トリスターノの知りたくない秘密を知って、数日が経ったある日、
クエストが終わりギルドで夕飯時に恒例のようにヒナギクと合流した時にそれは起こった。
「おい、新参者のくせに俺に挨拶も無しか?」
俺は面倒な奴に絡まれていた。
「新参者は俺に一杯奢るのがこの街の流儀だ。シカトしてんじゃねーよ」
数日いてわかったが、この街は平和でのどかな街だ。実際に犯罪も少なく、国の中でもかなり住みやすい街らしい。
まあ、そんな街でもこんなのはいるみたいだが。日本も異世界もそうそう変わらないらしい。高校大学の部活の先輩にはコレよりもっとエグい人達がいたから、いちいちビビったりしないがさてどうしたものか。
「僕の友達に手を出すのなら許しません」
少し考えてたらヒナギクが俺とチンピラの間に入り込んでいた。
こいつは本当に物怖じしないな。
「お、なんだガキンチョ。お前も奢ってくれるのか?」
「……ガキ?」
一瞬で頭に血が上ったらしい。
声のトーンが下がり、目つきが鋭くなった。
「お、おい。俺のことは別にい……」
「僕に任せてください!シロガネさんはそこにいてください!」
い、いや、そうじゃなくて。
「ガキンチョが俺に勝てるわけないだろ。金出してさっさと退きな」
「ねえ、やめときなよ。その子は私達のパーティーにも参加してくれる予定に」
「うっせー、黙ってろリーン。このガキンチョに力の差ってやつを教えてやるよ」
あっちもあっちで女の子が止めようとしてるが、止まる気はないらしい。
ヒナギクは腰を落とし、拳を顎の前近くに置き脇を閉めた構え、所謂ファイティングポーズをしてる。
こ、こいつ可愛い顔してボクサースタイルで戦ってるんじゃないだろうな。
ヒナギクは身体を揺らし、リズムを取っていて臨戦態勢だが、チンピラは余裕そうに突っ立った状態だ。
「早く構えてください」
ヒナギクが警告するが、チンピラは子供相手に完全に舐め切っていて無視した。
「そうですか、じゃあ僕も支援魔法はかけません」
身体を揺らしてリズムを取っていた一瞬。
ヒナギクの身体が消えたかのような速さ。一瞬でチンピラの懐へと潜り込み、踏み込む。腰の捻り、潜り込み踏み込んだ時の身体のバネを利用し、拳を上へと突き上げる。
パーフェクトに綺麗なアッパー。そんなものを普通に食らっても立っていられるかわからないのに、突っ立った無防備な状態のチンピラは身体が浮き上がり、後方へと倒れた。もちろん起き上がってこない。一発でKOしやがった。
周りで見ていた冒険者が一瞬遅れて歓声を上げる。
少しの間倒れた後も構えた状態だったが、起き上がって来ないのを確認し、構えを解き歓声をなんとも思ってない顔で俺の元に戻ってこう言った。
「ご飯食べましょう」
こいつはどんな道でも食っていけそうだ。
しばらくした後さっきのチンピラが不意打ちでヒナギクに攻撃しようとしてるのに気付いた俺が咄嗟に投げ飛ばしたせいでまたチンピラが気絶することになった。それを見たヒナギクから面倒な勧誘が増えることになるとは思わなかったが、この一件でヒナギクとも仲良くなった。
一応波風がたたないよう先程チンピラを止めようとした女の子にお金を渡して、さっきのチンピラに奢ってやってくれと伝えて帰ろうとしたら、ヒナギクが同じく女の子の元に向かい
「僕はもうあなた達のパーティーには参加しません。失礼します」
と、綺麗にトドメを刺して行った。
俺がせっかく金払って穏便に済まそうとしたのに、何してくれてんだよ……。
解散した後にゆんゆんから久しぶりにボードゲームをしようと誘われた。
この前は勝ったが、ゆんゆんは無駄に頭良いから今回は勝てるかわからんな。今回も最初は負けるが巻き返すだろう、うん。
ヒナギクとトリスターノも誘ったが、どちらも予定があるとかで来なかった。別れる間際、トリスターノは分かってますからとウインクしてきたから、あのストーカー野郎はいつかしばく。
そういえば、ゆんゆんの部屋には初めて行くな。年下なんだ、高校生の歳の子に意識なんてしてはいけない。
着くなりあのボードゲームを用意し始めるゆんゆん。
「なあ、今回は違うやつやろうぜ」
「え、でもまだ決着が……」
まだ言い張るか。言い続けてもしょうがないしな。
「違うのもやってみたいんだけどなー」
「そ、そうですね!」
チョロい娘だ。相変わらず将来が心配になるな。なんとかできないものか。
ゲームを続けていく。ルールブックを丸暗記してるゆんゆんに勝ち目は無い。
もうムカついてきたのでルールブックの何ページには何が書いてあるかを当てられるか、とかやっても死んだ目で全問正解してくるゆんゆん。
俺が悪かったよ……。
「ヒナギクを誘ったりしないのか?」
ついつい話題を変えたくて、ゆんゆんには難しい話をしてしまう。
「え、はい。なんか忙しそうだし、迷惑になっちゃうかもしれないし」
「何を思うかなんてその時々で違うし、そうそう迷惑になんて思わねえよ。ゆんゆんだってこの前のボードゲームで『エクスプロージョン』五回したけど、迷惑とか思ってないだろ?」
「え、思ってますけど」
「……」
「……」
「まあこのようにだいたい仲良くなった奴ならそんな迷惑なんて思わないもんだし、その時は少し迷惑に感じても次会った時はなんとも思ってないだろうし」
「え、ずっと思ってますけど」
「……」
「……」
「だから、気軽に声をかけたり遊びに誘っていいんだよ。躊躇するだけ時間が無駄になるんだぞ?断られたら違うことをやればいい。断られたからって嫌いってことじゃない。気負う必要無いんだよ。俺達は仲間だし、もう友達だろ?」
「友達!?」
「そうだよ。俺たちは友達なんだ、もっと気軽になんか言ってくれ」
「そ、それならあのボードゲームの続きを…!」
「やだ」
「……」
「……」
「だってあれは俺の勝ちだから」
「な、」
「いい加減敬語もやめちまえ。礼儀正しいのは大事だが堅苦しいとあまり人は寄ってこな……」
「あれが勝ちなわけないじゃないですか!普通なら私の圧勝で…!」
「はあー!?五対三で俺の勝ちですぅー!いい加減どうして負けたかわかりましたか!?むしろ後から五回勝ちを巻き返したんだから、俺の圧勝ですぅー!」
「そ、そんなわけないでしょおおおおおお!」
「おら、敬語なんか捨ててかかってこい!ほれ、友達なんだから俺のこと呼び捨てで呼んでみろよ。」
「ええっ!?そ、そんな……!」
「はあー!これだから負け犬ちゃんは!」
「まけっ!?」
「負け犬ちゃんはもう少し度胸とか欲しいもんだ。まあ負け犬ちゃんだし、無理か」
「………」
「どうした、プルプル震えて?催しちゃったか?ほら、犬なんだからそこらで済ましてこい。安心しろ、犬のトイレシーンなんて誰も……」
「も、もう怒ったから!デリカシーなさすぎ!最低!ヒ、ヒカルの、ばかあああああ!!!」
全力で掴みかかってくるゆんゆんの手首を押さえて抵抗する俺。
友達なんだし、こんなもんだろ。
ただ、別に下の名前を呼び捨てにしろとは言ってないんだけど、それを言ったら面倒臭くなりそうだし、いいか。
その後トリスターノにニヤニヤされて、この時の考えを後悔することになるのはまた別のお話。
本来は別の話を13話にする予定だったのですが、やっぱりこの二つの話を書きたくて無理矢理変えました。
二人のキャラと仲良くなれるようなお話を出しておきたかったのです。
次の話は原作キャラが出てきます。物語もやっと進むことになります。
20話までに今までの話(一章)が終わらせられば終わらせます。