このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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154話です。さあ、いってみよう。



154話

 

 

 

 カズマ達に結婚式のことを言ってから、ゆんゆんがめぐみんにドヤ散らかしたりして、またもやわちゃわちゃし始めた。

 そんなこともあって、詳細は日を改めてということになり、俺とゆんゆんは家に帰ることになった。

 その翌日、

 

『緊急クエスト! 緊急クエスト! 街の中にいる冒険者各員は至急冒険者ギルドに集まってください!』

 

 まったりとした時間を過ごしていただけに、街中に響き渡る馬鹿でかいアナウンスに邪魔されたのはあまり良い気分じゃなかった。

 ちゃんとした緊急クエストは久しぶりな気がする。

 前回は税金を集めるための嘘のアナウンスだったしな。

 

「なんだろうね」

 

「あまり大事じゃないといいんですが」

 

「とりあえずは準備しましょう」

 

 そう言って席を立つ三人とは違って、俺はなんだかやる気が出ないでいると、アナウンスが続いた。

 

『繰り返します。街の中の冒険者各員は至急冒険者ギルドへ集合してください! ………………冒険者の皆さん!』

 

 アナウンスはそこで大きく息を吸って、

 

 

『宝島ですッッッ!!!!』

 

 

 と力強く言った。

 

「「「!」」」

 

「宝島? なんだよそりゃ……んあ?」

 

 俺が話してる途中で後ろ襟を掴まれた感触がして中断させられた。

 そして、次の瞬間。

 

「どわあああああああッッッ!!!? ちょ、な、なにしやがる!? は、はな、放せこの野郎!!」

 

 掴んだまま爆走するせいで俺は首が締まるし、引きづられて痛い。

 こんなことをするようなやつはウチに一人しかいないが、一応前を見てるとゆんゆんとトリスターノが追従していたので、やっぱり前で俺を引きづり回してるのはヒナだった。

 ヒナは外へ出ても俺を放さず、それどころか加速し始めた。

 

「おいっ! 急ぎなのはわかったから、もう放せって! 自分で走るよ! ていうか俺何も持って来れてないんだけど! 誰かさんのせいで!」

 

「今は一分一秒が惜しいから、手短に言うけど、装備は多分いらないし、放さない」

 

「なんでだよ! 普通に走った方が早いだろうが!」

 

 ていうか何よりも首が絞まってんだよ。

 それをピッタリ付いてくるトリスターノに視線で伝えると。

 

「お任せください、リーダー」

 

 察したトリスターノは得意気な顔で頷き、引きづられていた俺の足を持ち始めた。

 

「お前、どこに気ぃ回してんだ! どう考えてもそこじゃないだろ! 逆に首への負担が増えてんだよ!」

 

「宝島も見えた。ギルドまでもう少しだよ!」

 

「報告どうも! 俺は全く見えないけどね、お前らのせいで!」

 

 何の事前情報も無いし、視覚的な情報も無い。

 緊急クエストでも流石に準備する時間はいつもあったってのに。

 ていうかマジで首が限界だ。

 こうなったら、最後の希望に託すしかない。

 ゆんゆん、頼む。

 この状況をどうにかしてくれ。

 そんな思いを表情と視線でゆんゆんに伝えようとすると。

 

「うん」

 

 ゆんゆんにはすぐに伝わった。

 短い返事だというのになんと心強いことか。

 流石はこれから人生を共に────。

 

 

「……………………あのーすみません」

 

「どうしたの?」

 

「さっきよりは改善されたんですけど、すごい危険な体勢なんですけど」

 

 ゆんゆんはすぐに行動に移してくれた。

 俺の腰を支えるという行動に。

 なので、ヒナ、ゆんゆん、トリスターノの順で俺を神輿のように担いで移動していることになる。

 ただ身長の問題があって、俺の頭の方がかなり低くて、足の方が高い。

 首の問題は解決されたが、危険なのは変わらなかった。

 

「ちゃんと足は持ってますから安心してください」

 

「そういう問題じゃねえんだよ」

 

「ギルドに着いたよ!」

 

 どうやらこんなアホなことをしてる間にギルドに着いたらしい。

 ようやく下ろしてもらえそうだ。

 

「僕達の分もお願いします」

 

「はい、どうぞ……え?」

 

 ギルドの受付嬢がギルドの前で何かを貸し出しているらしい。

 ヒナはそれを受け取り、俺の腹へドスリと置いた。

 

「ヒカルは何もしてないんだから、これ持って」

 

「何もしてないって表現はどうなんだ。あといい加減下ろせ」

 

「行くよ!」

 

「うん!」

「はい!」

 

 また意味の分からん状態で移動が始まってしまった。

 通り過ぎる瞬間、受付嬢と目が合った。

 随分と不思議なものを見る目でこちらを見ていた。

 訳が分からないだろうが、俺にも分からん。

 だから、その目を向けるのは先頭を爆走してるちびっ子にしてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いた!」

 

 そう言って、俺の襟を手放すヒナ。

 すると、俺の頭は地面に叩きつけられることになった。

 俺が痛みに唸っている間に俺が持っていた……いや持たされていた荷物を広げて各自に分配していた。

 

「よーしお前ら、一列に並べ。順番に引っ叩いた後に締め落としてやる」

 

「ほら、ヒカルも早く持って」

 

「ほら、じゃねえんだよこの野郎。こちとら無意味にキツイ状態で移動させられて、周りに変な目で見られてんだよ。てか何だよこれ、挙げ句の果てには労働させようってのか」

 

 ヒナから手渡されたのはツルハシとヘルメットとリュックであった。

 なんて日だ、と憤慨する間もなく。

 

「ヒカルは頭は悪いけど、力はある。それは何でだと思う?」

 

「失礼でどうしようもないやつをぶっ飛ばすためだよ」

 

「違うよ、あそこで鉱石をガンガン掘り当てるためだよ」

 

「そんなことのためにあるわけねえだろ。だいたいこんな街を出てすぐのところで……って何だよあれ!?」

 

 ヒナが指差す方には普段無いものがあった。

 山だ、山がまるで突然生えてきたかのような…………いや、待てあれは。

 

「ヒカル、先に言っておくけど余程のことが無い限り危険は無いわ」

 

「本当かよ、あれって……」

 

「はい、()()()()()です。宝島とは玄武の俗称であり、巨大な亀のモンスターです。温厚で有名ですが、身動きし始めたら撤退しなければ危険でしょうね」

 

 俺達が宝島を見上げてる間に、続々と冒険者達が俺達の横を通り過ぎて宝島へ登り始めていた。

 全員がめちゃくちゃ必死な様子を見るに、なんとなく察しはつく。

 

「宝ってことはあのモンスターの上にはさぞ珍しいもんがあるんだろうな」

 

「ご明察の通り、玄武の甲羅には希少な鉱石が山のようにありますよ。玄武は本来地中の────」

 

「そんなの後でいいでしょ! ほら、行くよ!」

 

 トリスターノがペラペラと楽しげに語り始めたところを割って入ってきたヒナは俺の背中を押し始めた。

 

「それもそうだな。掘りながら聞かせてくれ」

 

「了解しました」

 

 巨大な岩山のような背中にはロープが張られていて、そこをロッククライミングのようによじ登っていくようだ。

 ロープは割と広範囲に張られているが、来ている冒険者の数が増えてきたせいか渋滞し始めていた。

 あそこを行くのは少し面倒そうだ。

 

「ヒナ、先行け! 支援魔法頼む!」

 

「……? あ、うん、わかった!」

 

 俺はヒナ達より先に前に出てから、宝島へ背を向けて姿勢を落として手を組んだ。

 俺の意図を理解したヒナは俺達に支援魔法をかけてから、真っ直ぐと俺に向かって走り、跳んだ。

 跳んできたヒナの足が俺の組んだ両手に踏み込み、ヒナが蹴り出す瞬間に俺はぶん投げた。

 投げられたヒナは人がほとんどいない高さまで飛んでいき、ロープを掴んで岩壁に着地した。

 ヒナがそこからすぐに登り始めたのを確認してから、二人の方へ向き直って尋ねた。

 

「二人はどうする?」

 

 ゆんゆんとトリスターノが顔を見合わせると、先にゆんゆんが口を開いた。

 

「私、先に行っていい?」

 

「ええ、どうぞ」

 

 俺が提案して実際に実行しておいて言うのもなんだけど、結構めちゃくちゃなことをしてるはずなのに二人は乗り気らしい。

 飛距離的には何十メートルも飛んでるはずなんだけどな。

 まあ、ヒナに続いてこの二人もぶん投げても大丈夫だろう。

 

「じゃあ行ってくるね」

 

「気をつけろよ」

 

「うん」

 

 ゆんゆんもそんな感じでぶん投げた後。

 

「トリスターノ」

 

「なんです?」

 

「死ぬなよ」

 

「縁起でも無いこと言わないでくださいよ……」

 

 嘆息しつつも、トリスターノも同じ流れで飛んでいった。

 トリスターノは一番力強くぶん投げてやった。

 着地した先で振り返り、俺を半眼で見ている気がしたが多分気のせいだろう。

 さて、残った俺は地道に登るしかないし、さっさと登って宝島について続きを聞くことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ということなんですよ。って聞いてました?」

 

「あ? ああ、聞いてた聞いてた」

 

 玄武が十年に一度出てくる超激レアモンスターだとかなんとか。

 うるさいのが周りにいたせいで、たまに聞こえなかったから作業を優先していた。

 思いの外集中してしまったらしい。

 

「絶対聞いてませんでしたよね? あ、動かないでください。それは私が──」

 

 ツルハシを打ち付けていたら横からタコのようなぐにゃぐにゃしたモンスターが右手に纏わりついてきた。

 

「何だこいつ、邪魔だな」

 

 モンスターごと右手を岩壁に叩き付けると、タコのようなモンスターは潰れて動かなくなった。

 

「で、なんだって?」

 

「……いえ、先程のは鉱石モドキっていう周りに擬態するモンスターですよってね?」

 

 街の人総出でやらない理由はこれか。

 周りを見渡しても冒険者か実力がある人しかいないから、おかしいとは思っていた。

 

「まあ、大したことないモンスターみたいだし、気にせずやるか」

 

「ええ、そうしましょう」

 

「やるとなったら徹底的にやるぞ。掘削作業は俺が中心でやるからトリスターノはサポート頼む。たまにヒナ達の方も様子見て、ある程度鉱石が貯まったらテレポートで家に送ってくれ」

 

「了解です。頑張りましょう」

 

「ああ」

 

 ヒナがさっき言ってた通り、力仕事は俺の役割だろう。

 ヒナも自身が同じ役割だと思っているらしく、少し離れたところで掘削作業を始めている。

 気合いを入れてツルハシを振りかぶったところ、

 

「あああああああああ────ッ!! ヌルヌルする! 取って取って!!」

 

 叫び声を上げて珍客が現れた。

 先程うるさかった原因の一人であるアクアであった。

 複数の鉱石モドキにまとわりつかれているようで、もがきながらここまでやって来たみたいだ。

 

「あれ、どうします?」

 

「はぁ、俺が引き剥がすからトリスターノは作業に集中しててくれ」

 

 思わずため息が出るほどに気が進まなかったが、ゆんゆんの方とかに行かれても困るので俺が対応することにした。

 

「い、痛い痛い痛い痛い!! ちょっと! もう少し丁重に扱いなさいよ!」

 

 アクアの頭を掴んで、胸に引っ付いている鉱石モドキを引き剥がそうとしていると、そんな文句が飛んできた。

 

「文句言う余力があるなら、支援魔法寄越せ。お互いさっさと採掘に戻りたいだろ」

 

「そ、それもそうね! 任せたわよ!」

 

 金に目が眩んだアクアがそう言って支援魔法を俺にかけてきた。

 支援魔法が重ねがけされて強化された俺は鉱石モドキを握りつぶし、引きちぎり、叩き潰し、踏み潰した。

 

「あんた、思った以上にバーサーカーだったのね……」

 

「礼も言えねえのか。まあ、いいや。じゃあな」

 

 飲みの席ならともかく、こういう危険が伴う場所でアクアといるとロクなことにならないので、さっさと離れようとしたのだが、アクアは俺を呼び止めてきた。

 

「ねえ、あの子大丈夫なの?」

 

 そう言って指差すのはヒナだった。

 

「何が?」

 

「天使なんでしょ? それに『神聖』も()()()以上にあるみたいだし。ちゃんとコントロールとか出来てるの?」

 

 先程まで鉱石モドキにまとわりつかれて騒いでいたやつと同一人物とは思えない鋭さだ。

 

「エリス様も見てくれてるし、大丈夫だよ」

 

「エリス? 本当に大丈夫なの? しょうがないわね、水の女神たる私の力も貸して……」

 

「余計なことしないで、あっち行ってくれ」

 

「神の親切を余計なもの呼ばわりするんじゃないわよ、この無礼者! せっかく助けて……」

 

「採掘の時間なくなるぞ」

 

「そうだったわ! じゃあまたね!」

 

 目の色を変えた女神が走り去っていくので、適当に手を振って俺も作業に戻る。

 先程助けてやった礼はいつかちゃんと返してもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リーダー」

 

「なんだよ!? こちとら鉱石モドキがやたら出てくるせいで大変なんだよ!」

 

 少し前まではガンガン掘り進めていたのだが、なぜだか出てくる量が多くなった。

 先程の複数体に絡まれたアクアみたいなことになってもおかしくない状況だ。

 掘り進めている内にこいつらの巣でも壊してしまったのだろうか。

 

「ああ、それは多分ヒナさんが関係してます」

 

「はあ!? 何でだよ?」

 

「先程からヒナさんが鉱石モドキを殴り飛ばしたり、投げ飛ばしてるのがちょうどよくリーダーの近くに落ちてるのが見えてるので」

 

 ヒナが遭遇してる分も相手にしてたら、そりゃあ多いわけだ。

 あいつ、覚えてろよ……。

 

「そんなことより、リーダー」

 

「そんなこと、ではねえだろ」

 

「お客様です」

 

「客?」

 

 そう言って振り返ると、やつはいた。

 

「やあやあ、久しぶり」

 

「うわ……」

 

「ちょっと! 失礼なんじゃないかな! 会って一瞬で嫌そうな顔全開にするの!」

 

 嫌な顔にもなるわ。

 少し前にヒナにバブバブしてたのが記憶に新しいんだから。

 

「で、何しに来たんだよクリス?」

 

「いやぁ、ちょっとやることがあって出遅れてさ……ちょっと仲間に入れてくれない? 足は引っ張らないようにするからさ」

 

 ヒナにバブバブするヤバい女神様とはいえ、やることが山積みなのは本当なのだろう。

 それにクリスのことだから、宝島で得た物も教会や孤児院に寄付するに違いない。

 今日に関してはバブついてた女神ではなく、綺麗な盗賊クリスだ。

 

「ああ、いいぞ。向こうにヒナ達がいるから、そっちで作業してくれ」

 

「了解!」

 

 嬉しそうな顔でそう言うとクリスはヒナ達がいる方へと駆けて行った。

 

「ゆんゆん、お久しぶり! そしてヒナギク、会いたかったよおおおおおおお────うッッ!!」

 

「ッ、クリスさんお久しぶりです危なあああああああああああいッッ!!!」

 

 そんなヒナの力のこもった叫びの後、

 

「本当に危なあああああああああああいッッ!?」

 

 クリスの悲鳴と共にバガン! と岩が砕ける音が聞こえた。

 

「あ、危なすぎるよ、ヒナギク!? 今の当たったら死んじゃうからね!?」

 

「すみません、急に飛びかかって来られたのでモンスターかと思いました」

 

「ちゃんと声掛けたじゃん!?」

 

「なんか、つい……」

 

「つい、でホームランを打ちに行くフォームでツルハシを振るわないよね!?」

 

「クリスさん、あんなリンボーダンスみたいな避け方出来るんですね……」

 

 そんなやり取りが聞こえてきた俺はトリスターノと顔を合わせた。

 

「どうやら今日は騒がしくなりそうですね」

 

「まったく……トリスターノ、たまに様子見に行く時にちゃんとやってなかったら注意しといてくれ」

 

「ふふ、かしこまりました」

 

 そんな感じで宝島での掘削は夕方近くまで行われた。

 リュックにパンパンになるまで集めた鉱石を何度かテレポートで送り、ゆんゆんとトリスターノの魔力も無くなってきたので、俺達は帰宅することにした。

 その後の夕飯はまるでパーティーのようで、いつも以上に騒がしく、いつも以上に豪勢だったのは言うまでもない。

 





いち、に、ポカン!ゆんゆんは傍観を忘れて、悪ノリをおぼえた!

ヒカルを担いだのはそんな感じ。
あと、アクアの『神聖』は天界から現世に降ろされた時にかなりの制限がかかっている状態なので、ヒナよりも『神聖』は少ない。本来なら……という設定の説明。



爆焔結局二話までしか見てねえや(どうでもいい近況)

最近はSNSから離れてしまったので気付くのが遅れたのですが、どうやら『よりみち』の三巻が出るらしいですね。
あと三期は来年だとか。
やっと供給が……ウレシイウレシイ……。
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