このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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超絶キャラ崩壊注意。

103話です。さあ、いってみよう。



103話

 

『エリス教団主催による今回の祭りのメインイベント!第一回!ミス女神エリスコンテストを開催します!』

 

『うおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

 

 司会のマイクのような魔道具越しの叫びと共に、この会場にいる客達からの大歓声が湧いた。

 

 この炎天下の中、どうして人がこんなアホほど来るのか少し疑問に思いつつも、俺は会場の警備を行っていた。

 女神エリスが神聖視されるのを見ると、俺は少しだけ複雑な気持ちになる。

 もちろんヒナギクにばかり執着しているわけではないことは、今までの付き合いで知っているのだが、いかにも素晴らしい神様だなんだとワッショイワッショイされてるのを見ると、そんなことは無いんじゃないかと口を挟みたくなる。

 だって、女神エリスはどうにも人らしくて、エリス教徒が語る神様と同一人物とは思えない。

 

 まあ、そんなことはどうでもいい。

 さて、この状況を何かと説明すると、カズマが言っていた『良い案』がコレだ。

 エリス教団主催でミスコンやろうぜ。

 カズマはそう言い出した。

 そして見事カズマの思惑通り、祭りの最終日にしてかなりの大盛り上がりを見せていた。

 

 よくもこんなことが出来たな、と思うだろう。

 俺も同じ事を思う。

 昨日行われたエリス教団での会議はかなりの大熱戦を繰り広げた。

 ミスコンをやろうなどと言って、真面目ちゃん達が集まるエリス教徒に賛成されるわけもなく、ダクネスとヒナが中心になって反対してきた。

 俺とカズマは、このままでは来年の祭りが無くなるかもしれないと反論すると、反対の声は小さくなっていった。

 エリス様をダシにしたミスコンだなんて、エリス様に対する冒涜だと喚くダクネスとヒナに、ヒナの説得はクリス、ダクネスの説得はカズマがした。

 ちなみに俺は周りにミスコンと言ってもマイナスになるようなことは無いと説明していた。

 本人が気にしなくていいと言ってる以上、特に祭りを盛り上げる方法を思いつかないヒナはすぐに黙り込み、説得された。

 ダクネスにはエリス教団の権威の回復の為でもあり、神器の回収も行う事を告げて、エリス様がこんな事で怒るわけがないと言うと、ようやく折れてくれた。

 そんなこんなで開催が承諾された。

 

 

 ダクネスの説得の際に言った通り、エリス教団を救う事だけが目的ではない。

 あの鎧は美少女好きだというのを逆手に取り、このミスコンを餌にして釣り上げる作戦だ。

 俺は祭りの警備をしつつ、アイギスがいないかを確認していた。

 カズマとクリスはステージや会場全体を見渡せる最後方にいて、全体を確認している。

 正直運次第だが、ここはカズマとクリスの幸運補正を信じよう。

 

『それではまず、最初の方となりますが、お名前と年齢、そしてご職業をお願いします』

 

 ステージに並ぶ美女に司会がマイクを向けていた。

 とうとう本格的にミスコンが始まったのだ。

 

 

 

 

 ミスコンにはかなりの美女達が参加していた。

 急な開催だったし、参加者もそう集まらないだろうとも思っていたが、予想に反して約二十人も集まっていた。

 というか女神エリスコンテストだと言うのに、巨乳の女性が多い。

 今来たのは見知った顔でもある、ウィズの紹介が終わったところだ。

 俺的には良い事だが、コンセプト的にはアウトだと思う、だってあの女神様小さいし。

 

「ねえ、何か失礼な事考えてない?」

 

 横から声をかけてきたのはクリスだった。

 随分とタイミングの良い登場だ。

 いや、違うな。

 こいつがここにいるのは狙ってのことだ。

 

「いや、別に」

 

「本当かなぁ?まあ、いいや。お疲れ様、コレいる?」

 

 そう言って差し出してきたのは飲み物だ。

 有り難くもらうことにする。

 

「どうも。わざわざ最前列に来るとはな」

 

「そっちこそ最前列で警備してるくせに」

 

「別に、俺はたまたま……」

 

「何がたまたまだよ。ヒナギクの順番が近付いて来る度に前に前に行き始めたくせにさ。言っておくけど、最前列のど真ん中ポジションは譲らないから」

 

「どうぞどうぞ」

 

 そんなやり取りの中、会場中からステージにゴミが投げ入れられていた。

 とんでもない美少女がステージ上で服を脱ごうとした瞬間に『残念、我輩でした!』とバニルさんが正体を晒して高笑いしているからだ。

 それが終わって、会場に落ち着きを取り戻した頃、ようやく順番が回ってきた。

 

『さあ、お次の方どうぞ!』

 

 司会がそう言うと、ステージの端からガチガチに緊張した様子のヒナが出てきた。

 歩く時に出る手と足が一緒になってしまっている。

 

『もう会場にいる方のほとんどが知っていると思いますが、お名前と年齢、ご職業をお願いします』

 

「え、えっと……あの、その……」

 

 緊張したヒナはどこを見ていいかわからないのか、目を泳がせた後、目を瞑り言い切った。

 

「め、女神エリス、ですっ!……な、なんちゃって」

 

 そんなヒナのセリフに会場が沈黙した。

 何故ヒナがそんな事を言ったのかを説明すると、ヒナの服装は女神エリスのものだからだ。

 少しの沈黙の後、会場は一気に湧いた。

 

「いいぞーー!ヒナギクーー!!」

「似合ってるわよーー!」

「エリス様かわいいぞーー!!」

「ヒナちゃん最高ーーー!」

 

 そんなバラバラだった声が、何故かまとまり始めてヒナギクコールが始まってしまった。

 

『ヒーナギク!ヒーナギク!ヒーナギク!』

 

 ヒナギクコールを受けて、羞恥で顔を真っ赤にしたヒナはプルプル震えていた。

 俺はクリスの方から声が聞こえないことに違和感を感じて、クリスの方に視線を向ける。

 

「あ、ああ、ああああああ………!!」

 

 クリスはそんなうわごとのような声で痙攣するように全身を震わせた。

 ヒナがプルプル震えてるのとは違って、クリスの震えは身体がやばい時に起こる痙攣のようだった。

 

「あああああ!あ、あんなの!あんなのいけません!いけませんいけません!あんな顔えっちすぎます!あんなのベッドの上でする表情ではありませんか!こんな大勢の前であんなえっちな顔を見せるなんて、なんていけない子なんでしょうか!皆さんは大丈夫でしょうか!あんな刺激的なものを見ては、目の一つや二つや三つ潰れてもおかしくありません!こんなの私だから耐えられたようなものですからね!でもヒナギクのあの表情を見て目が潰れない方なんているわけがありません!むしろ潰れなければ失礼というもの!潰れなかったのであれば私が潰します!ああ、それにしてもなんという可憐さ!美しさ!人類が作りし、神を超える奇跡級の至高の宝!なんて尊いんでしょう!私の衣装を着て、あんなに可愛いのは罪作りすぎます!それに私の名前を名乗るなんて、なんて健気なんでしょう!外見だけでなく、中身、そして声も、何もかも全てが完璧!いえ、完璧なんて甘い言葉では表現しきれません!究極!究極です!というか、あの格好をしているということは、あれはもう私のお嫁さんになるということでいいんですよね!?お嫁さんになったってことでファイナルアンサーですよね!?今夜は初夜ですよ、初夜!絶対にあの衣装で私のベッドに来てもらいます!そして少しずつ脱がしていって、近くであの表情を眺めるんです!それで全てを脱がし終わった後、ヒナギクが覚悟を決めたように目を閉じるのをじっくりと見てから、全身を洗うようにペロペロします!そ、そ、そそそそそそれでまだヒナギクの未開の地をわ、私が優しく!丁寧に!ゆっくり!じっくりと!開拓していき、ぐへへへ、ああっ!鼻血がっ!あ、あ、あああああ、これ以上ヒナギクの姿を見てはおかしくなってしまいます!ですが、どうして目を離せましょうか!これ以上は、でも!これが尊死というのでしょうか!ヒナギクで尊死するのであれば本望です!エリス、イキまああああああす!!」

 

 よーし、逝ってこい。

 目を見開いて、鼻血を垂らして熱に浮かされたように話すクリスには死を与えることで楽にしてあげることが出来るかも知れない。

 というかこんな醜態を晒「うっ、ふぅ……ふぅ………はぁ、はぁ……」

 あの、俺のモノローグ貫通してくんのやめてくんない?

 

「えっと、その、もうみんな名前を呼んじゃってますけど、僕はヒナギクと申します。それから、えっと……」

 

『良ければフルネームでお願いします』

 

 司会がそう言ってマイクを向けると、ヒナギクは「えっ!?」と大袈裟に驚いた後、オロオロし始めた。

 数秒後、何故か俺と目が合った後、何度か目を泳がせては俺を見てくる。

 まるで何かを伝えようとしているようだ。

 

 え、なに?

 俺はヒナのフルネームなんか知らないぞ。

 だって、あいつ出会った時からヒナギクとしか名乗らないし。

 父親の都合とかで名乗らないようにしてるのかと思って、俺も聞こうとは思わなかったからな。

 

「ぼ、僕は、その…………」

 

 ヒナは顔をまた顔を赤くして口を開いたが、躊躇するように、すぐに口を閉じた。

 そして数秒後、覚悟を決めた顔になり、息を吸い込んでから大声で宣言した。

 

「シロガネ ヒナギクです!!!」

 

 ヒナギクの大音量のせいか、とんでもない苗字を使い始めたせいか、会場中はシーンと静まり返った。

 そのおかげで俺は微かに聞こえた。

 ボソリと呟くような声が。

 

「……さなきゃ」

 

 それはクリスがいる方から聞こえた。

 というかクリスから聞こえた。

 

「こ、こここ、ころ、ころさなきゃ……い、今すぐに、迅速に、バラバラにして、ころさなきゃ……」

 

 グググ、と壊れた人形の首がゆっくりこちらを向くように、クリスが俺の方を見てきた。

 会場はなんだか盛り上がっているが、俺は目の前にいる殺気を撒き散らす盗賊の皮を被った変態にロックオンされていて、それどころではなかった。

 クリスの手がダガーへと動いた瞬間、俺はクリスとは反対方向に駆け始めた。

 

「殺さなきゃーーーー!!!」

 

「おいいいいいいいい!!前回まで俺に協力的だったのはなんだったんだああああああ!!」

 

「それとこれは別!!天誅うううううううう!!!」

 

 

 

 

 

 

 ヒナを可愛がってる街の連中は何を勘違いしたのか、クリスと同じように俺に襲いかかってきた。

 大勢から逃げ回るのは大変だったが、向こうが意外と連携が取れていないのと、人混みを使って会場中を逃げ回ったのが効いたらしく、なんとかクリス達から逃げ切れた。

 クリス達から逃げている途中にカズマがいる近くを通ったのだが、何故かアイギスと一緒に楽しげにミスコンを楽しんでいたのを確認した。

 いつの間にか目的は達成されていたのだ。

 神器回収の失敗で少し責任を感じていたのがバカみたいだ。

 

「お前よくもやってくれたなこの野郎」

 

 逃げ切った後ヒナに偶然会えたので、俺は当然の文句を言った。

 俺がヒナに話しかける時には、ミスコンのステージにいるダクネスが会場の客の中に混じる冒険者達に野次を飛ばされていた。

 

「え、だ、だって、ヒカルがちょうどいたから……」

 

「アホか、自分の名前を使え」

 

 何で俺がいたからって、俺の名前を使うんだ。

 そんな疑問をヒナは目を逸らしながら、言いづらそうに答えてきた。

 

「………だって、覚えてないんだもん」

 

「あ?何が?」

 

「自分の苗字……」

 

「はあ?何言ってんのお前?」

 

「僕はずっと家にいたから、名乗る必要も無かったし、家では名前しか呼ばれないし、教えられてもすぐに忘れちゃった」

 

 ……こいつの育った環境が特殊だからな。

 

「それはわかった。でも俺の苗字は使うな」

 

「……なんで?」

 

 不機嫌そうに聞いてくるヒナ。

 俺の方が散々な目にあったっていうのに、何でこいつに不機嫌な顔をされなきゃならんのだ。

 

「俺の苗字を使うと、街の色々誤解した連中が俺にブチギレてくるからだよ」

 

 主に変態女神が。

 

「じゃあ、僕が自分の苗字を思い出したらやめるね」

 

「ざけんなこの野郎」

 

 俺達がそんなやりとりをしていると、会場から悲鳴と罵声が聞こえ始めた。

 ダクネスが野次を飛ばしてきた冒険者に殴りかかっていた。

 乱闘騒ぎだ。

 あのお嬢様は何をやってるんだろう。

 

「それにしてもこんなに盛り上がるとは思わなかったよ」

 

「な。お前も意外と楽しかったんじゃないか?」

 

「………まあ、つまらなくはなかったかな」

 

 そう言って笑い合う俺達。

 祭りも盛り上がって、アイギスも回収出来た。

 目標達成だ。

 そう思っていると、観客達の中から声が聞こえた。

 

「あー面白かった」

「それな。この街の女って言われると、正直期待してなかったけど、なかなか良かったな」

 

 ほら、観客達も満足して……

 

 

「じゃあアクシズ教側に戻ろうぜ」

 

 

 俺は思わずその声が聞こえた方向に振り向いてしまった。

 その声の人物だけでなく、何人かの見物客は目的が終わって帰ろうとしているのが見えた。

 

 俺は一体何を勘違いしていたのだろう。

 祭りが盛り上がったんじゃない、()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()だ。

 もしかしたら、ある程度の客はエリス教側の祭りにいてくれるかもしれないが、所詮はその程度だ。

 何でこんな簡単なことに気が付かなかったんだろう。

 

「そういや、昨日のアクシズ教徒の一発芸見たかよ?」

「ああ、見た見た。あれマジで凄かったよな。アクシズ教徒っていつも問題起こすけど、騒ぐのは一級品ていうかさ」

「祭りの盛り上げ方をわかってるよな。これは来年も楽しみだな」

 

 俺はこれ以上ヒナにそんな言葉を聞かせたくなくて、ヒナを連れて行こうとヒナの方を向いた。

 向かなければよかったと後悔した。

 向かなければいけなかったのだが、そう思ってしまった。

 

「………」

 

 ヒナは泣きそうな顔で下を向いていた。

 歯を食いしばり、手が震えるほどに握りしめていた。

 

 ああ、くそ。

 俺がもっと、カズマのように頭の回る奴だったら、ヒナにこんな顔をさせずに済んだのに。

 それとも、今の俺が祭りの運営にあれこれ言って盛り上げるべきだったか。

 いや、そんな事をしても、どうせ出店の一つか二つが増えてた程度だろう。

 俺はただのバカな狂戦士だ。

 剣を振ってる人?

 てめえにお似合いじゃねえか。

 祭りの間何をやっていた?

 木刀を振り回して、バカを取り締まっていただけだ。

 そんな事をして、祭りに貢献した気になっていた救いようのないバカ。

 それが俺だ。

 そんなバカに今から何が出来る?

 これ以上ヒナを悲しませるような言葉を聞かせないようにしてやるぐらいだ。

 家に帰って、日本の話をしてやろう。

 ヒナが嫌がるぐらいに。

 そう思い、ヒナが固く握りしめる手を取った時

 

『さて、もう参加者も残っておりませんので、女神エリスコンテストの優勝者を………』

 

 ミスコンの司会がマイク越しに放った言葉が途中で止まった。

 俺は気にせずヒナを連れて行こうとして、異変に気付いた。

 

 周りのざわめきが全く聞こえなかった。

 誰も彼もが沈黙していた。

 誰も彼もが動けずにいた。

 誰も彼もがある一点を見ていた。

 ミスコンのステージのど真ん中。

 

「エリス様……」

 

 そんな沈黙の中、ヒナだけが呟いた。

 そう、ステージの中央には女神エリスが降臨していた。

 




何がとは言いませんが、804文字です。
出来れば1000文字以上にしたかったのですが、妥協しましたすみません。

ヒナギクが苗字を忘れてる云々の話はまた詳しいお話を書く……予定です。

少し前の話なのですが、一章を少しだけ手直ししました。
ヒカルのセリフに「」付けたりとか、表現が足らないかなと思った部分を少し足したり、こっ恥ずかしい後書きを消したり。
話の内容は変わってませんが、一応ご報告です。
多分これから全部のお話に手直しをやっていきますが、一章と同じく内容を変えるものではありませんのでご理解の程よろしくお願いします。
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