このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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17話です。さあ、いってみよう。



17話

 

 トリスターノに伝えた後、ギルドで夕飯を食べ終わり解散した後、馬小屋に帰る途中フラフラとこちらへと向かってくる人影が。稼げない冒険者仲間だろうか。悪いが、俺もなんかしてやれることは……ってあいつは

 

「おい、ヒナギク。大丈夫か?」

 

「う…ぅ…」

 

 フラフラしながら首をこちらに向けるのも辛そうにこちらを見て絞り出すようにして言う。

 

「おなか、す、いた……」

 

「お、おい」

 

 俺を確認してから力尽きたように俺に身を預けてくる。俺はヒナギクを抱えて大急ぎでギルドへUターンした。

 

 

「ごめん、もぐもぐ、ね。森を、もぐもぐ、駆け回って、もぐもぐ、悪魔を、もぐもぐ、探して」

 

 食ってから言え。

 悪魔がいると聞いてからこの二日間寝ずに森を探索し続けたが悪魔を見つけることが出来なかった。諦めて街に戻ってきたらその時になって自分が空腹状態で限界だったことに気付き、運良く俺と出会い今に至る、と。

 

「お前な、無理して悪魔と会ったら殺されてたかもしれないだろ」

 

「えへへ、ごめんね。どうしても消してやりたくてさ」

 

 悪魔に親でも殺されたんだろうか。並々ならぬ執念だ。

 

「心配したんだぞ。しばらくは大人しくしてろ」

 

 きょとんとした表情になり、不思議そうに。

 

「心配してくれたの?」

 

「毎晩一緒に飯食ってたくせに何言ってんだお前」

 

「あ、そっか。そうだよね、ごめんね」

 

「いいから大人しくしてろ。もしかしたら悪魔討伐のクエストが出るかもしれないだろ?俺も今はクエストをなかなか受けられないし、孤児院に手伝いでもなんでも行ってやるから」

 

「ほんと!?」

 

 身を乗り出して聞いてくる。

 寝た後にまた飛び出して行くかもしれない。ヒナギクを止めるにはこれぐらい言わないと多分無理だろう。こいつのことはエリス様に頼まれてるし、なんかあったら天罰を落とされる可能性もある。

 しばらくはヒナギクに斡旋される仕事でなんとかしていく事にした。

 

 

 

 

 森が立ち入り禁止になり、数日が経った。

 相変わらず平原のクエストの取り合いで、森という稼ぎ場を失った冒険者たちは気が立ってるような状態だ。

 

 斯く言う俺も今は貧しい生活をしている。借りている馬小屋の主人の手伝いをしたり、ヒナギクに連れ回されて色々な仕事をさせられたりしている。

 まあ教会のプリーストや孤児院の子供達と仲良くなったりして、まあ悪くないかなと思いつつ夕飯を食べにギルドに着いたら懐かしい顔がいた。

 

「ミツルギ!久しぶりだな!」

 

「おお、シロガネか!久しぶりだ」

 

 異世界に来て初めて会った人物、こいつのおかげでなんとか生きていくことができた恩人だ。

 ミツルギの後ろには二人の女性がいる。パーティーも出来たんだな。なんかハーレムくさいが気にしないでおこう。

 

 ミツルギと情報交換した。

 この街に来たのはアークプリーストを仲間にしたくて来たみたいで、森の悪魔のことは知らなかったらしい。

 そして俺の能力は無いままでステータスも低く役に立てそうに無いこと、金も情けないことに返せないことを伝えた。

 

「本当に困ったね。能力が無いのは。お金の件も気にしないでくれよ」

 

「マジで申し訳ない。少しでも役に立てればよかったんだが」

 

「君が大変なのはわかるから大丈夫だって。何かあればまた言ってくれ。力になるよ」

 

 イケメンだなぁ。その分俺が情けなくてしんどくなるからやめてくれ。これ以上世話になるわけにはいかない。

 

「にしても上位悪魔が駆け出しの街に出るなんて。明日には討伐クエストが出るから、女神に選ばれし勇者のこの僕が退治してみせよう」

 

 なんか少しナルシスト入ってるけど…まあ、いいか。

 討伐クエスト?まさか。

 

「そうだよ。街の冒険者も待ってるのは我慢出来なくなったみたいでね。とうとう討伐クエストが決まって、僕も参加することにしたんだ」

 

 おお、ミツルギがいるなら何とかなるかもしれないな。

 ミツルギとは明日の準備があるからと別れた。

 

 

 さて飯を食べようという時にクリスが現れた。もしかして。

 

「……ご飯食べ終わったら教会に来て」

 

 言うだけ言ってフラフラとギルドを出て行った。疲労しきった顔で目の下には隈が出来ていた。ま、まさかずっと調べてたんじゃないだろうな。

 急いで飯を食べて、教会へ向かうことにした。

 

 

 教会へ入ると明かりはついてない、月明かりのみが辺りを照らしていた。

 俺が前へ進むと空から一筋の光が降りてくる。光が霧散するとそこには

 

 

 目に隈が出来た女神がいた。

 

 

「……」

 

「……こんばんは」

 

「えっと、こんばんは。だ、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫です。時間がかかってしまい申し訳ありません」

 

「い、いえ、そんな。もう少し休みながらで良かったんですよ?」

 

「そんなわけにはいきません。せっかくこの世界に来てくださった人に私達のせいで苦労をさせるのは神として見過ごせません」

 

 頼んだ時にもっとゆっくりでいいですよって言えばよかった。あの邪神やヒナギクに対する執着を見たせいで全然気遣うことが出来なかった。あの邪神とは違うんだな。俺の願いも叶えてくれたし、本当に良い女神なんだな。

 

 

「さて本題ですが、あなたの能力のことがわかりました」

 

 

 え?俺の能力?

 

 

「はい。実は貴方は能力をちゃんと持っていたのです」

 

 

 俺はすぐに土下座をかました。

 

 

「ええっ!?いきなりどうしたんですか!?頭を上げてください!」

 

「すみません!マジすみません!」

 

「だ、大丈夫ですから!何かよくわかりませんけど大丈夫ですから!」

 

「能力持ってないとかぬかしてすみません!」

 

「大丈夫ですから!落ち着いてください!」

 

「無能には土下座以外になんも出来ません!マジ許してください!」

 

「大丈夫です!許しますから!ヒナギクのことも頼んでますし、ほかに協力してもらいたいことがあれば声をかけるので、とりあえず頭を上げてください!」

 

 土下座でアホほど謝っておいてなんだが、能力があるなんて信じられない。なんだろう。犬に懐かれる能力とかだろうか。

 

「こほん、それでは貴方の能力についてお伝えします。この能力に関しては正直ちゃんと情報を知ってないと認識出来ないような能力でしたから貴方が能力を持っていないと思ってもおかしくありませんし、貴方に非はありません。非があるのは貴方を案内した女神ですから」

 

 その女神、最近は土木工事で生き生きしてるんだけど。というかこいつにも俺は謝らなくちゃいけないじゃないか。いや、でもそれは絶対に嫌だ。あの女神のせいで苦労したことには変わりないし。

 

「貴方の能力は『ムードメーカー』と呼ばれる能力です」

 

 む、ムードメーカー?なんじゃそりゃ。

 

「この能力は貴方の意思に関係無く貴方がただ存在するだけで仲間を強化することができます。ステータス、スキル威力など様々な能力が向上します」

 

 お、おお。そんな能力が……!

 あ!もしかしてゆんゆんが魔法撃つ時に加減ミスってたのって、まさか……。

 

「そうです。貴方の能力で強化されたからでしょうね」

 

「発動条件はお互いに仲間と認識していること。お互いに信頼していればしているほど強化ができます」

 

 ほうほう。

 

「デメリットは貴方一人では何の効果もないこと」

 

 え?デメリット??

 

「仲間しか強化出来ません。貴方自身には全く何の効果もありません」

 

 ……。

 

「そしてステータスの低下ですね。居るだけで人数に関係無く仲間を強化する能力故にデメリットもまあ、あると」

 

 俺、弱いままかよ……。

 ていうかデメリットの方が多くない?何でそんな能力が…。

 

「…この能力はかなり昔からあるのですが自身が活躍出来るような能力ではない為、転生者にも選ばれることはなくずっと埃をかぶってるような状態でもう日の目を見ることはないだろうとされていたんですが」

 

 でしょうね。

 

「アクアせんぱ……いえ、貴方がランダムに能力を選ぶように言った女神アクアは、その、何というかステータスで言う幸運が物凄く低くてですね」

 

 あっ……。

 

「女神アクアが適当に能力を選んだら、この不人気の『ムードメーカー』になったということですね」

 

 どう反応していいか分からねえ……。ちゃんと選ばなかった俺も悪いけど、あの女神も悪くないとは言えないはず。

 

「しかもその女神アクアも今ちょっと大変なことになっていて」

 

 知ってる。仕事帰りに潰れるまで酒飲んで吐いてましたよ。

 

「本来は渡した能力の管理もしているのですが、女神アクアが少し、その、違う仕事を優先させたので能力もなかなかわからなかったのです」

 

「しかもアクア先輩は能力の詳細が書かれた資料もまとめているはずなのに、それをサボって……!い、いえ、何故かこの『ムードメーカー』の資料だけ間違えて何処かに失くしてしまったので本来はもっと詳細がわかるはずなのですが、これ以上の能力の情報がわからない状態になってしまったのです」

 

 相当な苦労をしたのか、所々素が出始めている。アクア『先輩』か。俺も『先輩』には相当苦労させられた。少しだけわかる気がする。

 

「アクア先輩は今回だけじゃなくて、他にも何個も何個も私に……!」

 

 ヒートアップしてきた。止めるべきか聞いてあげるべきか、どうしよう。

 

「た、大変でしたね。その」

 

「大変なんてものじゃありません!本来日本で亡くなった方の死後の案内をするのはアクア先輩なのに、自分でサボって仕事が貯まったからって私に何件か押しつけてくるし!」

 

 落ち着くまで待とう、そうしよう。

 この女神様に苦労をさせてしまったのは俺だしな。

 

「今アクア先輩がいないせいで全部後任に仕事が渡されましたけど、アクア先輩がサボって貯めた仕事を新人が処理しきれるわけなくて!結局私に仕事が回ってきて!私には私の仕事があるんですよ!?それに!」

 

 

 

 

 

 

「そ、その、本当にすみません!私なんでこんな」

 

「い、いや本当に大丈夫ですから」

 

 先程と立場が逆転していた。

 

「うう…私、もしかして言っちゃいけない事も言ってしまったんじゃ……忘れてください」

 

「ええ、忘れますよ。安心してください」

 

 一瞬、潤んだ目で上目遣いをされてしまってエリス様に惚れかけたが、何とか耐えることができた。この女神様はいくら良い神様でもヒナギク狂いなんだ、落ち着け。

 

「ごめんなさい。その、私どこまで話しましたっけ」

 

 能力のことは聞いたので大丈夫ですよ。

 本当にお疲れ様です。

 

「ここの事は内緒ですよ?本当に内緒ですからね?」

 

 能力のことは分かったが結局俺は弱いままでしかないことが分かった。もうこのまま冒険者やめて、ヒナギクと一緒に仕事してた方がいい気がしてきた。死ぬ危険性も無いし、仲間に守ってもらうこともさせなくて済むし。

 

「さて二つ目の本題ですが」

 

 ふたつめ?

 

「ヒナギクのことです」

 

 またかぁ……。長い話を聞かされるんじゃなかろうな。

 

「個人的にはこっちの方が大事でして」

 

 おい。

 

「少し長くなりますが聞いてください」

 

 

 帰って休んでください。お願いします。

 




まあ今更ですけど爆焔3巻ですね。
え、知らない?ゆんゆん可愛いですよ。オススメです。

アクシズ教徒のプリーストも出そうかと思ったんですけど、話をややこしくするだけしてややこしくてして終わりになりそうだったのでやめました。思い付きで出るかもしれません。
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