あれから三人に囲まれてスキルやらこの世界の知識を教え込まれた。
「取りたいスキルを押すんですよ」
「次はここを押せばスキルを取れるんですよ」
「よくできましたね、偉いですよ」
馬鹿にしすぎだろ!!幼稚園児か!
知らないだけで少し教えてくれればわかるわ!ええい、頭を撫でるな!雑に褒めるな!微笑みかけるな!
とかなんとかやってるうちに今更気付く。
今日泊まるところ決めてねえ。
「じゃ、じゃあ今日もいっ」
「僕の宿に来ませんか?ニホンの話いっぱい聞きたいです!」
「ええっ!?」
未だに性別がわからないんだが、こいつヒナギクなんて名前だし多分女だと思うんだけど、大丈夫なのか?
ゆんゆんもその提案はどうなんだと驚いてるし。
「私のところはどうですか?私は馬小屋暮らしですが」
多分ゆんゆんと同じ宿に行けばまたボードゲームばかりやることになるし、ヒナギクのところに行けば日本の話ばかりする羽目になる。
昨日の寝不足もあって俺は早く寝たいし、選択肢は一つしかない。
あまり世話になりたくないが背に腹は変えられない。トリスターノのところに行くことにした。こいつとも色々話しといた方がいいし。
昨日の決着がまだ……とか言ってるけど、それは俺の勝ちだと何度言えばいいのだ。五対三だぞ。
ニホン……と残念そうにしてるヒナギク達を横目に解散を宣言した。
「マイルームにようこそ、シロガネさん」
恭しく礼をするトリスターノ。
「素敵ですこと」
「光栄です」
軽口を叩いて、馬小屋の借りたスペースへ入る。というかこのイケメンが馬小屋とか意外だな。
「まさか美女二人のお誘いを断って、わざわざ私のところに来てくれるとは思いませんでした。これは何かが起きてしまうんですかね」
何を言ってるんだ、こいつは。イカれてるのか?
これだからイケメンは。
さて、どう聞こうかな。あまり腹探ったりするのは得意じゃないんだよな。ほら、知力も低いしなって、やかましいわ。
面倒くさいし、もう聞きたいこと聞いてくか。
「なんであんな募集の張り紙でパーティーに入ろうと思った?ゆんゆん目的か?」
俺の言葉を聞いて、可笑しそうにクスクスと笑うトリスターノ。
腹立つな、なんなんだこの野郎。
「いえ、随分と大事にされてるんだな、と思いまして」
こっちに来て一番世話になってるからな。変な意味じゃないぞ。
「出来れば私も大事にされたいなぁと思ってパーティーに入りましたよ」
え、気持ち悪い。すごく気持ち悪い。
「そんなドン引きしないでくださいよ。実はですね……。私も友達が欲しくてですね」
……なんだ、お前もぼっちか。
「でもお前故郷の友人とかなんとか言ってただろ」
「あれは職場の同僚の延長線みたいな感じですね。本当は一週間ほど前からこの街にいるのですが、募集の張り紙を見て最初は悩んでいたんです。募集しているのは女性ですし、なんか重そうですし……」
うん。まあ、わかる。
「冒険者なんかあまり入れてくれるパーティーなんてありませんし、他の募集を見つつ今後をどうするか考えてたら」
「考えてたら?」
「シロガネさんが来たんです。いやあ、まさかあの募集の張り紙でパーティーに入りに行こうとする人がいるなんて思いませんでした」
「ち、違う。あれは受付のお姉さんに……」
「しかもあの募集ですら行きづらいのに、紅魔族の女の子ですからね。あの時はシロガネさんが勇者に見えました」
え、なに?こーまぞく?知らない何それ。
「ゆんゆんさんは誰かが募集の張り紙を見る度にそれはもう凄い形相で睨んでくるのに有名でしたのに、シロガネさんはあっさりパーティーに入ってしまいました」
いや、そんなことは……ってかこいつずっと見てたの?
気持ち悪いんだけど。
「まだレベルは低いとはいえ紅魔族の女の子と冒険者を始めたばかりのシロガネさん。どう考えてもパーティーは続かないと思ったんですが」
「まさかいきなりデートした上に同じ宿に行くだなんて」
「え、ちょ、まてまてまてまて!違う違う!」
てかどこからどこまで見てんだ、こいつは!
「隠さなくても結構です。見てましたから」
ストーカーじゃん!ウインクするな、気持ち悪い!
「すぐにお互いを知り、受け入れ合う二人に感銘を受けました」
「違うつってんだろうが!こいつマジもんのストーカーだ、やべぇ!」
「こんな二人なら私のことも受け入れてくれるに違いない!こうして勇気を出して今に至ると言うわけです」
聞こうと思ってたけど、聞かなきゃよかった。あんな募集で来るのはロクでもないと思ってたけど本当にロクでもなかった。
「友達は本当に良いものですね。今後ともよろしくお願いしますね」
よろしくしたくない。事情を聞いて友達になりたくなくなったぞ。
「いやあ本当この街に来てよかったです。素敵な友達が出来ました」
「……今更断ったりしないけどさ。もうストーカー行為はやめてくれよ?」
「……」
「おい、目を逸らすんじゃねえよ!ふざけんなよお前!笑って誤魔化すな!」
「ついでに」
もうお腹いっぱいだ勘弁してくれ。
その爽やかな笑顔を今日はもう見たくない。
「私は魔王軍幹部の側近だったんですけど」
…………は?
「まあ、些細な事ですよね」
今日一番の笑顔のトリスターノ。
な、何言ってんだこいつはああああああああ!!!!???
「私に関してはこんな感じですね。あまり面白い人間ではないんですが、これからよろしくお願いしますね」
「おいおいおいこらこらこら。よろしくできるか!お前いきなり何言い出してんだ!冗談だよな!?冗談言いたくなったんだよな!?お前の友人が言ってた「冗談のセンスが無い」は大正解だ、まるでセンスないぞ!」
「ふふふ、今更冗談なんて言いませんよ。私の冒険者カードを見てください」
……何も変なところは見当たらないが。
「スキルのところに普通では覚えられないスキルを覚えていますよ。『死の宣告』です」
こ、こいつマジか……!
「ふう、全部話したらすっきりしました。今日はそろそろお休みしましょうか」
「お休みできるか!お、お前とんでもないことばっかり言いやがって!変なやつだと思ってたけど、馬鹿みたいに斜め上突き破ってくるんじゃねえよ!」
「安心してください。今まで『死の宣告』は人に使ったことはありませんよ」
「いやいや、そう言う問題じゃない!」
「大丈夫です。友達や仲間を危険に晒したりしませんから。友達のシロガネさんにはお話ししておこうと思ったので話しただけです。迷惑はかけません、多分」
多分かよ…どうすんだこいつ。こいつはスッキリしただろうが、俺は滅茶苦茶モヤモヤしてるんだけど。
「そろそろ休みましょう。明日もありますからね、おやすみなさい」
お前のせいで休めそうにないんだけど。
どうしよう、本当に。
俺は休めないと言いつつも昨日の寝不足とクエストの疲労もあったからか、すぐに寝入ってしまった。
いや、本当はもう何も考えたくないだけだったのかもしれない。
誰得なトリスターノ回です。
彼に必要な話だったのです。
次は原作の話に少し触れていきます。