このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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19話です。さあ、いってみよう。


19話

「……ほら、……なさ………ねえ」

 

 ……まだ眠い。どうせ今日もクエスト受けられないし、寝かせてくれ。

 

「いい加減になさい。これ以上寝るなら摘み出しますよ」

 

 目を開けるとプリーストのアンナが睨んでいた。

 

「え、なに?夜這い?」

 

「寝ぼけてなければ引っ叩いてましたよ?早く起きなさい」

 

 ん?ああ、そうか。

 結局俺は昨日ヒナギクが部屋に戻った後も心配で教会で寝泊りすることにしたんだった。

 

「ヒナギクは?」

 

「ちゃんと部屋で休んでますよ。もう起きてるでしょうから、会いに行ったらどうです?」

 

「そうか、ありがとう。朝のシャドーボクシング頑張れよ」

 

「するか!」

 

 

 

 

 ノックをすると、どうぞと返ってきたので部屋に入る。

 入ると、ヒナギクは不機嫌そうにして横になっている。

 

「よ、ボクサー。調子はどうよ?」

 

「……おはよう。今すぐヒカルを殴れるぐらいは調子良いよ」

 

「流石ボクサーだな。でも殴れるぐらいじゃまだダメだな。倒せるぐらいじゃないと」

 

「加減しなきゃ出来るもん」

 

 駄々っ子は寝てましょうね。

 顔色も悪く無いし、なんとか大丈夫そうだ。

 

「ねえ、エリス様のこと聞かせて」

 

 随分と気になってるようだ。

 

「だが断る」

 

「はあ!?僕、大人しくしてたじゃん!話が違うよ!」

 

「何言ってんだ、お前?考えておくって言ったんだぞ?あと一日休んだぐらいじゃ、どっちにしろ教えねえよ」

 

 教えたらすぐ行きそうだし。

 

「納得出来ない!」

 

 身体を起き上がらせて猛然と抗議してくる。

 しょうがないな。

 

「そうだな。お前が一番最初にエリス様に会った時に」

 

 膨れっ面がすぐに引き締まった表情になる。

 

「お前は『何を祈ってるか?』と聞かれて、それに対する答えは『早く大きくなりたい』だ」

 

 目を見開き信じられないと言った様子でこちらを見ている。

 

「僕、会ったことを家族には言ったけど、会話内容なんて誰にも言ってないのに……」

 

「そういうことだ。お前が暴れるなら俺はすぐチクるからな」

 

「なんでヒカルなんかが……」

 

 いちいちディスりやがって。こいつは心配したりバカにしたり何がしたいんだ?

 少し遅くなったが腹も減ったしギルドに行くか。ゆんゆん達に会っておきたいがまだいるだろうか。

 

「じゃあ大人しくしてろよ。また夜かヒマになったら来るから」

 

「ええっ!?まさか置いてくの!?」

 

「おう、じゃあな」

 

「い、いやいやいや、確かに納得したけどもう少し聞かせてよ!それにヒマだからニホンの話もし───」

 

 そのまま退出して、帰ろうとする俺の背中に扉越しの罵声が聞こえたが無視した。

 

 

 

 

 時刻は十時過ぎ。ギルドに着いたが、ゆんゆんやめぐみんは見当たらなかった。

 しょうがない、朝食をとって用事を済ませたらまた日本オタクの元に戻って何か話してやるか。何か話すネタはあったかと思考を巡らせていたら、トリスターノが来た。

 

「おはようございます。馬小屋にもいらっしゃらないので心配してたんですよ」

 

「おはよう、悪いな。教会にいたよ。ヒナギクが昨日暴れたりして大変だったんだ」

 

「それは大変でしたね。ところでゆんゆんさんですが」

 

 ゆんゆんはレックス達率いるパーティーと一緒に悪魔が捜索している初心者殺しを捕獲してそれを交渉材料にする作戦に出たらしく、つい先程初心者殺しの捕獲に出たらしい。

 レックス達のパーティーはこの街ではかなり名が売れているパーティーみたいで初心者殺しを捕まえるぐらいなら危険無くやれるだろうとのことだ。ゆんゆんだし、そこまで心配しなくても大丈夫だろう。

 というか初心者殺しと聞くと、あのグロテスクなシーンを思い出すんだが……。

 

「ゆんゆんさんが心配じゃないんですか?」

 

「俺じゃないんだし、大丈夫だろ」

 

「でもレックスさん達に寝取られちゃうかもですよ」

 

「お前は変な言葉使ってくるんじゃねーよ!周りに誤解されるだろうが!」

 

「もしかしてそういう趣味なんですか?」

 

「てめえ、あれだろ。昨日いじられたの根に持ってるだろ」

 

「持ってません。否定しないってことはそういうことなんですね?」

 

「絶対根に持ってるじゃねーか。あと俺はお前みたいな変な趣味は持ってない」

 

「私はノーマルです。あと根に持ってません」

 

「ノーマルの意味知ってる??変態ロリコンぼっちストーカーの意味じゃないぞ?」

 

「知ってます!それに全部違いますよ!」

 

 何を言ってるんだこいつは。これ以上無いぐらい合ってるだろう。

 飯も食い終わったし、そろそろ色々と済ませてお怒りのヒナギクのところに行くか。あまり行きたくないが。

 

「……ゆんゆんさんはいいんですか?」

 

 しつこいぞトリスターノ。ゆんゆんならきっと大丈夫だろう。

 またなんかあれば声をかけてくれとトリスターノに伝えてギルドを出た。

 

 

 

 

 洗濯やら色々なことを済ませたり、アンナに色々手伝わされたりしたせいで、もう17時過ぎになってしまった。

 今からヒナギクに会いに行くが、出来れば起きてないで寝ててほしい。そうすれば様子見て終わりに出来るし、ずっとニホンやエリス様の話で拘束されないで済む。

 

 エリス様お願いします。

 祈りながら小さめにノックをしたら、どうぞと返ってきてしまった。

 部屋に入って最初ヒナギクの顔は誰かが来て嬉しそうな顔をしていたが、俺を見た瞬間に不機嫌な顔へと早変わりした。

 人で対応変えるのは良くないと思います。

 

「元気か?」

 

「どれぐらい元気か、試してみる?」

 

 飛び掛からんばかりに睨み付けてくる。俺はそこまで悪いことをした覚えは無いんだが。

 

「はいはい、お前の暇つぶしに付き合いに来てやったよ」

 

 少し嬉しそうな顔を見せたが、すぐにそっぽを向いた。

 

「ヒカルが僕をここに閉じ込めてるんだよ。それぐらいの義務はあると思うんだけど」

 

 そんな義務はございません。大人しくしてる分にはエリス様に怒られないし。どうせエリス様のことだから、怒ってるヒナギクも可愛い、とか言ってるに違いない。

 

「今度こそ色々と聞かせてもらうよ。話してくれなかったら……僕はヒカルを殴り飛ばしてでも悪魔を滅ぼしに行く」

 

「はあ……」

 

 あまりの脳筋ぶりに俺は思わずため息をついた。

 さて、どこまで話したもんかね。

 

 

 

 

 

 

「で、男はこう言ったのさ。『お前の背負うべきもんがどれだけ大切で、お前の背負ってるはずのもんがどれだけ力を与えてくれるか、教えてやるよ』ってな」

 

「ごくり……」

 

「そして敵との一騎打ち。男はただの刀一本でその化け物と」

 

「って、ちがああああああああーーーーーーう!!!!!!」

 

 うわ、なんだこいつ。いきなり大声を出すな。

 

「なんでこのタイミングでニホンの話してんの!?エリス様の話でしょ!?」

 

「お前も聞き入ってただろ」

 

「そ、そうだけど!」

 

「それともなんだ。『妖刀 紅桜』は気にならないってのか?」

 

「ち、違うよ!それは後でじっくり聞かせてもらうけど、今はエリス様の話だよ!」

 

「しょうがねえなぁ……」

 

「もうなんでこんな調子狂わせてくるかな」

 

「じゃあ『柳生新陰流一族』の話でもするか」

 

「!そ、それは一体……!?」

 

「『柳生新陰流』それは剣術の───」

 

 

 

 

 

 

「って、違うって言ってるでしょおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉーーーーー!!!!」

 

「うわ、なんだ、いきなり」

 

「いきなりじゃないよ!!エリス様の話をしてって言ってるじゃん!」

 

「でももう少しで終わるぞ?区切り悪くない?」

 

「だ、だってそんな剣術と道場、更には女性までかけての大勝負だなんて、そんな面白い話ズルいよ!」

 

「いいの?クライマックスだよ?違う話言っちゃうよ?」

 

「うっ……でも、ぅぅ………」

 

「じゃあ、そうだな。『歌舞伎町四天王』の話をしようか」

 

「えっ!?何それ!!お父さんからも聞いたことない!」

 

「これは一つの町の話……」

 

「って!ダメだよ!危うく乗せられるところだった!!」

 

 流石に三度は通じないか。

 というかこいつは結構おばかなのかもしれない。大丈夫か。

 

「エリス様の!!話!!聞かせて!!」

 

 ヒカルでもちゃんと聞き取れるように一言ずつ大声で言いました、みたいな感じだ。

 

「聞かせてくれないなら、今度はヒカルがここに寝る番だよ!」

 

 エリス様ー、あなたの可愛いお子さんに脅迫されてまーす。

 

 そろそろ話引っ張るのは無理みたいだな。ぶっちゃけ話せない部分の方が多いし。でも暴れるヒナギクの止め方が分からなくて、エリス様のこと言っちゃったしな。よし

 

「じゃあ、そろそろ夕飯にするか、お前は何を」

 

「ガルルルーーーー!!!!」

 

「うわ、やめろ!飛びかかってくるな!動物かお前は!」

 

 

 

 

 夕飯を食べ終わり、部屋に戻ってきた。

 ヒナギクはいつもの様に二人前か三人前を平らげていたが、エリス様曰く『あれが完成された姿』らしいので、もう変わることはないらしい。

 流石に俺の口から伝えることは出来ない。というか恐ろしくて言えない。

 

「次にエリス様の話しなかったら、ここの部屋に赤い模様が付くことになるよ」

 

 怖。

 ベッドに座ってすぐに脅迫してくるヒナギク。

 

「つってもなぁ。ぶっちゃけ言えないことばっかりなんだよなぁ」

 

「なっ!?ここまで引っ張っておいて!?」

 

「エリス様に会ったりしたのはほとんど偶然みたいなもんだよ。それでついでにお前のことを頼まれたんだよ」

 

 知力が無いのでぶっちゃける事にした。

 ステータスが悪いんだ、俺は悪くない。

 

「……それでもヒカルなんかがエリス様に会えるなんて信じられないんだけど」

 

 いちいちバカにするスタイルはどうにかならないのか。

 

「だって世の中のエリス教徒達がかわいそうだもん」

 

 しょうがないだろ。この世界の人間だったら、俺は確かに見向きもされないだろうが、転生の影響で少しだけ神様と縁があるんだよ。

 

「じゃあ、その、僕のこと、その……可愛いとかなんとか言ってたのは……?」

 

「そのままだろ。小さい頃に会ってずっと可愛い信者なんだろ」

 

 赤面して心の底から嬉しそうな顔をしてる。

 そこからずっと質問攻めだ。まるで初めて会った時みたいだ。

 エリス様の変な思考とか、俺がどんな立ち位置にいるか、あと転生に関してはぼかして全部答えた。

 

「ふうん、じゃあヒカルは神の使いとか、そういう神聖な存在とかじゃないんだね?」

 

「そんなことあると思ってるのか?」

 

「億に一つもないと思ってるけど、もしそんなことがあったら僕はすごく失礼なことをしちゃってるからね」

 

 いや、そうじゃなくても失礼なんだけど。失礼でしかないんだけど。

 

「僕に言ったこと嘘じゃないよね?そのエリス様にチクるとかなんとか言ったことも出来ないくせに言ったわけじゃないよね?」

 

 それに関してはぶっちゃけ分からない。でも言えないことは言ってないし、嘘は言ってない。

 

「嘘は言ってないぞ」

 

「そっか。じゃあそろそろ」

 

 まさか行く気じゃないだろうな

 

「ニホンの話をして!」

 

 まるで子供が大好物を前にした様な笑顔だ。

 

 

 

 

「それでそれで!他には!?」

 

「んー、まだあるけど喋り疲れたんだけど」

 

「ダメ!」

 

 子供が駄々をこねてるみたいだ。そういえば俺ばっかり喋ってるけど、こいつのことはエリス様から聞いた話ばかりで全然知らない気がする。

 

「たまにはお前の話してくれよ」

 

「……え?僕の?」

 

「そうだよ。ずっと俺が喋ってるんだぞ。そのおかげでお前のことはそんな知らん」

 

「僕の話か。……つまらないと思うよ」

 

「お前のことが知りたいだけだよ。面白いとかつまらないとかどうでもいい」

 

「……ニホンの面白い話聞いた後だとあまり気が進まないけど。そうだね。どこから話せばいいとか分からないけど」

 

 そう言って、ヒナギクは語り始めた。

 

「旅に出たくて冒険者になったの。

 

 ニホンに憧れて。

 

 お父さんとお母さんの冒険話に憧れて。

 

 何回も聞いたの。お母さんの冒険者としての活躍の話」

 

 ヒナギクはいつも大人ぶって色々なことをしているが

 

「お父さんのニホンの話、多くの強敵を倒した話」

 

 今は年相応の子供に見える。

 

「どっちも僕は憧れなんだ。

 

 何回も何回も聞いたの。お父さんとお母さんが降参してもまだまだ聞きたくて。それで聞くだけじゃ満足出来なくて憧れの旅に出たの。

 

 でもね、いざアークプリーストとして活動して教会のお仕事もして、違う街を渡っても、憧れの旅をしてるのに。

 

 ずっと寂しかったんだ」

 

 ホームシックか。

 ヒナギクの歳なら、別におかしいことではない。

 

「ずっと友達らしい友達はいなかったけれど、お父さんとお母さんがいれば僕は十分だった」

 

 こいつもぼっちかよ。

 

「でも、旅に出て一人になって、自分がどれだけ狭い世界で生きてきたか分かっちゃった。外の世界がどれだけ広いかわかっちゃった」

 

 まるで子供が今日何があったかを頑張って伝えようとしてるような話し方だ。

 

「いくらアークプリーストとして色んなパーティーに引っ張り凧にされても教会とかで奉仕活動してもずっと心に穴が開いたみたいで。

 

 でもね。日替わりでパーティーを変わってクエストから帰ってきたある日、ギルドにある人がいたの」

 

 それでも聞き入ってしまっていた。

 

「その人は黒い髪に黒い目。お父さんと同じ色をした人で、その人を見た時に物凄く安心したんだ」

 

 そういえばこいつはいきなり人の手を取って、変なものを見せようとしてきたな。

 

「お父さんとは全く違う人。目と髪の色しか共通点はなくて、それでも僕は安心したんだ。

 

 話しかけたら普通に話し返してくれたの。その時僕は安心して興奮して名乗ることすら忘れてしまったけれど」

 

 話させるだけ話さして帰っていったもんな。

 

「いろんな話をしてくれた。お父さんみたいに。

 

 その後も名乗ることもしてないのに、パーティーメンバーでもないのに、友達にもなってないのに、知り合いでしかない僕にニホンの話をしてくれた。

 

 多分今でも寂しいけど、心の穴が無くなった気がする。僕はなんだか救われた気がしたんだ

 

 一緒にいることが普通になったのが嬉しかった。受け入れてくれたのが嬉しかった。パーティーを紹介してくれて、まるで同じパーティーみたいに扱ってくれるのが嬉しかった。一緒に家族みたいな時間を過ごしたのが嬉しかった。僕が酷いこと言っても、お父さんにするような態度で接しても、僕と普通に接してくれるのがすごく嬉しかった。

 

 お父さんと一番違うのは、すっごく弱いこと」

 

 やかましい。

 

「病人みたいな呪いを受けているような人みたいなステータス。僕は何かしてあげられないかなって考えたの」

 

 みんなでバカにしてくれやがって、今でも根に持ってるからな。

 

「こんなステータスの人、冒険者なんかやっちゃいけないと思ったからまずは僕の近くの教会とか孤児院とかのお仕事をやって欲しくて何個も紹介しても全然頷いてくれなくて」

 

 毎日毎日やかましかったな

 

「どうしたら頷いてくれるか分からなくて。でも冒険者なんかやってたら死んじゃうかもしれないって思ったら胸が苦しくて。

 

 そんなこと思いながら僕が色んな紹介してるのに、クリスさんにはあっさり付いて行く姿に、僕はとても腹が立ってさ」

 

 あの時怒り始めたのはそういうことか。

 別にクリスだからついて行ったんじゃない。事情があったからだ。

 

「その後に悪魔が出たって聞いて、真っ先にその人のことが頭に浮かんだの。悪魔なんかに会ったら死んじゃうから。もちろんその人だけの為じゃないけど、森をずっと探して倒そうと思った。けど、見つからなくて結局森は立ち入り禁止になった。

 

 そこからね、悪魔が現れてエリス教徒としては許せなかったけど、正直にね、その人が僕のそばにいっぱい来てくれるのがすごい嬉しかったんだ。

 

 冒険者の時よりこっちで仕事してる方が安全だし、活躍してるのに、冒険者をやることを諦めてくれなくて、挙げ句の果てには悪魔討伐のクエストまで参加してきて。

 

 その人は弱くて、悪魔は物凄く強いのに。僕がなんとかしなきゃって思ってた。でも僕はあっさりやられちゃってその時のことは全く覚えてないけど、助けてくれたのはその人で。

 

 おかしいよね。その人を守りたくて危険な目に合わせたくなくて頑張ってたはずなのに、弱いその人が助けてくれたの。

 

 弱いのに、危ない場所に踏み込んで、弱いのに……お母さんとお父さんのお話の中の人みたいで、

 

 おかしいよ。その人も、今の僕の心の中もおかしいよ。前にはこんなこと思わなかったはずなのに。正しいと思ったことはすぐに行動に移せてたのに、その人のせいで正しいと思ってるのに行動できない。おかしいよ」

 

 いやいや、と嫌がる子供みたいな仕草。

 

「悪魔のことなんかよく思ったことないはずなのに、来てよかっただなんて、おかしいよ。エリス様に顔向けできないよ。おかしくなっちゃったよ」

 

 悪いことをして叱られて泣く子供みたいな仕草。

 

「どうしよう……もう何もわからない。おかしくなっちゃった僕にはわからない。その人には冒険者をやめてほしいのに、でも冒険者を続けてほしくて」

 

 助けを求めるような子供の仕草。

 

「なんでさ」

 

 わからないことを先生に聞くような子供の目。

 

「死んじゃったらどうするの?」

 

 縋るような子供の顔。

 

「違うことを頑張ろうよ」

 

 訴えるような子供の表情。

 

「僕も一緒に頑張るから」

 

 わからないことだらけで

 それでも行動しようとして

 子供でもいいからと

 それでもその人を導こうとして微笑む姿は

 

 まるでエリス様みたいだ。

 

 

 エリス様。いや、エリス様だけじゃない、こいつの両親も随分とこいつを可愛がってきたんだろう。純粋に前を見てきた。純粋に育ってきた。純粋に愛を知ってきた。純粋に正義を考えてきた。

 純粋無垢。聞こえはいいけど、それ故に今まで知ってきたこと以外何も知らない。きっとこいつはこれからも愛と正義とかいう顔面がアンパンみたいなヒーローのような人生を辿るんだろう。

 

 では、そうだな。じゃあ俺がそれ以外に何か教えてやろう。

 

「なんで冒険者をやるかって?」

 

 答えを聞きたくて期待するように見てくる子供の様な顔。

 

 

「知らん」

 

 

 唖然とした表情。

 

「ね、ねえ?僕は真剣に」

 

「真剣にわからん」

 

「は、はあ!?だ、だったら危ないことなんかやめて」

 

「俺は色々な理由があって今ここにいる。その理由は事情があって言えない。お前に紹介してもらった仕事もなんだかんだで楽しかった。悪くないってそう思えた」

 

「じゃあ……」

 

「お前は俺に死んで欲しくないって思ったんだろ?」

 

「え?う、うん」

 

「俺もお前にそう思ってる」

 

「……」

 

「俺のパーティーメンバー達にも。俺だって多分なんか出来ることがあるさ。あいつらが俺のパーティーでいてくれる限り、俺は弱いからなんて理由で逃げたくない」

 

「……」

 

「どれだけバカにされても、どれだけ痛い目にあっても」

 

「……」

 

「お前はおかしくなってなんかない。わからない事が増えて少し混乱してるだけさ。俺も頑張るから、お前もそのわからない事から目逸らさないで、頑張って考えて答え出せ」

 

「う、うん。わか……」

 

 

 俺はきっとニヤリと意地の悪い顔で笑っていただろう。

 

 

「せいぜいもがいて、苦しめ」

 

 

 呆けてるような表情。そして数秒の沈黙。

 

「はあ!?え、今すごく良い話して、良い雰囲気だったよね!?」

 

「お前みたいな天才がもがき苦しむ様を見るのがとても楽しいぞい!」

 

「なっ!?」

 

「俺みたいなゴミな才能しか持ってない奴に完全に上から見られる気分はどうだ?下の景色はどうかね?」

 

「な、な、そ、そっちこそ!また爆発に巻き込まれたりカエルに飲み込まれたりしちゃえばいいんだ!」

 

「はあー??痛くも痒くもないなー?今更その程度の屈辱で俺がやられるわけないだろ?」

 

「どれだけ屈辱にまみれたらこんな!?」

 

「大人ぶってんじゃねえよ。わからないことも悩むことも恥じゃない。間違うこともある。間違えちまうのもおかしくない。せいぜい頑張りな」

 

「……カエルに飲み込まれたりするのは恥だと思うんだけど」

 

「意外とあったかいぜ?」

 

「そんなの知りたくない!」

 

 

 

 わーわー騒いでアンナに怒られて。

 寝るから寝れるまで手を繋いで欲しいと言われた。

 なんでだよと返したが、寝れば僕が悪魔のところに行かないし安心でしょ?と言われて渋々納得した。そして寝てるのでそろそろ離そうとしたが力が強く全く離してくれない。

 

 俺が寝れないじゃん。どうすんのこれ。というかエリス様もよく見てるって言ってたし、こんなところ見られたら俺はマジで天罰落とされるんじゃないか?

 

 面倒事は御免なんだけどなぁと思いつつ、うとうとし始めた時、部屋の扉がノックされた。あ、手がやっと自由になった。

 

「寝てまーす」

 

 問答無用で開けてくる。

 

「こんばんは」

 

 来たのはトリスターノだった。

 




ゆんゆん成分0%ですね…。
次はちゃんと出るから…。
ゆんゆん達は別行動してるからね、しょうがないね。

20話は六、七割書けてるんですけど、文字数くそ多くてわけるかもしれません。戦闘描写に更にギャグをぶち込んだおかげですね。
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