このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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93話です。さあ、いってみよう。



93話

 俺が祭りの手伝いをすることが決まった数日後。

 女神エリス感謝祭と共同開催という形で女神アクア感謝祭も開かれることになった。

 それを知ったエリス教徒達、つまり教会にいる連中は対抗意識やら日頃の恨みやらで更に祭りを盛り上げようという気持ちが高まった。

 その結果また運営側に気持ちが傾いた。

 俺が手伝う意味が無くなってきたような気がしつつも、あることに気が付いた。

 

「なあ、女神アクア感謝祭があるならアクシズ教徒の対策はいらないんじゃねえのか?アクシズ教徒は数が少ないんだし、自分達の祭りを盛り上げるのに精一杯…」

 

「そんなわけないでしょ!!」

 

 ヒナが大声で俺の意見を否定したかと思えば、他の連中が俺を囲んで口々に言ってきた。

 

「ヒカルさんはアクシズ教徒がどれだけ最悪の存在かわかっていません!」

「アクア感謝祭が開催されるからこそ全力でこちらを邪魔してきますよ!」

「向こうの祭りを盛り上げる為にこちらの祭りを蹴落としにくるに決まってます!」

「だからヒカルは狂戦士なのよ!」

「どうせ調子に乗って『来年からは女神アクア感謝祭だけにしろ』とか言ってきますよ!」

 

「ああもう、悪かった!悪かったよ!よくわかった…っておい!俺のこと何か言ってきた奴は誰だこの野郎!?どうせアンナだろ!」

 

 アンナが知らんぷりしてるのを見て腹を立てていると、

 

「とりあえずヒカルはアクシズ教徒撲滅班で祭りの開催期間中休み無しフルで働いてもらうとして」

 

「しばくぞこの野郎。お前らもウンウンじゃねえんだよ」

 

 ヒナがアホ丸出しなことを言ってるのに誰もツッコミを入れないで頷いてるとはどういうことだ。

 

「何も起きなければ祭りを楽しめるわよ?」

 

「ずっと何か起きてれば、ずっと仕事だろ?」

 

「そうとも言う」

 

 アンナから気休めにもならないことを言われた。

 俺が深々とため息を吐く中、また祭りの運営について話し始めていた。

 どうか何事も起きませんように。

 そう思いつつ、俺はヒナ達が真剣に話してる内容に耳を傾けた。

 

 

 

 

 

 そして、祭り初日。

 あいつらがワーワー言ってたことが正確で、俺の考えがどれだけ甘かったかを思い知った。

 もう昼時だと言うのに飯にありつける気がしなかった。

 

「女性はヒナ達が追え!こっちの男連中は俺達が捕まえる!」

 

「了解!気をつけてよ!」

 

「そっちも深追いはするなよ!何してくるかわからないからな!」

 

「うん!」

 

 既に何度、何人のアクシズ教徒を捕まえたか覚えていない。

 捕まえたアクシズ教徒を警察に引き渡しても途中で逃げたり、牢屋から抜け出したりするせいでまるでゾンビのようだった。

 この街の警察も頑張ってはいるのだが、今年はアクシズ教の祭りも行われているせいか、人員がそちらにかなり割かれているらしく、エリス教側が運営している区画はどちらかと言うと警備は手薄だった。

 いるにはいるのだが、問題が起きれば当然そちらに向かうので、どこでも穴は発生する。

 そんなことがあっていいのかと思うかもしれないが、問題が起きるスピードが尋常ではないのだ。

 アクシズ教徒が問題を起こすのがほとんどだが、祭りで起こる問題は当然それだけではなく、警察も対応に追われていた。

 結果、俺達の祭りの見回り組は大活躍だった。

 別に活躍なんてしたくないんだが。

 

「御用改めであるー!」

 

 離れたはずなのにヒナの大声がここまで聞こえてきた。

 いつだったか新選組のことなんか話してしまったせいで、アクシズ教徒撲滅班という印象が最悪の名前からSHINSENGUMIに変わった。

 ちなみに御用改めであるを言っているのはヒナだけだ。

 

「あいつら、二手に分かれやがった!どうする、旦那!?」

 

「左は二人で追ってくれ!右は俺が行く!」

 

「本気か!?アクシズ教徒だぞ!?一人で追うなんて危険だ!」

 

「もうさっさと捕まえて飯が食べたいんだよ!少し手荒くやるし、油断なんてもうしないから安心してくれ!」

 

「わ、わかった!気をつけろよ、ヒカルさん!」

 

「そっちこそな!深追いはしないで、見失ったらすぐに祭りの警備に戻ってくれ!」

 

 SHINSENGUMIに手伝ってくれているエリス教徒の冒険者二人とは分かれて、俺は右の方へ逃げたアクシズ教徒を追う。

 マジで腹が減ったし、怪我ぐらいは多めに見てもらおう。午前中は散々だったしな。

 午前中に何が起きたかを言うとキリがないが、最悪だったのは俺が女性のアクシズ教徒を捕まえた時に痴漢だと騒がれた時だ。

 もちろん周りの大人は、この街で有名なヒナと一緒にいることもあって俺の事を多少は知ってるし、取り締まる側だと知っているから良いが、何も知らない子どもは俺のことを危ない奴を見る目で見てきた。

 そこまでショックではなかったが、この仕事を引き受けるんじゃなかったという後悔の念は強くなった。

 

 それだけではなく、SHINSENGUMIのメンバーの一人であるマリスも被害にあった。

 マリスが男性のアクシズ教徒を押さえた時に体を触られ、『流石はエリス教徒、貧相な体ですね』と言われ、怒ったマリスは拳を振るい、その男性の片目に青あざが出来た。

 実を言うとマリスはキースに同じような事を言われて、キースの鼻を折った事があるほどの鉄拳の持ち主だ。

 やはりエリス教徒はボクシングが必修なのかもしれない。

 

 対策として先程の指示のように同性の人間が対処する様にした。

 これでアホな目に遭う事は無いだろう。

 路地裏に逃げたアクシズ教徒を追い掛けていくと、行き止まりに行き着いたアクシズ教徒は俺を睨み付けてきた。

 一応俺も言っておくか。

 

「御用改めである。すごく痛い目にあいたくなかったら抵抗するな。今なら普通の痛い目にあうぐらいにしてやる」

 

「来たな。『エリス教の狂戦士』」

 

「なんて?」

 

 なんかエリス教呼ばわりされた気がするんだけど。

 

「『エリス教の狂戦士』と言った。それとも『アクセルの狂戦士』と呼んだ方がよかったか?」

 

「いや、どっちも意味わかんないんだけど…」

 

「……まさか自身が何と呼ばれてるか、知らないのか?」

 

「知るか」

 

 今の今まで自分が何て呼ばれてるかなんて気にした事は無い。

 今目の前にいる男が変な呼び方をしてきたせいで意見が変わったが。

 

「貴方は有名だよ。職業やら活躍のことだけじゃなく日々の素行とかでね。それに今日散々邪魔してくれたおかげでアクシズ教のブラックリストに名前が載ったよ」

 

 うわ、聞かなきゃよかった。

 

「有名だとか呼ばれ方とかの前に、俺はエリス教じゃないぞ?」

 

「えっ……。はっ!まさか同士!?」

 

 呆けた顔になった後、アクシズ教徒は思い付いたようにそう言ってきた。

 

「ちっげえよ!ざけんなこの野郎!」

 

 エリス教徒、というよりアクシズ教徒以外の人間がアクシズ教徒を避ける理由が今日でよくわかった。

 マジでこいつら問題児集団だ。

 エリス様がなんかやらかした時用の避難先に考えてたが、今はあまり避難したくない。

 

「何はともあれエリス教ではないのでしたらこれをどうぞ」

 

 アクシズ教のマークが書かれた紙を渡してくる。

 アクシズ教の入信書だ。

 最近セシリーとかいうアクシズ教のプリーストが街で撒き散らしてるから、よく目にしてるせいでよく知ってる。

 

「いらない」

 

「えっ」

 

 少なくとも今はいらない。

 あと心底不思議そうな顔してくるの腹立つからやめろ。

 

「あっ、今なら石鹸と洗剤も付いてきますよ。しかもそれ飲めるんです」

 

「いらない」

 

 ちょっと気になるけど、入信してまで欲しいわけじゃない。

 

「更になんと、『アクシズ教の狂戦士』を名乗れる特典も…」

 

「いらねえよ!悪いけど抵抗するならマジでキツくやるからなこの野郎!」

 

 俺は警備の為に持ってきた木刀を手に持ち、アクシズ教徒へと向かっていった。

 

 

 

 

 アクシズ教徒を警察に引き渡した後、手伝ってくれていた冒険者達の元に行くと、()()()()()()()()()()()()()()()だったらしく、大変な事になっていた。

 どうやら同性で対処する策も意味はないらしい。

 

「助けてくれえ、旦那ぁ!」

 

「ヒカルさーーーん!!」

 

「あー…、二人を離してあげてくれない?」

 

 獲物に絡みつくタコのように二人を捕まえるアクシズ教徒に話しかけたくない気持ちでいっぱいだったが、二人のためにも勇気を出して声をかけた。

 

「あらまあ、近くで見ると更に良い男ね!」

 

「そりゃどうも」

 

 俺を見て目移りをした瞬間に二人がアクシズ教徒からの拘束を抜け出して、俺の後ろに隠れた。

 出来ればその一瞬を使って一撃入れるとかしてほしかった。

 怖くてそれどころじゃなかったのかもしれないけど。

 

「あなたは男性に興味があったり」

「ないです」

 

 間髪入れずに返事をした。

 

「あら、残念。でも、それは世界を知らないだけかもしれないわ」

 

「もしかして話長くなりそう?」

 

「あなたもアクシズ教に入信して、私に身を委ねましょう!さすれば新たな世界の扉が開かれるでしょう!」

 

 さらっと勧誘しつつ、自分の欲望も曝け出すあたり流石だなと感心してしまった。

 

「悪いんだけど…」

 

「まずは試し!お試しが必要でしょうね!新たな世界の扉から少し覗くように、私に少しだけ時間をください!そうすれば確実に…」

 

「実は俺、攻め専門なんだよね。だから身を委ねるとか、ちょっと無理っていうか」

 

「なんと!」

 

 後ろの二人が遠ざかる気配を感じながら話を続けた。

 

「『エリス教の狂戦士』にしては理解がありますね!」

 

「そもそも俺はエリス教徒じゃないし」

 

 後ろの二人が更に遠ざかる気配を感じた。

 

「それならば話が早い!さあ、これが新たな扉です!どうぞ!」

 

 ズボンを脱いでこちらにケツを向けてくるアクシズ教徒。

 随分と汚い扉だ。

 最悪なものを見た。

 

「じゃあ、激しくいくから」

 

「はい、どうぞ!」

 

「こんの馬鹿野郎があああああああ!!」

 

 年末のお笑い番組のオシオキのようにアクシズ教徒の無防備で汚いケツに木刀を思いっきり振ると、アクシズ教徒は吹っ飛び、上半身だけ壁にのめり込んだ。

 

「よし、街に戻ろうぜ」

 

「「……」」

 

 振り返ると、俺を異物でも見るような目で見てくる二人が遠くにいた。

 

「おいこの野郎!さっきの話は嘘に決まってんだろうが!」

 

「……ま、まあ、そうだよな」

「そ、そうだよね、そうに決まってるよ」

 

 俺が遠くの二人に言うと、二人は目を逸らしながら自分に言い聞かせるように言って、こっちに近づいてきた。

 

「ところで、あいつを警察に引き渡すんだけど、誰があいつのズボンを上げる?」

 

 俺がそう言うと、二人がまた遠ざかった。

 

 

 

 

 バカを警察に引き渡した後、街でヒナ達と合流した。

 

「それではヒナ、ヒカルさん、私は休憩に入りますね」

 

「うん、ゆっくりしてきて」

 

「警備は任せてくれ」

 

 マリスがペコリと頭を下げてから俺達から離れていくのを見送っていると

 

「じゃあ俺達は別の場所の警備に行ってくるよ」

 

「え?」

「うん、お願いします」

 

 俺が困惑しているのにヒナがよろしく言うと、冒険者二人は俺の肩にポンと手を置いてから去っていく。

 

「え、ちょっと」

 

 そんな話は聞いてない。

 今日はこの二人と警備する予定だぞ。

 

「ヒナギク、私達も行きますね」

 

「よろしくね、セリスさん」

 

 エリス教会のプリーストのセリスさんや今回協力してくれている女性冒険者達も俺達から離れていく。

 残ったのは俺とヒナだけだ。

 

「じゃあ警備に戻ろっか」

 

「おい、どういうことだ」

 

「何が?」

 

「何が、じゃねえよ。こんな話聞いてねえよ」

 

「そうだっけ?」

 

 とぼける様に言うヒナに少し腹が立ちつつも冷静に話した。

 

「俺とヒナはSHINSENGUMIの中で戦力的に一番高いから、俺とヒナが分かれてそれぞれのチームで行動する話だっただろ」

 

「そうだよ。でもかなりの人数を捕まえたし、そろそろ余裕が出てくると思うから変えたんだよ。それに僕達ばかりが指揮を取ってばかりなのも良くないと思ったしね」

 

 だからそんな話は聞いてない。

 いつ決まったんだよ。

 

「僕と二人はいや?」

 

「そうじゃなくてさ」

 

「じゃあいいじゃん、行こ」

 

 ヒナは俺の手を引いて、どんどん祭りで賑わう街の中を歩いていく。

 ヒナと二人きりの時間はヒナと誕生日以来無かった。

 ヒナが俺に対する態度を少し変えたせいで苦手に思っていたこともそうだが、俺はヒナのことがわからなくなっていたからだ。

 それで避けていた。

 ヒナと二人でいるのを。

 ヒナがわからなくなってしまったのは、ヒナの誕生日パーティーが終わった夜に二人で話していた時のこと。

 ヒナが自ら天界に行くと言い出したからだ。

 




アクシズ教徒を書くのって難しい。
よくあんなキャラクターやそのキャラクターが集まる街を創り出したな、と改めて原作者様を尊敬しました。


僕の元にもサンタさんが来ました。

【挿絵表示】

paprika193様からまた素敵な支援絵をいただきました。
感想等は『支援絵とおまけ』のところに書きましたのでそちらに。
そちらの方にもう一枚オマケの絵がありますので是非見に行ってくださると嬉しいです。
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