エリス教に入信します。
26話です。さあ、いってみよう。
孤児院での子供達の指導が終わり、ゆんゆんと帰宅する道すがら性別難解タッグがやってきた。
「やあ、二人とも」
「お疲れさま」
クリスとヒナだ。
「今日もありがとうね、ヒカル。ゆんゆんもいきなり弁当お願いしちゃってごめんね」
ヒナが嬉しそうに微笑みながら労ってくれる。ヒナが思う良い人間にしたくてしょうがないらしい。力になってやるぐらいはしてやるが更生される気はないぞ。というか更生されるほど俺はダメな人間じゃないぞ。
「どうしたんだ二人して。孤児院に行くのか?」
「違うよ。ヒナギクと話してたら君たちのパーティーで暮らしてるって聞いてね。気になるなんて言ったら今日はお夕飯にお呼ばれしたんだよ。それで君達を迎えに来たってわけさ」
なにが聞いてね、だ。覗いてたから知ってるんだろうが。
「クリスさんには是非来て欲しかったんですよ。急に呼んじゃったけど大丈夫だよね、二人とも」
「うん。大丈夫だよ」
「……ああ、問題ないよ」
問題しかないよ。剣を振り回されて追いかけられたし、正直クリスにもエリス様にもしばらく会いたくなかったが、あっさり会っちゃったよ。
「四人パーティー結成記念と引越し祝い、クリスさんも来てくれるし、今夜はパーティーにしようよ!」
そういえばそういうことは全くやってなかった。みんなぼっち故の弊害か。良い機会だな。
「ホーストの討伐報酬にキャベツの収穫報酬もあるし、問題もないだろ」
というわけで今夜はパーティーになった。
ゆんゆんとヒナが料理してくれてる間、俺とクリスは買い出しに出ている。トリスターノは用事があるらしく、パーティーには途中参加となる。
俺はクリスと二人きりとか嫌だったので、どうにか出来ないか提案したが料理ができない俺が買い出し班から外れることは無かった。
なら俺が一人で行くからと言うとクリスが私も手伝うとか言いやがったせいで結局二人で行く羽目になった。トリスターノがいないのがここまで残念に思う日はそうないだろう。
「あんなに嫌がるなんて傷付くなー。あたしのことそんなに嫌い?」
「刃物ブンブンしてきた人と二人きりになりたいと思いますか?精神構造大丈夫ですか?頭もブンブンしちゃったんですか?」
パーティーが決まったのはいいが流石に急すぎて準備が間に合わないので、今俺とクリスは近くの店で調理済みの食べ物を厳選してる。
「んー?あたしとシロガネ君は久しぶりに会ったはずなんだけどなー?」
「はいはい、そうですねー」
何しらばっくれてんだこの野郎。
「安心してよ。今日は何かしたりしないからさ」
「いや、今日以外は何かする気なんですか?もう無理だよ、一緒にいられないよコレ」
「冗談だよ。わざわざ証拠残すような事してもしょうがないじゃん。殺るなら徹底的に殺るよ」
「誰もそんな話はしてないんですよ!はあ……」
隠したいのか隠したくないのか、どっちなんだ。正直この人、いやこの神様が本当に殺る気ならすぐにでも殺れるんだろうし、気構えても無駄なんだが、二度目の死が他殺ってどうなんだマジで。
「嘘だって。今日は君達に色々と話があるからさ」
「なんすか、それ。どうせヒナのことでしょう?」
「あたし相手には敬語もさん付けもいらないってば。ヒナギク以外にもちゃんと話があるよ」
「なんだよ、珍しい。ヒナのことしか考えてないのかと思った」
「喧嘩?喧嘩売ってる?盗賊舐めてると痛い目に合うよ?あたしこれでも結構頑張ってるんだよ?」
「あんたの苦労話は知ってるけどさ。わざわざヒナのことで教会に呼び出すくせに何言ってんの?」
「あたしの苦労話知ってるなら労ってよ。だって心配なんだよ、ヒナギクは少し危なっかしいし」
「わかるけどさ」
「ってヒナギクの話は後にして。礼を言いたくてね」
「礼ってなに?剣振り回してストレス解消になりました、とかそんな感じ?」
「何の話かな。そうじゃなくて、孤児院の子供達のことだよ」
「大したことしてないし、ヒナに無理矢理やらされてるだけだよ」
「君のツンデレなんていらないよ、気持ち悪い。孤児院に行くと『ドS先生はいつ来るの?』なんてあの子達に聞かれるんだよ?無理矢理やらされてる人がそんな風に聞かれるわけないでしょ?」
「『ドS先生』って誰ですか?俺はとっても優しいので人違いですよ」
「はいはい、とりあえずありがとう。これからもよろしくね」
「行けたら行きますよ」
「それで十分だよ。あの子達をよろしくね」
ヒナギク狂いのくせに今更神様っぽいツラしやがって。ずるいぞ。
飯の厳選が終わり帰ろうと言ったら
「え、お酒は飲まないの?」
クリスは飲む気満々らしい。
「俺は飲めるけど、他が飲めてもトリスターノぐらいじゃないか?」
「ゆんゆんは?」
「い、いや、まずいだろう」
「年齢のこと気にしてるの?それなら大丈夫だよ。この世界は飲酒制限とかないから」
「え?そうなの?いや、それにしてもゆんゆんがお酒なんか飲んだら面倒なことになりそうな気がするからあまり飲ませたくないんだけど」
そう言うとクリスは何やらニヤニヤし始める。なんだよ?
「いやー随分と気にかけるんだなーって」
なんかトリスターノみたいなこと言い始めたな。
「そんなに大切なんだ?」
「あのな、飲み慣れない奴が調子乗ってカパカパ飲んだ後の介抱が一番面倒くさいの。どうせゆんゆんのことだから最初にテンション上がって飲みまくって、酔い潰れて最終的には俺に吐きかけてきたりするんだよ」
「まあまあ、今日わかることじゃないか」
「おい、飲ませる気か?やめとけって。わざわざ地雷原でソーラン節踊らなくてもいいじゃん」
「過保護だねー。そろそろあの娘もお酒がどんなものか知っておくべきだよ」
「頼むから無理矢理飲ませたりするんじゃないぞ」
「はーい」
……本当に大丈夫だろうな。
トリスターノも飲めるか分からないし、少なめに酒を買おうと言ったがクリスは足らない足らないの一点張り。果てはもしかしてお酒弱いの?情けないところ見せたくないもんね?ごめんねとか煽り始めたので、三種類の酒を一ダースずつ買って帰った。
「……ねえ、確かに買い出しを任せたけど、ここまで好きに買ってきていいなんて言ってないよ?ていうかヒカルってそんなにお酒好きだったっけ?飲んでるところ見たことないのに」
「俺じゃねえよ、クリスだよ」
「クリスさんがこんなにお酒ばっかり買うわけないでしょ!」
「まあまあ、たまには飲みたい時もあるんだよ」
「なんでお前がそっち側にいるんだよ!ヒナの前だからって良い子ぶってんじゃねえよ!」
「でも買う量を決めたのはシロガネ君だよ?」
「ほら!やっぱりヒカルじゃん!」
「ほ、ほら今日はパーティーなんだし、たまにはいいんじゃないかな」
ゆんゆんが頑張って止めようとしてるが止まらない。
「クリスが足りない足りないうるせえから買ったんだっつーの!別に今日飲みきらなくても、また違う日に楽しんだりすればいいだろ?」
「……飲み過ぎちゃダメだからね」
頑張ってるクリスを否定する気は無いが、お前の理想を押し付けるのは良くないと思う。
「酒はそこまで好きじゃねえよ。安心しな、パーティーが始まったらクリスがどれだけ良い子ぶってるかわかるから」
「別に良い子ぶってないって。今日はみんなで楽しめればいいなと思ってお酒を提案しただけだよ」
「いや全力で良い子ぶってるよね?なに良い感じにまとめた感出してるの?」
ヒナがどうしても俺のせいにしようとするのをクリスが味方し、イライラする俺を宥めようとするゆんゆん。
ゆんゆんしか味方はいないらしい。
やっぱりエリス様、ヒナのこと根に持ってるだろ。覗きが趣味の女神様はこれだから嫌だ。
リビングにみんな集まり、酒やジュースがコップに注がれる。
俺がお誕生日席みたいな位置取りで右側にゆんゆんとクリス。左側にヒナがいる。
他のみんなが俺を見て待っている。いちいち俺の方をみんな見てくるので。
「じゃあ乾杯!」
『乾杯!』
パーティーが始まった。
「さあ、ぐいぐいーッと飲んじゃいなよ」
「え、でも」
「ほら、私たちの友達になった記念のパーティーでもあるんだしさ」
「友達!?」
「そうだよ、あたし達は友達だよ!今更口に出すようなことじゃないけどさ」
「わかりました!友達ですからね!」
ゴクゴクと喉を鳴らして一気に飲み干すゆんゆん。それを見て満足げに頷いてるクリス。
「ぷはー!これとっても美味しいです!」
「でしょー?ささ、もう一杯」
「ありがとうございます!」
またゴクゴクと飲むゆんゆん。飲み干したそばから注ごうとするクリス。
「さ、もういっぱ」
「何してんだこらああああああ!!!」
「いたっ!?」
クリスの頭を引っ叩いて止めた。
「ちょっと何するのさ!」
「何するのさ、じゃねえんだよこの野郎!無理矢理飲ますなって言ったじゃん!もうダメだよこれ!酔い潰れて吐き散らかすルートだよこれ!」
「無理矢理じゃないよ!これはお互いの友情を確かめ合ってたんだよ!」
「そ、そうよ!ゆ、友情を確かめ」
「やかましいわ!どこが友情を確かめ合ってたんだよ!ゆんゆんのチョロさ加減を確かめられてただけだろうが!」
「そ、そんなこと無いわよ!ていうかチョロさ加減ってなに!?」
「お、落ち着いて二人とも!パーティーは始まったばかりなんだよ!?」
そんなわーわー騒いでる中
「ただいま戻りました」
トリスターノが帰ってきた。
こいつが帰ってきてよかったと思う日が来ようとは誰が予想しようか。
「おや、リーダーお楽しみ中でしたか?」
「やかましいんだよ。早くこっち来い。女ばっかりで肩身狭いんだよ」
「え?そんなに照れてたんだ?」
「ヒカルってそんなデリカシーあったの!?」
「本当だよ!ここ最近で一番のびっくりだよ!」
全員しばきたい。
お前らに囲まれてるのが嫌なだけなの。スケープゴートが欲しいの。
「リーダー、お待たせしました」
はいはい。スケープゴートくんお疲れ。
クリスとトリスターノが自己紹介し始める。
「トリスターノくん、よろしくね」
クリスは早速交流を始めていた。
「はい、クリスさん。よろしくお願いします」
「いやー、トリスターノ君はイケメンだね」
「いえいえ、そんな」
そんな世間話的なものから始まって、俺の方を見てニヤニヤし始めるクリス。今日は俺をからかいたいらしい。
「こんなイケメンで性格が良い人がいると、シロガネ君も大変だね」
やかましい。ガワだけは完璧だが、中身はだいぶ残念仕様だぞそいつは。
「いえいえ、私なんてそんな」
「えー、その態度は逆に失礼だよ。シロガネ君頑張らないとだね?」
「へーへー精進致しますよ。ちなみにそいつ」
酒を注ぎ足しながら話し始める。
エリス様が一番気をつけるべきは誰かを。
「なに?」
「ロリコンなんで気をつけてください」
「ちょ、なんてこと言うんですか!」
「…」
クリスは黙りこくり、真顔になる。
トリスターノが慌てて言い訳じみたことを言ってるが、クリスは完全にターゲットを決めていた。
「いや、ほんと違いますから!リーダーが勝手に」
「トリスターノ君、少し二人で飲みながら話そうか」
「ええっ!?いや、本当に違います!」
「いいから。そうだね、君の部屋で二人で飲もう。シロガネ君、トリスターノ君借りるよ」
トリスターノの首根っこを掴んで引きずっていく。片手には一升瓶サイズの酒を二本持っている。あれは一人一本か、それとも一人二本なのか。
あと、それもう返さなくていいですよ。
部屋に引きずり込まれていくトリスターノを見守った後、ゆんゆんとヒナの方を見ると、こっちもこっちで大変になっていた。ゆんゆんの顔は瞳と同じくらい真っ赤だ。
いつもの恥ずかしがってる状態なら可愛いが今回は違う。酔っぱらって真っ赤になっている。
そんな状態でまだ飲もうとしてるので、ヒナが頑張って止めているが全く聞く耳を持たないゆんゆん。
「あの、ゆんゆん。そろそろやめておいた方がいいよ。飲むにしてももう少し味わってゆっくり飲もうよ、ね?」
「なんで?こんなに美味しいのになんで?気分も良いのになんで?体もポカポカするのになんで?まだいっぱいあるのになんで?」
はい、もうダメですね。
腹一杯食ったら部屋に閉じこもろう。
飯をパクパク食い始めると
「ねえ!ヒカルも止めてよ!絶対良くない飲み方だよ!」
「ヒカル?」
ヒナが俺に声を掛けてきたら、ぐるりと首が動きこちらを凝視してくるゆんゆん。
「あー……ゆんゆん。そんな飲むと」
「なんで?」
「え?」
「なんで飲んでないの?」
目が真っ赤に光ってる。
「い、いやいや、飲んでるよ?」
コップを見せるが、コップに視線はいかない。ずっと俺の目を見てる。
「……」
数秒経つと無言のまま立ち上がり、椅子を持って右隣に来る。そのまま椅子をガタリと隣へ置き俺の隣に居座る。
「あの……」
俺が無言のゆんゆんに声を掛けたところで肩を組んできて右手でコップを俺の口に押し付けて来る。
「飲んで」
「あ、はい」
一口で飲むと満足そうに頷き、コップをヒナの方に突き出す。
あの、嫌な先輩に絡まれてる時のこと思い出すからやめてほしいんですけど。
「ヒナちゃん、注いで」
「……え?」
「注いで」
ヒナが助けを求めるように俺の方を見てきたが、ゆんゆんに肩まで組まれてる俺にどうしろと。頷いてやると、ヒナは急いで近くまで来て座り直し、注ぎ始めた。
その後また俺の口に押し付けてきた。
「飲んで」
「はい」
何回かこのやりとりが繰り返される。
「ゆんゆん、そろそろ違うやつが飲みたいな」
「どれ?」
目が真っ赤なままだ。魔法とか撃ってきたりしないよねこれ。あとちょっとおっぱい当たってるんでもう少し身を引いて欲しい。下が大変なことになっちゃうんで。
「その黄色いやつがい」
「それジュース」
目が真っ赤に光るぐらい興奮して酔っぱらってるのに、なんでその判断はつくんだよ。
結局違う酒を指定するとヒナに注ぐように突き出した。それを俺の口に押し付けるかと思いきや今度は自分が飲み始めた。
えぇ……?俺の飲みたいもの聞いたのはなんでだ…。ヒナは飲んでないのに少し顔を赤くして、お酒の瓶を持って待機してる。飲み終わると注いでもらい今度は俺の口に押し付けた。
いちいち俺は気にしないけど、これは間接キスなのでは?ゆんゆんは大丈夫なのか?
今度は交互に飲むみたいで、俺が飲み終わると注いでもらいながら、凝視しながらまた聞いてくる。
「なんで?」
「え、なんで?なんでがなんで?俺めっちゃ飲んだよ?」
「上位悪魔と戦ってる時になんで来たの?」
え、このタイミングで?
ヒナも多分同じことを思ってるだろう。
「悪魔がどれぐらい危険かわからなかったの?」
知ってるわ。ゆんゆん達は知らないけど、一回俺はホーストに会ってるし。
「二人がいたから?」
「それもある。一人じゃ多分戦いに行けなかったよ」
「他に何があるの?」
「ゆんゆんが友達だからだよ」
「……私が友達でも危ないと思うよ?」
「お前が危ないから行ったんだよ。何か力になりたかっただけだよ」
「じゃあなんで私のことパーティー抜けた扱いにしたの?」
……めちゃくちゃ圧力を感じる。
ヒナもどうしようかと周りを見てるが、何もいないし、何も無い。トリスターノとクリスは出てくる気配は無い。
「……ゆんゆんが俺を置いて行ったから」
「……」
やべ、変なこと言っちゃった。俺も飲み過ぎた、いや飲まされ過ぎたかもしれない。
「……だからって三人でパーティー組み直して、あんな仲良いアピールするのは性格悪い」
「悪かったって謝ったろ」
「そんなので許せない。あとまだ名乗るやつ教えてもらってない」
「……」
「……」
「あ、あの……落ち着こう?二人ともお酒で少しおかしくなってるだけだよ。一回離れて深呼吸しよ?」
「そういえば……」
「なんだよ」
ヒナが無理矢理話題を変えにきた。
「あの時ヒカリって名乗ってなかった?」
「あ、それ私も思ってた」
意外とゆんゆんも乗ってきたな
「俺の本名はシロガネ ヒカリなんだよ」
「なんでヒカルにしたの?何か言えない理由があるの?」
「ヒカリだと女っぽいんだよ。ガキの頃はよくそれでいじられてたから、初対面の相手にはヒカルって名乗るようにしてるんだよ」
「そうだったんだ」
「どっちで呼べばいい?」
「今更変えてもしょうがないし、ヒカルも自分の名前だと思ってるからヒカルでいいよ」
二人とも頷いてきた。
ゆんゆんはいつも人の目を見て話さないことが多いが今日はすごい凝視してくるからやりづらい。
ゆんゆんの紅い瞳が綺麗で変な気持ちになる。
「ねえ、なんでニホンから来たの?」
その質問は少し困る。死んでしまったから来たなんて言えないし。確かに転生を選んだとはいえ、自分の意思でここに来たかと言われると答えはノー。どうしたものか。
ゆんゆんもヒナも答えを黙って待っている。
「……いろいろあって」
「いろいろってなに?」
今日は聞きたいこと全部聞いてくるつもりか?
「……冒険者になりに」
「冒険者なら他でもやれるよね?」
「ここは駆け出しの街だし」
「ニホンってすごい遠いんだよね?なんでわざわざこの国の駆け出しの街にきたの?」
「それは」
「なに?」
「ゆ、ゆんゆんに会うため、さ」
ウインク付きでちょっとかっこよく言ってみた。正直この雰囲気に耐えられない弱い自分がいる。
「なんで話してくれないの?」
「え、スルーですか?いや、そうじゃ」
「ヒカルは秘密が多すぎるよ。全部話してほしいわけじゃないし、信用してないわけじゃないけど、不安だよ」
「何が不安なんだ?」
「勝手に何処か行っちゃいそうで」
「いや、そんなことは」
「悪魔と戦う前に各自で過ごそうってなった時に朝と夕方はギルドに顔出すって言ってたくせに全然来てくれなかった」
「……」
おっしゃる通りです……。俺もいろいろあったけど言い訳にならない。
「ヒナちゃんが悪魔にやられて怪我して上の空でどれだけ話しかけても何も答えてくれないし。どれだけ不安かわかる?もしかして私は何かしててパーティーを抜けたくてあんなことを言ったんじゃないかとか」
「それはないって」
「ないって思ってたけど、来てくれないから不安だったの!私はヒカルが来るまでずっと一人ぼっちで、ヒカルが来てくれて初めてのパーティーメンバーで友達で……!」
ボロボロと涙を流すゆんゆん。
酔っぱらってるのもあるけど、これは本心だろう。真摯に受け止めなきゃいけない。
「そんな人が来てくれるって言ってたのに何も言わないで来なくなっちゃうのよ?何かあったのかなって、悪魔と遭遇したんじゃないかって、私のことなんてどうでもよくなっちゃったんじゃないかって!他にもすることがあるのはわかってる。ヒカルにはヒカルの事情があるのはわかってるけど……また一人になるんじゃないかって怖かった。いろいろ考えて、考えていく度に嫌な思考になって、無理矢理会いに行こうかと思ったけど迷惑になったら嫌で……」
酒の勢いもあってか、ゆんゆんの胸にしまっていた思いは止まらなかった。
「またヒカルとクエストに行きたいから。パーティーでいたいから。その為だけじゃないけど、悪魔をどうにかしたくて、他の人達と一緒に悪魔討伐に行ったの。里の外で初めての友達に何かあったら嫌だから……。私の大事な友達だから」
ゆんゆんは俺のことをこんなに考えて、心配してくれたのに俺は自分のことばかりだった。
ゆんゆんの性格を考えれば、こうなってしまうのはわかったはずなのに。
「私はヒカルのこと大事に思ってるよ」
涙は止まらなくて、きっと今も不安なのだろう。肩を組むようだったのが今は掴みかかるような縋り付くような体勢に変わる。
ヒナも真剣に聞きいっていた。
「ヒカルは私のこと大事じゃないの?」
「俺は」
その時、ガチャリと扉が開く音がした。
見てみると、クリスが少し驚いた表情をしていたが、すぐにニヤリと笑い、俺たちの近くの席に座って待機し始めた。
「ねえ、どうなの?」
え、この状況で?
恥ずかしがるパターンじゃないの?
こんな状況で言えるわけなくない?
部屋からトリスターノがふらふらとしながら出てくる。少し青白い顔をしてるが、俺達の状況を見て察したのか、すぐに観察し始める。目が合うとウインクをしてきやがったので、後であいつの口に酒の瓶ごと突っ込んでやる。
紅い瞳が俺を捉えて離さない。
「大事じゃないの?」
まじ?
え、この感じで言うの?
面白がってるバカ共がいる状況で言うの?
恥ずかしがってサッと離れるパターンじゃないの??
「……大事に、決まってるだろ」
絞り出すようにして答えを言った。
これ以上ゆんゆんの瞳を見てられなくて目を逸らす。
クリスが拍手してくるのは本当に腹立つ。
トリスターノの頑張りましたね?みたいなツラやめろ。すぐに酔い潰させてやる。
ヒナは真っ赤だ。
ゆんゆんも聞いてから恥ずかしがってるのか俯いている。
ゆんゆんがようやく顔を上げたら
「ぅぅ、気持ち悪い……」
青白い顔をしていた。
「……え、それって俺のことが?それとも酔いが回って?」
「オロロロロロロロロロロ!!」
ゆんゆんは俺の下半身にゲロをぶちまけたのだった。
静かだったリビングが今までに無い騒ぎに包まれた。
だから言ったじゃん。
吐き散らかすルートになるって。
文字数がいつもの倍になりましたとさ。
分けることも考えましたけど、良い区切りが見当たらなかったのでやめました。
最近は見てくださる方が増えているので設定を変えて、ログインしてないユーザーの方からも感想を受け付けられるようにしました。是非感想を頂けると嬉しいです。
ちなみに悪質な感想などが多かったりして私のメンタルがブレイクした場合は設定を変える可能性がありますのでご理解のほどよろしくお願い申し上げます。