌になるかと思えば、興味深そうに俺をじっと見つめていた。
「エリス様はお前らのクソ真面目な顔なんか見飽きてんだよ馬鹿野郎」
俺が呆れ果てたようにそう言うと、また睨んできたが俺は気にせず更に畳み掛けるようにして言った。
「エリス様が求めてるのはお前らの楽しんでる姿とか笑顔なの。それなのにお前らはやれ仕事だ、やれボランティアだ…」
「そこまで言うからには祭りの間も僕達のことを手伝ってくれるんだよね?」
ヒナが俺の声を遮るように言った言葉がやけに教会中に響いた。
「え、いや、そうじゃ」
「エリス様のことをよーーーーく知ってるヒカルがエリス様の為にも僕達が祭りを楽しめるように手伝ってくれるって僕には聞こえたけど?」
いやいやいやいや。
なんか棘がある感じで言われたけど、そうじゃない。
「ヒカルってばエリス様の名前なんか出さなくても手伝いたいならそう言えばいいのにー」
クリスがニヤニヤしながら、みんなを見回しながらそう言った後、俺以外の全員が俺を何処の仕事にするかを話し始めていた。
慌てて止めに行っても時既に遅し。
アクシズ教徒撲滅班という名の街の見回りやその他雑用を押し付けられた。
俺が入れば多少は他の人達の休憩を多めに取れるらしく、邪魔しに来たアクシズ教徒を素早く片付けてしまえば更に時間に余裕が出るとか。
手伝うつもりは全く無かったが、あれよあれよという間に決まってしまったし、俺が手伝えばそれなりに意味がありそうだったので手伝うことにした。
こうして俺は祭りの運営側へ引き摺り込まれたのだった。
そして俺が手伝うことが決まった夜に、ゆんゆんに祭りに一緒にいられないのはどういうことかと怒られ、それを見ているトリスターノにニヤニヤされた。
その後ゆんゆんがプリプリ怒りながら部屋に行ったのを確認したトリスターノがゆんゆんの真似でもしてるつもりなのか、親友と一緒にいられないのはどういうことかという意味のわからないキレ方をされたのでトリスターノを引っ叩いた。
原作八巻の時系列に突入。
この章は時系列が前後するかもです。
わかり辛くなったら申し訳ない。
あと章の名前を付けちゃいました。
後から付けたけど、許してくだち。