エリス様に剣を振り回されて数日後、とうとう俺達の共同生活が始まった。
世話になった馬小屋の主人には既にヒナから話がされていて荷物も持ってかれるという強引な方法で俺も結局一緒にいる。
エリス様にお前と住むのは駄目だって言われたんだと説明しても全く信じてくれなかった。
トリスターノと同じ部屋は嫌だと駄々をこねたら個室になった。トリスターノにそんなツンデレぶらなくてもとか言われたがストーカーと同じ部屋で寝るとか絶対に嫌だ。
鍵はあるが、ゆんゆんとヒナは鍵を解く魔法があるし、トリスターノも変態だから変な技術を持っていてもおかしくない為、正直プライバシーが守られるか疑問だが無いよりはマシだった。
トリスターノも個室で、ヒナとゆんゆんは大きめの同じ部屋になった。お互いにぼっちで寂しがり屋だからな。
ヒナの人望もあってかなり良い部屋を紹介してもらった。日頃の行いって大事なんだな。
「ほら!朝だよ!起きて!」
鍵なんて無いと言わんばかりに部屋へ当然に入り俺の体を揺らして起こしてくる良い子ちゃんのヒナ。いや、勝手に人の部屋に入ってるし悪い子なのでは?
「みんなで朝ごはん作るんだから!」
俺のリズムは俺が守る。布団に包まり徹底抗戦したが、一分も経たない内にあっさりベッドから引きずり出された。こうなるから嫌なんだ。
朝食も終わり、ギルドへ来ていた。
掲示板の前へと行き、どんなクエストがあるか確認していた。
朝からあの邪神、いや駄目神が冒険者達に宴会芸を披露していた。何やってんだアレ。カズマが呆れ果てていたが、当然の反応だろう。
その後ダクネスとクリスがカズマ達の元へ向かっていくのが見えた。一緒にパーティーでも組むのだろうか。
今日はあまり良いクエストが無くて会議が長期化してきたあたりでカズマがクリスのパンツを取ったとかなんとか聞こえたが、何も考えないでおこう。
ヒナも加わり、全員のレベルも上がってきたということで難易度高めのクエストに挑戦しようと話が決まりかけたところで
『緊急クエスト!緊急クエスト!街の中にいる冒険者は街の正門に集まってください!繰り返します。街の中にいる冒険者の各員は、街の正門に集まってください!』
街中に響く大音量のアナウンス。こんなのあったのか。
「もうこんな時期か」
「今日のクエストはこれですね」
「そうね、みんなで頑張ろう!」
俺の周りは既に立ち上がり、やる気満々だが異常事態じゃないのか?随分落ち着いてるな。
「なあ、緊急クエストって何だ?魔王軍でも来たのか?」
「キャベツの収穫だよ!今日の晩ご飯も決まりだね」
は?何言ってんだこいつ。
三人ともいつもの何も知らない俺を見て可愛そうなものを見る目になる。
「キャベツっていうのはね?」
ゆんゆんが説明しようとしてるが、キャベツは知ってる。それが何で緊急クエストになるのかがわからんのだ、というか何故冒険者が出張らなきゃいけないんだ?
他の冒険者もみんなギルドを出て、恐らく正門に向かったのだろう。俺も同じく向かう途中、カズマと会うと同じくカズマもよくわかってなさそうな顔をしていた。仲間がいてよかった。お互いに首を傾げて正門に向かうと
「皆さん、突然のお呼び出しすみません!もう既に気付いてる方もいると思いますがキャベツです!キャベツの収穫時期がやってまいりました!キャベツ一玉の収穫につき一万エリスです!出来るだけ多くのキャベツを捕まえ、ここに納めてください!」
「「は?」」
俺とカズマの声がハモった。
説明を聞くとこの世界のキャベツは飛ぶらしい。自我を持っていて食われてたまるかとばかりに飛び、人知れぬ場所でそのまま力尽きると。それなら自分達が美味しく食べようということよ、とは駄目神の説明。
その考えはどうかと思ったが、分からんでもない。カズマは帰っていいかななんて言っていたが、一玉一万エリスはでかい。欲しい装備もあるし、ホースト戦にゆんゆんが使っていたスクロールという魔法を封じ込めておく巻物とかも気になるし、ここは頑張っておくべきだろう。
「よし、お前ら。今日は頑張るぞ」
「あれ?いつの間にかすごいやる気になってる?」
「キャベツ好きなんですか?」
「ヒカルのことだからどうせお金だと思うよ」
「何言ってんだこの野郎。世のため人のため街のためギルドのためお金のため、俺達が頑張らなくてどうするんだ?」
「ヒカル!そんなに良いことを……あれ?今お金のためって……」
「作戦を伝える」
「え、もう決まってるの?」
「本当にやる気みたいですね」
いつも俺はやる気だろうが。すこしこの世界の世間知らずなだけだ。
「ヒナ、向かってくるキャベツを全て殴り落とせ」
「う、うん。了解」
「トリスターノ、ヒナが処理し切れないキャベツを打ち落とせ。後ろに回る奴とか特にな」
「了解です、リーダー」
「ゆんゆん、俺らのフォローを頼む。一番危ないのはトリスターノだから気にしてやってくれ。」
「うん!」
「ただ張り切りすぎて魔法の威力を上げないようにな」
「わ、わかってるわよ」
「リーダーは?」
「俺か?俺は」
ニヤリと笑い、自分を指差し
「キャベツ回収係だ」
「「「……」」」
三人とも黙るが、なんだよ。必要だろうが。
「なんだよ、キャベツ無力化しながら回収できるんですかこの野郎」
「い、いや、そうだね。必要だよね」
「ヒカルがキャベツの突進当たったら死んじゃいそうだし、回収やってもらおう」
余計なことは言わんでいい。
よし、緊急クエスト開始だ!
全員無事に緊急クエストは終了した。
三人が落としたキャベツを必死こいて走って回収し、ギルドの職員が指定した場所へと持っていく作業だったが、こういう作業もたまには悪くない。良い汗もかいたし、気分は晴れやかだ。何回かキャベツの突進をくらったが支援魔法のおかげか、運が良かったのか特に問題は無かった。
「ギルドの職員さん達が言ってたんだけど、私達が一番か二番目に多くキャベツを回収したパーティーだって!」
ゆんゆんも嬉しそうだ。何回か魔法に巻き込まれそうになったけど目を瞑ろう。
「当然だよ!みんなで頑張ったんだから」
ヒナも無い胸を張って笑顔だ。ヒナが殴り飛ばしたキャベツが何回か俺の頭に飛んできたが気にしないでおこう。
「こうして連携してると私たちもパーティーらしくなってきましたね」
トリスターノはいつも以上にニコニコだ。何回か俺の頬とか頭に矢が掠めたが皆を守る為だからね、しょうがないね。
「さ、報酬もらってキャベツ食って帰ろうぜ」
ギルドに戻って今日は早めに寝るとするか。
「そういえばなんで今日はやる気満々だったの?お金に困ってるの?」
ヒナが聞いてくるけど、別に珍しいことじゃないだろ。世の中金よ。
「困ってないけど、いくらあっても困らないし、欲しい装備とかもあったしさ」
「欲しい装備?高いの?」
「わざわざ高い装備を買おうとは思わないけど、良い装備とかで俺の弱さが多少は誤魔化せるかもしれないだろ」
「『弱いからって理由で逃げたくない』は嘘じゃないんだね」
嬉しそうに微笑むヒナはちゃんとしてる時のエリス様みたいだ。
「リーダーがそんなことを?」
トリスターノが聞き、ゆんゆんも聞き入っていた。
「そうだよ。僕がね、冒険者なんかやめた方がいいって言った時にね」
え、ちょ、
「ま、待て待て。わざわざ言わなくていいだろ」
「え、なんで?ヒカル、すごく良いこと言ってたのに」
「是非聞きたいですね」
「私も聞きたい!」
おい、やめろ。恥ずかしいだろうが。
あとトリスターノが聞いたら絶対調子に乗るから聞かれたくない。
「僕がヒカルに死んで欲しくないからって」
「だから、言わんでいい!」
「どうして?」
「そんな赤面するほどのことを言ったんですか?」
「夕焼けのせいだよ!」
「聞きたいなー、ヒカルが言ったすごく良い話」
「やかましい!」
調子に乗るんじゃない、ぼっち共。
ニヤニヤするな。
「それでね」
「言うなっつーの!」
ぼっちが集まって出来たパーティー。
いろいろあるけど
まあ、楽しいからいいか。
ヒカル
良い子ちゃん達に囲まれてるせいで肩身が狭い。
良い子ちゃん達に最初は気を使ってたが、雑なところや本性が見え見え隠れ見え隠れぐらいの割合になってきた。
ゆんゆん
友達との共同生活にウッキウキ。
夜、ヒナギクと同じ部屋で寝てるのが嬉しすぎて、目が爛々と輝いてるのが眩しいと、ヒナギクに怒られた。
トリスターノ
ヒカルのツンデレなところも気に入っているが、共同部屋にしたかった。
実はゆんゆんぐらい共同生活が楽しみだった。
コイバナがしてみたい。もちろん聞く専。
ヒナギク
才能と努力の天才。
頑張ればだいたいなんでも上手くいくと思っている。
ヒカルが規則正しい生活をしないことに理解が出来ず、何度も諦めずに突っかかる。
今回はいつもと少し違う感じにしてみました。
次回のお話は少し苦手な方がいるかもしれません。
一応ギャグとしてのお話なので…。苦手だった方は申し訳ありません。
お気に入りや評価、感想本当にありがとうございます。
最近はヒマになったりしたらお気に入りとか増えてないかな?とか確認しに行ってしまいます。
今後ともよろしくお願い致します。