このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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16話です。さあ、いってみよう。



16話

 

 ゆんゆんが来たことにより、ギルド内が騒がしかった理由がわかった。

 

 森に悪魔が出たらしい。それも上位悪魔と呼ばれるとびきり強力な悪魔が。

 しかもその悪魔を撃退したのがこの二人なんだという。

 やっぱり凄いんだな上位職のアークウィザードは。

 

「ふっ、紅魔族随一の実力ですからね。当たり前です」

 

「ねえ、めぐみん。めぐみんは別に何もして……」

 

「そういえばその『こーまぞく』って何だ?」

 

「「……」」

 

 はい、また無知をいじられるやつー。

 

「え、知らないんですか?知らないでゆんゆんとパーティーになったんですか?」

 

 そうだけど、それはルナさんにだな…。

 

「えっと紅魔族というのは」

 

 ゆんゆんから懇切丁寧な説明を受ける。

 その紅魔の里の生まれの者は全員がアークウィザードでほとんどの者が上級魔法が使える魔法使いのエキスパート集団。そしてみんな黒髪で紅い瞳が特徴だという。

 

 生まれながらにして魔法使いの天才とは、また羨ましいな。転生するならその紅魔の里にでも赤ん坊として生まれたかったものだ。

 何も持ってないのに知らない街に放り出されるよりずっといい。

 

「ゆんゆん!紅魔族族長の娘のくせに、何故名乗りをやってないんですか!」

 

 え、すごいじゃん。族長の娘?道理で育ちが良いはずだ。

 ……変な意味じゃないぞ。

 

「だ、だって、恥ずかしいんだもん!わ、わざわざあんなのやらなくていいじゃない!」

 

 ゆんゆんの胸倉を掴んでぐわんぐわん揺らすおかげで絶景が、いや、めぐみんグッジョブじゃなくて、ゆんゆんが苦しがっている。

 

「やめてやれよ、人には向き不向きがあるんだぞ」

 

「何言ってるんですか!族長の娘がこんなのでは紅魔族の名が地に落ちます!」

 

「え、ええっ、私そこまでのことしてるのっ!?」

 

 ライバル云々とか言ってたが友達同士なんだし、もっと仲良くしろよ。

 友達なんていつ会えなくなるかわかったもんじゃないぞ。俺みたいにな。

 

 まあ俺が勝手に事故で死んだんだけど。

 

 これが二人の友情なのだろう。余計な事は言わず絶景を、いや喧嘩を眺めていよう。

 

 お互い競い高め合う二人なんて、なんともカッコいいじゃないか。

 

 

 

 

 

 悪魔が出た影響で森への立ち入りが禁止になった。

 平原でクエストをこなすしか無いんだが、他の冒険者が狩り尽くしてしまい、俺やクエストを取れなかった冒険者はヒマになってしまった。

 悪魔騒動が早く終わればいいんだが長期化するようなら金欠しちまう。どうしたものか。

 

「ヒマなら私の魔法の練習に付き合いませんか?」

 

 翌朝、ギルドで朝飯を食ってたら当然のように同席してきためぐみんに提案される。

 

「危ないからやめない?しばらくは我慢しましょうよ」

 

「危険だからヒカルも連れて行くのです。三人いれば何かあっても対応しやすいですからね」

 

 昨晩からヒナギクとは会ってない。何もないといいんだが。

 トリスターノはクエストが無いなら少しやりたいことがあると言って何処かに行ってしまった。まさかあのイケメンは何処かでストーカーしてるんじゃなかろうな?

 

「まあ俺もやる事ないしな。付き合うよ」

 

 馬小屋で一日過ごすのは嫌だし、付き合うことにした。

 

 

 

 

 

 

「『エクスプロージョン』!!!」

 

 

 轟音が空気を震わせる。一瞬遅れて熱を伴う突風が平原を駆け抜ける。全てを壊すような圧倒的な破壊力。たった一撃で反則級の大爆発を起こした。

 

 魔法を使わない職業なのに初めて魔力というものを感じた。

 初めて空気が震えたのを感じた。

 

 なんだよ、これ……魔法とかじゃなくて何かの兵器じゃないか。あのボードゲームで使った『エクスプロージョン』はこんな魔法だったのかよ。

 

 これが紅魔族の魔法?やばすぎる。俺はこんな破壊力を出せるような魔法使いの一族とパーティーを組んでたのか。ゆんゆんはあまり魔法を使う時そこまで魔力は込めてないとか言ってたが、嘘じゃなかったみたいだ。

 

 先程の『エクスプロージョン』の突風でめぐみんのトンガリ帽子が飛んでいき、森の中へ入ってしまう。

 すると突然めぐみんがドサリと倒れた。

 

 え、何があった!?悪魔か!?いつの間にか攻撃されたのか!?

 

「我が奥義である『爆裂魔法』はその絶大な威力ゆえ消費魔力もまた絶大。限界を超える魔力を使ったので身動き一つ取れません」

 

 え、えぇ……。

 既にゆんゆんは手慣れたようにめぐみんを助け起こしている。

 じゃあ俺は帽子を取ってくるか。

 

「ごめんね、ヒカル。気をつけてね」

 

 

 

 

 

 確かこの方向に飛んでいったと思うんだが…。

 俺は森の中で帽子を探しに来たがなかなか見つからない。もう少し奥かな。

 お、あった。帽子を取り前を見たら

 

 

 何かと目が合った。

 

 

 金属の様な光沢を放つ漆黒の肌。蝙蝠のような巨大な羽。身体は俺を遥かに超えていて、ツノと牙が異形さを物語っている。

 

 な、なんだ…!?やべえ、殺され

 

「よう、ちょっといいか?俺様はホーストってもんだが」

 

 る…?

 

「実はこの辺りで真っ黒で巨大な魔獣を探してるんだが見てないか?」

 

 ………。

 

「いやー見てないっすね」

 

「そうか。見かけたら、また会った時教えてくれないか?」

 

「あ、いっすよ」

 

「お、助かるな。やっと普通に話してくれる奴がいたよ。ありがとうな」

 

 礼を言って羽を羽ばたかせ、空中に浮かび手を振ってくる。

 手を振り返したら満足そうに何処かへ飛んでいった。

 

 ホーストさん、あれは何だったんだろうか。普通に話してきたから話し返してしまった。ついでに手も振り返してしまった。

 

 まあ、とりあえず戻るか。

 

 

 

「もう!どこまで行ってたの!?心配したのよ!」

 

 戻るなりゆんゆんに怒られた。ぐったりしてるめぐみんに帽子を被せてやる。

 

「結構奥まで行ってたせいで探すのに手間取ったし、しょうがないだろ」

 

「ありがとうございます。迷惑をかけました」

 

 さっきのモンスターについて聞こうと思ったけど、ゆんゆんがうるさそうだし、やめておくか。

 

 

 帰りの道中に色々聞いたが、めぐみんは爆裂魔法とやらは一日一回しか使えない上に爆裂魔法しか覚えていないらしい。そして爆裂魔法以外を覚える気もないらしい。そのせいでヒナギクが言っていた「迷惑行為」に繋がっていたらしい。

 冒険者のほとんどに避けられ、パーティーに入れてくれない腹いせにそこら辺で爆裂魔法を撃ったり、避けてる冒険者に喧嘩を売る。「迷惑行為」の実態はこういうことだった。何をやってるんだか。

 ゆんゆんも注意してるが、聞く気は全くないみたいだ。

 

 

 アクセルに帰る道すがら。

 ん?なんか街の方が光ったような?

 

「「!!」」

 

 二人が何かに驚いたような表情で立ち止まる。なんだ?光ったのがそんなにびっくりしたのか?

 

「……凄まじい魔力を感じました」

 

 え?なに?

 

「神様の奇跡級の魔法を使ったみたいな魔力だったけど、あれは一体なに……?」

 

 そ、そういう感じ?よ、よし……。

 

「な、なんて気だ」

 

 俺もとりあえず反応しとこう。

 まるでドラ◯ンボールのキャラ達が気力を感じ取ったような反応だ。俺は一般人なので街の方が少し光ったのがちょっと見えただけだ。

 

 二人は少し警戒するような感じだったが、街へと戻ることになった。

 

 

 

 誰か俺にツッコミ入れてくれよ。

 

 

 

 

 

 

 魔法の練習という名の散歩が終わりお昼時。

 ギルドに着いて、いきなり話しかけられる。

 

「あー!あんた!日本人よね!?私が送ってあげた人間よね!?」

 

 俺を指差して騒がしいのがいる。

 

 

 あいつ、もしかして……。

 

「私のこと知ってるわよね!?貴方を送ってあげた女神アクア!貴方の名前は忘れちゃったけど、私が送ってあげた日本人よね!」

 

 こいつは……

 

「ね、ねえ!なんとか言ってよ!私のこと忘れたわけじゃないわよね!?」

 

 俺に能力も知識も金も与えないで、身一つで知らない世界に放り投げてくれた邪神さんじゃないですか。

 

「ねえ、ヒカルの知り合い?なんか女神とか言ってるけど……」

 

 ゆんゆんは俺に聞いてくるが、めぐみんは何かを察したのか、それとも関わりたくないのか食事に向かったようだ。

 

「ねえ、なんで無視するの!?私よ!?女神アクア!忘れたなんて言わせな」

 

 やっと、俺の願いが、エリス教会で祈って本当に良かった。

 エリス様、頭のおかしい女神様だと思ってしまったけど、能力の調査もするだけじゃなくて願いまで叶えてくれるなんて。

 俺、この後エリス教に入ります。

 

「な、なあ、あんた日本人か?少し話を聞いてほしいんだ」

 

 うるさい邪神の後ろから男が話しかけてくる。日本人か。

 

「いいけど、この状況は何だ?何でこの邪神がいる?」

 

「邪神!?」

 

 俺に向かってこようとする邪神を男が食い止めながら話を続けてくる。

 ゆんゆんにめぐみんと飯でも食っててくれと伝えて話を聞く。

 

 

 彼の名前はサトウ カズマ。つい先程日本から転生してきた少年。

 彼の詳しい話を聞くとあの転生する前の女神の会う部屋で俺と同じような対応をされ、腹が立った彼は転生特典としてそこの邪神を選んで今に至るらしい。

 そんなのありなの?と思ったが良いことは無く、この邪神はこの世界のことも詳しくないし、戦う力はあまり無い、更には金も無いせいで冒険者登録も出来ないときたもんで、彼は早々に女神を選んだことを後悔しているらしい。

 それでどうしようかと悩んでいた時に転生の先輩である俺が来たということだ。

 

「す、すまん!少しお金を貸してくれないか?」

 

 後輩にお金を出すのは全く構わないんだが、色々と困ったな。

 

 邪神への対応に困る。今まで邪神への恨みで頑張って来た感もあるが、エリス様が能力を既に持っている可能性もあるとか言われてるし。そのせいで今すぐしばきにいけるかと言われると行けない。

 そして個人的にはミツルギみたいに先輩らしくポンと大金を渡してやりたいんだが、自分の事で精一杯な上に今は悪魔騒動で金を稼ぐのも一苦労と来ている。

 更に今の街の外は危険すぎる。

 

 とりあえずカズマに二万エリスを渡してやり、この街の現状を説明する。

 今は外に強力なモンスターがいて危険なこと。しばらくは冒険者として過ごすより、違う仕事をした方がいい、と説明した。カズマは落胆していたが納得したみたいで、邪神と冒険者登録をしに行こうとして

 

「え、これだけ!?ケチね!」

 

 ぐっ……!だ、誰のせいでっ!

 お、俺だってミツルギみたいに渡してやりたかったわこの野郎!

 お、落ち着け。今は辛抱しよう。エリス様の調査が終わり俺の能力が無いことが証明されたら大手を振ってこの邪神を退治しようそうしよう絶対にやってやるからな。剣を研いでおこう。ふふふ、首を洗って待っていろ。

 

「お、おい、いい加減にしろ。ほら、登録しに行くぞ!」

 

 邪神を連れて登録しに行くカズマ。そこまで前じゃないが懐かしいな。登録した時に散々なこと言われたの俺は忘れてないからなルナさん。

 邪神はどうでもいいが、カズマは良い冒険者になれるといいな。

 

 

 

 紅魔二人と飯を食おうとしてると受付方面が騒がしい。もしかして二人がすごいステータスだったのかな。羨ましい限りだ。

 とりあえずこの二人には先ほどの二人は同じ故郷から来た人間だと説明しておいた。

 

 

 ゆんゆんにはしばらくクエストが受けられない以上それぞれで過ごそうと提案した。それを聞いたらまるでこの世の終わりみたいな顔をしたので説明する。

 現状俺も金が尽きかねないし、クエストの取り合いになってる以上クエストを受けられない可能性が高い。クエストじゃなくてどこかで違う仕事を受けたりする可能性があるし、ゆんゆんも久しぶりに友達と水入らずで過ごしたりするのも良いだろう。

 

 決してこの頭のおかしい方の紅魔族の扱いに困ったわけではない。

 

 それでも不満そうだったので朝には俺もギルドに顔をなるべく出すし、夕飯時には集まろうと提案してようやく納得した。

 

 

 

 

 

 

 トリスターノにも伝える為に奴の馬小屋へと向かう。ゆんゆんもやることがないから付いてきた。めぐみんは魔力切れで体がだるいからとそのままギルドに置いてきた。

 

「トリタンさんが馬小屋って意外だよね。あの人何も言わないけど、多分貴族の生まれなのに」

 

「え?貴族?」

 

「うん。金髪碧眼の人は高貴な生まれの人の証拠なのよ。どこの生まれとかは聞いてないけど、多分貴族の人だと思うわ」

 

 これ以上あいつに変な設定を加えるなよ。ストーカーで元魔王軍で元アーチャーの友達募集してるイケメンだぞ。元貴族まで加わったら収拾つかん。

 

 ここを曲がったら奴の馬小屋だ。さて、不在じゃないといいんだが。

 

「トリタンさま!つぎはわたしも!わたしも!」

 

「ふふふ、順番ですよ。お待ち下さい、レディ」

 

 どうやら不在じゃなかったらしい。声が聞こえ、る……。

 

 馬小屋の前にトリスターノはいた。

 数人の小さな女の子に囲まれてキャッキャッウフフしてるトリスターノが。

 

 

 ……もう一つ設定を増やさなきゃいけないらしい。

 

 

「……どうやらお取り込み中らしい。帰ろう」

 

「……そうね。邪魔しちゃ悪いしね」

 

 回れ右して帰ろうとしたら運悪くトリスターノがこちらに気付いたらしい。

 

「おや、お二方、朝以来ですね…って、え、ちょ、どこ行くんですか?」

 

 うわ、声かけてくるなよ。せっかく帰ろうと思ったのに。しょうがないから同じく回れ右してトリスターノに向き直る。

 

「よよよお、少し伝えたいことがあって」

 

「う、うん、こんにちは、トリタンさん」

 

「はい、こんにちは?なんで動揺してるんですか?」

 

 してねえよ。全然。なんで動揺しなきゃいけないんだよ。楽しんでる人の邪魔して悪いなとか思ってねえよ。全然。

 よし、さっさと要件を伝えて帰ろう。

 

「トリタンさま、トリタンさま!あの人たちだあれ?」

 

 少女たちがイケメンに群がりながら聞き始める。

 

「レディ、あの人たちは私の友達であり仲間ですよ」

 

「トリタンさまの?」

 

 芝居がかった話し方もこのイケメンなら、まるで違和感を感じない上に絵になっている。腹立つ、これだからイケメンは。

 

「と、友達…!」

 

 この娘は本当に大丈夫かなぁ…。自己評価が異様に低いのはどうにかならないのか。もし俺とパーティーを組まなかったら悪い人間に騙されてたんじゃないか?

 

「お二人はどうかされたんですか?デート中ですか?」

 

 ニヤニヤしながら言うトリスターノ。

 何考えてんだ、これだからイケメンは。

 

「え、ええっ!?ち、違うよ!?トリタンさん何いってるの!?」

 

 動揺しすぎだろ。落ち着いて対応しろよ、トリスターノが調子に乗るだろ。

 そんなことをやり取りしてると少女たちが俺らに群がってくる。

 

「こんにちは!」

 

「こ、こんにちは」

 

「こんにちは」

 

 子供相手に挙動不審モードはやめてくれよ。

 挨拶ができるなんて良い子達だ。

 

「あ、ダメですよ。お二人は……お楽しみ中なんですから」

 

 ニヤニヤするな。気持ち悪い。お前ほどお楽しみ中じゃないわ。

 

 ゆんゆんが子供達の相手をしてる間にトリスターノに先程ゆんゆんに提案したことを伝える。トリスターノはすぐに納得してくれた。

 

「クエストや他にも何かあれば言ってください。馳せ参じますよ」

 

 お楽しみ中に呼んだりしないから安心しろ。

 まあこいつには何度も助けられてるしな。実力は確かだ、遠慮なく呼ぶことにしよう。

 

 

「え、と、友達?いいの?私たち友達でいいの?」

 

「え、う、うん。いいよ……」

 

 

 子供にドン引きさせるんじゃないよ。

 




しばらく真面目な話が続きます。

いえ、いつも真面目じゃないわけではないんですけど。

書いてるとよく思いますけど、カズマのパーティーの個性がバカ強いですよね。アレに勝てる個性を持つようなキャラを作れない。

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