このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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136話です。さあ、いってみよう。



136話

 

 

「どうやって此処へ来た?」

 

「え? ここに来たいと思ったからじゃあないかな」

 

 驚愕に染まるヴォーティガンの問いかけに平然と答えるマーリン。

 そんなマーリンに嫌悪感を増したヴォーティガンは顔を歪ませて更に問いかける。

 

「……私の妨害はどうやって突破した?」

 

「妨害?」

 

 きょとんとしたマーリンは首を傾げるが、

 

「ああ、アレは妨害行為だったのか。私にとっては目の前に石ころを置かれた程度にしか感じなかったよ」

 

 嘲笑うように言い放つマーリンにヴォーティガンは我慢ならなくなったのか、乱暴に手を振る。

 だが、何も起こらない。

 

「残念だけど、その魔法は私の方が一日の長がある。君の魔法を完全に封じ込めるなんて、簡単さ」

 

「マーリ、ぐっ!?」

 

 空中に浮かんでいたヴォーティガンはその魔法すら消されてしまい、無様に落下する。

 

「おい、ヒナを助けてくれたことには礼を言うけど、随分と社長出勤だな」

 

「私がいなくて寂しかったのかい? 可愛いところがあるじゃあないか」

 

 ヒカルが声をかけるとマーリンが悪戯な笑みで返す。

 そのことにムッとしたゆりが父よりもマーリンに近づいて尋ねた。

 

「そんなわけないでしょ! 今までどこで油売ってたの?」

 

「酷い言い草じゃあないか。確かに遅くなってしまったけれど、私はまた助っ人を連れてきたというのに」

 

「助っ人? 誰?」

 

「すぐに分かるさ」

 

 マーリンがニヤリと笑ってそう答える。

 

 この状況はマーリンの登場で一気にヒカル達の方に戦況が傾いた。

 それは決定的であったが、それ故に緊張感が無くなっていた。

 

 ヒカル達の背後に三人の騎士が迫っていた。

 今のヒカル達は隙だらけも良いところ。

 魔法も天使も馬鹿力も意味を為さない。

 数秒、いや数瞬後には串刺しになるだろう。

 

 

 だが、すでにマーリンの左右に次元の穴が一つずつ開いていた。

 その穴からそれぞれ二つの影が飛び出し、三騎士へと攻撃を仕掛けた。

 

「『ライト・オブ・セイバー』───ッッ!!」

 

「エンジェル・ブローッ!!」

 

「『ライト・オブ・セイバー』」

 

「『ブルーミングアロー』ッッ!!」

 

 予期せぬ攻撃と同時に複数射られた矢の追撃に騎士達は返り討ちにされる。

 ヒカル達はそれでようやく後ろに騎士が迫っていたことを知ると、マーリンが連れてきた助っ人へと視線が移る。

 その人物達はヒカルの方へと振り返り、口を開いた。

 

「「ヒカル」」

 

 二人の少女がヒカルの名を呼ぶ。

 

「今度は私達が助けに来たわ」

「今度は僕達が助けに来たよ」

 

 その少女達はかつて別の世界線にて絶望していた者達。

 そして運良く、もしくは運悪く、生き返るためにやってきたヒカルに救われた者達。

 今のこの世界の二人よりは少し成長した姿のゆんゆんとヒナギク、その二人であった。

 

 

「……」

 

「マーリンにからかわれているのかと思いましたが、まさか。本当に、こんな世界があったんですね」

 

 もう一つの次元の穴から出てきたのは少年と壮年の男性。

 無言の黒髪の少年は紅の瞳でつまらなそうにヒカルを一瞥し、三角帽子の唾を持ち目深に被り直した。

 壮年の金髪男性の男は碧眼を潤ませて、ヒカルを泣きそうになりながら懐かしげに眺めていた。

 

 ヒカル達にこの二人のことを知っているかと問えば、知っているけど知らないと答えるだろう。

 少年の容姿は紅魔族のヒカルであり、壮年の男はトリスターノであった。

 

 この二人も別の世界からやってきた。

 先程のゆんゆんやヒナギク達と似た世界でありながら決定的に違う世界。

 絶望しても持ち堪えることが出来た世界。

 女神の天界規定無視の転生と良くない偶然がもたらした奇跡によって救われた世界。

 そんな世界からの来訪者たち。

 

「え、ちょ、何アレ……?」

 

 ヒカルが紅魔族の属性モリモリの自分を見て、呆然と呟く。

 

「お久しぶりです、リーダー。ええと、この方は……」

 

「自己紹介が必要か? ならば応えよう!」

 

 ヒカルの問いに答えようとトリスターノが口を開くが、先に少年が動いた。

 三角帽子の唾を持ち、一回転ターンを決めながらポーズを決めて、マントは大きく広がり、華麗に舞った。

 

「我が名はヒカリ!! 紅魔の里の希望と破壊の光!! やがて、ゆんゆんの伴侶となる者!!」

 

「どういうことだこの野郎おおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 ヒカリの自己紹介を聞いても全く何も分からなかったヒカルはわけもわからず絶叫した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「向こうのゆんゆんとヒナはわかるけど、アレはなんだ!? 説明しろ、マーリン!」

 

「一つ言えることは……」

 

「…………」

 

「私にも分からないということさ!」

 

「こいつッ、自分で連れてきたくせに!」

 

 胸を張って堂々と言い放つマーリンに憤るヒカルにまた騎士達が迫り来る。

 先程のような油断は無く、ヒカルは木刀で応戦し、更にはヒカリが加勢に入ってくる。

 

「『ライト・オブ・セイバー』」

 

「ちっ!」

 

「っぶねえ!」

 

 騎士に応戦するヒカルを全く気にしない魔法の軌道を間一髪避けるヒカルは魔法を放った本人へ怒鳴る。

 

「てめえ、どこ狙ってんだこの野郎!!」

 

「聞いていた話と違うな」

 

「あ?」

 

「シロガネヒカルはアクセルの街周辺に出てくるモンスターにも負けてしまうぐらいひ弱のダメダメで頭の悪いバカだと聞いていた」

 

「え、何こいつ。別世界から喧嘩売りにきたわけ? というか、おい! そっちのトリスターノ! まさかそんな風に言ってたのか!?」

 

「え、えぇ!? 誤解です! そこまでは言ってません!」

 

「どこまで言ったのか詳しく聞いてやるよこの野郎!」

 

「そ、それは……っ、ぅ……」

 

「え、な、泣くことないだろうが」

 

 違う世界からやってきたトリスターノは堪えきれなかったように顔を押さえて泣き始める。

 突然のことに動揺するヒカルにマーリンは語り出す。

 

「彼らの世界でも君は死んだのさ。騎士王によって殺されてね。それで誰が責任を感じるか、今の君に語るまでもないだろう?」

 

「……」

 

 ヒカルはすぐに思い当たった。

 別世界のヒナギク、こうして今駆けつけてくれたヒナギクのことだ。

 彼女はヒカルが騎士王の元に残っている間に気絶したゆんゆんとトリスターノを抱えて離脱した。

 その結果はヒカルの死であり、ヒナギクは置いて行った自身に責任があると考え、自身を追い詰めてまともな生活すら送れなくなってしまった。

 今、目の前にいるトリスターノも同じなのだ。

 

「トリスターノ、その、悪かった。あの時は助けようと必死だったんだ」

 

「貴方が謝ることではありません。あのことは私が持ち込んだ厄介事です。謝るのは私の……」

 

 

「いつまで悠長に喋ってやがる!!」

 

 

 怒り心頭の騎士が隙を狙い攻撃を仕掛けてくる。

 槍の穂先を触れないように木刀で槍を弾き返し、馬鹿デカイ大剣の一撃を避ける。

 大剣の一撃を避けることに成功したが、その大剣の振り下ろした威力は凄まじく、大地を砕く。

 足場が悪くなったことに気を取られたヒカルへ更に畳み掛けるべく魔法剣士ラモラックが剣を帯電させ、振るおうとしていた。

 

「『サンダー』──」

 

「させるかぁ!」

「ヒナァ!!」

 

 ゆりとヒナンドはヒカルより前へ出て、魔法剣を止めるべく拳を振るおうとするが、

 

「『エンド』ォォォ────ッ!!!」

 

 不安定な足場のせいで阻止が間に合うことはなかった。

 

「っ!」

『ヒ、ヒナァァァァァァァッ!!』

 

 それでもヒナンドは躊躇無く前へ出た。

 拳を振るうことで剣の軌道をずらし、翼を大きく広げて剣から放たれる電流を一身に受けることでその場の全員を守った。

 

「ヒナンドっ!?」

 

『ヒ、ナ……』

 

 円卓の騎士の一撃をまともに食らったヒナンドは姿を保っていられなくなり、霞のように消え去ってしまう。

 更に追撃を加えようとする騎士達。

 

「『ライト・オブ・セイバー』」

 

「『ライト・オブ・セイバー』──ッ!!」

 

 そこへ光の刃が二つ振われたことで、騎士達は後退を余儀なくされた。

 ヒナンドが消えてしまいショックを受けるゆりを守るように続々とヒカル達がゆりの元へ集う。

 

「話してる暇は無いみたいだな」

 

「そうみたいです。()()()()指示を」

 

「……この世界のトリスターノと一緒に援護してくれ」

 

「御意」

 

 違う世界からやってきたトリスターノはヒカルから指示を受けて、弓を構える。

 

「色々言ってやりたいこともあったんだが、そうも言ってられないか」

 

「なんだこの野郎。お前この場で一番意味分からない存在だからなマジで」

 

「自身が何者か、なんてどうでもいい。どう在りたいか、何を為したいかだ。お前はどうだ? 今、お前は何をするべきだ?」

 

「あ? なんでこんな偉そうなのコイツ。まあ、そんなの決まってるだろ」

 

 ヒカリの問いを受けて、ヒカルはヴォーティガンを睨んだ。

 

「あのはた迷惑な野郎をぶっ飛ばす」

 

「……そうか。なら騎士達は任せろ。あいつらのことは多少知ってるからな」

 

「大丈夫なんだろうな?」

 

「シロガネヒカルなら無理だろうが、俺は違うからな」

 

「テメェこの野郎、負けても助けないからな」

 

「言ってろ」

 

 睨み合うヒカルとヒカリは互いにそっぽを向き、ヒカルは各メンバーへと指示を飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆり、お前はトリスターノ達と後方支援……」

 

「ううん、私は大丈夫だよお父さん」

 

 お父さんが気遣うように頭を撫でながら、下がるように言ってくるが、私は断った。

 確かにヒナンドは大きなダメージを負ってしまった。

 多分、もうあと一回しか出せない。

 それがなんだ。

 私自身はまだまだ戦える。

 それに。

 

「でも」

 

「いいの。私はみんなと戦いたい。みんなと一緒の光でありたい」

 

「え?」

 

「ううん、なんでもない。大丈夫、私はまだまだ戦えるよ」

 

 

 あの時の光景を思い出す。

 

 ドス黒い闇が現れて、グレテン王国を飲み込もうとした時のこと。

 どうやったって勝ち目のない小さな光たちが集まって、戦った時のこと。

 

 最初は夜空の星々のようにバラバラに散りばめられていたけれど、一際輝く光の元へ集まって大きな光となり、闇はその光の輝きにかき消された。

 

 光。

 

 そう、私も間違いなく、あの時の光の一つだった。

 私はまだお母さんのお腹の中だったけど、こうして覚えているのだから間違いない。

 私も光なんだ。

 

 あの時と、今は同じだ。

 同じように光たちは集まった。

 マーリンが集めてきたのかもしれないけど、そんなことはどうでもいい。

 あの時と同じように私も光の一つであるというのなら、私も一緒に戦いたい。

 あの時は出来なかったけど、今なら力になれる。

 それをヒナンド(この子)も望んでいるはずだ。

 この子も光の一つなんだから。

 

「お父さん。ヴォーティガンを倒そう」

 

「ああ、無理するなよ」

 

「うん」

 

 私が頷き、返事をするとお父さんが全員へと威勢よく掛け声をあげて、それを合図に各々が向かうべき敵へと駆け出した。

 お父さんと私、そして──

 

「これでやっと決着。いやあ、長かったね」

 

 空中を滑るようにして並走してくるマーリン。

 私達三人がヴォーティガンへと走っていく。

 

「マーリンが遊んでなかったらもっと早く終わったよね?」

 

「『仕事もする』『エンジョイもする』。『両方』やらなくっちゃあならないのが私の辛いところだよね」

 

「はあ、もういいや」

 

 ため息をついて、前を見る。

 するとヴォーティガンが次元の穴を開こうと焦っている姿が見えた。

 何も出て来ないのに腕を振ったり円を描いたりする様は滑稽を通り越して哀れだ。

 でも、同情はしない。

 ここまでのことをした報いを受けさせる。

 

「くっ、くそッ! くそくそくそッ! マーリンッ! シロガネヒカルッ! お前らさえいなければッ!!」

 

「それは無理な話だ。君も()()()()()したのなら分かるはずだ。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「黙れええええ!! イカれた魔法使い風情が! 厄介事全てを押し付けた世界の癌!! お前がこの世界に来なければ……」

 

「──何言ってるか全く分からないし、今更理解しようとも思わないけどよ」

 

「ッ!?」

 

 並走していたはずのお父さんはすでに私たちより先にヴォーティガンの目前へと飛び出し、木刀を構えていた。

 

「こっちも家族に手出されて頭に来てんだよこの野郎おおおおお────ッ!!」

 

「ああああ、あああアアアアアアアアアアアアアア────ッ!!」

 

 踏み込んだ勢いを利用して突き出された木刀はヴォーティガンの胸部を貫通した──

 

 かのように見えた。

 

「ッ!」

 

「アアァァハハハハハハ、ハハハハハッ!!」

 

 お父さんの木刀はヴォーティガンが発生させた次元の穴へと吸い込まれていた。

 

 マーリンの妨害を潜り抜けた!? 

 いや、そんなことはどうでもいい。

 私が、いや私達がその奇跡か偶然を叩き潰せばいい! 

 

「何が最強の魔法使いだ!! 私もすでにその領域に足を──」

 

「ヒナンドッ!!」

 

『ヒナァッ!!』

 

「──」

 

 ヒナンドの拳はヴォーティガンの顔面へクリーンヒットした。

 ヴォーティガンは悲鳴すら出せず、あらゆる箇所から出血する顔面を押さえながら、ふらふらと千鳥足で後退した。

 

「素晴らしいじゃあないか。じゃあ今度は私の全力とその親子の攻撃全てを打ち消せるか、勝負といこう」

 

「ヒナンド、フルパワーだ」

 

『ヒナ!』

 

「まったく、面倒かけさせてくれやがったな」

 

「あ、あ、あア…………」

 

 私達が近付くと怯えた表情で後退るヴォーティガン。

 お父さんが木刀を振り下ろすのに合わせて、私もヒナンドに全力を注いだ。

 

「終わりだこの野郎おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお────ッ!!!」

 

『ヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナァッッ!!!』

 

 ヴォーティガンは私達の攻撃を一つも防ぐことが出来ずに、木刀の乱舞と拳の連打を全て食らってボロ雑巾のようになって、吹き飛び地面へと叩き付けられた。

 

 これにて一件落着。

 まあ、まだみんな戦ってるから、その加勢に行くんだけど、ほぼ終わりのようなものだ。

 

 私は、少し寂しい気持ちになってしまった。

 もうこの時代にいられる理由が残りわずかになってしまったからだ。

 






ついに買ってしまった。
ゆんゆん原作版チャイナドレスver.1/7スケールフィギュア。
アニメ版の絵柄はちょっと苦手なので買うことはありませんでしたが、くろね先生の絵柄となると話は変わってくるよね。
とりあえず今日大掃除が終わったら部屋に飾ります。

そして今、後書きを書いている時に気付いてしまった。
ラバーマットが付いてくる限定版があったのに、私はただの通常盤を買っている……ッ!!
うぅ……何というプレミ……。
ごめん、ゆんゆん。
フィギュアなんか買ったことなかったから……次があったらこんなミスはしない……。

もう一個買うか……?
いや、でももう一個買うぐらいなら、くろね先生描き下ろしのゆんゆん抱き枕カバーが欲しいな(強欲)



先程のショックで書くのを忘れるところでしたが、本編の説明です。
マーリンが連れてきたゆんゆん、ヒナギクは六章のお二人です。
そして紅魔族の少年ヒカリとトリスターノは番外編『No』の世界線のキャラクターです。

私の力不足で活躍の場がかなり減ってしまいましたが、出したかったので出しました。
本当はもう一人、完全オリジナルのトリスターノ女verを出そうかと思ったんですけど、これ以上ごちゃごちゃになるのはしんどかったのでやめました。
トリスターノが女でヒナギクが男の娘の世界線でヒカルと結ばれるのがトリスターノです。
ゆんヒナのおねショタセットも付いてくる。

マーリンが前書きジャックしていた時に向かっていたのも色々な次元を渡って力になってくれそうな人達を探していたんです。
面白さ優先で。


解説がたまに何個か抜けるから心配だけど、今回はこの辺で。
この話が今年最後の投稿になります。
いや、去年に今年中に終わらせるみたいな言ったんですけど、無理でしたね。
書くスピードが亀になってしまったし、様々な追加を気分でしたからですね。
うーん、来年はどうなるかな。
来年には終わらせられたらいいな、ぐらいの気持ちで適度に頑張ります。

最後にこの作品に触れてくださり、ありがとうございました。
今年は大変お世話になりました。
良ければ来年もよろしくお願いします。
では、良いお年を!そして、皆さんに祝福を!
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