148話です。さあ、いってみよう。
「本当にごめんね、トリタンさん……」
「大丈夫ですから。そんな深刻に考えなくて」
「トリタンの数少ない見せ場だったのに……」
「そこ、余計なこと言わないでください」
「そうだぞ、ヒナ。トリスターノの役割は後方支援で目立たなくて当たり前なんだ。剣とか槍とか使って大活躍なんてしたら、それはもうトリスターノじゃねえんだよ」
「あの、すみません。前回の私を全否定するのやめてもらっていいですか?」
「ちっ、騎士王の武器とかよく分からない大技つかいやがって。この作品の男共は地味な役割でなんとかかんとかしていくはずだろうが、ふざけんなこの野郎」
「この人、すごいめんどくさいこと言い始めました!」
「お前も前にゆんゆんとスキルが被ったとかめんどくせえこと言ってただろうが!」
ベティヴィア騒動のあった日の夜。
夕飯を食べ終わった俺達は卓を囲み、ダラダラと雑談をかましていた。
すると、ヒナが何かを思い出したかのように話しかけてきた。
「ヒカル、そういえば前々から思ってたんだけどさ」
「なんだよ」
「子供達に武道を教える時に、これは柔道の技で〜とか合気道の技術で〜って丁寧に教えるじゃない?」
「そりゃそうだ」
「アレやめない?」
「はあ? なんでだよ?」
ヒナの突然の意見に俺は良い思いはしなかった。
正直俺の武道の技術レベルは実際に道場経営して指導している人達からすればゴミみたいなものだ。
だが、それでも教える立場に立ったのなら、それなりの責任とこだわりがある。
俺みたいな奴でもな。
「ほら、最近子供達も増えてきたでしょ? いちいち武道の柔道とか空手とか言っても分からなくなっちゃうよ」
「……そうだけどよ」
俺が初期から教えてる子供達はしっかり理解してついてきているが、最近来た子達は首を傾げていたのを思い出す。
……確かに分かりづらいかもしれないが、これから徐々に覚えてもらえばいいと俺は思っていたのだが、ヒナはどうやら違う意見らしい。
「僕は悪い意味で言ってるんじゃないんだよ? ヒカルなりのこだわりがあるのはわかるし、ヒカルがいた世界の武道が好きなのもわかる。だけど、ここは発想の転換だよ」
「どうしたらいいんだよ」
「全ての技術をこれからはシロガネ流武道って言っちゃおうよ」
…………。
「お、お前な……」
「ヒカルからすれば抵抗があるかもだけど、その方が分かりやすいし、手間も省けるよ。それにここは別の世界なんだしさ」
ヒナの言う通りかもしれないが、やっぱり自分で考えて生み出した技術ではないものを自分のものだと言うのはな……。
「それでね、僕はシロガネ流武道にアレを取り入れるべきだと思う」
「勝手に話を進めるなよ……」
「ヒカルが日本にいた時の記憶から──」
コンコン、とノックの音が響き、ヒナの言葉は中断された。
こんな時間に来客らしい。
俺達は顔を見合わせ、先に俺が立ち上がると玄関へと向かい、扉を開けた。
「夜分にすまない。少しいいだろうか」
「ダクネス? どうしたんだ?」
外にいたのは鎧姿ではなく、普段着のダクネスであった。
そしてよく見ると、来客はダクネスだけではなかった。
ダクネスの背後にはギルドの制服姿の男女二人が控えていた。
その男女と目が合うと会釈され、俺も返すとダクネスが声を抑えながら言い出した。
「少し話がしたい。出来れば家の中で」
「なんなんだよ。まあ、いいけど」
三人を迎え入れると、俺はゆんゆん達に声をかけた。
「お客さんだぞ」
「え、ダクネスさん?」
「おや、こんばんは」
「こ、こんばんは」
ダクネスが今まで夜分に来たことはなく、三人とも面食らった様子で挨拶する。
「こんばんは。ゆっくりしているところすまない。失礼するよ」
「「こんばんは、失礼します」」
挨拶を交わし、三人に椅子を用意すると、ゆんゆんがいそいそともてなしの準備を始めた。
「ああ、いやいいんだ。少し話がしたいだけで」
「わざわざ来たってことはそれなりになんかあるんだろ? 茶ぐらい出すよ」
「そうか、では有り難くいただこう」
ゆんゆんが少し嬉しそうに三人にお茶を出すと、俺はダクネスがわざわざ来たことについて思い付いたことを先に言っておくことにした。
「昼間の騒動についてはもう警察とかに言ったこと以外の情報はないぞ」
ベティヴィアのことを聞きにきたのだろうと思っていたが、
「ん、その件も少し聞きたいと思っていたが、そうか。それならいいんだ」
どうやら違ったらしく、あっさりと俺の予想は外れた。
「本題は二つある。正直言えば君達からしたら、あまり良い話題ではない」
「……」
そんな前置きをされると、どうしても身構えてしまう。
何かしたかな、俺達。
「……率直に言う。君達には税金を支払っていただきたい」
意を決したように言うダクネス。
「え、ああうん、分かった」
「「「えっ」」」
俺はなんだそんなことか、と返事をすると三人は心底意外そうに声を漏らした。
税金を払わなきゃいけないのは分かるが、色々と分かってないことがあるし、このまま聞いておくか。
「ただ俺はなんというか、田舎の方から来たっていうか、少しそこら辺が疎くてさ。どれぐらい払えばいいんだ?」
ダクネス達は俺の言葉に納得した様子になった後、言い辛そうに言った。
「…………一千万を超える収入がある者、つまりは君達だが……今年度までの収入の半額を税金として支払ってもらうことになる」
「………………」
…………半額?
ああ、まあ、つまりは半分ね。
半分、ふーん、半分か。
……えーと、俺たちって一体いくら稼いだっけ。
「は、はんぶん……」
ヒナのそんな小さな声で俺は三人の方を見た。
トリスターノの笑顔は引き攣り、ヒナは呆然とし、ゆんゆんは目を見開いていた。
……なんというか、俺だけが驚いてるわけじゃなくて安心した。
よくよく考えたら、俺達全員他所から来たもんな。
……仕方ないが、払うしかないだろう。
ヒナが日頃から節制を心掛けてくれたおかげで税金を払ったとしても、かなりの大金が残ることだろうし。
「……分かった。でも流石に後日でいいか?」
「ああ、それで問題無い。いきなり来てすぐに寄越せなどと言うつもりは無いさ」
「良心的で助かるよ。で、もう一つの話は?」
「もう一つも、税金関係の話だ。少し長くなってしまうが、いいだろうか?」
「ここまで来たんだ。全部話してくれ」
それからダクネスの話は、この街の冒険者のことについてから始まった。
このアクセルの街は駆け出し冒険者が集まる街で、それだけこの街の冒険者の収入は不安定で微々たるものだ。
だから、これまでは特別に税金を見逃してきたのだという。
ただ今のこの街の冒険者はそうではない。
大物賞金首の賞金を得ている冒険者がほとんどだ。
裕福かつ余裕がある、それどころか誰かさんの影響を受けてニート化してしまう者までいた。
そこら辺は俺達にクエストが集中していたことからも明らかだった。
この街の冒険者の現状はよろしくない。
これまでの特別措置は駆け出し冒険者がいずれ国や民を守ってくれると期待してのものだが、こうなってしまえば話は別だ。
大金も得ているのだし、税を支払ってもらい、この街の冒険者の状況を改善させたい。
そう語るダクネスはいつもの冒険者としての顔ではなく、ダスティネス家の者の顔であるように感じさせた。
「もちろん徴収した税金はこの国や街、そして冒険者の為に使われる。すぐにとは言えないが、いずれ倍以上の還元になることを誓おう」
「冒険者にも税金を払わせるってのも分かった。それで?」
「あの冒険者達が税金を支払えと言われて、素直に支払うとは思えない」
「だろうなぁ」
くせ者だらけの知り合いを思い浮かべながら、俺は苦笑気味に返す。
「そこで、二つ目の本題だ。冒険者達から税金を徴収するための計画が練られている。それに協力してほしい。これは正式な依頼には出来ない。非公式な依頼となるが、確かな報酬を約束しよう」
「協力って具体的には?」
「緊急クエストのアナウンスで冒険者を全員集めて、それから税金を徴収する。だが、恐らく冒険者達は抵抗して逃げ出すことだろう。冒険者達を実際に捕まえるのはギルド職員や徴税官がやるから、そのサポートを頼みたい。出来るだけ分からないように影ながらな」
「じゃあ俺とヒナは難しそうだな」
「ヒカルはともかく僕ならお役に立てると思うよ。後ろから気絶させて、回復魔法をかければ……」
「さ、流石に直接危害を加えるのは問題や面倒事になりかねないから、やめてくれ」
「むぅ……」
ヒナがアホなことを言い出したが、ダクネスが困った顔で止めていた。
ダクネスに頼られて嬉しかったのだろうが、力になれないことが分かり、ヒナは頬を膨らませて拗ね始める。
この蛮族はたまにとんでもないことを言い始めるからな、今は放っておこう。
「それでヒカル、お前には一番重要なことを頼みたい」
「え、俺?」
「一人の冒険者を真正面から多少危害を加えてでもとっ捕まえてほしい」
「さっきと言ってることが随分と違うな」
とは言いつつも、なんとなくダクネスが言わんとしていることは予想がつく。
「この街で一番の高所得冒険者であるサトウカズマ。奴に税金を払わさせたい。是非とも協力を頼む」
やっぱりか。
ダクネスがここまで警戒する相手なんてカズマぐらいだろうし。
あいつのことだから、とんでもない方法で逃げ切るに決まってる。
……ただまあ、うん。
「カズマか……」
「む……気が進まない顔だな」
「当たり前だろ。純粋な力勝負なら百パー勝てる自信はあるが、絶対そうならないだろうしな」
あいつの機転と悪知恵と幸運は厄介極まりない。
ぶっちゃけ相手したくないな。
「ヒカル、お前は確かカズマに大きな
あー、腕相撲(※125話)の時のことか。
いつかはやり返してやろうと思ってたが、それが今かと言われるとな……。
「あとは、そうだな。ヒカルが気絶してる間に好き放題していった冒険者達もヒカルが捕まえてくれて構わない」
……ほう。
「例えばの話だが、冒険者達が逃げ出す中、
……ふむ。
「今の冒険者にとっても、もちろんカズマにとっても税金を支払うことはかなりの痛手だ。やられた分をやり返すには又と無い機会じゃないか?」
……。
「……ハッ、いいね。面白くなってきた」
ダクネスのニヤリとした笑みに俺も笑顔を浮かべる。
「うわ、悪い顔……」
「ははは……」
「まったくもう……」
後ろから聞こえる仲間達の声は無視して、俺はカズマをどうやってぶっ倒すかに思考を巡らせていた。
緊急クエストのアナウンスが街中に響き渡り、続々と冒険者がギルドに入っていくのを俺達は眺めていた。
「んじゃまあ、そろそろ配置につきますか」
「ええ、行きましょう」
「うぅ……気が進まないわ……」
「ゆんゆん、冒険者達にバレなきゃ大丈夫だ。気にせず足止めしてやれ」
「そういう問題じゃない……」
まだ始まってもいないのにげんなりとした様子のゆんゆんではあるが、ちゃんと配置へと移動を始めているので、心配しなくてもよさそうだ。
トリスターノは非殺傷のトリックショットを試せるとウキウキしてる様子さえ見えるので、こいつも特に問題なさそうだ。
「ヒナ、手続きまとめて頼んだぞ」
「う、うん」
ただ、ヒナはなんだか様子がおかしい。
俺達の金銭関係を管理しているヒナに俺達の税金の手続きを任せたのだが、なんだか心ここに在らずだ。
そんなに冒険者を後ろからど突きたかったのか、こいつは。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫。行ってくるね」
……少し不安だが、ヒナなら多分大丈夫だろう。
ゆんゆんとトリスターノはギルドからある程度離れた位置に陣取るし、俺はギルド前で逃げ出した冒険者達やカズマを相手にしなきゃいけないから、ついて行ってやることは出来ないし、信じるしかない。
しばらくすると、ギルドの扉が荒々しく開いて冒険者達が慌ただしく出てきた。
「っ! ヒカル! 逃げろ、緊急クエストなんて嘘っぱちだ! あいつら税金を払わせ────」
「お前らさ、知ってるか?」
俺に逃げるように言ってきた冒険者のセリフを無視して、俺は冒険者達に話しかける。
「俺が気絶してる間に俺の金で好き勝手飲み食いしてった奴が結構な数いるんだけど、知らないか?」
緊急時に落ち着いた様子で別のことを話し始める俺に一瞬困惑していたが、次第にゆっくりと俺から目を逸らし、みな口を揃えて言った。
『し、知らない……』
…………。
「そうか、知らないか」
「あ、あああ、ああ。知るわけないだろ!」
「許せねえよなぁ!?」
「まったく最低なやつがいたもんだぜ!」
「はあ、ざんねんだ」
「そ、そうだ。それよりも今は大変な──」
俺は話しかけてきた冒険者の頭を鷲掴み、そのまま押し倒すように地面へと叩きつけた。
『……えっ』
困惑する冒険者達には構わず、俺は次の標的へと狙いを定め、続けて言った。
「じゃあ、分からないから冒険者全員にやり返すしかないなぁおい」
「ちょ、まっ──」
潜り込むように相手へと接近し、下から来る俺から逃げるように相手の体の重心が上にきたところをすかさず足を払いつつ、頭から地面へと落とす。
「ま、待てって! 今はそれどころじゃ──」
次の相手には脇の下へ腕を入れ、抱き上げるようにしつつ身体を反転させて背負い投げのようにぶん投げて地面へと叩きつける。
「ヒカル、てめえ。ここまでしたからには分かってんだろうな」
「お、おい、逃げなくていいのかよ……?」
「ここまでされて逃げられるか。不意打ちじゃなければ俺達三人でボコせるはずだ」
「だな。ヒカルはかなり稼いでるし、あいつらに差し出せば多少は逃げる時間も出来るだろ」
残り三人の冒険者達は仲間がやられて怒り心頭らしい。
ここまでは、ほぼ準備運動。
というか見聞きした技を少し使ってみただけ。
逃げられてもゆんゆんとトリスターノに任せればいいだけだったのだが、あいつらがやる気になってくれたのなら有難い。
ほんの少しだけ、俺の実戦稽古に付き合ってもらおう。
先程の力技ではなく、技術で三人を倒す。
思い浮かべるのは合気道の神様と呼ばれたあの人物。
俺じゃ足元にも及ばないのは確実だが、良いイメージであればあるほど良い。
「覚悟しろ、ヒカル!」
「ぶちのめしてやらぁ!」
「ああちくしょう! 早く逃げなきゃいけないのによぉ!」
向かって来る三人に対し、俺は半身を引きながら構えた。
────数十秒後。
「のわあっ!?」
「ぐはあ!?」
「ぐへぇ!?」
三人は次々と地面へと沈んでいった。
「お前ら……マジかよ……」
さっきの威勢は一体……。
これじゃ全く経験にならない。
力を入れたつもりはなく、ただ合気道らしく相手の力を利用しただけだ。
もしかすると俺も実戦のせいか、力が少し入っていたのかもしれない。
だとしたら悪いことをした。
いつかこの三人には何か奢ってやろう。
「これで終わったと思うなよ。まだ手はある」
「そういう分かりやすい負けフラグはいいんだよ! ……って、なんだ!?」
俺が少し反省していると、そんな声が聞こえてきた。
振り向くと、手錠で繋がれた男女二人。
やっと俺の本命が現れたことに嬉しく思いつつも、来ない間の冒険者達で経験を積む時間が無くなったことを残念に思った。
「カーズーマーくーん」
まあ、それはそれとして。
「あーそーぼー」
まずは、
ちょっとハイテンション後書きで長めです。
まずは、三つおめでたいことがございます。
このすば三期
&
爆焔のアニメ化
おめでとうございます!!!!!!
本当におめでたい!!
そしてありがたい!!
原作的に三期の内容だとゆんゆんはあまり出て来ないので、少しだけ残念に思っていたのですが、まさか爆焔までアニメ化してくれるとは!!
実質主人公ですからね!!
個人的このすばで1番嫌いなシーンも見なきゃいけないのは苦痛ですが、嬉しさの方が勝ってる!
二つ目!!
戦闘員、続刊発売!!!
やっと来てくれた!!
一年以上来ないもんだから、もしかしてもう来ない……?って思ってしまった。
何はともあれ、本当にありがとうございます!!
この後書きを書いてる時点では、まだ色々あって最後まで読めてないんですけど、なるはやで読ませていただきます!!
三つ目!!
この作品の評価人数が百人になりました!!!
50人行くのにも苦労してたのに、まさか百人行くとは思わなかった!
本当にありがとうございます!
これからも頑張ります!
四つ目!!
この作品を投稿し始めて二年経ちました!!
自分でも全く気付かなかった!
どんなに続けても二年目あたりで終わると思ってましたけど、なんならまだ一、二年かかりそうですね!!
ていうかそれ以上かも。
感情と気分で書いてるから、分かりません!!
それでもついて来れる方だけついてきてください!!
このすば成分が最近は全く無かったから、このすばへの興味とかモチベーションがかなり下がってましたけど、今回の朗報があって本当に助かった。
このまま後日談とかも発売されてほしいなぁ。
でもゆんゆんの最終巻後の話は場合によっては読めないかもしれない……。
この作品への思い入れが強すぎて……。
とか言いつつ読みそうですけど。
爆焔アニメ化でゆんゆんグッズが増えてほしいなとか色々思ってることはあるんですが、一つ気になることが。
紅伝説では影も出て来なかった(多分)ネームドキャラである『ねりまき』は出て来るんですかね。
原作爆焔のカラーイラストでねりまきがめちゃくちゃ可愛いのに、全く出番が無くて驚愕してた思い出があります。
この作品の紅魔の里で割とねりまきが出てくるのはそこら辺も関係あったり。
学校の休み時間とかのちょっとしたシーンでいいから、喋って動いてるところが見たいものです。
後書きで色々書いた通り、流れに乗って早めに投稿したかったのですが、なかなか上手くいきませんでした。
次回はヒカルVSカズマ。
まだ書き始めてませんので分かりませんが、もしかしたらまた違う視点で書くかもしれません。