このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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28話です。さあ、いってみよう。



28話

 パーティーの翌朝。

 

 身体が揺れる感覚で目が少しずつ覚めていく。鬱陶しい。

 

「起きて。起きてってば」

 

「今日は休みって言っただろうが。昨日は夜遅くまでパーチーしたんだから、寝かせてくれ」

 

「ごめんね。一回起きてよ」

 

 いつもの強引なアレがない。

 眠いけど、頑張って目を開けるとクリスがいた。

 

「なんだ、クリスか。昨日はお楽しみでしたね」

 

「え、ちょ、しーっ!」

 

 慌ててるけど、今更でしょ。

 その後ガチャリと扉が開く音がして

 

「やっぱり起きないですよね!クリスさん、僕に任せてください!」

 

 ゲェー。ヒナの声が聞こえた。

 

「い、いや、ちょっと話したいことがあっただけだから」

 

「僕もちょっと言いたいことがあるんです!僕も悪かったですけど、いきなりクリスさんと寝てるなんてびっくりしましたし!」

 

 顔を布団から出して抗議する。

 

「じゃあ何か?お客さんをソファーで寝かせろってえのかい?」

 

「あたしは別にそれでも」

 

「そ、そうじゃなくて他にも何かあったと思うんだけど!」

 

「他に何があるんだ?ゆんゆんと一緒に寝かせるか?ゆんゆんにはまだハードル高いと思うぞ?それとも俺とゆんゆんが寝て、俺のベッドをクリスに貸すか?」

 

「それはおかしいでしょ!!」

 

 お怒りだ。

 

「じゃあなんだ?俺かトリスターノと寝るって?」

 

「うぅ…違うけどぉ…」

 

 YOU LOSE!!

 俺の勝ち。それで勝てると思ってるんやったら、俺がずっと勝ちますよ。ほな、おやすみ。

 

 野郎と寝ろって?絶対に嫌だ。

 

 この大きな子供に久しぶりに勝ったという悲しい現実には目を瞑り、夢の世界へさよならバイバイ。俺は枕と旅に出る。

 

「あ、ちょっとまだ寝ないでよ!クリスさんが話があるっていうから、聞いてから寝て!」

 

 なんだよこの野郎。お礼なら後日聞くから、寝かせてくれ。

 顔を出してクリスの方を見ると起きたのを確認したのか、ヒナは出て行った。

 

「その、昨日はいろいろとありがとうございました」

 

 え、神様モードなの?

 

 流石にその状態だと起き上がらないと失礼なので、ベッドに正座する。

 

「い、いえ、足は崩してください。そのお礼言いたかっただけですから」

 

「神様相手にそれはちょっと」

 

「その眠そうな目と寝癖付いた頭でそれはちょっと」

 

 してやったり顔をして反撃してくる。

 そんな可愛い顔しないでくれ。あんたはヒナギク狂いの変態女神だろ。

 言われた通り、足を崩してあぐらになる。

 言われた通りにしたのを満足そうにして笑うクリス。

 

「昨日はありがとうございました。迷惑をかけたにも関わらず、一緒に楽しんでくれて」

 

「なんだ、そっちですか」

 

「い、いえ、その何というかヒナギクの事もお礼を言いたかったのですが、もう少しで女神をやめそうになったので」

 

 ナニしようとしたんだ、この変態女神。

 

「女神をやめたら、ヒナギクと二人で貴方に責任を取ってもらおうとか考えていたのですが、私は誘惑に勝ちました」

 

 絶対に嫌だ。

 なんて事考えるんだ。

 

「クリスのことをパーティーに誘ってくれたのも嬉しかったです。何か企んでたかもしれませんが」

 

 変なところで勘がいいのやめてくれないかな。

 

「その…本当にまた来てもいいんですか?」

 

「良いに決まってるじゃないですか」

 

「また迷惑をかけるかもしれませんよ?」

 

「良い子ちゃんばかりで、トラブルメーカーがいないなと思ってたところなんで」

 

 嬉しそうに微笑むクリス。

 

「では、また来ちゃいますよ?」

 

「どうぞ」

 

 真剣な顔になり話を切り出してくる。

 

「クリスは少しの間、違う街で活動することになります。私自身も仕事で忙しくなります。他に何か私にありますか?」

 

「そうですね…」

 

「ないなら無いで」

 

「パーティーに入るの待ってますよ」

 

 驚いた顔で固まり、また嬉しそうに微笑んだ。

 

「ふふふ、期待しないで待っててください」

 

「わかりました」

 

「では、私は失礼します」

 

 ニヤリと笑いそうになるのを必死に堪える。

 俺の目論見は完全に成功した。

 これで俺は絶対にこの変態に殺されることは無いだろう。

 

 部屋を出て行くクリスを見守り、寝ようかと思って横になったが

 

「目ェ覚めちまった…」

 

 起きることにした。

 生活リズム崩すのも良くないしな。

 

 

 

 

 

 

 着替えてリビングに出ると、いるのはトリスターノだけだった。

 

「おや、おはようございます。そのまま寝そうだから邪魔しないであげてと言われてましたのに」

 

「おはよう。クリスと話してたら目覚めちまったんだよ」

 

 机やキッチンを見るときれいに片付いている。

 

「おい、片付けは全員でやるって言ったろ。俺がやる分残しておいてくれよ」

 

「ヒナさんが一番最初に起きた時にやってしまったみたいです」

 

 そういうことか。あいつならやりそうだ。

 

「今日のご予定は?」

 

 トリスターノに聞かれるが、んなもん無いと答えると、ですよねと言ったからコイツも今日は何も無いのだろう。

 

「あの二人は?」

 

「ヒナさんは多分奉仕活動でしょう。夕方には帰ると言ってました。ゆんゆんさんは用事があると言って急いで出て行きました。帰る時間等は聞いてません」

 

「ゆんゆんが用事?珍しいな」

 

「珍しいですよね。まあ急いで出て行った理由は大方わかりますが」

 

 そうなのか?俺にはよくわからんが。

 まあ、なんでもかんでも俺が見てやるわけにはいかないからな。可愛い子には旅をさせよと言うし、ゆんゆんに旅をさせるのもいいだろう。

 

「そういえば聞きましたか?」

 

「なにをだ?」

 

「魔王軍幹部のベルディアがこの街近くの廃城を占拠しているらしいです」

 

 は?

 

「どんな目的があるかはわかりませんが、その影響で弱いモンスターも隠れてしまい、ギルドには高難易度のクエストしかないみたいです」

 

「マジか?」

 

「マジです。私たちも少しクエストを受けるのは控えた方がいいかもしれません」

 

 一応金はあるからホーストの時ほど困らないが、どうしたものか。

 困った顔をした俺を見たのか

 

「それとも私達が退治しに行きますか?」

 

 なんて冗談を言ってくる。

 

「行くわけないだろ。俺達は確かにホースト討伐をなんとか出来たが、ホーストの時はすでに戦う前から弱ってたって話だぞ」

 

「じゃないと私達が上位悪魔と勝負できるわけがないですからね」

 

 わかってるなら言うな。

 そういえばあのホーストをあそこまで追い込んだのは誰だったんだろう。ミツルギもやられてたし、あんなことできる人間なんていないはずなんだが。

 

「でも魔王軍幹部のベルディアは勇者殺しとさえ呼ばれる強者ですがその分報酬は莫大です。確か三億エリスほどでしたかね」

 

「さんおくっ!?」

 

「ええ、やる気出ちゃいました?」

 

「…まだ死にたくないね」

 

 自分の実力なら自分が一番わかってる。

 俺の「ムードメーカー」は味方を強くするが、自分には全く効果がない他力本願の極みのような能力だ。

 いくらパーティーメンバーの実力があっても限度があるだろう。

 今まで倒されてきてないんだ。魔王軍幹部だって、どうせおかしな能力とか持ってるに違いない。

 

「というわけで暇つぶしに手頃なクエストを受けるなんて選択肢もないわけです。どうしましょうか」

 

 そういえば

 

「お前の知り合いじゃないのか?その幹部は」

 

「全く知りません。近くに来たのも私のせいとかではないですからね?」

 

「そこまで言ってないだろ」

 

「言われる前にってやつですよ。で、今日はどうしますか?」

 

「あーアレだぞ。警察のお世話にならなければ趣味に行って来ても」

 

「違います!というかお客さんに言わないでくださいよ!昨日クリスさんに殺されるかと思いましたよ!」

 

「あそこまで大変なことになるとは思ってなかった。悪いな。でも仲良くなれただろ?」

 

「いや、出来ればもっと穏便に仲良くなりたかったんですがっ!」

 

「ほら、アレだよ。こう喧嘩して芽生える友情とかあるだろ?」

 

「いや、喧嘩っていうか普通に殺しに来てましたよ!」

 

「クリスはあれでヤンチャなところがあるからな」

 

「いやいや、ヤンチャで済みませんよ!獲物を狩る目で見て来てましたよ!?」

 

「それはお前の勘違いだよ。もしかしたらお前のことが好きなのかもしれない」

 

「そんなわけないでしょう!?」

 

「その獲物を狩る目っていうのも、こう精神的に仕留めてやるって感じだよ」

 

「どこまでポジティブなんですか!?物理的に仕留めてやるって感じでしたよ!」

 

「わかったわかった。今度からは身内でしか使わないよ」

 

「いや、身内でもやめてほしいんですけど…」

 

 ふっ、いつも余裕そうにこちらを眺めて来ていたからな。少しだけ痛い目にあってもらっただけよ。恨むなら自分の性癖を恨みな。

 

「今日は街を少しぶらぶらするかな」

 

「行きたいところでもあるんですか?」

 

「本屋とかないか?」

 

「…ありますけど、リーダーが本屋ですか?」

 

「なんだこの野郎。バカにしてんのか」

 

「い、いえ、意外だったので。行きますか?案内しますよ?」

 

「またお前らに無知をバカにされないように勉強したいんだよ」

 

「なるほど」

 

 

 

 

 本を五冊ほど購入した。

 「暴れん坊ロード」とかいう確実にパクリの本もあって気になったが買うのはやめた。

 

「さて、デートの続きはどうしましょうか?」

 

「帰る」

 

「即断!?いや、冗談ですよ!」

 

 野郎からデートとか言われても即帰るっつーの。

 

 帰りに懐かしの悲劇のカフェに来て、本を読みながら雑談してのんびり過ごしている。

 

 魔王軍がどうだこうだとこの世界に送られたのに、なんとも平和だ。

 ここまでのんびりする日は初めてかもしれない。

 

 一冊読み終わってしまったので、ふと道の方を見てみると、めぐみんを背負ったカズマとゆんゆんがいた。

 用事はめぐみんとカズマだったか。

 まあまだ交友関係は狭いからな。あんなものか。

 カズマはあれでコミュ力は高めで面倒見が良いから更に友達が増えるといいんだが。

 

「声かけに行かないんですか?」

 

「なんでわざわざ行くんだよ」

 

「寝取られちゃいますよ?」

 

「お前の性癖をどうこう言うつもりはないが、外で変なこと言うんじゃないよ」

 

「性癖じゃありませんし、シロガネさんもお客さんの前で言いましたよね?」

 

「なに根に持ってんだこの野郎」

 

「根に持ちますよ…」

 

 こんな雑談をしつつ、トリスターノがそういえばと何かを思い出したかのように言ってくる。

 

「シロガネさん、もし言いたくなければ言わなくても構いません」

 

「じゃあ言わない」

 

「せめて聞いてからにしてください!」

 

 こほん、と咳をして仕切り直してくる。

 

「貴方は何か変な能力を持っていますね?」

 

 変な能力?

 

「何故こう思ったか、それは貴方とクエストに出るとみんな口を揃えてこう言うんです」

 

「調子が良い、と」

 

「かくいう私も貴方とパーティーを組んで以来、狙ったところを外したことはありません」

 

「すごいじゃないか」

 

「ええ、すごいんですよ。何か理由がなければおかしいぐらいに」

 

「で?なんで俺が変な能力とか言われるんだ?」

 

「一度検証してみました。貴方無しで私とヒナさんでクエストに行って」

 

「ゆんゆんをハブるんじゃないよ」

 

「い、いえ、そういう意味ではなく。その検証に出た日というのが貴方が孤児院で指導員をしていた日です。彼女も貴方の弁当を作っていました」

 

 何をしてるのかと思ったら、そんなことを。

 

「中級魔法で凄まじい火力を出してますが魔法使いのエキスパートである紅魔族ですからね。もしかしたら誤差の範囲にしか感じないかもしれないというのも理由の一つです」

 

「クエスト自体は何の問題も無く終わりました。ですが私は一回狙った場所とは違う場所へ矢を当てました」

 

 当てたのかよ。てか一回だけかよ。

 

「これは貴方と組んで以来無かったことです。少し悔しいですね。私は弓に関してはかなりの自信がありましたから。パーティーを組んで調子に乗っていたから外さないものだと思っていましたが、どうやら間違っていたみたいですね」

 

「ヒナさんも支援魔法がいつもより効き目が薄いと言っていました」

 

「二人だけだから心細かったんじゃねーの?」

 

「いえいえ、ただのカエル相手ですからね。そんなことは思いません」

 

「だからって俺の能力とか」

 

「ニホンという地名は貴方達に聞くまで聞いたことありませんでしたが、一つ聞いたことがあります。黒い髪に黒い目の変わった名前の人間は強力なスキルや武器の類を持っていると。実際にヒナさんの父親はニホン生まれの黒髪に黒い目で名前が変わっている。それに凄まじい武器を持っていたと」

 

「貴方と一致していますね?」

 

 そんな良いものではないけど。

 

「それに貴方は女神エリスと面識があるとか」

 

 あっさりバラしたな、あいつ。

 

「ですが貴方は天の使い等でもないと」

 

「では貴方は何者なんでしょうね?」

 

 スクラップにされて、女神の転生という言葉に浮かれて知識無しの異世界に放り込まれた、ただの間抜けだよ。

 

「こういった要素一つ一つが結び付き、私とヒナさんは確信しました。シロガネさんには何かあると」

 

「ここからは何かしらの能力がある前提でお話しします」

 

「貴方は不自然なまでに弱いのです。いつだったか言った通りまるで呪いをかけられているような、もしくは病人のような弱さ。これに関しては憶測でしかありませんが、この弱さは貴方の能力のデメリットなのではないでしょうか?」

 

「弱くて悪かったな」

 

「ふふふ、拗ねないでください」

 

 イケメンスマイルとウインクを俺に向けるな。これだからイケメンは。

 

「ヒナさんの支援魔法で戦えるようになっていますが、レベルが上がっていても貴方自身はほとんど変わってないのです」

 

「貴方の能力は自分自身を犠牲にして仲間を強くするものではないですか?」

 

「そんな高尚なものではないがな。はい、よく出来ました」

 

 拍子抜けしたような顔になってまたいつものイケメンスマイルになる。

 

「えっと、秘密にしてたんじゃ…」

 

「いや、別に?」

 

「…もしかして私の考察が完璧過ぎてムカついたとかそんな」

 

「それは確かにイラッとしたけど、俺の能力を秘密にした覚えはないぞ」

 

「何故言わなかったんです?」

 

「お前たちが調子良いのは俺のおかげだって言って信じるのか?」

 

「…まあ、それはそうですけど」

 

「まあ、あれだな。お前が言い当てたことだし、夕飯にみんなが集まったら能力の話でもするか」

 

「結構軽い感じなんですね」

 

「秘密にしてないからな」

 

「ぶっちゃけこの能力のことがわかったのはホーストのせいで森が立ち入り禁止になって少し経ってからだしな」

 

「それまで知らなかったんですか!?」

 

 信じられないみたいな顔で見てくる。

 

「…貴方は本当に変な人ですね」

 

 お前に言われたくない。

 

 

「あのー」

 

 声がした方を見ると、店員さんがこちらを見ていた。

 

「当店はカップル割というものが」

 

 おい。

 

「私達はもちろんカップルです」

 

 

 何回やんだよ!!このオチ!!

 




誰得回ですね。
今回かなり急ピッチで書いたので変なところあったらすみません。

次次回あたりで二章としてのお話が進むように…なるといいな(願望)

このファンでダクネスが活躍する日は来るのだろうか…。
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