29話です。さあ、いってみよう。
俺はあっさり自分の能力のことを仲間達にバラした。別に秘密にするつもりも無いし。
ゆんゆんもヒナも随分と驚いていた。
実はゆんゆんも俺に何かしらあることに気付いていたらしい。
ホースト戦の前、別行動した時に自分の魔法の威力が落ちていることに気付き、最初は気のせいかと思っていたが、ホースト戦に俺達が来たことにより魔法の威力が戻り、確信に変わったと語った。
それでも何かの魔道具の類を持っているんじゃないかと思っていたらしい。
ヒナはここまであっさり話す俺が逆に信じられないみたいで疑いの目を向けていた。
失礼なと思ったが、エリス様のこととかで話してないことが多いからだろう。
トリスターノからはこの能力のことは他のパーティーとかには言わない方がいいと言われた。どこぞの研究に使われかねないとかなんとか。俺も別に言いふらす気も無いし、了承した。
このまま違う世界から来たこととか言ってしまおうかと思ったが、頭がおかしいとか思われるのは流石に嫌だったのでやめた。
しかもこの話をするとヒナの夢を壊すことになるしな。いつかは言わなきゃいけないけど、まだその時ではない…と思う。
そんなことがあった翌朝。
俺は特別指導を行なっていた。
「お、おひかえなすって」
「気合が足らないぞー。そんなんじゃ今日中にポーズまで行けないぞ」
「ええっ、ポーズから教えてほしいんだけど」
ゆんゆんの名乗り上げの特別指導だ。
正直この名乗り上げなんてもうやる気はさらさら無いが、ゆんゆんの嫉妬というか仲間意識が凄まじく高いため、特別指導に至った。
俺も子供達の指導員として活動している以上、教えることに関して妥協する気は無い。
多少スパルタでもビシビシ行く。
「馬鹿野郎!基本が出来てないのに、ポーズが出来るか!」
「ええっ!?思ったより厳しい!?」
「しかも声出しなんて基本のきでしかないぞ!」
「う、うん。その熱心に教えてくれるのはすごく嬉しいんだけどね。いつも通りのヒカルの感じで」
「俺のことはコーチと呼びなさい、コーチと!」
「は、はい!コーチ!」
ゆんゆんもやっとやる気になったみたいだ。
「よし!もう一回だ!」
「はい!コーチ!おひかえなすって!」
「まだだ!」
「おひかえなすって!!」
「まだまだ!」
「おひかえなすって!!!」
「うるさーい!!」
「ええっ!!?」
うるさいと言ったのはもちろん俺ではない。
孤児院の施設の窓から身を乗り出さんばかりにバチバチにブチ切れたプリーストのアンナがこちらを睨みつけていた。
そう、俺達がいるのは子供達の指導に使っていた孤児院の隣の空き地スペース。
そして隣の施設では絶賛授業中だ。
「なんだよこの野郎。怒鳴ってるお前の方がうるさいぞ」
「やかましい!うるさいのよ!授業中にお控えなんとか、お控えなんとかって!!」
「す、すみません!すみません!」
ブチ切れてるアンナにヘコヘコと頭を下げるゆんゆん。
「い、いいのよ、ゆんゆんさん。悪いのはそこの男だから!」
「うるさいってお前、ここ借りるって言っただろうが」
「貸してもいいけど、静かにやりなさいよ!子供達が集中出来ないのよ!」
「まだ基本も出来てないからな、断る」
「断るな!あんたらがやってるのってヒナがドヤ顔でやってたポーズでしょ!?ポーズからやりなさいよ!」
「あ、あの声出しからやっていくのが」
「しょうがない。ポーズからやるか」
「基本みたいなのでって、ええっ!?」
「とにかく静かにやりなさいよ!」
ふん!と勢いよく窓を閉めるアンナを見てから
「じゃあ基本が出来てないけど、ポーズの練習に入る」
「え、いいの?」
「アンナがうるさいからな。臨機応変に対応していこう」
「うん…。もうツッコミはいいや…」
「じゃあポーズの基本に入る!」
「はい!コーチ!」
「では、まず走り込み」
「待って!?絶対おかしい!おかしいよ!」
ツッコミはいいと言っていたくせにすぐツッコミ入れにくるじゃないか。
「何がおかしいというのかね?」
「だ、だってあのポーズするのになんで走り込みなんてするの!?」
「馬鹿野郎、あのポーズを思い出してみろ」
「え?う、うん」
「あのポーズは中腰になるだろう?」
「そうだけど」
「ということは立派な足腰がなければ、する資格すら無いということ」
「い、いや、待って!私、そこまで足腰弱く無いし、なんならヒカルよりもつよ」
「では、やってみたまえ」
「え?いいの?」
と言いながら何時ぞやのあまりお見せできないような情けないガニ股姿になる。
「どう?出来てる?」
「点数で言うと32点ぐらい」
「32!?中途半端だし、全然出来てない!?」
「左足はそのままにして右足を少し前に出したまえ」
「こ、こう?」
一回立ち上がってから、ポーズを取り直す。
「中腰のままでやりなさい」
「え?」
「俺が今から指示するから中腰のまま動かしなさい」
「え、あ…もしかして怒ってる?私が」
「重心は真ん中だ。左に寄るんじゃない」
「うぅ…絶対怒ってる…足腰のことで絶対怒ってる…」
「何か?」
「ご、ごめんね。その、バカにしたつもりは」
「重心は真ん中に置いて、だが身体は右側へ倒すのだ、さあやってみなさい」
「聞いてよぉ!」
「うぅ…足が…」
「どうした?」
まるで生まれたての子鹿だ。どうしたんだろう。
「謝ったのに…」
「厳しく教えると朝に言っただろ?」
「絶対違う理由で厳しくしてた!」
近頃の若い娘はこれだから。お望み通り基本を飛ばして教えたというのに、すぐ文句を言う。
「さて前から見てきたが今度は横側や後ろから確認して指示を出す」
「え!?まだやるの!?」
「今のそのポーズが誰かに見せられるものだと言うのならそれで構わないが」
「や、やります!やりますし、謝るので優しく教えてください!」
「仕方ないのう…」
「くっ…我慢、我慢よ私…!」
今の煽りに耐えるとは…今日の特別指導の成果と言ったところか。
「ではポーズをとってみなさい。わしが見るからの」
「な、なんでその喋り方なの…?優しくって言ったから…?」
変なものを見る目で俺を見ながらポーズをとるゆんゆん。
少し様になってきた。65いや、70点はあげてもいいかもしれない。
そう考えながら後ろへと移り、良くないところがないか確認する。
そして良くないところはすぐに見つかった。
スカートがとても短いところだ。
まったくけしからん。
これだから若い娘は。こんなの見てくださいお願いしますなんでもしますから、と言っているようなものだ。
ふむ…。
「もっとケツを突き出してみなさい」
「えっ!?け、けつ!?」
「そうじゃ」
「うぅ…こ、こう?」
「もうちょいじゃ」
「で、でも重心が前に」
「今は一部分を直すのが先決。後から全体を修正するから気にせんでいい」
「あ!すごい!今すごくコーチっぽいわ!」
「コーチっぽいじゃない、コーチじゃ」
「うん…あと喋り方はいつ直るの…?」
そんなんどうでもいいからはよ。
「ケツあげるんだよ、あくしろよ」
「ええっ!?その喋り方はやめてほしいんだけど!」
注文が多いな。
そういえばボードゲームの時もそうだった。
「こ、こう?ねえ、これだと全然ポーズが違うものになってると思うんだけど…」
「問題ない。右足の膝に手を置いて、左足の膝を伸ばしてみなさい」
「うん、わかったわ」
見え、見え…!
「何してんだこのばかちんがあああああああ!!!!」
「がべすっ!!」
俺は何かに思いっきりぶっ飛ばされた。
当然ブチ切れる。
「何すんだこらあああ!!!」
「こっちのセリフだよ馬鹿野郎!」
俺を蹴り飛ばしたのはヒナらしい。
起き上がってるのを見るとドロップキックを食らったみたいだ。
「ゆんゆん!大丈夫!?身体触られたりしてない!?」
「え?うん、してないよ?」
「ゆんゆんもう少しでスカートの中見られるところだったんだよ!?他には何かされてない!?」
「へ…?」
ヤバ。
蹴り飛ばされたおかげで距離が出来た。
よし、逃げよう。今日はどこか違うところに…。
「どこいくの?」
ゆんゆんの声が聞こえた。
ゆっくり振り返ると、それはもう真っ赤っかのゆんゆんがいた。色々な意味で。
わあ…おめめ、きれい…
右手は杖を握り潰そうとしてるかの様な力の込めようを見るにとてもお怒りの御様子。
「ゆんゆんさん、俺も出来心っていうか」
「ゆんゆん、やる時はちゃんとやらないと、また同じことが起きるからね」
ヒナもゆんゆんの隣にいる。
ちっ、余計なことを!
「俺の言い分も聞いてくれよ!」
「……一応聞いておいてあげる」
「特別指導なのにそんな短いスカー」
「『ファイアーボール』っ!!」
ゆんゆんの杖から放たれた火炎の球は俺に真っ直ぐ向かってくることはなかったが、俺のすぐ前の地面にぶつかり爆発と爆風を巻き起こした。
俺はもちろんなす術なく思い切り吹き飛ばされて後方の石壁に叩きつけられた後、そのまま落下し地面にキスした。
めちゃくちゃ痛え…!
あれでも手加減してくれたんだろうが、下手したら本当に死にかねないぞ。
意識があるのは奇跡だろう。
頑張って顔を上げるとゆんゆんは俺を見下ろしていた。
「……何か言うことは?」
這いつくばっているからこそ、見える景色がある。
それは先程求めたものだった。
それは奇跡の景色だった。
それは何ものにも染まらぬ漆黒だった。
「結構なお手前で」
「…?」
ゆんゆんはまだ怒ってる表情だが、俺の言ってることの意味がわからず首を傾げている。
「その、ゆんゆん。短いスカートなんだし、もう少し後ろに」
「!!」
ヒナに言われて気付いたらしく少し後ろに下がり、杖をプルプルと構えていた。
また色々と真っ赤なゆんゆんを見て正直に思った。
わあ…おめめ、すっごいきれい…!
「『ライトニング・バインド』ッ!!」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
俺の身体に電流が駆け巡り、気を失うまで全身を痛めつけられた。
このすば世界って、どこまで英語が通じるんでしょうか?
和製英語はどうとかの文章を原作で見たことがあるようなないような…でも紅魔族の人がアイキルユーとか言ってたし…。
どこまで出していいのか分からなくて疑問でした。
お気に入りや評価、感想ありがとうございます。
もっと伸びろ増えろと思いつつ、好きな内容を書き続けています。
頑張りますので、これからもよろしくお願いします。