このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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遅くなりました。
後書きでも書いてますが、後書きめっちゃ長いです。
本編短めなので、逆にバランス良い感じになりました。

145話です。さあ、いってみよう。



145話

 

 

 幼少の頃に母が読み聞かせてくれた御伽話が好きだった。

 題名は忘れてしまって、内容も朧げではあるけど、ざっくりとなら説明出来る。

 国に仕える騎士が悪者を倒して、助けた女性から想いを寄せられる、そんなありふれた物語。

 よくあるお話ということは、それだけ物語として分かりやすく尚且つ人気があり、当時子供である私は当然影響を受けた。

 大人になったら物語に出てくる騎士様のようになるんだ。

 私はそう思った。

 

 そんな憧れは、現実となった。

 いや、それは少し違う。

 騎士になることは出来たが、()()()()()()()にはなれていない。

 歳を重ねるごとに、そんな存在はいないのだと分かってしまった。

 騎士王アルトリウスの前の王であるウーサーが亡くなられた時、次の王を決めるために置かれた選定の剣を抜けなかった私は思い知った。

 あれは物語にしかいない『騎士』なのだと。

 物語だからこそ、清く美しいのだと。

 そう思って────でも、どこか諦めきれずに、大人になって、円卓の騎士として認められた後も、私は理想と現実の狭間にいた。

 

 私は何の為に此処にいる。

 私は何の為に戦う。

 私はこれから何を────

 

 そんな疑問を浮かべながらも、騎士として戦ってきた。

 私がそんな状態でも戦えてきたのは、少しでも理想の『騎士』に近付けているようなそんな気がしたから。

 だから、そう思える円卓の騎士というのは私の数少ない誇りであった。

 それがどれだけバラバラで、彼らと真に分かり合えることはなくとも、私の気持ちは変わらなかった。

 日常的に力を競い合い、険悪になったとしても、円卓会議では意見が全く合わず白熱し、顔を見ることすら嫌になったとしても、国の一大事には一丸となることが出来る。

 その一つの事実だけで、どれだけ分かり合えなかったとしても私は円卓の騎士の一員として国や民のために戦えているのだと満足していた。

 

 それが瓦解したのは騎士王の独裁であった。

 円卓会議が行われることも無く、グレテン王国は魔王軍との同盟が結ばれた。

 騎士王が何故独断でそこまで強行したのか、当時の私は、到底理解出来るものではなかった。

 今となっては何故そうなってしまったのかは知っている。

 シロガネヒカルの奇妙な運命か、それともマーリンの気まぐれか、その一端を私は知ることが出来た。

 

 グレテン王国が人の手によって滅びる。

 そんな未来を知ってしまった騎士王は人を信じることが出来なくなってしまった。

 だから、シンプルに人類との敵対を選んだ。

 国を守りたいという王としての意志と、自身の力に絶対的な自信がある騎士としての覚悟、それが騎士王を突き進ませた。

 心では納得は出来ないが、頭では理解することが出来る。

 それでも、私は思う、強く思ってしまう。

 

 

 どうして、円卓の騎士(私達)だけでも、信じてくれなかったのか。

 

 

 他にも道はあったはずだ。

 そう思うが、円卓の騎士である私達も()である以上、騎士王が信じられるはずもない。

 騎士王が信じられるのはもう自身だけ。

 グレテン王国の未来の為に騎士王は一人で戦うことを選んだのだ。

 

 それから以前語った通り、私は国を抜け出した。

 人同士の戦争には参加したくなかった。

 この意見を聞いた騎士は、いや、それ以外の者にもきっと理解されることはなく、それどころか軽蔑されることだろう。

 それでも、私は嫌だった。

 円卓の騎士として人と戦うことは確かにあった。

 だが、それには大義があり、理由があり、未来があった。

 騎士王一人が決めた国の方針には大義も未来も感じなかった。

 

 少し街から離れればモンスターがいて、人はあっさり食い殺される。

 それなのに、何故人同士で争わなければならないのか。

 この戦争の果てに、もしグレテン王国が勝ち、生き残ったとして、その先の未来はあるのか。

 もしその先があったとしても、きっと酷い未来が待っているだろう。

 そんな最悪の光景は見たくなかった。

 

 最初は逃避のために、グレテン王国を抜け出した。

 バカだな、と自分でも思う。

 それこそ、未来なんて感じないだろうに。

 それでも譲れないものがあった。

 

 騎士とは守るために在るものだ。

 何かを奪うためではない。

 相手を否定するためでもない。

 戦争のために在るのではない。

 殺すためでもない。

 王の駒でもない。

 

 国を、人を、未来を守るために戦う。

 それが私の思う『騎士』だ。

 

 夢見がちだと笑うがいい。

 いつまでも現実と理想の違いが分からない愚か者だと石を投げればいい。

 どれだけ否定されたとしても、私は騎士として、守るために戦う。

 

 

 リーダー、貴方にはかつて道を示した。

 愚かで馬鹿な私の言い分であったにも関わらず、貴方は私達といる道を選んだ。

 無謀で弱く、助けられなければ死んでしまうような人。

 でも貴方は守るために戦っていた。

 ゆんゆんさんのために貴方はパーティーに残ることを選んだ。

 私という不安要素から守るために、貴方は辛い道のりを進んだ。

 その在り方が美しかった。

 まるで私が憧れた物語の騎士のようだった。

 そんな姿をもっと見たくて、貴方のことを誘導した。

 

 全くもって自分勝手で恥ずかしい。

 私の方こそ、これから歩む『道』が分からないというのに、偉そうに語るだなんて。

 にも関わらず貴方は私を仲間と認め、家族として接し、親友と呼んでくれた。

 それがどれだけ嬉しかったことか。

 自信を持たせてくれたことか。

 背中を押してくれたことか。

 

 そんな貴方に報いなければならない。

 貴方に道を示した者として、恥ずかしくない道を歩む。

 貴方達の仲間として、円卓の騎士として、私が憧れる騎士として。

 これまでの自身の考えは曲げない。

 守るために私は戦い、私達の未来もグレテン王国の未来もこの世界も全てを守ってみせる。

 

 辛く険しい道のりであろうとも、彼らといずれ別の道を行こうとも、信じた道を、信じさせてくれた道を突き進む。

 

 それが私の『騎士道』────ッ!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベティヴィアの剣は振るわれた。

 だが、それが振り切れることはない。

 鈍い金属音が辺りに響き、剣は弾かれた。

 

「…………なんだ、それは……?」

 

 勝ちを確信していたベティヴィアは呆然と呟く。

 トリスターノは今まで持っていなかったはずの全身を覆い隠せるほどの大楯を下ろす。

 すると、その大楯は光の粒子となって霧散した。

 

「ラウンズスキル『騎士道(スターライトロード)』」

 

 トリスターノがベティヴィアの問いに応えるように言うと、トリスターノの体が光に包まれる。

 『ラウンズスキル』と聞いて、顔色を変えたベティヴィアは一瞬でトリスターノから距離を取った。

 

「わざわざ離れてくださるなんて助かります」

 

 トリスターノの全身の光が徐々に形を成していく。

 今まで軽装であったトリスターノが重く銀色に輝く騎士甲冑を身に纏った姿が現れていく。

 手には今までとは比べ物にならないほど現実離れした弓で、まるでハープのような見た目をしたものだった。

 そして腰にはこの世界で作られたとは思えないような機械が搭載された矢筒とそこに収まる矢があった。

 

「これが、トリスタンの『ラウンズスキル』……」

 

「いえ、それは違います」

 

「……何を言っている? 自分でそう言っただろう?」

 

「今の私はトリスタンではありません。円卓の騎士、()()()()()()。そのラウンズスキルこそがこの『騎士道(スターライトロード)』です」

 

「ますます分からないな。あの男の虚言癖でも移ったか?」

 

「分からなければ結構。貴方は私の騎士道に反する言動をした。よって貴方を倒します」

 

「……ほざけ、無礼者。もう一度一瞬で終わらせてくれるッ!」

 

 静かに怒りを浮かべたベティヴィアが自ら取った距離をまた詰めていく。

 トリスターノは瞬時に矢へと手を伸ばし、矢筒の底へと矢を押し込むと矢筒の底でカチリと音がした。

 それを確認したトリスターノは矢を引き抜いて、弓を引いていく。

 弓はハープのように幾つも玄が張られていて、その内の二本を使って引き絞り、矢が放たれる。

 

「っ!?」

 

 ベティヴィアは驚き、目を見張る。

 明らかに飛来する矢のスピードが上がっていた。

 ベティヴィアは避けることを諦め、剣を盾にしながらそのまま突き進むことを選んだ。

 それが功を成したのか、矢は剣にすら当たらずに疾走するベティヴィアの足元へと落ちた。

 ベティヴィアが鼻で笑おうとしたその瞬間、足元が爆発し、身体が爆風で浮き上がった。

 

「な……っ!?」

 

 咄嗟に何故だ、と叫びそうになるベティヴィア。

 今飛んできた矢は爆発する氷の矢ではなく、普通の矢であった。

 だというのに、爆発した。

 混乱するベティヴィアは浮き上がった刹那の中でトリスターノを確認すると、トリスターノはすでに三本の矢を同時に弓に番えて空中のベティヴィアへ狙いを定めていた。

 ベティヴィアが驚愕の声を上げる前に矢は彼へと押し寄せた。

 

「ぐ、ああああッッ!!?」

 

 飛ぶ三本の矢の内一つが空中で分かれて三本となり、合計六本の矢が同時にベティヴィアを襲った。

 ベティヴィアは急所を咄嗟に守るように顔や心臓部を剣で隠したが、それで守ることが出来たのは二本の矢からのみだった。

 分裂した一つの矢がベティヴィアの顔を掠め、残りの分裂しなかった矢はそれぞれ腹部と機械仕掛けの腕の一本を射抜いた。

 機械仕掛けの腕は関節部をぶち抜き、駆動は不可能な状態であり、腹部は甲冑を貫通して腹部へと突き刺さっていた。

 そして、浮き上がった身体は重力によって地面へと叩きつけられ、その後ベティヴィアは感情のままに激昂した。

 

「あああッ!! 何故ッ! 何故だ……ッ!! 弓矢ごときが……!!」

 

「この弓『アキヌフォート』は弦を複数使うことで威力や飛距離、スピードを調整出来ます。それで威力を高めました。あと矢尻が少々特殊でしてね。アダマンタイトが少量使われた豪華仕様のおかげで高い買い物をさせられました。この街にある魔道具店に行くのなら仮面を付けた店員には気をつけた方がいいですよ」

 

「ペラペラと余裕のつもりか、トリスタンッ!」

 

「ええ、貴方が落ちるまでの間に一度か二度は殺すことが出来ましたからね」

 

「同胞だからと手加減していれば抜け抜けと……」

 

「そうですか、では本気でお願いします。私ももう手加減はしませんから」

 

「……ラウンズスキル」

 

 静かにベティヴィアがスキルを発動させる。

 円卓の騎士同士の本気の戦いがようやく始まった。

 







説明多めで後書き長めです。


◯ベティヴィア
騎士王至上主義の円卓の騎士。
彼の始まりは騎士王を一目見た時に感じた激情であった。
一目惚れ、憧れ、似たような言葉はあったが、そのどれとも一致しない感情はただ騎士王の元へと駆り立てた。
かの騎士王に仕える為に私は生まれてきたのだ、そう思ったベティヴィアは大きなハンデを抱えているのを全く感じさせないほどの類稀な才を発揮し、隻腕の騎士として有名になった彼は程なくして騎士王に認められた。

普段は騎士王の側近として仕事をしているため、騎士としての実力は低めではあるが、左腕が無いにも関わらず騎士としての実力を認められた傑物であることは間違いない。
機械仕掛けの腕を増やしたのは騎士になってからであり、騎士王の身の回りの世話や騎士王のためになること、頼まれていないことまで全てをこなすためには腕が圧倒的に足らないと感じ始めたのが始まりである。
騎士王に認められた実力も明らかに扱いきれない四つの腕も、彼の強い思い込みと騎士王への想いが為せるものであり、一種の天才でもあるが、それと同時に狂人であった。

騎士王の全てを肯定していて、騎士王のためであれば命でも家族でも何でも差し出してしまえるほど。
雑談の内容が全て騎士王のことになるのと思い込みが激しい性格であることも相まって、だいたいの人に避けられているが、本人は全く気付いていない。
周りにどう思われているかなど気にならないほどに騎士王のことを崇拝している。



騎士道(スターライトロード)
トリスタンではなく『トリスターノ』が円卓の騎士として至ったことで発現したオリジナルスキル。
元々このスキルは拳銃を創り出すスキルであったが、このスキル自体が未完成であり、シロガネヒカルの影響を強く受けていたため現代世界の拳銃を作り出していた(トリスターノ自身が銃器を好まなかったため、パラメデス戦以降使われることは無かった)
武具や防具を創り出せるスキルだが、魔力をコントロールして形成しているため魔力消費は激しい。
神器や特殊な能力を持つものを創り出したとしてもほぼ無能力の模造品になる。
フル装備状態で戦えるのはどこぞの光の巨人と同じくらい(スキルが解除されるかトリスターノの意思で創り出したものは消える)

トリスターノ自身が自ら進む道を決めた証。
憧れも理想も捨てきれない彼が夢見た『騎士』になる為のスキル。
仲間達がいずれそれぞれの道を行こうとも、その道のりに光があるように、という願いが込められている。

トリスターノが円卓の騎士として至ったのは確かだが、それは彼の実力だけでなくシロガネヒカルのムードメーカーも大きく影響している。

トリスターノのムードメーカー影響度:EX




◯トリックアロー
爆発するポーションを仕込んだ矢であったり、空気抵抗を受けて矢が飛んでいる途中で分裂するものであったり、矢尻や矢に特殊な細工を施したものを総じて『トリックアロー』と呼称する。
今までは初級魔法の組み合わせで氷の矢の先端部分に爆発するポーションを仕込んでいたが、『騎士道』のスキルにより、その手間が無くなった。
爆発するポーションやトリスターノが使えると思った様々なものが矢筒の底に仕込んであり、創り出した矢を押し込むことで矢尻にセット出来る。
セットするものを変更する場合は矢筒の底を横から回すことでリボルバー式の銃のように変えることが可能。


◯アキヌフォート
必中の弓や無駄の無い弓という意味で、フェイルノートとも呼ばれる。
トリスターノがアキヌフォートを創り出した……のではなく、トリスターノが高性能の弓を創造しようとしたら出てきた。
今のトリスターノに相応しい弓だからこそ、この弓は彼の手に収まった、多分そんな感じ。
性能はトリスターノが話した通り。






投稿が遅くなってしまった。
トリスターノ君の独白の部分だけで十回以上書き直してるせいで、なかなか投稿出来ず、他にもやりたいことがあったせいでそっちに逃げる毎日でした。
そうこうしてる内に評価人数が90人を超えるとかいうビッグニュースもあったりで、余計にフラストレーションが溜まりました。
本当にありがとうございます。
もう書けねーし書くの諦めっかー、にならなかったのは評価をしてくださる方や実際に読んでどうだったかを声に出してくださる方たちのおかげです。

トリスターノはなんというか、書いてる僕のレベルというかそういうのを超えてるキャラクターなので、いろいろと書くのが難しいところが多かったりします。
大好きなキャラクターであることは間違いないんですがね……。
特大の見せ場を用意しましたが、それ故に苦しめられるという……ちゃんと書けてるかかなり心配なところです。


察して感想とかで書かれてしまう前に先出ししておくのですが、ゆんゆんも新たなスキルを得ています。
ですが強力すぎて扱い切れるものではないので、本編には出てきません。後日談でも出てくるか分かりません。

◯ゆんゆんの新スキル
あらゆるものを破壊し尽くす星の光。
未来にて一度使われた時には、尊敬と畏怖を込めてゆんゆんのことを『紅魔王』と呼ばれるようになった。
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