メリークリスマス!
特別編とかではないけど、続きをプレゼント!
135話です。さあ、いってみよう。
一人の天使が舞い降りる。
天使が抱えていた少女を雑に振り落としていることに目を瞑れば、絶望の最中に天使が舞い降りる光景は有名な絵画のワンシーンのようであった。
「『
二対四翼の羽を大きく広げて、ゆんゆん達を攻撃から守りつつ、天使のオリジナルスキルを発動させる。
「ヒカル、起きて。もう大丈夫だよ」
「…………ぁ?」
悪夢に囚われたはずのヒカルも目を覚ます。
広域の神聖回復魔法。
範囲内にいる味方を回復させ、あらゆる状態異常から回復し、守る効果を持つ。
「ぐ、ぐおおおおおああああああッッ!!?」
「な、なんなんだヨこれはアアアアアアッ!!?」
更に不浄なる存在への浄化効果も持つ。
ホーストとデモゴーゴンは天使の魔法で悶え苦しみ、攻撃どころではなくなった。
「ちっ、一体なんだってんだよアレ。癪だけどヴォーティガンの奴に言って協力……」
「パラメデスッ!!」
「兄さん、危ない!」
「あぁ!?こんなのが……ぐああああああっ!?」
三人の騎士の元に飛来したのは氷の矢。
ヒカル達からは別方向から飛んで来たにも関わらず寸前で避ける騎士達だったが、氷の矢が地面に着弾すると同時に爆発し、吹き飛ばされる。
初級魔法を二つ掛け合わせて作られた氷の矢の先端に仕込まれた爆発ポーションが見事にクリーンヒットしたのだ。
「私抜きで同窓会ですか?」
氷の矢を打ち込んだトリスターノが現れ、立ち上がるヒカルに問い掛ける。
「……お前こんなのに参加したいわけ?」
「ご遠慮したいところですが、貴方たちがいるのならどこへでも」
「俺は絶対参加したくないんだけど」
「私も」
「僕もイヤ」
参加拒否が満場一致したところで揃ったぼっち達は敵達に武器を構える。
「ではあちらの方々にはお帰りいただきましょう。どんな状況か全く分かりませんが、誰もこの状況を望んでいないことは確かなようですから」
(は、はああああああぁぁぁぁ…………つ、ついに紅伝説が揃った……っ!)
ゆり一人だけ目をキラキラさせているが、状況は進んでいく。
「これだけ戦力を揃えておいて、まさか負けるなんてことはないだろうな?」
「はっ、冗談がお上手だな、ヴォーティガン。そこの苦しんでる悪魔だかは知らねえが、こちとら円卓の騎士が三人だぜ。ふんぞり返って待ってろよ」
「先程話した通り、そこの木刀を持った男とショートカットの女は最後だ。他は自由にしていい」
「あいよ」
ヴォーティガンとパラメデスが話を済ませたあたりでクリスがユラリと立ち上がる。
「『限定解除:アサシン』……あたしはあの悪魔を浄化しなくてはならないので他は任せました」
ヒナギクから振り払われて尻から落ちるという間抜けな登場を果たしたクリスであったが、上位悪魔のホーストを発見してからは目の色を変えて、黒装束アサシンの本気モードへと変貌し、ダガーを引き抜いて宣言していた。
「じゃあ僕はあの邪神モドキを倒すね」
「お前ら一人であいつらを相手にする気か?」
「僕らは相性が良いから何とでもなるよ。それにそうでもしないとアレと戦えないでしょ」
ヒナギクの睨む先には、爆発をまともに食らったものの吹き飛ばされただけで大したダメージもない、無傷の騎士達の姿があった。
「てめえ、チキン野郎。死ぬ覚悟は出来てんだろうな?」
「……無くても殺すけどね」
「円卓の騎士ともあろうものが義務の放棄とは、情けない。引導を渡してやろう」
「あー、アレね」
「そう、アレ。僕の聖域内にいれば、ある程度のダメージは瞬時に回復出来るから、ヒカルみたいな無茶な戦い方でもなんとかなるはず。でも即死はダメだからね。僕達がホーストとデモゴーゴンを倒すまで食い止めて」
「おいおい、バカにしすぎだろ」
「どうせ調子に乗ってやられちゃうんだから、無理しない程度に戦って。みんなで生きて帰るのが目的なんだから」
「その通りです。さっさと終わらせて夕飯にしましょう。ちなみに下準備は済ませておきましたので調理と後片付けはリーダーがお願いします」
「何言ってんだバカ野郎。こういう時ぐらい外食するに決まってんだろうが」
「トリタンさん、ごめんなさい。せっかく下準備してくれたんだけど、この子……ゆりもいるから出来れば外食に……」
「てめえら、舐めてんのか!!来ねえならこっちから行くぜ!!」
啖呵を切っておきながら、いつまで経っても話してばかりのヒカル達に痺れを切らした騎士達や悪魔が向かってくる。
ヒカル達も瞬時に戦闘へと切り替え、応戦する。
ついに決戦が始まった。
円卓の騎士パラメデスは驚愕していた。
何処からともなく現れたヴォーティガンの話はほぼ聞かないで暇つぶしのつもりでこの別世界にやって来た。
来てみれば、目前の敵はまあまあの実力でしかないことは見るだけでハッキリ分かった。
軽く落胆しつつも、それなりに楽しめる戦いが出来ればいい、そう思っていた。
「はあっ!!」
「ちっ、めんどくせえ……っ!」
目の前の男──木刀の剣士の実力を測り間違えた。
まあまあ、よりは少し上。
剣技は下の下もいいところ、無理矢理振っているようでいて、たまに形になるような時もある。
こちらのラウンズスキルがバレているのか、槍を受け止めるような動きはせず、槍をいなすか回避を優先する。
対人戦をそれなりにこなしているのか、間合いの取り方や攻め方、引き時全てが申し分ない。
そして、サフィラの大木を軽々とへし折るような一撃も木刀で受け切る。
対人経験もあり、力だけは一丁前ではあるが、剣が出来ていない。
故に、まあまあよりは少し上。
そんな実力の持ち主は腐るほどいる。
だが、そうではない。
一番厄介なのは────
「『ボトムレス・スワンプ』──ッ!!」
『ヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナァッ!!』
「『キカクイチジン』……でしたっけ。まあ、どうでもいいですけど」
──この連携。
器用に敵陣のみを泥沼化させて、足場を崩す。
紅魔族の天使(?)が牽制と防御をこなす。
最後に前衛と泥沼に気を取られたところを矢が飛んでくる。
多少の切り傷やダメージは可笑しな範囲魔法で回復される。
この瞬間もパラメデスの顔のすぐ横を矢が通り過ぎていった。
戦闘によるスリルを楽しむパラメデスの獰猛な笑みが引き攣るほどに死がすぐ近くにあった。
(円卓の騎士が三人いるんだぞ!?どうなってやがる!!)
戦闘狂のパラメデスは珍しく戦闘中に焦っていた。
その焦りがまた自身や他の騎士を追い詰める悪循環。
状況は優勢のはずなのに、いつの間にか劣勢へと傾いていた。
一度体勢を立て直すべく、防御しながら下がると、視界の端につまらなそうな顔で空中に佇むヴォーティガンの姿を捉えた。
「おい、ヴォーティガン!てめえ、見てるだけかよ、えぇ!?」
「…………そうするつもりだったよ。この瞬間までね。まさかこの戦力差を数人の援軍で解決されてしまうとはね」
「やかましい!早く手ェ貸せや!」
「わかったわかった。向こうを一人減らすとしよう」
そう言ったヴォーティガンが視線を向けたのはデモゴーゴンを一人で相手にするヒナギク。
ヴォーティガンはヒナギクの方へ軽く手を翳すだけで、ヒナギクの右半身が消えた。
「…………え?」
「ッ、ヒナギク!?」
ヒナギクの呆然とした呟きとクリスの絶叫。
「な、なに、これ?」
ヒナギクは自身の状況を確認する。
まだ生きて動いていることから、実際にヒナギクの右半身が消し飛んだ、というわけではない。
ヴォーティガンは
「天使というやつはよく分からないが、身体が真っ二つになっても生きていられるものなのか、ここで実験するとしよう」
ヒナギクからすれば、左右で見ている光景が違う。
今のヒナギクの右半身は別の次元にある。
今はまだ無事だが、
右と左で別の次元に体が存在している状態で繋がりを無くしてしまえば、体は左右に分かれる。
一瞬で頭上にギロチンを発生させるようなものだ。
防御や回避を無視した、最恐最悪の攻撃。
ヴォーティガンは本来であれば、このように一瞬でヒカル達を殺すことが出来る。
だが、復讐の念があって痛め付けて屈辱を味あわせてから殺すと決めていたから、今まで理不尽な攻撃が来なかっただけのこと。
クリスがホーストを相手にするのをやめて、ヒナギクへと手を伸ばす。
トリスターノもヒカル達への援護を中止して、ヴォーティガンへと狙いを定める。
ヒカル達がヒナギクの元へと駆け出す。
ヒナギクはやっと状況が分かり、行動を移そうとする。
だが、全てが遅かった。
次元の穴は一瞬で閉じてしまった。
ヒナギクの身体はご覧の有様。
胸はぺったんこの五体満足だ。
『…………………………???』
その場の全員がヒナギクに注目し、困惑していた。
ヴォーティガンですら状況が分かっていなかった。
それもそのはず。
「残念、私が来た」
今までいなかったはずの無敵で最強に頭のおかしい魔法使いマーリンがヒカル達の後方に姿を現し、ドヤ顔ウインクをかましていた。
◯ヒナギクの『星光聖域』
智天使状態のヒナギクのオリジナルスキル。
聖域内にいる仲間の即時回復。
状態異常の回復、耐性付与。
あらゆる支援魔法の付与。
魔力回復。
ヒナギクが智天使になったことで発現したスキル。
ヒナギクが智天使になれたのは才能や修行の成果もあるが、ヒカルの『ムードメーカー』が強く影響しているから。
ヒカルとの関係や信頼によって影響が変わる『ムードメーカー』だが、ヒナギクは間違いなく最大限の強化を受けている。
ヒナギクのムードメーカーの影響度:EX