このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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月姫リメイクやってて、投稿が遅くなりました。

125話です。さあ、いってみよう。



125話

 

 

「この街のことが聞きたい? なんでぇ、あんた、この街は初めてかい?」

 

 

「そうかい。そりゃそんなこと聞くってことはそうだろうな。まあ、全然教えてやってもいいんだけどよ、今は口の中が乾いちまって……」

 

 

「なに? 一杯奢ってくれる? 悪いな、なんか催促したみたいで。んじゃあ、なにから聞きたい?」

 

 

「───次は……へえ、冒険者? ああ、もしかして最近有名になってるからか? デストロイヤーを撃退どころか討伐しちまったんだからな。今話しててもなんだか実感が湧かないっていうか……ああ、悪い悪い。冒険者の話な」

 

 

「あんた見たところ違う街の冒険者とかそんな感じか? そりゃ同業者のことは気になるよな。まあ、いろいろ有名にはなってるんだがよ、ぶっちゃけ何人かが異常っていうか頭がおかしいのが数人いるだけで、大したレベルの冒険者はいない。なんせ『駆け出しの街』だからな」

 

 

「だがよ、気をつけろ。その数人の中にはかなりの危険人物がいる。そいつらのことも特別に教えてやるよ。まずはそうだな、頭がおかしい方の紅魔族について───」

 

 

「その紅魔族のパーティーのリーダーである『カズマ』ってやつは……まあ、正直そこまで危険ってわけじゃないんだが、こいつこそが魔王軍幹部やデストロイヤーの討伐の指揮を取っていた奴だ。なんでもその戦法から冒険者に『鬼畜のカズマ』とか『ゲスマ』とか『クズマ』とか呼ばれてるんだとよ」

 

 

「次は『ダスト』だ。名前通りの冒険者、いやチンピラだな。新人冒険者にも容赦なく喧嘩を売るとかはまだいい方で、軽犯罪にも平気で手を出すとかなんとか。金髪の赤い目をした奴だから目立つし、わかりやすいからなるべく関わらないようにしとくのが一番だ」

 

 

「次は───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───っていう話が聞こえてきてさ」

 

「おいおい、なんだそりゃ」

 

「ふーん」

 

 ダストが今日の昼間に盗み聞きした内容を苛立たしげに語る。

 続くカズマはまるで心外だ、とでも言いたげな顔だ。

 俺としては特に思うところはない。

 

「何で俺達がそこまで言われなきゃいけないんだ? 俺達は冒険者として街を守ってるっていうのによ」

 

「お前達は最近ダラダラしてるだけだろ」

 

「俺達も有名になってきたから、ありもしない悪評を立てられるようになったってことなのかもしれないな」

 

「聞けよこの野郎」

 

 俺の指摘が聞こえないかのように会話する二人。

 何がありもしない、だ。

 バリバリ本当のことだろうが。

 久しぶりに一緒に飲んでたら、これだよ。

 

「っていうか俺が言いたかったのはまだ終わりじゃないんだ」

 

「なんだよ、話してたやつをとんでもない目に合わせてやったとかそんな感じか?」

 

「はあ? 俺がそんなことするわけないだろ。少しいろいろ奢ってもらったぐらいだよ」

 

 何言ってんだこいつ、みたいな顔やめろ。

 それと少しなのか、いろいろなのか、どっちなんだ。

 

「なるほどな。この中で唯一名前が出てない男、そいつの悪評がこれでもかってぐらい言われてたんだろ?」

 

「あ? 誰のこと言ってんの? キース?」

 

 この場にいないけど、悪評の出る冒険者と言えばアイツだろ。

 『エリス教のプリーストは、信仰心の高さと胸の大きさは反比例するって本当なんすね。うひゃーっひゃっひゃっ!』ってマリスさんをからかった結果、拳で鼻をへし折られたのは有名な話だ。

 

「ヒカルに決まってんだろ。お前の話が出なかったら、それこそおかしな話だ」

 

「いや、あのさ。俺のこと何だと思ってんの?」

 

「喧嘩で相手の関節外したり、骨折ったりとかしてボコボコにしてるし、立派なバーサーカーだろ」

 

「俺から喧嘩売ってるわけじゃないし、多少の怪我なんか教会で金払えば治るんだから、別にいいだろ」

 

「お前、そういうところだぞ」

 

 なんか引かれた。

 この二人の方がよっぽどのことしてるのに、何で俺が変な扱い受けなきゃいけないんだ。

 そもそも喧嘩売る方が悪いだろ。

 

「そう、俺もヒカルの悪評がめちゃくちゃ出てくると思ったんだけどさ」

 

「なんだお前ら、喧嘩したかったのか。表出ろよ、二人まとめてしばいてやるから」

 

「え、ちょっと待てよ。その口ぶりからして、もしかして……」

 

「ああ、確かに素行が少し悪いみたいな話もしてたんだけど、途中からなんかすげえ良い話ばかり話しはじめてさ。エリス教会で慈善活動してるとか、祭りでは街の警備をしてたとか、孤児院で子供達の面倒見てるとか」

 

「全部事実だろうが」

「おいおい、だまされてるぞ」

 

「それで話聞いてたやつも興味津々なのか、やたらヒカルのことばかり聞きはじめてさ。俺も黙ってられなくなってタカる前にヒカルがどれだけ頭バーサーカーか話してやったんだよ」

 

「張り倒すぞこの野郎」

 

 誰が頭バーサーカーだ、好き放題言いやがって。

 酒を飲んでご機嫌のカズマは面白くてしょうがないらしく、何を話してやったんだとダストに尋ねた。

 

「喧嘩で容赦無いのはもちろんだけど、ゆんゆんっていう彼女がいるのに、ヒナギクに手を出したっていう……」

 

「おいお前、いい加減にしろよ。そんなありもしない話するんじゃねえっての」

 

「あったじゃん。エリス祭りのミスコンでさ」

 

「……あれか。あれは違うって言ってんだろ」

 

 エリス祭りのミスコン、確かエリス様コンテストだっけか、あれでヒナが自分の苗字を忘れて咄嗟にシロガネヒナギクを名乗ったせいで、多くの誤解を生んだ事件のことをカズマは言っているのだろう。

 未だにこの誤解は続いていて、ヒナを可愛がっていた連中からは敵を見る目で見られることになった。

 教会や孤児院、それと冒険者ギルドあたりは特に影響はないのだが、この街の商業区は随分と歩きづらくなってしまった。

 

「というかさ、熱心にヒカルのこと聞いてたやつ。俺が話す時もやたら真面目に聞いてくるし、割と奢ってくれるから色々話しちゃったんだけど、お前なんかしたのか?」

 

「ヒカル、何やったんだよ」

 

「なんで俺が何かやらかした前提なんだよ。その、俺のこと聞いてきたやつ? そいつ、どんなやつだった? 名前は?」

 

「名前は聞きそびれたけど、割と若めの男だったぜ。茶髪のロン毛で、長身でガタイ良いんだけど、物腰柔らかなイケメンでさ。まだ暑いのに外套なんか着てたから良く見えなかったけど、足元や酒を飲んでる手を見るに全身鎧っぽいの着てた。冒険者っていうよりは、王都の衛兵みたいな雰囲気だった」

 

「……知らん。長身のイケメンは間に合ってる」

 

 マジで誰だ。

 王都の衛兵みたいな風貌で考えられるとしたら、ジャティスが俺に使いの者でも寄越したとかそんな感じか。

 だとしたら何故すぐに会いに来ないのか。

 少し情報を集めれば、俺のところに来るのは簡単なはずだ。

 こうして冒険者ギルドでバカ達と飲んでるんだし。

 

「俺から言っておいてなんだけど、イケメンの話とかシラけるし、違う話しよーぜ」

 

「違う話ってなんだよ。そういえばお前にも浮いた話とか…………無いか」

 

「無いだろ」

 

「おい、どう言う意味だそれ!?」

 

 尋ねること自体が間違っていると思って、言ってる途中で結論付けたが、カズマも同意見らしい。

 ダストに女が出来た、なんてことがあったら街中がパニックになるだろ。

 

「当然だろ。警察の留置所の常連に女が出来るとか、世の中的に間違ってるだろ」

 

「世の中的に!?」

 

「いよいよ犯罪の匂いしかしないな……」

 

「ふ、ふざけんなよお前ら! 俺がそんなことするわけないだろ!?」

 

「「え???」」

 

「マイナス方向の信頼が厚いなオイ! というか俺達には、()()があるんだからそんなことする必要無いだろ!?」

 

 まあ、知ってたけど。

 アレとは言わずもがな、素敵な夢を見せてくれる例のお店である。

 この街の男はそれはそれは貞操観念の固い男に見えよう。

 ……その分俺が異端に見られるのは大変遺憾です。

 何が流石狂戦士だ、引っ叩くぞ。

 

「というか、ダストにはちゃんと大事な人がいたな。聞くだけ野暮だったか」

 

「は?」

 

「え?」

 

 二人が呆けている内に俺は散々言われ放題された仕返しをすることにした。

 

「モテモテのダストくんにゾッコンの貴族様がいただろ。ゾッコンっていうか、ズッコンバッコンっていうかお尻のケアは大丈夫ですか?」

 

「あったなぁ、そんなこと……」

 

「て、てめえ……! それは俺のトラウマだっつってんだろうが!!」

 

「やかましいんだよこの野郎! 好き放題言っておいて、お前は何も言われねえとでも思ったのか、この特殊性癖さんが!」

 

 怒りに震えるダストと掴み合いの喧嘩になる寸前にカズマが割って入って来た。

 

「まあ、落ち着けよ。二人とも」

 

「カズマ、止めるんじゃねえよ! そいつは触れちゃいけねえところに触れたんだ!」

 

「おいおい、触れちゃいけねえところってどこだよ? お前と違って、男の体になんか興味ねえんだよこっちは!」

 

「この……!」

 

「あーもう、やめろって! せっかくの酒が不味くな、いだだだだだだッ!!」

 

 カズマのステータスでは、俺とダストを止められるわけもなく、両側からサンドされて悲鳴を上げているが、俺から止まる気はない。

 

「ほら、ダストくぅん! お好みのものですよ! 受け取ってくださいね!」

 

「てめえ、いい加減にしろ! しつけえんだよ!」

 

「いだだだ、ちょ、俺を押し付け合うな! 『ドレインタッチ』ッ!」

 

「っ!」

 

 カズマの手から『何か』が吸われていく感覚に咄嗟に身を引き、二人から離れた。

 軽い疲労感を覚えて、一瞬ふらつく。

 普段使わない、というか意識しないほどに少ない魔力を急激に吸われたせいだ。

 俺は元々魔力が少ないのに、狂戦士という職を選んでさらに魔力が少なくなり、今ではジャティスの奴にお礼として貰った『憤怒の指輪』のせいでまたまた魔力がなくなっているので、まさに雀の涙といった具合だ。

 体力や生命力を多少吸われるのは問題無いだろうが、俺の少ない魔力を吸われるということは爆裂魔法を撃ち終わった誰かさんと同じになるということだ。

 つまり『ドレインタッチ』は俺の天敵と言っても過言ではない。

 

「まったく……ヒカルは普段なら普通の人とあんまり変わらないんだから、しっかりしてくれよ」

 

「あ? 俺はどう考えても普通だろ」

 

「はあ……」

 

「ああ、そうだった。ヒカルは頭バーサーカーだったわ。喧嘩するだけ損だ、やめやめ。おうこら、見せもんじゃねえぞ!」

 

 カズマはため息をつきながら、席に座り直し、ダストは呆れた後、こちらを注目していた冒険者達に噛み付きにいった。

 喧嘩する雰囲気を感じ取っていたのか、周りから注目されていたみたいだ。

 周りを見ると、慌てて視線を外す者、苦笑する者、喧嘩を楽しみにしていたのか落胆する者など反応は様々だが冒険者ギルドで喧嘩が起こるのは大して珍しいことでもないので、俺は周りに軽く手を振って謝罪を示してからカズマと同じ席に座り直した。

 

「あのさ、ヒカル。喧嘩とか控えるように言われてなかったっけ?」

 

「なんだ、お前はヒナか?」

 

「違うけど、そのヒナギクに止められてるんじゃないのかよ?」

 

「最近はため息をつくぐらいだな」

 

「マジか、あのヒナギクが諦めたのか……。まあ、いいや。それと、喧嘩にヒカルの武術……」

 

「武道な」

 

「ああ、はいはい武道ね。それを喧嘩に使うのっていいのか?」

 

「俺は使えるものは壊れてても使う主義だからな」

 

「…………お前、そういうところだぞ」

 

 呆れた果てた顔のカズマ。

 なんだよ、こいつまで。

 そういえばこいつにも散々な言われようをされたんだったな、どうしてくれようか。

 まあカズマと言ったら、あれか。

 

「カズマ、お前いい加減進展した?」

 

「…………………………何の話?」

 

「そんだけ間を作っておいて、よくとぼけようと思えたな」

 

「い、いや進展というか今はそういうんじゃなくて押すんじゃなくて引いてみてるっていうか進展させるだけが作戦じゃないっていうか」

 

「ビビリ童貞のままか」

 

「ビ、ビビってねえし! 全然ビビってねえし! 様子見のターンなだけだし!」

 

 机をバンバン叩いて猛抗議してくるカズマ。

 童貞を否定しなかったのはなんとなく可愛げがあるな。

 

「様子見のターンって何? そのままライフポイントがゼロになりそうなんだけど。ハーレムを作るとか息巻いてたのに、そんなんでいいのかお前は」

 

「あれはノリと勢いで言っただけっていうか」

 

「逆によくノリと勢いでハーレムとか言えたもんだ。実際何も出来てないのに」

 

「だ、だから、それは……」

 

「…………あー、もしかして」

 

「なんだよ?」

 

「お前もダストと同じ趣味か?」

 

「お前、ぶっ飛ばすぞ」

 

 ほう。

 

「カズマが、俺を? ぶっ飛ばす?」

 

「……舐めきった態度取ってると後悔するぞ」

 

 少し後悔したような表情をしていたが、俺を軽く睨んでそう言ってきた。

 まあ、カズマなら何かしら考えて俺を『ぶっ飛ばす』ぐらいは出来るかもしれない。

 

「いや、舐めてるわけじゃない。こうして飲み合う仲だ、俺はお前のことや実力をよく知ってる。でも、流石に聞き直すぐらいはいいだろ?」

 

「ああ、そうだな。ぶっ飛ばすって言ったんだ。でもぶっ飛ばさないで済むなら、それに越したことはないな」

 

「なんだ、またビビりか?」

 

「いやいや、違う違う。最弱職の冒険者である俺が、物理攻撃トップクラスの狂戦士をぶっ飛ばしたってなったら、それはもう世間体がよろしくないだろ? 狂戦士(笑)とか言われたくないよな?」

 

「カズマ、お前酒弱いのに飲み過ぎだぞ。水でも飲んで冷静になれよ。なんなら俺が持ってきてやろうか?」

 

「いや、いいよ。ヒカルと違って俺には魔法があるからな。ヒカルみたいに脳筋じゃないんだわ」

 

「…………」

 

「…………」

 

「今ならまだ間に合うぞ。謝れば……いや謝れるわけないか。ぶっ飛ばさなくても、お互いに納得がいくように何かしらかの勝負とかに変えてやってもいい」

 

「へぇー、一応聞くけど例えば?」

 

 お、意地になって喧嘩が続くと思ったら、そうでもなかったか。

 なにはともあれ、カズマと勝負をするなら、しっかりと考えなくてはならない。

 運が絡む勝負は当然NO。

 ステータスの運はこういう時に必ず作用する。

 俺はカズマより運の値は低いので確実に負ける。

 カズマに勝てるとしたら、エリス様ぐらいだろう。

 次に頭を使う勝負も完全にNO。

 ゆんゆんとのボードゲームで嫌というほど負けてることから、もはや語ることは無いレベル。

 俺の知力の低さを舐めるなよ。

 

「なんだよ、何も思いつかないのか? じゃあ、俺が……」

 

「待て、俺が決める」

 

 思案して黙りこくった俺を見かねたカズマが決めようとしてきたが、それはさせなかった。

 カズマに決めさせるのはよろしくない。

 確実に向こうのペースになる。

 とはいえ、カズマがつい口を挟んできたのも仕方がないことだ。

 俺が勝負方法をなかなか思いつかないのも事実であった。

 カズマと俺は簡単に言ってしまえば正反対の人間だ。

 その二人が勝負をするとなると、確実にどちらかが有利な勝負になってしまう。

 どうすれば公平に…………。

 

「……そうか。よし、決まった」

 

「やっとかよ。俺シュワシュワおかわりしちゃったんだけど」

 

「悪いな。決めた勝負方法は───」

 





今回のお話は分割する気なかったんですけど、予想以上に長くなってしまって分けました。
このお話は後に繋がるお話にしていて、さらには珍しく登場する原作キャラクターもいるしでちゃんと書いてみたくなったんです。
それからダストにわかなので、口調とかそこら辺の指摘があればよろしくお願いします。
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