このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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章名が変わります。
『帰ってきた日常』から『未来からの復讐』に変更になりました。
本来は次の章に書こうと思っていたお話なのですが、最近はなかなか筆が遅いのをでそれを考慮して、書きたいと思った話を優先することにしました。

127話です。さあ、いってみよう。



127話

 

 光を見た。

 

 光を見た。

 

 小さな光。

 けれども力強く輝く白銀。

 

 

 闇を見た。

 

 闇を見た。

 

 ドス黒い闇。

 全てをのみこんでしまいそうな暗黒。

 

 

 光と闇が対峙する。

 どう考えても、光に一条の勝ち目もない。

 だけど、光は一つではなかった。

 多くの光が、一層輝く光と共に巨悪へと立ち向かう。

 

 それはまるで、夜空に輝く星々のよう。

 夜空の星とは違って、バラバラに散りばめられた星々のような光たちは一つへと集まり、塗りつぶさんばかりの闇をかき消した。

 

 私は、この光景を一生忘れない。

 私が生まれる前の光景。

 私の憧れはここから始まった。

 

 どうして私が生まれる前の光景を知っているかって? 

 答えはかんたん。

 私も、その小さな光たちの一つだったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───ヒカル達が到達しそうで、まだ到達し得ない未来。

 

 

「いい加減にしてよ、ヴォーティガン。もう貴方の出番は終わったでしょう?」

 

 紅い瞳を輝かせ、うんざりした顔で少女は言う。

 対するヴォーティガンと呼ばれた壮年の男は憎らしげに少女を睨む。

 

「…………忌々しい親子だ。突然現れては俺の邪魔をしてくる。災厄の男から生まれた娘も似たようなものか」

 

「え、お父さんに似てる……? え、えぇ? そ、そんなぁ、そんなことないと思うけどなぁ。えへへ。まあ、アレだよ? 私も? お父さんの娘だし? 似ててもおかしくはないよね」

 

 敵を前にしているにも関わらず、嬉しさを堪えられず口元をニマニマさせた少女は男の舌打ちで、正気に戻り佇まいを直した。

 

「……コホン。ヴォーティガン、もう貴方に力は残っていないはず。この地で何を企んでいたのかは知らないけど、英雄の娘であるこの私が貴方もろとも潰します」

 

「…………」

 

「『紅伝説』の番外、第一巻の強敵であった貴方を無碍にはしません。あるえさんに頼んで私が主役の英雄譚には話を盛り盛りにして、『復活のヴォーティガン』みたいな感じで出すので観念してください」

 

「……ふん、意味がよくわからないが、発言から察するに俺がグレテン王国を潰そうとした時のことが本になっている、といったところか。確かに私は失敗したが、人をどれだけ虚仮にすれば気が済むんだお前らは?」

 

「え、コケ? 私なりに最大限の敬意を払ってるつもりなんだけど……」

 

「…………これだから紅魔族は」

 

 ヴォーティガンはそう呟き、壁に背中を預けて座り込んでいた体勢から起きあがろうとしたその瞬間。

 

 ガンッッ!!! 

 

 激しい衝突音が部屋の中に響き渡る。

 ヴォーティガンの顔のすぐ横の壁は何かがぶつかったかのようにへこんでいた。

 

「次は当てる」

 

 少女は瞳をギラギラと光らせて、そう言った。

 少女から立ち上るオーラのようなものは陽炎のように揺らめいていて、『それ』が何かはわからない。

 だが、『それ』が恐ろしいものであることはわかる。

 先程の凄まじい打撃はその何かからきたものであると、ヴォーティガンも確信していた。

 

「時に小娘。私がここで何をしていたか、気になるのではないのかね?」

 

「はあ、いきなり何?」

 

 急なヴォーティガンの問いに顔を顰める少女。

 警戒しつつも聞き返すと、そんな少女の様子とは関係なしにヴォーティガンは続けた。

 

「気にならないのか? こんな研究施設なかなか無いだろう」

 

「それはそうだけど……わざわざ話してくれるってわけ?」

 

「そうとも。君も事件を解決するなら綺麗に終わらせたいだろう? 分からないまま終わるなんて苦痛じゃないかね?」

 

 ヴォーティガンが語りながら浮かべる不敵な笑みを少女は不気味に思った。

 それ以上に気に入らなかった。

 既に勝敗は決した。

 いつでも倒せる状態、間合いをキープしている。

 ヴォーティガンにとって間違いなく絶望的な状況のはずなのに、どうして。

 何かがあるにしろブラフにしろ自身が有利なことに変わりはないと少女は結論付け、逆に余裕な態度で望まれた通り尋ねることにした。

 

「じゃ、聞いてあげますか。目的は? 研究内容はなに?」

 

 少女が乗ってきたせいかヴォーティガンの笑みが深くなり、更に不気味さが増した。

 

「まず目的だが、そうだな……『復讐』だ」

 

「……グレテン王国に?」

 

「それもある。だが、一番復讐したいのは」

 

 

 シロガネヒカル。

 

 

 ヴォーティガンがそう口にした瞬間に、少女は行動に移した。

 紅魔族の十八番である『ライト・オブ・セイバー』を躊躇なく首を切り落とす様に腕を振った。

 怒りに我を忘れたわけではなく、直感で今殺さなければならないと判断した。

 だが、その光の刃はヴォーティガンに届くことは無かった。

 先程までは存在しなかったものが両者の間に存在している。

 円形に広がる何か。

 円形の中身は先程までいたヴォーティガンは見えず、別の光景が広がっていた。

 

「マーリンの魔法!?」

 

 少女は驚愕し叫ぶ。

 この世界に存在する魔法とは違う、別次元の魔法。

 その魔法をマーリン以外が使っていることに驚かないわけがなかった。

 

「そう、これが二つ目の問いの答えだ。俺も『世界』や『世界の次元』に触れる機会があってね。何かを掴んだ感触がして、研究していたのだ。あと少しというところで君達が乗り込んで来たから諦めていたのだが、最後の最後で時間稼ぎに乗ってくれるバカがいて助かったよ」

 

「こんのっ!!」

 

「君のおかげで復讐が果たせそうだ。さようなら、間抜けな紅魔族」

 

「ふざけんなこの野郎!!」

 

 少女が怒鳴りながらヴォーティガンがいた場所に駆けつけた時には既に姿は消えていた。

 思わず息が止まった。

 最悪のイメージが脳内に映し出されて、冷や汗が止まらない。

 頭を抱えて泣き出しそうになるのを寸前でやめた。

 

「あ、きらめる、もんかっ!」

 

 諦めることだけはしてはならないと自分に言い聞かせるようにして叫んだ。

 少女の父も何があっても諦めなかった。

 諦めずに手を伸ばした結果、最高の未来をつかんだ。

 ならば、その娘である自分もそうでなくてはならない、と考えたのだ。

 

「マーリンっ! どうせ見てるんでしょ!? マーリンってば! 暇人のマーリンさーん! 変態、もしくは覗き魔でも可!」

 

「えぇ……その評価はあんまりじゃあないか?」

 

「うわ、ノータイムで来た!?」

 

 辺りへ呼びかけるように叫んでいた少女の背後へと現れるマーリン。

 

「それだけ早く来たんだから、驚いたりドン引くよりもお礼を言って欲しいところだよ。貶されたり引かれたりされては私の心に傷が付いて───」

 

「マーリンもどうせずっと見てたんだよね? ヴォーティガンがどこに向かったかわかる!?」

 

「無視をするんじゃあないよ」

 

「いいから!」

 

「…………はあ、先程ヴォーティガン自身が言ってたじゃあないか。君の父君に復讐すると」

 

「じゃあ、お父さんの元に……?」

 

「向かったね」

 

「っ! は、早く私も連れて行って! 今すぐお父さんの元に!」

 

「少し落ち着きたまえよ」

 

「落ち着いてられないってば! もう転移して時間が経ってるんだから!」

 

 はあ、とまたため息をつくマーリン。

 急いでのに一向にマイペースのマーリンを見て、更にイライラを募らせる少女。

 

「大丈夫さ。放っておいても君のお父さんが殺されたりなんてしないさ」

 

「なんで? 強くなったから?」

 

「まあ、確かに今の彼はあの『聖剣』とその『鞘』を持っているから強いと言えるね。万能ってわけではないけど、手負いのヴォーティガンが今のシロガネヒカルを殺せるかといえば答えはNOだ」

 

「……じゃあ、お父さんが襲われても問題無いってこと?」

 

「今の彼なら、なんだかんだでヴォーティガンを倒すだろうね」

 

 先程からやけに強調される『今』という言葉に少女も当然気付いていた。

 いつまで経っても拭えない不安から、苛立ちを抑えられずに少女は不機嫌そうに尋ねた。

 

「今のって、どういうこと?」

 

「だから、ヴォーティガンも考えて行動してるってことさ。殺せないのが分かってるのに向かうわけがないじゃあないか」

 

「勿体ぶらないで、結論から言って!」

 

「まったく、落ち着いてもらおうと気を回しているというのに。わかった、結論から言おう。『聖剣』を持つ前の彼の元に向かったんだ」

 

「はあ?」

 

 意味わかんない、と首を傾げる少女に呆れながらも説明は続いた。

 

「過去に向かったんだ。『エクスカリバー』を持っていない時代の、まだまだ未熟なシロガネヒカルの元に」

 

「…………あ?」

 

 少女の雰囲気が一変し、少女の全身から殺気が放たれる。

 普通の人間であれば、即座に身構えるなり行動に移すだろうが、ここにいるマーリンは普通の人間ではない。

 凄まじいほどの圧力を正面から受けても、やれやれと肩をすくめる程度だ。

 

「私の魔法の応用だ。どうやらヴォーティガンのやつガチで研究したみたいだぜ? 使いこなせてはいないまでも、過去に行くぐらいは出来るようになったみたいだ」

 

「早く連れて行け。私を、過去に」

 

「だーかーらー、落ち着いて聞きなさいな。そこで私の先程の発言に戻ろうじゃあないか。『放っておいてもいい』って言っただろう?」

 

「…………なぜ?」

 

「理由その一。今のヴォーティガンの魔法は不安定だし、更に言えば君がかなりボコっただろ? ボロボロで制御仕切れない魔法を使っても、成功は難しいだろう?」

 

「でも完全に行けないわけじゃないんでしょ?」

 

「かもしれないね。そこで理由その二。過去に行くのにもリスクがあるんだ。時は流れるもの。その流れに逆らえばどうなると思う?」

 

「えっと……」

 

「例えるなら、津波や雪崩に突っ込むようなものさ。時間の流れとは絶対的でなければならない。逆らうことなど普通は許されない。流れが乱れてしまえば何もかもが崩れてしまうからね。で、その流れに突っ込んでいったヴォーティガンも無事ではすまないってわけさ」

 

 ま、私なら無傷だけどね。

 そう付け足してドヤ顔をかますマーリン。

 私すごいですよアピールを無視して、焦る必要はないと理解した少女はほっと胸を撫で下ろした。

 ちなみに、その胸はしっかりと母の血を継ぎ、豊かであった。

 

「まあ、でもアイツ執念深いからなぁ。割とやり遂げる可能性もなきにしもあらず、かな」

 

「どっちよ!?」

 

 一瞬で意見を変えてくるマーリンに少女は堪らず叫んだ。

 

「どちらにせよ確認に行くのが手っ取り早いかな。過去をめちゃくちゃにされるのも困るしね。君はどうする?」

 

「……もちろん行くよ。ヴォーティガンを逃したのは私の責任だし、何より『紅伝説』の物語に生で触れられるってことで……あれ、もしかして私とんでもない体験をしてしまうんじゃ……え、やば、テンション上がってきた!」

 

「…………きみ、そのファザコン具合どうにかした方がいいと思うよ」

 

「ファ、ファザコンじゃないし! 過去のヒナさんやトリタンさんも楽しみなんだから、そういうんじゃないし! だいたい『紅伝説』は──」

 

「それ聞き飽きたよ。いい加減行こう。準備はいいかい、『ゆり』?」

 

「当然いいに決まって、あ、ちょっと待って」

 

 『ゆり』と呼ばれた少女の表情は真剣そのもので、マーリンも真面目に対応しようと言われた通り待つことにしたのだが、

 

「お、お父さん達に会いに行く前に少しだけ身だしなみを整え──」

 

「はい、レッツゴー」

 

 アホな発言が聞こえてきたので、ファザコンの足元に次元を通る穴を発生させて強制的に連れて行くことにした。

 マーリンを罵る叫びが辺りへ響き渡るが、その穴が閉じると同時に聞こえなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かつてグレテン王国と世界全土を滅ぼそうとしていたヴォーティガンは英雄達の前に敗れた。

 だが、しかし聖剣で断たれたはずのヴォーティガンは生きていたのだ。

 復讐に燃え、力を研究した彼は過去へ行く術を見つけた。

 執念深いヴォーティガンは妨害も跳ね除けて、復讐を果たす為に過去へと向かった。

 復讐と過去の改変を止める為、冒険者ゆりと魔法使いマーリンも同じく過去へと向かう。

 そう、少女の名は『ゆり』。

 シロガネユリ。

 またの名を、ゆりりん。

 かの英雄譚を超える者であり、

 紅の伝説を継ぐ者である。

 

 紅魔族随一の作家・あるえ著

 『紅伝説Ⅱ』より一部抜粋。

 




『ゆ』んゆん
ヒカ『リ』


紅伝説
ゆんゆん達の冒険を元にした物語が描かれた本。
未来ではベストセラーとか。
劇場版とは関係が無い。


仕事中に浮かんだエンディング後のヒカル達の話をどうにかこうにか出したくなって、こうなりました。
シリアスもあるけど、多分ギャグ成分多めになるかと思います。
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