このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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113話です。さあ、いってみよう。



113話

 

「あわわわわ、どうしましょうどうしましょう」

 

「なーにやってんだ、あんた」

 

 ヒナがいる部屋に入ると、あたふたしながら必死にヒナをあやそうとしているエリス様がいた。

 どうやら突然ヒナが泣き出したのは、エリス様がヒナを起こしたからみたいだ。

 

「ああ、ヒカルさん!ヒナギクが何故か泣き止みません!」

 

「パパああああああああ!!」

 

「寝てたのに、起こすからビックリしたんだろ」

 

 俺がヒナを持ち上げて、抱っこすると泣き叫んでいたのが嘘のように静まり返った。

 

「よーしよし、良い子だな」

 

「ええっ!!?意味がわかりません!理不尽です!あんまりです!」

 

「せっかく静かになったのに、騒ぐんじゃねえよこの野郎」

 

「くっ……!このパパ面が最高に腹立ちますよ……!」

 

「誰がパパ面だ。で、まさかとは思うけど、ヒナにちょっかい出す為だけに来たんじゃないだろうな」

 

「違いますけど、それぐらいいいじゃないですか。私だって頑張ってるんです。ヒナギクで癒されてもいいはず。むしろ当然の権利と言えます」

 

 無い胸を張って言い切るエリス様は、俺が抱っこしている近くに来て、ヒナを覗き込もうとすると、ヒナが瞬時に顔を逸らした。

 

「!?」

 

 ショックを受けた顔になりつつも、エリス様は挫けずに俺の反対側に移り、またヒナの顔を覗き込むも、また顔を逸らされる。

 それが何度か続き、流石に声をかけた。

 

「なあ、嫌がってるだろ」

 

「嫌がるはずがありません!私とヒナギクの仲をなんだと思ってるんですか!」

 

 そう言われると、なんなんだろう。

 愛が一方的すぎるせいで、正直わからん。

 

「エリス様、そろそろ本題に入ろう」

 

「え?ヒナギクが本題ですけど?」

 

「……よーし、ヒナはこれから俺が大事に育てて、エリス教には入らないように教育してやる」

 

「な、なんてこと思い付くんですか!?わ、わかりましたよ!冗談ですから!」

 

 慌てて取り繕うエリス様はその後、真剣な顔になり、調査結果を話し始めた。

 

 まずは俺達の体について。

 ゆんゆんは体の戻された年数が少ないので、エリス様の力でほとんど元に戻せるらしいが、正確に戻せるわけではなく、数ヶ月程度の誤差があるらしい。

 それぐらいなら、全然いいだろう。

 ついでにリセットされた冒険者カードについても質問してみたが、それも体に応じて戻るんじゃないかとエリス様は言っていた。

 ゆんゆんはある程度戦力も戻りそうで安心した。

 

 次に俺やトリスターノの体だが、完全な状態に戻すことは出来ないと断言された。

 調査前の意見と同じで、戻せても五、六年程度が限界らしく、それ以上は確実に体に負担がかかりすぎるとのこと。

 五、六年分体の時間が経つなら、高校生ぐらいの体になるのか。

 ……色々と複雑な気分ではあるが、先程のゆんゆんのおかげで、嫌な気持ちになることはなかった。

 ちなみにトリスターノの冒険者カードはその年齢の時の状態に戻るだろうが、俺の冒険者カードは何ともなりそうにないとのこと。

 ……わかってはいたのだが、やっぱり俺はやり直すしかないみたいだ。

 それと俺達三人の体の時間を戻すのも数日がかかるので、まだ紅魔の里に残ることになった。

 

 最後にヒナの体について。

 本来、神や天使は睡眠が絶対に必要というわけではないらしいのだが、趣味や休息手段として睡眠をすることは大いにあるのだとか。

 世界が壊れてしまうほどのダメージを、世界を管理しているヒナ本人もダメージ受けてしまい、その上俺達を抱えて飛んだり守ったりしたせいで、ヒナは力を使い果たしてしまっている状態らしい。

 今のヒナは深刻なダメージを受けている状態で、そのダメージを回復する為に休眠状態のようなものになっている。

 幼児に戻っているのは、体の消費エネルギーを最小限にする為なのではないかというエリス様の推測だ。

 精神的に幼児に戻ってしまっていることに関しては、エリス様もよくわかっていないらしい。

 エリス様の憶測になるが、ダメージを受けた時に精神的ショックも大きかったせいで内に閉じこもってしまっているか、もしくは精神も休眠状態に入っているのではないか、と言っていた。

 

「エリス様、ヒナはその休眠状態?になってるってことは、ちゃんと元に戻るんだよな?」

 

「はい、戻るはずです。どれぐらいかかるか正確にはわかりませんが、ヒナギクのことですから一か月もかからないと思います」

 

「よかった」

 

 一番気掛かりであったが、戻るのなら何も問題はない。

 ヒナが天才で助かった。

 よくよく考えればエリス様もそこまで心配してる様子では無かったから、俺がそこまで心配することでも無かったのかもしれない。

 俺のレベルとかはまたやり直せばいいが、ヒナが育ち切るのを待つのは難しい。

 

「調査結果は以上です。数日体を戻すのにかかりますので、しばらくは安静にしていてください」

 

「わかった。本当にありがとう」

 

「ええ、まあお礼は後日にしっかりといただきますので大丈夫ですよ」

 

 ……何を要求されるかわからないが、適当な神器回収の手伝いとかがいいな。

 

「話は以上なのですが、ええとですね……」

 

「?」

 

「私もここまで協力した以上確実に体が戻るようにしたいわけですよ」

 

「うん」

 

「だから、その、一応言っておくんですけど」

 

 なんだか歯切れが悪い。

 顔も赤いし、どうしたんだ。

 

「こ、この数日間は、せ、性行為は控えてください」

 

「……」

 

「へ、変な顔でこっちを見ないでください!一応真面目な話なんですよ!」

 

 照れてるのを誤魔化すように、目を逸らして声を張るエリス様は続けた。

 

「体の時間をいじるのは危険なんです。も、もしも、もしもの話になりますが、ゆんゆんさんのお腹に新たな命が出来た状態で……」

 

「と、とんでもねえこと言ってんじゃねえよこの野郎!」

 

「だ、だからもしもの話だって言ってるじゃないですか!?」

 

 エリス様が赤面しながら大声で言い返してくる。

 というか、ゆんゆんのことを待たせたままだ。

 待たせた挙句、出来ませんと言ったら、ゆんゆんは怒り狂うのではないだろうか。

 

「とにかく!体の時間をいじるんですから、そ、そういう行為は禁止です!体の負担も多少はあるんですから!」

 

 先程ヒナが泣き出さなかったら、エリス様の警告前にやらかすところだった。

 アレ無しでしようとかアホすぎる。

 完全に冷静じゃなかった。

 

「話は終わりましたので、私は帰ります。ですが、その前にヒナギクを一度抱っこさせてください」

 

 そう言ってヒナに手を伸ばすが、ヒナは俺の服を掴んで離れようとしなかった。

 

「やだ!!」

 

「う、うわーん!私頑張ったのにーー!!」

 

 そう言って泣きながら光の粒子になって消えていった。

 普通に天界に帰ったのだと思うが、消え方的に敵にやられて消滅したような感じだったな。

 

 ………ああ、ゆんゆんに説明しなきゃ。

 俺はヒナをベッドに寝かせて、部屋に戻ろうとしたのだが、ヒナが俺の服を離そうとしなかった。

 幸いすぐに寝てくれたので、服を脱ぐことで脱出することが出来た。

 俺は部屋に戻ると、ゆんゆんはベッドで横になっていた。

 寝ているのかと思い、近付くと布団から顔だけを出して、こちらを見てきた。

 わたし不機嫌です、怒ってます、そういう表情だ。

 

「あの、ゆんゆんさん」

 

「なんでこんなに時間がかかるの?」

 

「ご、ごめん。エリス様が来てたんだ。調査結果を聞いてた」

 

「えっ、ど、どうだった!?」

 

 ゆんゆんがベッドから飛び起きて、尋ねてきたので、俺はエリス様から聞いたことをそのまま話した。

 

「じゃ、じゃあヒカルやトリタンさんは完全には戻せないけど、私の体はほとんど戻るのね?」

 

「ああ、スキルもある程度元の状態になるだろうって」

 

「や、やったわ!これでヒカルのサポートに回れるわね!」

 

 ゆんゆんはこんな時まで俺のことを優先で考えてくれる。

 願わくは、助けてもらってばかりの状況は早く抜け出したいところだ。

 

「ヒナも一ヶ月経つまでには戻れるって話だ」

 

「ほんと?じゃあ、戻った時までに言いたいことは取っておくわ」

 

 ゆんゆんが静かな怒りを感じさせたのも束の間、ゆんゆんが俺の手を引いてベッドへと引き込んでくる。

 

「ゆ、ゆんゆんさん!実はまだ話がありまして……」

 

「後にしない?」

 

「い、いや、待って!これが割と重要な話でして」

 

「むぅ……」

 

 ゆんゆんは不機嫌そうにしつつも聞く姿勢になってくれたので、俺は恐る恐るエリス様に言われた通りに話した。

 話していくにつれ、ゆんゆんの表情は驚き、悲しげ、最後に不機嫌な顔へと戻った。

 

「……じゃあ、出来ないってことですか?」

 

「え、えっと、はい……」

 

「……」

 

「……」

 

 沈黙が痛いが、受け入れてくれるしかない。

 俺はゆんゆんが納得してくれることを願っていると、

 

「じゃあ、体は戻らなくていいってことで……」

 

「ゆんゆんさん!?」

 

 

 俺は駄々をこねるゆんゆんを説得するのに、数時間かかった。

 

 

 

 翌日はトリスターノにもエリス様の調査結果を伝え、

 

 ───そして、数日が過ぎた。

 

「とうっ!」

 

 俺はベッドから飛び、部屋にある姿見の鏡の前に降り立つ。

 

「はっ!」

 

 俺は降り立ち屈んだ体勢から、一回転しながら立ち上がり、服を同時に脱ぎ捨てる。

 テンションが上がり過ぎたあまり、下着も脱いでしまったが、些細なことだろう。

 

「ふんっ!ほっ!はっ!」

 

 次々にポーズを取りつつ、自分の体を眺める。

 俺の体は、あの頃に……高校生時代の体になっていた。

 空手しか見えていない頃の、結果を得る為に我武者羅になっていた頃の体。

 つまり、

 

「パーフェクトボディー」

 

 細マッチョとマッチョの境界あたりのバランス。

 体の胸筋や腹筋などのラインがしっかりと分かるほどに筋肉がついている。

 腹斜筋は引き締まっていることにより、腹直筋が六つに割れているのがよく見える上に綺麗なボディラインを作ることが出来ている。

 腕や脚の筋肉も申し分ない。

 これ以上の描写は長くなってしまうから割愛することになるのが、残念だ。

 だが、それほどまでにパーフェクト。

 この頃の俺が遊んでいたら、大変なことになっていたかもしれない。

 なんてアホなことを考えていると、部屋の扉がガチャリと開いた。

 

「ヒカル、おはよ……って、なんで全裸なの!?」

 

「おはよう。着替えるついでに体の確認だよ」

 

「全部脱ぐ必要は無いよね!?」

 

 目を逸らしつつも、チラチラと俺のことを見て赤面するゆんゆん。

 しっかりと興味があるんじゃないか。

 中坊の頃や体の時間が戻る前とは比べ物にならないほど自慢出来る肉体だから、見られても全く困らない、むしろ見てほしい。

 

「い、いい加減前ぐらい隠して!ほら、服!」

 

 そう言って、俺が脱ぎ捨てた服を俺に投げてくる。

 確かにギンギンな状態を隠そうともしないのは良くなかったかもしれない。

 でも、今はそっちより全身を見てほしい。

 

「早く着替なさい!!」

 

 ハンガーラックポールよろしくギンギンになってるところに服をかけてから、腰に手を当てて体を見せつけたら、めちゃくちゃ怒鳴られた。

 

 

 

 

 

「トリスターノはほとんど元通りか」

 

「そうね。いつものトリタンさんと変わらないわ」

 

「私も鏡で確認しましたが、体の時間が戻る前との違いは見当たりませんでした」

 

 朝食を食べ終わり、俺達は自分達の体の変化について話していた。

 トリスターノはニホン騒動が起こる前の姿と変わらなくなっていた。

 

「リーダーはなんというか、随分と筋肉がつきましたね」

 

「だろ?体だけで言えば、俺の全盛期だ」

 

 中坊の時の体用に買ってもらったTシャツがパツパツだ。

 着脱に少し時間がかかるが、それ以外は特に問題は無い。

 

「まだ人生半分も生きてないのに、全盛期って……」

 

「い、いいじゃねえか!どうせ人生なんておっさんになってからの方が長いんだしさ!」

 

 ゆんゆんにグサリとくることを言われて、俺は言い返したが、決して以前までの俺がおっさんだったわけではない。

 そこのところは間違えないでほしい。

 この体の時の俺はストイックすぎた、全盛期というのは何ら間違っていない。

 

「そこまで筋肉量が違うのであれば、ステータスも上がっているのではないですか?」

 

「そうかもな。確認してみるか」

 

 今朝は体を確認することに夢中になってたから、冒険者カードは見てなかった。

 俺は懐から冒険者カードを取り出し、確認してすぐに懐へと戻した。

 

「………さて、とりあえずなんだけど」

 

「いやいや、そんな雑な話題の変え方ありますか?」

 

「そうよ、気になるじゃない」

 

 期待なんてしていなかった。

 と言えば嘘になる。

 体がかなり変わったのだから、もしかしたらと思ってしまうのは当然のことだろう。

 ただ、俺に限って、というより『ムードメーカー』に限ってそんな期待通りのことになるなんて展開はあり得ないのだ。

 

「……身体能力に関するステータスが5ぐらい上がってた」

 

「……」

「……」

 

 その可哀想なものを見る目はやめてほしい。

 最近の俺は違ったかもしれないが、少し前まではこの状態だったんだからさ。

 こうしてみると改めて、転生してきた初期の頃の状態に戻ったのだと実感した。

 本当に厄介な能力だ。

 というか、本来はチートを贈られて多少はイージーな冒険をするはずなのに、このハードな世界で何でハンデを抱えなきゃいけないんだ。

 

「二人の冒険者カードはどうだ?」

 

 弱くなってしまったことに、ちゃんと向き合っていかないといけないのは確かだが、いちいち俺の弱さを気にするのも嫌なので、俺は二人のステータスを聞くことにした。

 

「私も実はあまり良くなくて……」

 

 ゆんゆんが少し表情に影を落として、そう言い冒険者カードを取り出した。

 

「上級魔法を覚えてないみたいなの……一応ポイントは集まってきてるから、習得にそこまでかからないと思うけど……」

 

 上級魔法か。

 俺は別に中級魔法でも十分だと思っているが、紅魔族は上級魔法を覚えて一人前と認められることから、ゆんゆんはそういうわけにはいかないだろう。

 最初の頃はなんだかんだで俺達と足並みを揃えつつもスキルポイントを貯めて頑張っていたのを俺は見てきたのだ。

 ステータスを戻されて、里の連中に半人前扱いされたら可哀想だし、俺よりもゆんゆんのレベル上げを優先した方がいいかもしれない。

 

「トリスターノは?」

 

「私の場合は一長一短ですね。ステータスやレベルは上がってますが、冒険者として覚えたスキルを失くしたのは正直痛いところです」

 

 円卓の騎士として活躍していた時期なのだろうか、レベルは三十後半でステータスも以前よりかなり高くなっているように見える。

 スキルもほとんどアーチャー職のものばかりで、当然テレポートとかはない。

 ……ん?なんかおかしくないか?

 

「待て、俺達のパーティーに入った時はレベル一桁だったよな?騒動が起こる前もこんなにレベルは高くなかったはずだ。でも今の体の年齢の時の方がレベルが高いってのは矛盾してるだろ」

 

「おや、気付かれてしまいましたか。というか私が円卓の騎士だとバレた時にそのツッコミが来ると思っていたのですが……」

 

「どういうことなの?」

 

「そうですね。まずは私がグレテン王国を抜け出す時の話からしましょうか。あれは───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず110話の後書きを読めばわかるってことだな」

 

「待ってくださいよ!今のは回想に入るところじゃないですか!」

 

「文字数とか話数とか考えろよ。というか回想に入ったら、ただでさえ分かりづらい今の状況が更に分かりづらくなるだろうが」

 

「そんな正論聞きたくないですよ!私の回想シーンに入った方がわかりやすいですって!『エピソード・オブ・トリスターノ』の序章を始めましょうよ!」

 

「何勝手に話作ってんだこの野郎。とりあえずマーリンに色々されて、レベルが一桁になってたんだな」

 

「『死の宣告』を覚えてたのも、そのマーリンって人のせいだったのね」

 

「ゆんゆんさんまで要約しないでくださいよ!」

 

 

 

 

 

 体の心配も無くなり、俺達は今後の予定や活動について話を進めていく。

 数日中には紅魔の里を出ることになり、アクセルに戻ることが決定した。

 アクセルに戻った後は、しばらくレベリングの日々だ。

 ヒナには申し訳ないが、冒険者活動中は孤児院に預けたりする必要があるだろう。

 ヒナの体が戻るのもそこまでかからないらしいし、なんとかなるはずだ。

 

 それよりも重要な話があった。

 ゆんゆんやトリスターノの体はほぼ元通りなのだが、俺だけが以前よりも若い姿になってしまっている。

 アクセルで交流のある人に見られたら、確実に俺が変化しているのがわかる。

 色々と理由をつけて誤魔化せればいいかもしれないが、それだけで話が終わるわけもない。

 トリスターノが言うには、王族や貴族に若返りのことがバレれば確実に面倒なことになり、尋問や実験などのとんでもない事態になりかねないとか。

 王族やら貴族連中に『不死』や『若返り』などのワードは禁句みたいだ。

 だから俺の外見を誤魔化す必要がある。

 紅魔の里になら、そんなことが出来る魔道具があるかもしれない、というゆんゆんの一言により、俺達は里の商業区へと向かった。

 

 

 割とあっさり魔道具は見つかった。

 数年ほど歳を誤魔化すことが出来る魔道具で、魔力を電池のように貯めれば何度も使える使い勝手の良いものだ。

 欠点は魔力を最大まで貯めないと使用出来ないことと、魔力を最大まで貯めるのにかなりの魔力が必要だということ。

 俺の魔力量は少ないが、ゆんゆんやヒナもいるし、魔力を貯めるのも特に問題は無い。

 即購入し、すぐに試しに使ってみると、二人からは以前の俺と変わらないと太鼓判をもらえた。

 俺は試しにそのまま魔道具を使ったまま、ゆんゆんの家に帰る途中、意外な人物と再会した。

 

「ウィズさん、こんにちは」

 

「おや?こんにちは。皆さんはどうしてここに?ゆんゆんさんの里帰りですか?」

 

「え、ええっと、まあ、そんな感じです。ウィズさんは?」

 

 ウィズさんから見て、俺が変わったように見えていないみたいだ。

 アクセルに帰る前に、魔道具がしっかりと効果があることがわかってよかった。

 

「バニルさんが私を労って休日を作ってくれたんです。店のことは任せて、数日は遊びにでもと」

 

 ………バニルさん、体よく店から追い出したな。

 

「それで旅行ついでに紅魔の里に良い魔道具がないかと見に来たんですよ」

 

 なるほど、バニルさんの努力は多分無駄になるだろう。

 それはともかくとしてウィズさんは紅魔の里に一日泊まり、明日は王都で色々と見て回るらしい。

 俺達がアクセルに帰るには、知り合いの紅魔族に王都あたりまでテレポートをお願いして、そこから馬車などの陸路で帰ることになる。

 多少は金も時間もかかるので、面倒だったのだが、ウィズさんはアクセルへテレポートで帰ることが出来るだろう。

 俺は試しにテレポートでアクセルに送ってくれないかとお願いしてみると、ニッコリと承諾してくれた。

 帰る準備やお世話になった人たちへのお礼を済ませるためにも時間が必要なことから、明日の朝にテレポートしてもらうことを約束して、俺達はその場で別れたのだった。

 

 

 

 その日はりんりんさんにはお礼を言うことが出来たのだが、何故かひろぽんさんに会うことが出来なかった。

 準備も早々に終わり、翌日を迎えた。

 朝、約束しているウィズさんの元に向かおうとした時。

 

「おっと、どこに行こうというのかね?」

 

 そう言って、立ちはだかるように道に立つのは、ゆんゆんの父であるひろぽんさん。

 ひろぽんさんの後ろには数人の紅魔族が俺達を見て立っている。

 ひろぽんさんもその周りの紅魔族も剣呑な雰囲気を漂わせていた。

 

「ひろぽんさん、おはようございます。昨日は会えなかったので言いそびれたのですが、俺達アクセルに帰ることになったんです」

 

「ほう」

 

「お世話になったこと、お礼を言いたいと思っていたんです。本当にありがとうございました」

 

「構わないとも」

 

 ただならぬ雰囲気であれど、言うべきことは言わなければならない。

 返答はいつも通りであるが、ひろぽんさん達の雰囲気は変わらない。

 

「だが」

 

 りんりんさんが俺達の後ろから通り過ぎて、ひろぽんさん達の元へと向かい、同じようにこちらを見てくる。

 

「娘を同行することは許可出来ない」

 

「……」

 

「……えっ、お、お父さん……?」

 

 俺は咄嗟に何も言えず、ゆんゆんは困惑した様子で呟く。

 俺はヒナを抱え直しながら、尋ねる。

 

「何故ですか?」

 

「わからないのかね?」

 

 失望したような様子で、聞き返してくる。

 

「今の君が、約束を守れる男ではないからだ」

 

 立ちはだかるようにして、ではない。

 本当に俺達を通さないように、立ちはだかっていた。

 




またシリアス続き……かも?


『戦闘員、派遣します!』を読み始めたのですが、意外と『このすば』要素が出てきて面白いですね。
アニメが始まって、ついでにこのすばの方も盛り上がってくれないかな。
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