あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
137話です。さあ、いってみよう。
「えっと、ヒナさん?何かありました?」
「ごめんね、ちょっと話したいことがあったから」
ヴォーティガンの事件が解決し、事後処理や違う次元から助けに来てくれた者達へのお礼をしている中、ヒナギクはゆりを呼び出していた。
「話したいことって何ですか?」
「ゆりは、ヒカルとゆんゆんの娘ってことで合ってる、かな?」
「はい、合ってますけど……あ、自己紹介遅れてごめんなさい。私の名前は白銀ゆりです。未来からやってきました」
「そっか、やっぱり……」
「私は未来のヒナさんを知ってるので、ヒナさんも私のこと知ってるかと思っちゃいました」
「確認したかっただけだから、いいんだ。それにバタバタしてたしね」
「あとヴォーティガンのこと、ごめんなさい。実は私がさっさと倒していればこんなことにはならなかったんです。ご迷惑をおかけしました」
「ううん、あんなのどうしようもなかっただろうし、気にしないで。それより聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「聞きたいこと、ですか?」
「うん、まあ、その、ゆりのお父さんについて、なんだけど……」
「はい、なんですか?」
「……げ、元気にしてるかなって」
きょとんとするゆりに、ヒナギクは恐る恐る尋ねた。
どんな世界でもシロガネヒカルは十年以内に死亡することをヒナギクは知っていた。
だが、この未来からやってきたヒカルの娘の登場により、希望が見えたヒナギクは居ても立っても居られず、ゆりに尋ねることにしたのだ。
ヒナギクにとってこの問いは勇気が必要だった。
希望でもあり、怖くもある。
そんなヒナギクとは対照的にゆりはあっけらかんと答えた。
「それはもう元気です。お父さん、道場経営とかで忙しくて夜ぐらいしか会えないですけど」
「…………」
「他の子供たちばかり相手にして、実の娘は放任するんです。ヒナさんからも何とか言って……ってヒナさん?」
一人でぷりぷりし出すゆりをヒナギクはポカンと口を開けて眺めることしか出来なかった。
「え、あ、ご、ごめんね!?え、えっと、ど、道場経営……?ヒカルが……?」
「はい、それだけじゃなくて孤児院とか王城の衛兵や警察まで……って、ああーーー!!」
「え、な、なにっ!?」
「あ、あまり未来の話をしちゃいけないんでした……。ヒナさんの姿、私の知ってる姿とほとんど変わらないから普通に話しちゃいました」
「えっ、ああ、まあそうだよね……僕、このまま天界に行くんだし……」
未来でもあまり成長しないことに軽くショックを受けるヒナギク。
それを話を中断されてガッカリしているのだと勘違いしたゆりは頭を下げた。
「ごめんなさい、これ以上未来のことは話せません。出来ればさっきのことも忘れて欲しいんですけど……」
「う、うん。わかった。とりあえずヒカルは、君のお父さんは元気ってことでいいんだね?」
「はい、それはもちろんです!」
(やっぱり僕の考えは間違ってなかった。天界からヒカルを守れば、あの運命を変えられる……!)
ヒナギクは心の中で歓喜した。
自身が考えていたこと、これからする行動は間違いではないと知ることが出来た。
そして、幸せな未来があることが分かった。
ヒナギクは改めて決意する。
絶対にヒカルを守ってみせる、と。
そう思い、なんだか安心してしまったヒナギクは新たに疑問が浮かんだので、ゆりに尋ねることにした。
「えーっと、その……ゆりの背後から出て来たヒナヒナ言ってたあの、よく分からない僕に似たナニカについて聞きたいんだけど……」
ヒナギクが困惑しながら尋ねると、ゆりはヒナギクからの疑問も納得だと思い、胸を張って答えた。
「よく分かりません!」
「えぇ……」
元気に答えるゆりに更に困惑するヒナギク。
でも、とゆりは続けて言った。
「未来のお父さんが『多分ヒナがお前を守るためにくれたものだろう』って言ってました」
「やっぱり未来の僕かぁ……」
ヒナギクは肩を下げて分かりやすく落ち込んだ。
サングラスをかけたヒナヒナ言うよく分からない天使が、未来の自分が生み出したモノだと言われれば落ち込むのも無理はない。
「え、あの、ヒナンドって良くないものなんですか?」
「良くないものかって聞かれるとどう答えていいか分からないけど、もっとマシなものにならなかったのかなって思うよ……」
遠い目でそう答えるヒナギクを見て、ゆりは首を横に振った。
「私はヒナンドのこととかよく分かってませんけど、それでも今までずっと私のことを助けてくれました。今の私がいるのはヒナンドのおかげです」
「ゆり……」
「あの子がどんな存在だって、私は大好きです。家族の一人みたいなものです」
「……そっか。それなら良かった、のかな」
「はい。……でも、もう、会えないですけど……」
先程まで元気いっぱいだったゆりが一転して悲しげな表情になるので、ヒナギクは慌てて尋ねる。
「えっと、それはどうして?」
「私達を守るのに、ずっと頑張ってたせいか、力を使い果たしちゃったみたいなんです。微かに力は感じるんですけど、もう出て来れないみたいで……」
ヒナギクはあの天使が円卓の騎士の全力の攻撃が直撃したことを思い出す。
あの時点で完全に消えてしまわなかった方がむしろ不思議であった。
あの天使も本望だっただろうとヒナギクは思うが、ゆりの悲しげな表情を見ると、ただそれだけで済ませてしまうのはどうなのかとも思い、ヒナギク自身の憶測でしかなかったが、話すことにした。
「ゆり、落ち着いて聞いて欲しいんだけど」
「はい?」
「もしかしたら僕がなんとか出来るかも」
「本当ですか!?お、お願いします!またあの子と冒険したいんです!」
「お、落ち着いてってば!可能性があるっていうだけで何とか出来るって決まったわけじゃないから!」
「いいえ、ヒナさんならきっと出来ます!信じます!」
「そ、そこまで言われたら僕も頑張ってみるけど……」
そう言ったヒナギクはゆりへと右手を翳す。
ゆりの中にある力を感じ取る。
確かにそれはヒナギク自身と同じ力だとヒナギクは確信した。
その力は空っぽのコップのようであった。
形はあるが、中身がない。
ヒナギクは集中し、そこへと力を注ぎ込もうとする。
コップにゆっくり水を注いでいくように。
初めてのことで慎重になっていた。
そこで予想外のことが起きた。
「えっ……?」
力が無理矢理持っていかれる。
コップにゆっくり水を入れようとしたら、水が入っている容器をひったくられてドバドバと勝手に水を入れられているような、そんな感覚。
止めようとしても遅かった。
コップは水が溢れそうになると量に合わせて大きくなり、そして。
『ヒィィィィィナァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!』
「わああああい!!本当に復活した!!」
ゆりの背後からヒナギクそっくりの半透明の天使が現れた。
「あ、あ、あわわわわ……僕もしかしたらとんでもないことしちゃったかも……」
ヒナギクはゆりが大喜びしてヒナンドとグルグル小躍りする姿を眺めていることしか出来なかった。
ヒナンドの姿が今までと変わっているからだ。
ヒナンドの天使の羽が一枚ずつ増えている。
「ヒナさん、パワーアップまでしてくれるなんて!本当にありがとうございます!」
三対六翼の羽。
天使で言えば、六翼の羽は最上級を意味する。
神に最も近い存在であり、全ての天使の上に立つ存在、それが『熾天使』である。
ヒナンドがその姿になってしまっている。
他ならぬヒナギクのせいで。
ヒナギクは顔を青くして、恐る恐るゆりへと話しかけた。
「ゆ、ゆり……?ちょ、ちょっとだけ待っ……」
「見て見て、お父さーーん!!ヒナンドが復活したよーー!!」
「ま、待って、ゆり!!少しだけ力を返して……って、待ってってばーーー!!」
ヒナギクが止めようとするのだが、大はしゃぎするゆりには聞こえず、父の元へと突っ走っていく。
ヒナギクは慌てて止めに行くのだが、力を無理矢理持っていかれたせいで出遅れる。
その後、力をある程度返してもらったのだが、ヒナンドの姿が変わることはなかった。
「色々と教えていただきありがとうございます」
「いえ、こちらこそ」
お互いに情報交換がある程度終わると、視線を外して別方向を眺める。
二人のトリスターノが見つめる先はヒカルとヒカリ。
どちらも奇跡で存在している二人。
「随分と変わっていますね」
「リーダーが?」
「それもそうですが、この世界も、この状況も、別世界の自分自身と話していることも、何もかもですよ」
「それは……そうでしょうね」
「様子を見るに、こういう状況は慣れているんですね」
「慣れているつもりはありませんが、彼らといると色々なことが起きますからね」
「……羨ましい限りです」
別世界から来たトリスターノの疲れ切ったような表情と恨めしいような羨ましがるような様々な感情が混ざった視線をこの世界のトリスターノに向ける。
トリスターノはそんな視線を受けても特に何の反応も示さない。
同情や憐れみも無い。
ただ、これも自身の一つの可能性だという事実を重く受け止める。
「今の私は円卓の騎士の名を完全に捨てた身ですが、それでも忠告させてください」
「……」
「酷い姿でしょう?今の私の姿をその目に、その心に刻み付けてください」
ツヤのない髪、痩せこけた頬、細い手足、目の下にくっきりと見える隈。
言われた通り、酷い姿だ。
トリスターノは素直にそう思った。
「この後マーリンに記憶を消されるとしても最悪の未来がいつでもあり得ることを忘れないでください」
「……分かっていますよ」
「この奇跡を最後の最期まで続けてください。円卓の騎士の名にかけて。『トリスターノ』の名にかけて」
「はい」
それだけ言うと別世界のトリスターノは背を向けてヒカリの元へ去っていく。
その背中は哀愁を感じさせたが、足取りは確かなものだった。
別世界の自身が羨ましくて仕方がないが、こんな世界があるという救いを得た。
過去に囚われていた男はようやく自身の道を歩き出せた。
たまに俯いてしまったり、振り返ってしまうことがあっても、きっと道を違えない。
様々な感情を胸に秘めて、自身と仲間の未来のために前を向く。
晴れやかな気持ちで、ずっと閉ざされていたいつかの微笑みを浮かべながら。
その微笑みを彼が見たら、こう言うのだろう。
まったく、これだからイケメンは。
◯ヒナンド(熾天使の姿)
なんかパワーアップした。
時間を数秒止められるようになったとか、なってないとか。
ゆりが神聖を失うその時まで、ゆりの身を守り続けた。
◯トリスターノ(番外編『No』)
番外編『No』では最終話しか登場しなかったが、まさかの本編に登場を果たした。
彼はここで救われて、ヒカリの娘が登場するエピローグで仲間たちと幸せな道を歩んでいる。
去年の大晦日と今年の元旦にデイリーランキングに入ることが出来ました。
お気に入り、感想、評価、本当にありがとうございます。
いつも書くモチベやパワーをもらってます。
実はランキングに入っていたこともあり、年始に特にやることもなかったということもあり、今月の三日ぐらいには投稿しようと思っていたのですが、書き上げたのがこれの次回かさらに次のお話だったので、結局いつも通りのペースになっております。
いや、書きたいなと思っていたシーンなので、それを書き上げたら、なんだか書き切った気分になってしまったのです。
そして、ようやく前回の後書きで言ったゆんゆんのフィギュアを部屋に飾ることが出来ました。
なんというか、思った以上にエッチでした。
その身体で少女は無理があるでしょ……。
そんな感じでした。