ゲロを吐き散らかされたので着替えて来たら、ゆんゆんの介抱はヒカルがやるべきだよとか言われて押し付けられた。
リビングではゲロ拭き大会が行われてるかと思いきや浄化魔法とやらで便利に片付けていた。魔法って本当すごいな。来世辺りは俺も魔法使いになりたいもんだ。
「ぅぅ…気持ち悪ぃ…」
「はいはい、水だよ」
「ぅぅ…」
ゆんゆんは先程からずっとゴミ箱を抱えて死にそうな顔をして呻いている。
水を少し飲んですぐにゴミ箱を抱え直す。
背中をさすってやる。
「…ごめんね……」
「まあ…こんな気はしてたから、別にいいよ」
ある意味予想通りだから問題無い。
いや、問題あるわ。
完全にゲロインだよ、これ。
別に可愛い女の子だろうがアイドルだろうが女神様だろうが、いや女神様はどうかわからんが、同じ人間なんだから屁もこくし、う◯こもするし、酒飲んでクソみたいな酔い方してゲロも吐くだろう。
お酒は一種のコミニュケーションツールとしても使えるんだが、これだとゆんゆんはこのツールは使用禁止、もしくはパーティーの誰かが同伴しないとダメそうだ。
この娘はどうしてこうも色々とやらかすっていうか、可能性を潰してくるっていうか。運命的なまでにぼっちになるような呪いでも受けてるんじゃないのか?
普通ならゆんゆんって女性の中で上位の存在というか、かなりの美少女だってのに環境が悪かったのか何かの問題があるのか、変な歪み方して大変なことになってる。
このくらいの女の子なら男を手玉に取るぐらいの性格の悪さになってもおかしくないと思うんだけどな。
「ぅぅ…ごめ、オロロロロロロロロロロ」
「はいはい、謝らなくていいから」
今やゆんゆんの顔は美少女というには顔面が色々なものでぐちゃぐちゃになって表現が憚れるようなことになっている。
「ごめんね…パーティーなのに…」
「気にしなくていいって言ってるだろ。パーティーなんかまたいつでも出来るだろ。まあこれに懲りたらお酒は飲み過ぎないことだ」
「…うん」
少し落ち着いて来たのか、はっきり話し始めている。
「…変なこと言ってごめん。その、言うつもりなかったんだけど…」
「別に変なことなんて言ってないだろ。俺が悪かったよ。他に気になることあれば言ってくれ」
「…いっぱいあるけど」
「お手柔らかにお願いします」
まるでヒナみたいに質問してくる。
答えられないのは正直にそう言った。
ゆんゆんも遠慮して質問してこないのは少し考えれば分かってたはずなのに、なんだかんだで一緒にいることが当たり前になってきて配慮が無くなってたのかもしれない。
「最近はなんでボードゲームやってくれないの?」
「それはアレだよ」
「どれなの?もしかして私には勝てないから」
「もう勝った相手に興味ないんだよ」
「なっ!」
「もう少しレベルを上げてから俺に」
「ねえ!絶対私に勝てないからでしょう!そうなんでしょう!?」
「もっとコミュニケーションレベルを上げてからな」
「レベルってそっち!?そ、そっちはまだ……って!そっちは関係ないでしょ!」
「関係あるよ。俺に勝ったら他にも第二、第三の」
「何がいるの!?ヒカルを倒した後に何がいるの!?」
「そのためにもコミュニケーションレベルを上げとかないとダメなんだよ。そんなんじゃ俺に勝ったところで他に勝てないぞ」
「じゃ、じゃあヒカルに勝った後にレベルを上げるから」
「まあ俺にも勝てないだろうけどな」
「じゃあやろうよ!私絶対勝てる自信あるもの!言っておくけど、ルールは守ってよ!?」
「その自信が慢心となり、敗北を生む」
「え、何その謎の発言!?それっぽいこと言って誤魔化してるだけでしょう!?」
「この高みまで這い上がってこい」
「なんで上から目線なの!?」
そんなバカみたいな話をしてるうちに、すっかり元に戻ったゆんゆん。
そんなゆんゆんに俺は少し安心した。
酔っぱらってたけど、なんとなく変わってしまった気がして、それがなんだか少しだけ寂しく感じたから。
「ゆんゆん、もう調子は大丈夫か?」
「え?うん。大丈夫」
「じゃあ戻ろう。まだパーティーやってるだろ」
扉の先からまだ声が聞こえる。三人で処理し終わって続きをしてると思う。
「…うん。そうしよっか」
歩いて扉の前まで行った時に服の裾が引かれる。どうしたんだ?また吐きそうなのか?
「また一緒に、話そうね」
「当たり前だろ」
「あ、ゆんゆん大丈夫?」
「ごめんね、あたしのせいだよ」
これに関しては本当に反省していただきたい。
「リーダーやっとお戻りに。女性に囲まれて肩身が狭かったところなんですよ」
「やかましいんだよこの野郎。お前さっき青い顔してたけど大丈夫なのか?」
「はい、私もなんとか回復してきましたよ。ではリーダー飲みましょう」
俺にコップを渡してくるトリスターノ。さあて、どう潰してやろうか。
「水やジュースもあるからね?無理しないでね?」
ヒナはもう酔っぱらい相手は御免みたいだ。
「ごめんね、みんな。せっかくのパーティーなのに」
「あーもう今からやり直すんだからいちいち謝るんじゃないよ。ほら全員飲み物あるか?」
みんな頷いてくる。
「じゃあ改めて、せーの」
『乾杯!』
この素晴らしいバカ共とパーティーを楽しめるのは幸せなのかもしれない。
「トリスターノ、お前酔っぱらってるのか酔っぱらってないのかわかりづらいからさ」
「すみません…」
今度はトリスターノが吐いた。ゆんゆんみたいにぶちまけないでゴミ箱に吐いたからまだいいんだけど。
トリスターノはいつもと表情が変わらないおかげで追い込みすぎ…いや、飲みが進んでしまったのだ。
「ねえ、だから無理しちゃダメって言ったよね?」
「そうだぞ?言っただろうが」
「いや、飲ませてたのシロガネ君だよね…」
「うっ…」
少し気持ち悪かったのを思い出したのかゆんゆんが口を押さえてた。
「そういやクリス」
「ん?なに?」
「シロガネ君だと長いだろ。名前で呼び捨てで構わないぞ」
「私もトリタンで構いません」
「…うん。わかったよ」
クリスは少し嬉しそうだった。
あ、そういえば一応言っておくか。
「クリス、もう一つあるんだけど」
「なに?」
「俺たちのパーティーに入らないか?」
『え?』
みんなが意外そうにこっちを見ていた。
「えっと、誘われるのは嬉しいけど何で?」
「なんでって、ダクネスがカズマのパーティーに入ったからお前一人のままなんじゃねえかと思ったからな」
「「「…」」」
何故か三人は黙ったまま俺を見てくる。
「…うーん、お誘いは物凄く嬉しいんだけど個人的にやるべきことがあるんだよね」
「そうか、残念」
「でもたまにお邪魔してもいいかな?」
「おう、もちろんだ」
ダクネスがカズマのパーティーに入って一人だし、どこで生きて暮らしてるのかわからないから誘ってる。
というのが表向きの勧誘理由。
本当の理由というのは、クリスとヒナを少し近くに置いて、俺への殺意を無くせないにしても多少緩和できないかと思って勧誘した。
近くで見てもらえれば俺が一緒に暮らしていても変なことしないのはすぐわかるだろうしな。
ちっ、入らなかったか…。まあ、失敗ではないだろう。
「まさかそんなお誘いが来るとは思わなかったよ」
「うちのパーティーのメンバーとも仲良いしな。あとダクネスの面倒を見ていたというのもポイント高いね」
「ダ、ダクネスは普段は良い子なんだよ?本当だよ?」
「何でダクネスさんが変な風に言われてるの?ていうかダクネスさんといつ知り合ったの?」
ヒナが不思議そうに聞いてくる。ダクネスとも交流があるのか、しかもこいつ知らないのか。
困ったのでクリスの方を見たら首を横に振ってきた。言いたくないのか…。
「少し前にクリスやダクネスとクエスト受けてな。ダクネスは不器用でなかなかモンスターに攻撃を当てられなくて、クリスがバインドしてサポートしたりしててさ。それで大変だと思ってな」
「そういうことか。変な言い方しないでよ」
これでも濁した言い方してるってのがダクネスの凄いところだ。
「「…」」
なんか他二人がめっちゃ見てくるんだけど。
「…ヒカルが勧誘するところ初めて見た」
「ええ、私もです」
「僕なんてパーティーに入ろうとしたら一回断られたんだけど」
「あれ、そうなんだ?」
「な、なんだよ。別に勧誘するぐらいいいだろ。あとヒナの時はもっと普通に入って来てくれれば断らなかったよ!」
「だ、だって入れてくれるか、わからなかったし…」
「いや、なんでそこだけ自信無さげなんだよ」
「え、僕の方からパーティーに入ったことないし…」
こいつそういえば引っ張り凧にされてて行き先には全く困ってなかったな。俺達のパーティーに入らなかったら、ずっとふらふら違うパーティーに入ってたかもしれない。
天才故の悩みだな、羨ましいね。
少し経った後、コップを持ってヒナが隣にやってきた。
なんだ?
「…その、僕もお酒飲んでみたい」
「まあ、別に反対はしないけど、いきなり殴りかかったりするなよ?」
「な!それどういう意味!?」
「ていうか何でわざわざ俺のところに来て言ったんだよ」
「…何かあったらなんとかしてくれそうだし」
「何か起こりそうならやめてほしいんだけど」
頬を膨らませ、少し怒った感じだ。
「だって、みんな飲んでるから置いてかれてるような気分なんだもん」
「別に置いてってねえよ」
そう言いながら、あまり口に合わなそうな酒を選んでヒナのコップに注ぐ。一センチぐらい。
「…ねえ、これは僕のことバカにしてるよね?」
「お試しだよ。飲めなかったらどうするんだ」
不満げな表情だが、納得したのかグイッと飲み干した。
うえーと不味さを全力でアピールしてきた。
「違うやつ飲みたい」
「もうやめとけ。しっしっ」
「違うやつ!」
ちっ、面倒臭い奴だな。
するとゆんゆんが
「ヒナちゃん、これ飲みやすいよ」
とオススメしてきた。
てめえ、何してんだああああああ!!
飲ませたくないから、あまり子供が好きじゃなさそうな奴選んだってのに!
ヒナがこれ!これ!とゆんゆんがオススメしたやつを指差してうるさいので注いだ。
もう自分で注げばよくない?あと出来れば自分の位置に戻って飲んでほしい。また吐かれたりしたら嫌なんだけど。
「これ、美味しいよ!」
そうかそうか、よかったねー。
グイグイ俺にコップを押し付けて言わなければ可愛いんだがな。
うざったいので注いだ。二センチぐらい。
「ねえ、これは確実にバカにしてるよね?」
「うるせえな、どうせお前も俺に吐いてきたりするんだろ?」
ゆんゆんが申し訳なさそうな顔をしてしまったが、ヒナを説得するためだ。仕方ない。
「コップ一杯分だけ!もうそれだけしか飲まないから!」
うるさいので三分の二入れてやると、グイグイ一気に飲んでいく。
ねえ、何でお前ら一気が普通なの?ゆっくり飲みなさいよ。
飲み終わると美味しそうに笑顔を見せる。
目がトロンとしているが大丈夫だろうか。
見てると、コップを落としそうになったのでギリギリキャッチした。
「おい、気をつけ」
注意しようとしたら、ヒナ自身も俺の太ももに倒れてきた。
「ヒナちゃん!?」
「どうしたの!?」
「おい、大丈夫か!?」
急いで起き上がらせようとしたら、顔を見ると安らかな顔をして寝息を立てていた。
え、こいつ酒弱。
というか大丈夫なのかこれ?
もう寝かせるか。こいつ良い子ちゃんだからいつも寝るの早いし。
「クリス、部屋に運んでやってくれ」
「え、何で私なんですか…?」
神様が出てきてますよ。
「私ももう大丈夫だから、私が」
「ゆんゆんはヒナの頭とかぶつけそうだからダメだ」
「それじゃあ私が運びましょうか?」
「お前は犯罪っぽいからダメだ」
「ええっ!?犯罪っぽい!?」
「ほら、クリス。頼むよ」
「は、はい!」
緊張した面持ちでヒナへと近付き、割れ物でも扱うかのような慎重さでお姫様抱っこで持ち上げた。
俺が先導して部屋まで案内する。
部屋へと入り、先程ゆんゆんが使ってなかった方のベッドへと誘導した。
クリスはゆっくりとヒナを丁寧に寝かせて、女神のような顔で布団をかけていた。
「あの、何でわざわざ私を指定したんですか?」
「さっきからエリス様が出てきてますよ」
しまった!と口を押さえてるエリス様、もといクリス。
「今日はこのベッド使っていいから、クリス泊まっていけよ」
クリスは驚愕し叫ぶ。
「い、一緒に寝ろというんですかっ!?」
「そうですけど?」
エリス様は慌てふためいている。
「い、いけません!こんなのいけません!絶対不可侵条約が!」
「なんですか、その条約」
「第二条、推しは見て愛でるものであり、お触りは原則禁止である。常識ですよっ!?」
「知るかっ!」
推しとか言ってるけど、この神様本当に大丈夫なんだろうな。いろいろと。
「で、でも」
「その条約とやらは神様だからある条約じゃないのか?」
「え、は、はい。そうですけど」
「クリスは人間じゃん」
はっ!と気付いたような顔のエリ、いやクリス。
「人間のクリスが付き添いで寝るぐらい何もおかしくないだろ?」
「確かに…い、いや、な、何が目的ですか!?」
まるで俺が悪いこと考えてるような言い方をするエリス様。
「いや、別にクリスがヒナのこと大好きだから、良い思いをさせてやろうかと」
「う、嘘です!絶対に何か企んでます!貴方の企みに乗るほど、女神は」
「とか言いながらもうベッドに入ってるじゃないですか」
「し、しまった!い、いつの間にぃ!」
いや、いつの間にって条約がどうとか言いながら入り込んでましたけど。
「くっ!なんて姑息な…!」
えぇ…。
「ですが、この状態に気付けば私も対処が出来るというもの。すぐに戻っ…!?」
「…」
「なっ!何故戻れない!くっ!私に何をしたんですかっ!?」
「あの、抱き付きながら大声で話すと起きちゃうかもなんで、もう少し静かにお願いします」
「あ、すみません」
先程までの威勢は無くなり、ヒソヒソ声で謝るクリス。
「じゃあ俺はパーティーに戻るんで、ごゆっくり」
「へ…?」
間抜けな声が聞こえたが忘れよう。
部屋を出ようとしたら
「ま、待ってください!ほ、本当に何を企んでるんですか!?」
「ここに来る前に苦労してるのを労ってくれって言ってたじゃないですか?」
「え?はい」
「これは日頃頑張ってることへのご褒美ってヤツです」
「…」
開いた口が塞がらないとはこのことか。
「二人にはクリスが付き添いしてくれてるって言うので大丈夫ですから」
「え、ちょ、ま、待って!待ってください!二人きりはまずいです!非常にまずいですよ!」
「何がまずいんですか?」
「だって私、シャワーも浴びてませんし…」
「ヒナも浴びてないのでお互い様ですよ」
「それにまだ問題があります!」
そろそろ二人に怪しまれるからやめてほしいんだけど。
「だ、だって、こんな、スンスン、状態、スンスンはあー、になったら、スンスン、何をしちゃうか、スンスン」
匂いをかぎながら話すのにムカついたので、俺は部屋を出た。
「ヒナちゃん大丈夫そう?」
「随分と時間かかりましたね」
二人が話しかけて来たので、クリスが付き添いをすると言い出したので、俺がお客さんにそんなの任せられない、というやりとりで少し揉めたと言っておいたら二人は納得した。
「クリスが俺にパーティーを楽しんでほしいとうるさくてな。ヒナとの付き合いも長いし、任せて来たよ」
「なるほど」
「そっか、でも少なくなっちゃったね」
少し寂しそうなゆんゆんとトリスターノ。
「まあまた何かあったらパーティーをやろう。今度は最後まで全員でな」
「そうですね」
「うん」
幸せそうに微笑むゆんゆんを見て少し
いや、なんでもない。
「まあ、あれだ。最初はこの三人だしな」
「ヒナさんは結構夕飯にはいつも一緒にいたので全然そんな気がしないですけどね」
「そうだね。ずっと四人でいた気がする。えへへ」
「三人で楽しもうや。酒なんか飲まなくても、テキトーに飯つまんでジュース飲んで」
嬉しそうな二人とパーティーの続きをする。
騒々しいパーティーがささやかなものに変わってしまったけれど、このパーティーは楽しくて幸せなものだった。
28話全然書けないので、投稿遅れます。多分。
このファンでちゅんちゅん丸作ったんですけど、強化石の要求エグすぎる。
今やってるウィズのイベントで集めろってことだな…。