ホーストが爆散して数日が経った。
めぐみんがホーストを倒したのに報酬を受け取らないで、俺達とレックス達に押し付けて来たので二つのパーティーで分けた。
そのお金の使い道をギルドで俺達が会議しているところだ。
「それでね、私はやっぱりみんなで一緒に過ごした方がいいかなって思うの。みんなが住めるようなお部屋を借りたりして。色々と生活費も節約できるし、それに寂しくないし」
ゆんゆんが提案してくるけど、それ絶対に寂しくないの方を重点的に考えてるだろ。
「私もいいと思います。最近は馬小屋も悪くないと思ってましたが、やはり家に普通に住むのに越したことはありません」
「お前、いいのか?ハーレムなくなっちまうぞー?」
「だから違います」
トリスターノのハーレム問題は正直どうでもいいんだが、わざわざ自分の性癖を隠してまで仲間に合わせる必要はないんじゃないか?という俺のありがたい疑問を全否定してくる。
ヒナははーれむ?と首を傾げているが、どうでもいい。
「僕もいいと思います。友達と一緒に過ごすなんて初めてで面白そうだし、みんなで協力すればきっと良い生活になるよ」
ヒナもワクワクしてるのか、表情が明るい。
そして三人がキラキラした表情でこちらを見てくる。俺の意見を聞かせろって事だろう。ならば答えよう。
「俺は反対でーす」
手を上げて自分の意見を言った。
三人は先程までのキラキラした表情が消え、冷めたような目で見てくる。
なんだよ、意見聞かせろみたいな感じで見てきたくせに。
「……え、あの、それはなんで?」
ゆんゆんもこれまでの流れで断られるとは思ってなかったのか、疑問を口にしてくる。
「まずヒナと過ごすのが嫌だ」
「え……?」
「あとトリスターノも」
「ええっ!?」
「ゆんゆんは………毎日ボードゲームとか誘ってきそうだからやっぱり嫌だ」
「ええっ?べ、別にそんな毎日誘ったりしないわよ、ふ、二日に一回ぐらいだと思う」
それはほぼ毎日じゃん。
「なんで僕が一番に拒否されたのか、説明していただきたいね」
拳をポキポキと鳴らしながら俺を睨みつけてくるヒナ。
そういうところだぞお前。
「まずニホンの話ばっかりすることになるのが目に見えてるし」
「うっ……そ、それは、その」
「俺が規則正しい生活しなかったら、すげえキレてきそうだし」
「当たり前じゃん!普通だもん」
「俺には俺のリズムがあるんだよ。あと休みの日なのに色々とうるさそうだし、なんか仕事持ってきそうだし」
「休みの日なんだから、いろいろとできるじゃん!なんで!?」
「心身を休めるから休日なの!なんで休めねえんだよ!」
お互いに睨み合うのをトリスターノがまあまあとか言いながら止めてくるが、俺に引く気はない。ここで引いたら絶対にヒナの正しさを強要されるに決まってる。そんなの嫌だね。
「お前はいい加減、自分の良い子ちゃんを押し付けてくるのをやめろ」
「ヒカルはもっとちゃんとした人間になるのを目指すべきだよ!武術とかはあんなに出来るんだから、ちゃんと努力すれば出来るはずで」
いらんわ。そんなの。
見かねたゆんゆんが提案を出してくる。
「そ、そうだ!私がご飯を作るし、なんなら洗濯やお掃除も私が!」
「「それはない」」
「ないですね」
「ええっ!?」
ゆんゆんの馬鹿な提案に三人が否定する。主婦とか家政婦でも目指してるのか?やがては紅魔族の長となるもの、じゃないのか?
「もしこの四人で過ごすなら負担は均等にするべきだ」
「ヒカルも良いこと言えるんだね!僕もそう思う!」
いちいちディスるスタイルはなんなの?怒るよ?
「私もそう思います。と言ってもそこまで器用では無いのですが、そこら辺はお互いに助け合えばなんとかなるはずです」
「流石トリタン!ヒカル、見習って!」
やかましいわ。わかったわかった、見習ってやるよ。
「そうだな。俺達も男で不器用なところもあるけど、協力して生活するべきだな」
ヒナがまるで感銘を受けたような顔で俺を見て微笑んでいる。
「俺も洗濯を頑張ろう。みんなの分を。ゆんゆんの下着とかそれはもう丁寧に手で揉み洗いするよ」
三人が固まった。
「女の子の下着なんて触るのは気が引けるけど、しょうがないね。協力して生活するのなら」
ゆんゆんが顔を真っ赤にして返してくる。
「え、あ、し、下着は自分で」
「そういう訳にはいかない。みんなで協力して生活するんだからね」
「さ、最低だよ!僕、ヒカルが考え直してくれたと思ったのに!」
勝手に勘違いしたくせに何を言うか。
「男女で過ごすってのはそういうことだぞ?少し考え直した方がいいんじゃないか?」
「そ、それはヒカルが歪んでるだけで!」
歪んでるとか言うな。こいつ好き勝手言いやがって。
「まあ、あれだ。俺は馬小屋か、何処かの宿を借りることにするよ。今ので信頼をなくしただろうしな」
「そうなると私も」
トリスターノが言い始めた時、まるで覚悟を決めた戦士のような顔のゆんゆん。
「わ、わかりました」
俺達三人がゆんゆんが何をわかったのか分からなくて首を傾げる。
「私の下着もお願いします!」
「「「ええっ!!?」」」
「何言ってるのゆんゆん!ダメに決まってるでしょ!」
「そうですよ、考え直してください!」
「お前ら紅魔族は頭良いんじゃなかったのか!?馬鹿すぎるだろ!」
「だ、だって、私の下着なんかが犠牲になればみんなで過ごせるんでしょ!?」
総ツッコミを受けても、ゆんゆんは引く気がないらしい。
「お前の下着は結構な価値があると思うぞ!!?」
「ヒ、ヒカルも何言ってるの!!??最低だよ!!いつにも増して最低だよ!!」
ヒナも真っ赤になっている。
じゃああの馬鹿にどれだけやばいこと言ってるか、教えてやってくれ。
「一回落ち着きましょう!ここはギルドですから!」
その一言でゆんゆんは更に赤くなり、俯いて何も喋らなくなった。
「とりあえずアレだよ。俺は馬小屋か宿な」
「ダメ」
俺の寝泊りする場所を勝手に決めるヒナはなんなの?お母さんか何かなの?
「では、こうしましょう。男性陣は掃除、女性陣は洗濯、食事面はどちらも出来ればやる。日替わりとかで変えるようにすればみんなで均等に出来るはずです」
「流石トリタンだよ!それでいこうよ!」
ちっ、気付きやがったか。
俺もその案は少し前から思いついていたが、どうにか別で過ごしたくて言わなかった。
ゆんゆんも嬉しそうに顔を上げる。
うーん、どうしたものか。俺だけでも別がいい。ヒナに監視されて管理される生活になる未来しか見えない。
「ちなみに俺は飯作れないけど、トリスターノは?」
「私も実はそこまで……」
ダメじゃん。じゃあ
「大丈夫だよ!これから出来るようになればいいんだよ!」
うわ、ヒナの面倒くさいところが出たぞ。
「食事はみんなで作るようにしようよ!それで勉強しながらみんなが作れるようになる。それにみんなでやれば楽しいよ!」
「そ、そうね!そうしましょう!」
空気の読めない学級委員長みてえなこと言いやがって!
ゆんゆんも『みんなで』の部分ですっかり乗り気だよ。狭いキッチンだったら料理できない奴がいても邪魔なだけだぞ。
面倒さは極まってる。これは俺がどれだけ否定意見を出しても無理矢理決まるに違いない。
「……さて、俺はちょっと用事を思い出したから」
逃げよう。今の馬小屋の主人には大分世話になったから気が引けるが、俺の安全の為なら仕方ない。引越ししよう。
「待ちなさい。用事ってなに?」
それを見越したかのようにヒナが止めてくる。
「……男の子の日だよ。言わせんな恥ずかしい」
「男の子の日ってなに!?」
この後あっさり目論見がバレた俺は捕まり、そのままどんな部屋があるか不動産屋に行き、部屋を決めることになった。
その日の夜、明日の予定やら何やらをヒナに勝手に決められた俺は馬小屋へと帰ってみると、俺の布団の上に手紙が置いてあった。手紙には
『今夜エリス教会に来てください』
と書かれていた。ヒナか?いや、あいつだったら面と向かって言いにくるし。まさかエリス様?ヒナに会ったのとか言いふらしたし、怒られる可能性もあるから一番あり得る。あとはアンナとか?アンナに仕事を無理矢理手伝わされるかもしれない。
あまり気が進まなくてため息が出る。なんか面倒臭そうだ。
エリス教会に入ると、いつかのように中は暗く月明かりのみが辺りを照らしていた。
そして奥には
「こんばんは、よく来てくださいました」
光り輝く剣を持ったエリス様がいた。
「え、えーっと、こんばんは。どうされたんですか?」
怖くて扉から動かないでいると
「申し訳ありません。遠くてあまり聞こえないので、もう少し近くに来てください。具体的に言うとこの剣が届く間合いに」
………。
「………」
今日も疲れてるからな。聞き間違えちゃったかなうん。
「すみませーん!もう一回言ってもらってもいいですかー!」
「申し訳ありません!!遠くて!あまり聞こえないので!!もう少し近くに!来てください!!具体的に言うと!この剣が届く間合いに!!」
………。
「………」
よし、帰ろう。
扉を押して出ようとするが、全く扉が動かない。鍵でもかけられたのか!?
「もう、どこに行くんですか?」
エリス様が少し不機嫌そうに言ってくる。
もっとヤンデレっぽく言ってもらえませんか?出来ればデレ成分は強めでお願いします。
「今この空間は私が現界しているのを見られない為に切り取られています」
なにそれ。なに神様っぽいことしてんの?
「なのでここで何が起きたとしても誰も知り得ませんし、犯行現場を見られ、じゃない何が起こっても誰にもわかりません」
犯行現場とか言ってますけど。え、なに上手く自分の力利用して揉み消そうとしてんの?
「言う事を聞いてください。早くこちらへ」
普通に嫌です。どうしよう、この女神様。
「どうしたんですか?」
俺が聞きたいんだけど。これ以上、不機嫌にならない為にもゆっくりと近付いた。
剣が届かなそうなギリギリで止まり、今日はどうされたんですか?と聞く。
エリス様は俯き、無言のまま。
「え、えーっと……」
エリス様は俯いたまま、プルプルと震え出す。ストレスでおかしくなっちゃったか?
「……ませんよ」
「はい?」
「許しませんよ……!」
俺を睨み付け、剣を握る手に力がこもっている。
「な、何がですか?」
「同棲なんて!!許しませんよ!!!」
大声を上げて剣を構えるエリス様。
「ええっ!?何の話!?」
「何の話?しらばっくれないでください!」
「いやいやいやいや!」
「私のヒナギクと同棲なんて!絶対に許しません!!」
えぇー……。
「い、いや、エリス様、誤解です」
「何が誤解ですか!私は全部見てましたよ!興味ないフリしてヒナギクの興味を引くなんて!」
「いや、誤解でしかないわ!」
「私はシロガネさんを信じてましたのに!」
「いやいや、その信用を無くすには早いですよ!」
「手を握った事はまだ許しましょう。ですが抱き付かれたことは有罪です!私だって抱き付かれたことなんて無いのに!」
「違う私怨も混ざってるし、どこまで見てるんですか!?」
覗きが趣味の女神様怖すぎ。
「これでハッキリわかりましたね!私達が敵同士だということが!」
「何もわかってねえよ!」
御乱心してらっしゃる。
なんとか落ち着かせないと不慮の事故で死ぬことになる。
「いや、あのパーティーのみんなで暮らそうって話になっててですね?俺は止めたんですけど」
「言い訳は結構です」
剣の切っ先を俺に向ける。
「私は絶対に同棲を止めて見せます!」
「いや同棲を止めるっていうか、息の根を止めようとしてますよね!?」
「どっちも同じです!」
「同じであってたまるか!」
俺は一時間ほどブンブン剣を振り回してくるエリス様に追いかけ回された後、なんとか説得に成功した。
汗をかいたエリス様はちょっとエロかった。
ちょ、ま、待ってください!
お気に入り数が倍近くになってる!?
な、何が起こった!?
評価の色も伸びてるし!
読んでくださるだけでなくお気に入りや評価、感想本当にありがとうございます。めちゃくちゃモチベに繋がります。
頑張って書きますので是非またお読みいただけると幸いです!