このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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121話です。さあ、いってみよう。



121話

 

 

「何の騒ぎだ?」

 

 俺が周りの兵士達に取り押さえられながらも必死に弁明をしていると、威圧感のある低い声が辺りへと響いた。

 

「ジャ、ジャティス王子!申し訳ありません!それがこの城に……」

 

「ジャティス!!俺だ!ヒカ、ぶっ!?」

 

「この無礼者!城に侵入しただけでなく、王子に対して、何という口の聞き方を……っ!」

 

 兵士達に囲まれて見えないが、聞き覚えのある名前にこれ幸いとばかりに声を掛けたが、地面に思い切り顔を押し当てられて遮られてしまった。

 

「そこで組み伏せられているのは何者だ?」

 

「賊です。すでに鎮圧しましたので、ご安心ください」

 

「ふむ、見せてみよ」

 

「……む、無力化したとはいえ何があるかわかりません。賊の対応はこちらに……」

 

「銀髪盗賊団のような凄腕ならともかく、道中で取り押さえられるような賊に不覚を取る余ではない。見せてみよ」

 

「ですが、しかし……」

 

「……見せてみよ、と言っている」

 

「っ!し、失礼しました!」

 

 底冷えするような声が聞こえると、続々と兵士達が引いていき、俺を押さえている兵士のみが残った。

 

「………そなた、何をしてるのだ?」

 

「……何って言うか、色々あったっていうか、いだだだだだっ!」

 

「貴様、いい加減に……!」

 

 俺の口の利き方に気に入らなかったのか、兵士達が拘束する手を強めてくるが、

 

「よい、好きに喋らせろ」

 

「は、はっ!」

 

 それをジャティスが一声でやめさせた。

 なんというか、ちゃんと王子様だったんだなこいつ。

 

「そなたの経緯を確かめるのは後だ。今になってタイミング良く城の中に現れたのも、余を利用しようとする不届き者が、そなたの姿形を偽って近付いてきたからかもしれんからな」

 

「えっ、ちょ、ちょっと待った!確かにタイミング良すぎたかもしれないけど、本物だって!」

 

「だから本物かどうかを確かめる為、いくつか質問をする。余とそなたにしか分からぬ事だ。本物だと分かれば、すぐに解放しよう」

 

 ああ、でも、そうか。

 これぐらい疑ってかかるのが普通……なのかもしれない。

 俺が組み伏せられているせいで、ジャティスに見下ろされている状態になっているが、俺はなんとか頷いた。

 ジャティスもまた頷き、口を開いた。

 

「一つ目の質問だ。そなたは余のことを『ジャティス』と呼ぶ以外に、他の呼び名をよく口にしていた。それはなんだ?」

 

「まさよし」

 

「ふむ。二つ目の質問だ。そなたの能力の名前は?詳細までは言わなくていい」

 

「ムードメーカー」

 

「三つ目の質問、そなたの親友枠は?」

 

「いや、親友枠ってなんだよ」

 

「……四つ目の質問、余とヒナギクの関係は何かを答えよ」

 

「友達だろ」

 

「………ふむ、なるほど。だいたいわかった」

 

 顎に手を当てて、こちらを見て頷いてくるジャティスに早く拘束を解くように言ってくれないかと目で訴えていると、ジャティスは続けて言った。

 

「二問不正解だ。シロガネヒカルの親友枠は余であり、余とヒナギクの関係は友達以上のものだ」

 

「は?」

 

「よって、そなたは偽物。衛兵、牢屋に連れて行け」

 

「おいいいいいいいい!!ふざけんなこの野郎!何が友達以上だ!どさくさに紛れてなに……」

 

「黙れ、下郎!城への侵入だけでなく、王子に対する無礼の数々、相応の罪になると知れ!」

 

 またもや地面に頭を押し当てられて、喋ることが出来ず、そのまま装備を外されそうになった時。

 

「すまない、冗談だ。彼を離してやってくれ」

 

 ジャティスが制止の声を上げた。

 周りの兵士達は戸惑い、数秒間の沈黙の後、一人の兵士が尋ねた。

 

「え、お、王子?今なんと?」

 

「彼を離してやってくれ。彼は余の友人に間違いない」

 

「ゆ、友人……?」

 

 そんな戸惑いの声が周りから聞こえてきた。

 ジャティスも確かぼっちだったから、それだけ衝撃的なことなのかもしれない。

 いや、それ以前に身分の違いとか、色々と疑問になるようなことはいくらでもあるか。

 

「離してやってくれ。頼む」

 

「は、はい……!」

 

 兵士達が離れていき、俺の体が自由になった。

 地面に押し当てられた際に、口に入った砂利を吐き出しつつ、立ち上がるとジャティスと目が合った。

 

「……散々人で遊んでくれやがってこの野郎」

 

「はは、すまない。再会が早かったせいか、はしゃいでしまった。無事でよかった、我が友よ」

 

 微笑んでそう言うジャティスの様子に、周りから驚きの声が次々と聞こえてきた。

 

「王子が、笑ってらっしゃる……?」

「いつぶりだろうか、王子のあんな笑顔は」

「では、本当に、あの男が王子の友人だというのか」

 

 そこまで驚かれるようなことなのか、こいつの笑顔。

 確かに最初会った時はほとんど表情が変わらなかったけど、あれは俺達に警戒とかしてるだけかと思ってた。どうやら表情が変わらないのはデフォルトだったらしい。

 

「この者は先程案内した客人と同じく、先の戦いで円卓の騎士と戦い満身創痍だった余を助けてくれた恩人であり、その円卓の騎士と戦う際に背中を預けた戦友でもある。客として、どうかもてなしてやってほしい」

 

「は、はっ!」

「しょ、承知いたしました!」

 

 まあ賊として扱われるより、客として扱われた方がいいのは確かなんだけど、それは置いておいて。

 

「あー、まさよし君。ちょっと」

 

「まさよし君ではない。余はベルゼルグ王国第一王子、ベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・ジャティスだ。本人か確認のために質問に使ったが、その呼び方を認めたわけではないぞ」

 

「そういうのいいから。というか、いちいちフルネームを言うんじゃねえよ」

 

「何も良くないのだが。余の大事な名前だぞ」

 

「あーもう、めんどくせえよ。とにかく俺が転移させられてからのこととか色々話したいことがあるから……」

 

「だろうな。余も同じ気持ちだ。話をする為にも、まずはヒナギク達の元へ案内しよう」

 

「は?ヒナ達?」

 

 

 

 

 

「ヒカル!!」

 

「ごほおっ!?」

 

 案内された馬鹿でかい客室に入り、顔を合わせるや否や飛び付いてきたヒナを受け止めきれずに、背中からぶっ倒れた。

 

「大丈夫!?怪我とかしてない!?」

 

「たった今怪我しそうになったよこの野郎。大丈夫だ、心配いらないから退いてくれ」

 

「そうだ。なんと羨まけしからん。余が嫉妬でどうにかなる前に早く離れるべきだ」

 

 ジャティスに言われて、見られたのが恥ずかしくなってきたのかヒナは慌てて立ち上がって俺から離れた。

 ヒナが退いてくれたので、俺も立ち上がると微笑むイケメン、トリスターノと目が合った。

 

「リーダー、よくご無事で」

 

「ああ。まあ、ぶっちゃけ無事だったのは奇跡みたいなもんだけど」

 

「ヒカル、そろそろ話してくれ。そなたに何があったのかを」

 

「ああ、話すよ。とりあえず、ランダムテレポートされてグレテン王国のキャメロット城前に飛ばされたんだけど」

 

「「「は?」」」

 

 

 

 

 

 俺が今までの経緯を話し終えると、三者三様の反応を見せた。

 ジャティスは呆れた顔で、トリスターノは頭を抱え、ヒナはムスッとした顔で静かに怒りを浮かべていた。

 

「またマーリン……しかも今度は騎士王まで……」

 

「俺も別に会いたくて会ってるわけじゃないぞ」

 

「それはそうなんですけど……」

 

 疲れたような顔のトリスターノがぼやく。

 グレテン王国に行こうなんて、思ったことすらない。

 

「………」

 

 ヒナはムスッとした顔のまま喋らない。

 どうやらニホンの世界を壊された事とか幼児になってしまうほどのダメージを負わされたことを恨んでるらしい。

 ニホンからこちらの世界に戻ってきたことはヒナ自身も良かったと思っているが、それはそれ、とのこと。

 しかもヒナはあのダメージのせいで後遺症を抱えている。

 割と深刻なレベルの。

 

「国が滅ぶ未来か………」

 

「王子としては、やっぱりそこが気になるか?」

 

 神妙な面持ちで呟くジャティスに尋ねると、当然だと頷いてきた。

 

「戦場ばかりに出ている余だが、れっきとした王族だ。余とアイリス、どちらが王位を継承するかはわからぬが、そんなことはどうでもよい。我々は国を導く義務がある。国を少しでも良い方向に導かなくてはならないのに、ほぼ確定化した滅びの未来など視えてみろ。余とて平常心を保てるかわからん」

 

「そうか……まあ、そうだよな」

 

 ジャティスの言葉で騎士王が抱えているもののスケールの大きさが真にわかってきた気がする。

 なりふり構ってられない騎士王を相手に俺がどうにかしろなんて、マーリンも無茶を言う。

 

「国同士の戦争は、出来るだけ避けたいのだが、色々と準備をしておく必要がありそうだ」

 

「「「………」」」

 

「そなたはどう思う、トリスターノ?いや、トリスタンと呼んだ方が良いか?」

 

 ジャティスの物騒な発言に俺達は黙り込んでいると、ジャティスがトリスターノを揶揄うように声を掛けた。

 声の調子は確かに揶揄うようなものであったが、ジャティスの目や表情に遊びは無い。

 

「……出来れば、トリスターノとお呼びください」

 

「出来れば、か」

 

「はい。どちらも私の名前です」

 

「ほう……」

 

 突然の一触即発の雰囲気に、流石に割って入ろうとしたら二人に手で止められてしまった。

 

「確かに私は円卓の騎士、トリスタン。それは今も、変わりません。だからこそ国の現状が許せずにグレテン王国を離れました。騎士王が抱えているものは知りませんでしたが、知っていたとしても私の行動は変わらなかったでしょう」

 

「……」

 

「もし戦争になるのだとしたら、私は止めたい。止められないのだとしたら、私は……こちら側の戦力となり、騎士王らを討ち倒します」

 

「出来るのか?」

 

「どこまで出来るかは正直分かりませんが、力の限り。それが私の円卓の騎士としての意地であり矜持です」

 

「……そうか。悪かったな」

 

「いえ、王子の立場上仕方のないことです」

 

 ……なんだか妙に緊張してしまった。

 ジャティスもそこまでトリスターノのことを危険視していたわけではないのだろうが、一応は本人の口から聞いておきたかったのだろう。

 何事もなくて、よかっ

 

「それに私はリーダーの親友枠ですからね。リーダーに危険が及ぶのであれば、戦いますとも」

 

「……は?ヒカルの親友枠は余だが?」

 

「ご冗談を。王子と言えど、無理があるかと」

 

「なるほど、そなたの気持ちはわかった。つまり戦争か」

 

「なんですか、やりますか?」

 

「よし、表に出ろ。決着をつけてやる」

 

「お前達なんで大事な話してる時は円満に終わったのに、クソどうでもいい事で戦おうとするんだよ!!」

 

 立ち上がって睨み合う二人の間に入り、引き離していたらノック音が聞こえてきた。

 

「む?誰だ?」

 

「お楽しみのところ、申し訳ありません。兄様」

 

「アイリスか。どうかしたか?」

 

 おずおずと部屋に入ってきたのは第一王女のアイリスはチラチラと俺達を見ながら、口を開いた。

 

「兄様の友人達のことがどうしても気になってしまって、つい来てしまいました。ご迷惑でしたか?」

 

「そんなことはない。アイリスにも紹介しようと思っていたのだ。まずこの目付きの鋭い男は───」

 





次回でこの章は終わりになると思います。
いつかの後書きの宣言通り、ウォルバク戦の描写はほぼありません。
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